第九十九話 紅龍王の剣と盾
遅くなりました!!
広告ですが、新しい小説、『イクス伝記』を書き始めたので、こっちも宜しくお願いしますー。
ではっ、どうぞ!!
シエルは星屑で雷の矢を射るが、紅龍王は避けず、さらに炎の矢を撃ってきた。
「避けない?」
シエルは反撃してきた炎の矢は”視領”
で全て避けていた。紅龍王の方は雷の矢を身体に纏まっていた炎で弾いていたから、無傷だった。
「あの炎が守ってくれるってわけか」
輪廻はそう言いながら、シエルと紅龍王が撃ち合っている内に、紅龍王の懐に入って”虚手”で殴り飛ばそうとする。この距離なら避けることは出来ず、炎で守ろうとしても、威力が高い”虚手”ならそのまま突き破れると思っていた。
だが、それも炎によって防がれてしまっていた。
「何……?”虚手”でも駄目なのか!?」
「御主人様!!」
「っ!?」
テミアの声で咄嗟に紅龍王から離れたが、紅龍王が起こした爆発から完全に避けることが出来ず、展開したままだった”虚手”で守ることになった。
爆発によって重力の手は消え去ったが、輪廻本人は無事だった。
「ちっ!一発だけで”虚手”が破られるとは、とんでもない威力だな」
先程の爆発は、紅龍王が見えない何かを吐き出したため、元から出ていた炎に引火して、紅龍王を中心に爆発が起こったのだ。
(爆弾は詳しくないが、何かを吐いた音がしたからそれが原因で爆発が起きたのは間違いない。メタンガスを吐いたか?この世界にメタンガスがあるかわからないが……)
輪廻は何かを吐いたから爆発が起きたまではわかったが、何を吐いたまではわからないようだ。
「テミア、シエル!紅龍王が息を吐く動作をしたらすぐに離れろ!!」
「はっ!」
「それだと、なかなか近付けないね」
炎は常に紅龍王の周りに浮いているため、そう簡単に近付けない。ちなみに、紅龍王は爆発に巻き込まれても、無傷だった。紅龍王には炎と爆発系は効かないようだ。
「それに、炎は自動で紅龍王を守るように動いているのか?」
「少年が近付いた時は、こっちに注意していたから、少年には気付いていなかったはず。紅龍王の意思に関係ないかもしれない」
「面倒な、あの炎を破らないと紅龍王に届かないでしょう?御主人様の技を喰らっても破れなかったので、それ以上の威力でやらないと駄目みたいですね」
紅龍王を護る炎を消し去らないと本体に届かないので、まず炎を消すために3人同時に強い技を発動しようとする。ティミネス王国を守った時のような技を。
「ーー!?させるか!!」
紅龍王は何をしてくるか魔力の量でわかったようで、今までの炎の矢ではなく、火炎放射のよう撃ちだしてきた。
「ちっ!」
これだけ魔力を込めた火炎放射を喰らったら骨まで溶けてしまう。それを生身で受けられない輪廻達はさっきまでの技を止めて、防御を優先さた。輪廻は重力の壁を、テミアは対極となる水魔法を、シエルは雷の盾を発現してから大盾を構える。
「くそ、簡単に撃たせるわけねぇか。だが、発動出来れば、あの炎を破れるようだな」
「慌てていたのがバレバレでしたね」
「なら、少しでも隙を作り出さないと駄目だな」
3人同時に強い技を出せば、炎を破れることがわかったので、一先ず隙を作り出す必要がある。
「さっきのを簡単に発動させないもんね!!私の盾である”紅焔鱗”は、私の死角も防ぐ。次に私の剣を見せてあげる!!」
先程の炎の矢や爆発とは桁が違う魔力が紅龍王の前に集まっていく。紅龍王を護る盾が”紅焔鱗”で、剣はーーーー
「”紅仙鳳華”!!」
桁違いの魔力が炎に包まれたと思ったら、一つの華が生まれていた。ただの華ではなく、水晶で出来た紅く細長い水晶が沢山集まって、華の形をしていた。
「……あれはヤバイな」
「あれは……、一つ一つが凄まじい魔力を帯びている。私の攻撃では壊せないかも…………”魔隕石”!!」
シエルは試すというように、大きな黒い隕石が3発、紅龍王に向かって落ちていく。洞窟の中で十メートルの大きさがある”魔隕石”を発動することは自殺行為だが、今は作られた世界で広い丘のような場所なので、その心配はない。普通の相手だったら、隕石によって押しつぶされるのだがーーーー
「無駄だ」
華の形をした水晶から三本の尖った棒が浮き出て、黒い隕石と衝突した。十メートルもある隕石と一メートルもない尖った棒が衝突しても、普通に考えても隕石の方が勝つと思うが…………
隕石は一瞬で粉々になって消えていた。
「えっ!?これだけの差があるの!?」
「ち、”虚手”!!」
隕石を壊しただけで終わらず、三本の尖った棒がこっちに向かっているのが見えたから、輪廻は”虚手”で弾こうとする。
「危ない!!」
テミアは瞬動で迎撃しようとした輪廻を横から捕まえ、離れた。
ドバァァァァァァァァァ!!
その瞬間に、爆発が起こった。輪廻は見えていた。”虚手”で棒の横を殴っていたのに、こっちの手がぐにゃっと凹んでしまい、弾くことが出来ていなかった。その後に、地面を貫いた瞬間に爆発が起きたのだ。
もし、テミアが助けなかったら輪廻が死んでいた可能性があった。
「助かったぞ……」
「はっ、あの棒には触れない方が良いかと」
「大丈夫!?」
シエルは敵を警戒しながらこっちを心配してくる。
「はぁ、厄介だな。遠距離攻撃では力負けするし、近距離攻撃だと即死クラスの爆発か。まさに、打つ手がない状況だな……………………普通の奴らならなっ!!」
輪廻は諦めていなかった。厄介な技と護りを持つ紅龍王に対して、勝ちを諦めていなかった。
「ここはアレで終わらせてやる。テミア、シエル。時間稼ぎを頼むぞ」
「わかりました。アレをやるのですね」
「確かに、勝つにはアレしかないね……。わかったわ」
「頼んだぞーー」
輪廻は本気でやるために、少し準備が、必要になる。だから、2人に時間稼ぎを頼むのだ。
「こっちも見せてやる。”冥王”をーーーー」