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第三十七話 知り合い



 あのドッペルゲンガーの戦いから、二週間は経っている。あと、一日でアルト・エルグに着く距離になったが…………






「デケェ……、まだ一日の距離があるのに、もうアルト・エルグが見えるとは……」

「そうですね。あの大きな樹木に、浮島があるのでは、ここから見えるのは仕方がないかと」

「さすが、エルフが作った国……、浮島はどうやって浮いているんだろう?」


 全員が感嘆の声を漏らしていた。テミアが言っていた通りに大きな樹木と周りに浮く島が幾つか見える。

 まだ遠くから見ているのだが、幻想的な国だとわかる。




(さすが、魔法の国と言われている国だな。あの浮島は予想外だったな)


 エルフは森を愛する種族なのは知っていたから、大きな樹木があっても驚かないが、島が浮いているなどは予想してなかった。




「断然、行くのが楽しみになったなっ!」

「はい。年増エルフの実力無さが浮き彫りになるのが楽しみですね」

「なんでなのよ!?」

「あら、エルフは魔法が得意と聞いたことがありますし、魔道具を作れるエルフが多いのですが、貴女は何が出来るのですか?」

「うっ……、それは……」


 テミアに痛いところを突かれた。シエルは今まで、巫女をやってきたこともあり、得意なことがないのだ。冒険者だから戦いは出来るが、輪廻とテミアより実力が下。

 魔力は高いが、エルフと比べると少しだけ落ちる。エルフは生まれもって魔力が高いのは聞いたことがあるが、まだ会ったことがない輪廻はテミアが言うならそうだろうとしか判断出来なかった。




「り、料理なら……」

「私達も出来ますが?」

「…………」


 輪廻とテミアも料理は出来る。輪廻は家に1人だけでいる時もあったから、その時は自分で料理をしていたからある程度は出来る。

 テミアは何故出来るかわからないけど…………


 シエルは料理は好きな方だが、料理の腕は2人と変わらない。




「グスン、少年……、テミアが虐める……」


 涙目になるシエルは輪廻に助けを求める。




「まぁまぁ、泣くなよ。テミアは虐めているだけで、仲間から追い出そうとしてないんだから……」

「はい。むしろ、仲間から抜けられたら私が困ります。虐める相手がいなくなるもの」

「私は虐められるだけの能しかないのと変わらないじゃない!! うえぇぇぇぇぇん!!」

「それじゃ、追い討ちと変わらないじゃないか……」

「テヘッ」


 マジ泣きになったシエルを慰める輪廻。テミアはシエルが泣き止むまで、我関せずと言うように空を見ていた。






−−−−−−−−−−−−−−−






 ようやくシエルが泣き止み、ようやく先に進めるようになった。




「そんなに言うんだったら、私にしか出来ないことを見付ける!!」

「そうですか、せいぜいと頑張って下さいな」

「むぅぅぅ〜」


 シエルは一つの決意をし、テミアはどうでもいいように答える。


 なんか、このパーティはバランスがいいなと思う輪廻だった。二人が漫才をしている時、輪廻は傍観者となっている。時々、シエルが涙目になるので、輪廻が慰めて復活させる仕事になっている。

 このように、それぞれのタイプが違っていて面白いパーティになっていると思ったのだ。




「まぁ、俺は期待しているからね」

「うん! 私は少年のために頑張るから!!」


 最近、輪廻は思う。

 シエルが輪廻に依存するようになっている。それはテミアが虐めて、輪廻が慰めると言う流れが出来ているからだ。

 その流れを作ったのはテミアであり、計算してやっているのでは? と疑ってしまうぐらいだった。


 そのことをシエルがいない時、テミアに聞いているが…………




「いえ、虐めるのが楽しいだけで、そこまで考えてはいません。御主人様から過大評価してくれるのは嬉しいですが……」




 としか答えない。それが本心なのかわからないが、結果としては悪いことに向かっていないので、気にしないことにした。




「中に入ったら、まず宿を取ってから、素材を売りにいくか」

「はい、これだけの素材が溜まっていますからね」

「これだけ広いなら、観光もしてみたいわね〜」


 幻想的な国なら、観光したいのもわかる。観光名所も沢山ありそうだし、魔道具など珍しい物が売っているから輪廻も見て回りたいのだ。


 輪廻はアルト・エルグを楽しみに、道なりを歩いていると…………


 分かれ道になっていた道で、見知った顔を見付けた。









「……あれ、輪廻達じゃないか!?」

「あ、本当だ。まさか、ここで会うとはな」

「久しぶり……」


 まさかのラン達だった。ティミネス国にいた時に、一度だけ組んだことがあるパーティで、後ろには一つの馬車が見えた。




「アタイ達はティミネス国から護衛の仕事でアルト・エルグに向かっているんだ」


 馬車のことが気になった輪廻に気付いたのか、ランがそう答えてくれる。ダリオとアニーもうんうんと頷いている。




「おや、知り合いですか?」

「ええ、ティミネス国にいた頃に一度だけ組んだことがあります」


 馬車から出て来たのは馬車の持ち主であり、商人をやっている男。

 商人は1人だけで、護衛はこの3人を雇っていたみたいだ。Dランクが1人に、Eランクが2人だけで大丈夫なのか? と思うが、街から村や他の街への道は整備されており、強い魔物はあまり出てこない。

 輪廻達みたいに森の中を進まなければ、余程のことがなければ、強い魔物と強盗は現れない。護衛は3人いれば充分なのだ。




「私は旅商人をやっているバルドと申します。良ければですが…………」


 こっちも自己紹介をし、バルドから案が出た。一日だけだが、一緒にアルト・エルグに向かいませんか? と言うものだった。つまり、行くついでに護衛を頼みたいと。




(行き先は同じだし、一日ぐらいならいいか)


 行き先が同じだったのもあり、了承する。護衛料はいらないが、もし強盗が出たら強盗の物は全部貰うで確約した。

 一日だけで、強盗が出てくる可能性は低いし、護衛料はいらないと言っているのだから、喜んで確約してくれた。




「あ、一応ランクを聞いても?」

「全員がBランクだ」


 バルドはリーダーである輪廻に聞いてくる。輪廻が子供だからと判断はせずに、聞いてくることからいい商人であることがわかる。

 ランクを聞いて、バルドは驚きの顔を出していたが、それは一瞬だけだった。むしろ、一番驚きを表していたのは、ラン達だった。




「はぁっ!? 初めて会った時はまだFランクだったよな!?」

「はい、色々あって…………」


 ダリオは輪廻とテミアがまだFランクだったことを覚えており、そう言ったが、ラディソム国で何があったの簡単に教えてあげたら…………









「マジで、そんなことがあったの……?」

「ああ、ゴブリンといえ、大群で攻めてきたからな」

「アタイ達が通った道から離れていたから会わずに済んだから助かったけど、もし会ったらゾッとしたわね」


 輪廻達だけで倒したと聞いて驚いていたが、ラン達は輪廻とテミアなら……と納得していた部分もあった。




「あ、エルフは新しいパーティメンバー?」

「そうなりますね。シエルと言います。よろしくね」

「おう、怪力馬鹿メイドと違ってマトモだね」

「怪力馬鹿メイド……ぷっ」


 ランの言葉に吹き出してしまうシエル。その言葉を聞いていたのか、テミアが話に割ってきた。




「あらあら、どこかで見たような気がしましたが、あの獣臭くて誰も近寄ってくれない寂しい女性ではありませんか」

「何だとぉ!?」


 テミアとラン、シエルてのやり取りと違って、お互いが嫌い合っているような感じがする。それにしても、何故、テミアはランに絡むのだろう?


 気になったが、今はそれどころではなくなった。輪廻が待望していた盗賊が現れたからだ。






「な、『朱猿』の盗賊だと!? 何故、ここに……」


 見なりに必ず朱い布を巻いており、人数は20人ぐらいいた。その中から頭領のような男が現れた。




「あ、あれは……、『朱猿』の頭領だ。終わりだ……」


 『朱猿』は有名な盗賊で、頭領は札付きになるほどに残忍で強い。

 この数に、頭領まで出て来たからもう駄目だとバルドは諦めていた。




「おっ! 女が4人もいるじゃねぇか!! お前ら、女は殺すな。あとはわかってんな!!」


 男は殺し、盗れるものは盗れと指示のようで、こちらの前方を塞いでいた。




「ねぇ、『朱猿』って強いの?」

「あ……あぁ、あの頭領は札付きだ……」


 札付きとは、首に賞金が掛かっているということ。それを聞いて、輪廻はニヤッと笑った。




「テミアは俺と一緒に強盗の駆除、ボスだけは頭を潰すな。シエルはバルドと馬車を守れ。三人は……シエルと一緒に!」

「「はい!」」

「え、えあ、わかった!」


 リーダーのランは何とか返事を返していた。輪廻の言葉を聞いて、ピキッと青筋を浮かべて殺気立てる。




「おうおう? ガキとメイドだけで俺達に相手をすると?」

「そうだ。お前は札付きらしいな? 俺の財布になるために死んでもらう」

「このガキが! お前ら、やってしまえ!!」


 うぉぉぉぉぉ!! と盗賊は叫び声を上げながら、突撃してくるが…………




「汚い男ども、御主人様に刃向かう者には罰を!!」


 テミアが片手だけで大包丁剣を持ち上げた時はギョッとしたが、早く振れないと思い、接近戦で挑んだが…………




 5人の盗賊が首を飛ばされた。




 テミアは軽々と大包丁剣を一降りするだけで、5人の命が消えた。




「なーーーー」

「テミアばかり見ていたら駄目だぞ?」


 輪廻はもう頭領の後ろにいて、ナイフを首に刺していた。能力が大幅に上がったのもあり、視線がテミアに集まっていた瞬間に”隠密”を使って頭領を気付かれずに殺すことが出来た。


 札付きの頭領は登場して、一分もしない内にあっさりと命が潰えたのだった…………






「「「…………えっ?」」」






 盗賊達とバルドは同じ表情をして倒れる盗賊の頭領を見ていた。

 輪廻、テミア、シエルはその隙に、盗賊を狩って行くのだった…………







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