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第九十二話 眠り龍姫

 


 長い話を嫌うヘルメスは、シエルを連れて輪廻達の話が終わるまで遊ぶ。

 輪廻とヘルメスの母であるユリナと向き合い、本題の話に入る。




「単直に言おう。俺達は紅龍王に用があるから、ここに来た」

「あら、紅龍王様にですか?てっきり、私達の人魚族や半魚人族に話があるかと思いましたわ」

「まぁ、紅龍王に話を通すために、橋渡しを頼みたいから人魚族と半魚人族にも関係があるかもな。だから、偉い人と話したかったわけだ。ヘルメスの親が偉い人だったのは偶然だったがな」

「なるほど……」


 輪廻は紅龍王との面会が出来るようにセッティングを頼むのだ。もし、紅龍王と会うために湖の中に入らなければならないということになっても、行く方法はあっても面倒である。

 だから、輪廻は会うなら人魚族や半魚人族に頼んで、ここまで呼んでもらったほうがいいと考えたのだ。




「ゴメンね、それは出来ないのよ」

「む、何故だ?」

「あー、確かに無理だな」


 ユリナの言葉にバズも同意する。バズの言葉から、輪廻達が人間だから会えないと言うより、別の理由があって会えないように聞こえる。




「…………今はここにいないってこと?」


 輪廻が思い付く理由は、それだった。紅龍王は湖を縄張りにしているが、出られないからではない。つまり、今は湖とは別の場所にいると考えたが…………




「違うわ。紅龍王様は、ここの湖にいるわ」

「なら、何故、会えないんだ?」


 いるなら、会えるじゃないかと文句を言おうとしたが、バズの言葉で理解するのだった。






「紅龍王様は眠っているんだ。一年前からずっとな」










 ーーーーーーーーーーーーーーー






 暗い、湖の底には一つの建物がある。それは神様を奉る神社のような建物に似ている。それは大きく、中には一つの大きな水色の水晶があり、その水晶には、1人の女性が眠っていた。


 その女性は人間ではなく、身体中には鱗が貼ってあり、額には紅い角があった。種族で言えば、竜人族のように見えるが、彼女の正体は竜人族ではなく、聖獣の紅龍王である…………









「紅龍王様は、一年前から水晶の中で眠っております。前に起こそうとした半魚人族がいたのですが…………」

「触れた瞬間に、蒸発しやがったんだ」


 水色の水晶に触れた半魚人は、骨さえも残さずに蒸発して、死んでしまったのだ。その事件があり、水晶へ触れないように、厳重で隔離している。




「何故、そんなことになっているのかわからないのか?」

「まだわかっていないの」

「人間やエルフの仕業に決まっている!!」


 今まで黙っていたシーナが声を上げた。




「あんな、封印みたいな魔法は人間やエルフが出来ることなんでしょう!!魔族が出来るとは聞いたことがない!!」

「なるほど、それで、お前は人間やエルフを嫌っているわけか」

「私は紅龍王様に助けて貰った事があるのよ。なのに、あんなことをするなんて、許せないのよ!!」

「シーナ、落ち着きなさい。まだ子供の輪廻に怒鳴っても仕方が無いわよ。大人気ないと思わないの?」

「うっ……」


 ユリナにそう言われて、シーナは黙る。輪廻はヘルメスの一つ上でしかなく、大人気なく騒いでいたことに恥ずかしくなったようだ。




「ウチのシーナがゴメンね」

「別に気にしていない。今もまだ水色の水晶で眠っていると言ったよな?」

「はい」


 輪廻は疑問が浮かんだのだ。水晶と言えば、紅龍王も水晶を操って戦うとガーゴイルから少し聞いている。水晶を操る紅龍王が水晶に関する封印で封印されるとは思えなかったのだ。




(まさか、封印されたのはワザと?それとも…………)


 すぐに判断は出来ない。シーナの言うとおりに人間やエルフによって封印された可能性もある。




「人間やエルフの仕業だとしても、どうやって湖の底に行けるんだ?俺なら他の者には出来ないやり方で行けるが……」

「ここには、酸素を生み出す貝があります。それを咥えれば、人間やエルフでも行けます」

「そんな貝があるのか?」

「ちょうど、俺が持っている。これだ」


 バズが持っていた袋から出したのは、一見では巻き貝のように見えるが、巻き貝の先から細い筒のような物が一本出ている。ストローみたいだなと思う輪廻であった。




「これで人間やエルフが湖の底に行けるのはわかったが……」

「何故、魔族の仕業ではないのか、わかりませんね。私としては、魔族がやった可能性が高いと思いますが」


 そう、テミアが言っている通りに、魔族が犯人ではないと判断する材料がない。なのに、魔族ではないと言えるのか?




「ふん、紅龍王様は聖なる存在なのよ。魔族の魔なる封印が効くわけがないわ」

「…………?ルフェア何か知っているか?」

「確か、聖獣は聖なる加護を持っている魔物と聞いたことがあるから、それに関係があるかもしれん」


 ルフェアも詳しく知らないようで、それぐらいしか答えられなかった。




(加護の効果か……?)


 加護による効果で、闇関係の封印は効かないと考えてみる。とにかく、行って見ないとわからないので、案内を頼むことにする。




「うーん、暴れないと約束出来るなら、いいと思うけど……」

「危険です!!」

「俺は賛成する。何かわかるかもしれんからな」

「バズまで!!」


 二人の説得により、シーナは渋々とユリナに従うことに。




 こうして、輪廻達は湖の中に潜って、紅龍王の元へ向かうことに…………





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