表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/217

第九十三話 ヘルメスの父

 


 輪廻達は水の中でも呼吸出来るようになる貝をユリナから貰い、湖の中に入って行った。輪廻には貝などを使わなくても潜る方法はあったが、魔力を使う方法なので、使わずに済むならそっちを選ぶ。

 もし、戦いになって、魔力が足りなくなるなんてヘマはしたくはないからだ。




「湖の底までは深いな……」


 湖の底、光が届いていなくて真っ暗だ。そんなところに住んでいて、不便じゃないのか?と思った。だが、ユリナはニコニコしながら、顔だけを輪廻達の方に向きながら前を泳いでいる。




「着いたらわかることなので」


 輪廻は目を細めて、何がわかるのか?と疑問が浮かんだが、人魚族と半魚人族の村に着けば、わかるだろうと聞かなかった。






 ーーーーーーーーーーーーーーー







「なんだと……?」

「こんな所で、光が?」

「うわぁ、明るいー」

「ほう、興味深いな…………」


 初めて、この村に来た4人は、この村について驚愕の顔が浮かんだ。何故なら、深い湖の中にいるのに、明かりが灯っており、視界が見回せるほどに明るいからだ。

 ユリナの案内により、湖の底に向かっていたら、何か水の膜のような物を通り抜けた感覚を感じたと思ったら、目の前が別の世界だった。つまり、水の膜のような物とは結界で、この世界はルフェアが作り出す別の世界に似ているのだ。誰が作り出しているのかわからないが、浮いている輪廻達は上から見ると一つの塔が中心になっており、二つの村が半円の形に作られてあるのが見える。




「明るいのは、魔道具か?」

「うーん、それほどに高等な物ではなくて、明かりを照らしているのは、自然に生えている光るこけを入れてあるのよ」

「光る苔ね……、それはこの湖で?」

「ああ、この村から出て近くにある洞窟に生えている」


 一緒に潜って来たバズが教えてくれる。さらに、気になったことも説明してくれる。




「ちなみに、紅龍王様はあの塔にいる。中に入れないようにしてあるがな」


 この村で一番高い塔、輪廻から見るとビル15階ぐらいの高さがある。普通に考えれば、紅龍王は一番上の階にいると予測出来る。だが、バズの言葉によって否定された。




「まぁ、あの塔はフェイクだがな」

「は?」


 さっき、紅龍王は塔にいると言っていたのに、フェイクと言われても意味がわからなかった。




「もう、バズの言い方だと、矛盾しているように聞こえないわよ。ねぇ、フェイクは、見た・・・がなのよ」

「つまり、紅龍王がいるのは、塔ではなく……」

「そう、紅龍王様は、地下にいるのよ」


 輪廻達は理解した。あの塔は囮で、本命は地下にある。立派な塔が建っていたら、まず目を向けるのは頂上だろう。おそらく、地下への道は隠されており、塔には何もないと思わせることが出来る。




「それを俺達にバラしてもいいのかよ?」

「どうせ、会わせるつもりで連れてきたんだから、問題はねぇよ」


 図太いのか、馬鹿なのか判断出来なかったが、会えるなら何も言わないことにする。皆はそのまま塔へ向か……………………わずに、一つの家に向かっていた。




「ここが私達の家です。私の旦那様にも会って欲しいのです」

「パパは偉い人なのー!!」


 ヘルメスの父は人魚族と半魚人族を纏める長であり、いつも忙しく働いている。だが、ユリナがシーナに呼ぶようにと頼んでいるため、家で待とうと言うことだ。

 長は、研究者でもあり、光る苔が生える洞窟で働いているからそんなに遅くはならない。




「へぇ、お前の父は長であり、研究者でもあるんだな」

「うん!!いつか私もパパの研究を手伝うのっ!!」

「なんの研究をしているかわからんが、ヘルメスでも出来ることなのか?」

「さぁ?うふふっ」


 ユリナは笑って誤魔化していた。輪廻はそれが答えだとわかった。




(…………うん、人魚族や半魚人族がではなく、ヘルメスがアホ過ぎるってことだな)


 輪廻は今まで人魚族や半魚人族がアホな種族だと思っていたが、さっきまでの会話、行動から考えを改めた。ヘルメスが特別にアホ過ぎただけなのだと。




「あ、パパだ!!」


 輪廻がそんなことを考えているとは思っておらず、ヘルメスは帰ってきた長の元に向かっていた。




「お!先に帰っていたのか?」

「うんっ!!」


 ヘルメスの長は半魚人族であり、姿はバズのような半魚人だと判断出来る姿ではなく、人間に近い格好をしていた。

 スーツを着ているから、露出が少なくて肌にある鱗が見えないが、何処から見てもダンディな人間の男性にしか見えなかった。




「おかえり、貴方。今は客が来ていますので」

「そうかそうか、君達が我が娘を助けてくれた者ですね。ありがとう」


 輪廻が人間だろうが、頭を下げて、お礼を言っていた。




(ほう、人間を嫌っているのは少数ってことか?)


 シーナなように険悪な態度を出すのは少数かもしれないと輪廻は考えていた。




「私はここの長をやっているディオと言います。研究も嗜んでいますね」

「研究か、どんなのをやっているか聞かせても?」

「ふふっ、シーナが言っていた通りに子供らしくない子供ですね。研究は苔に関することですね」


 今、やっている研究は、光る苔に関することで、どうして光るのかはまだ謎の部分があり、研究をしているという。光る苔からは危険な物質は摘出出来なかったので、危険はないと判断して、明かり代りにしているという。




 ディオの研究魂が燃え始まってしまったのか、光る苔についての講義が始まってしまい、本題に入れたのは、その一時間後だった…………





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ