名前で呼んで
彼女に会って2日目の2時間目。
長〜い長〜い尋問が終わり、精神的にも肉体的にもボロボロになった俺は、3、4時間目にでる元気がなく、グラウンドの端っこでぼーっと座りながら空を見上げる。男女からは変な事聞かれるし、教師からは意味わからんこと言われるし・・・。
「ほんっと、だるいなぁ」
少し過去にたちかえり2時間目。
「では今から尋問を開始する!委員長、挨拶を!」「起立っ!礼っ!着席っ!」嫌にやる気あるな・・・。
そもそもお前等、今まで挨拶せずに授業始めてたくせに、こういう時はするんだなとひどく諒解した。
「えー、まずKONAMI!ちょっと前に来い!!」
・・・・・・尋問される方って英語なんだ・・・。なんかどっかの会社名みたいだな。
内心びくびくしながら教壇の横に立つと、教師が椅子を用意し、
「座れ」と言ってきた。
「・・・は?」
「いいから座れ!」椅子を指差す教師。
少し迷ったが、まあ座るくらいならと思い、
腰を掛けると
「今だ!縛り上げろ〜!!」
「「「「はいっ!!」」」」
「え゛っ!?」
教師の合図で、前の席にいた6人が一斉に俺を押さえ込み、窓の奴らがカーテンをちぎって身体と椅子に縛り付ける。
「痛いって!縛りすぎだろ!・・・っておい!脚は別にいいだろ!!」
じたばたするが多勢に無勢で、僅かな抵抗も無力に終わった。
「さてと、では尋問の許可を出す。ただし!質問は1人ずつ、回答者側も必ず答えること!では始めろ!!」
「マジかよ・・・」
「ーーはいはいはーい!真希ちゃんと肉体的関係はしましたか!?」
「するかっ!!しかも初手に女子がそれを聞くのはどうかと思うぞ!!」
「ーーじゃあ付き合ってんの!?」
「断じて付き合っていない!!」
「ーーいつから知り合いなんだ!?」
「それは昨日だ」
「スリーサイズは!?」「知るかっ!!つうか自然に教師がそんなこと聞くな!!」
「ーーきっかけは!?」
「えっと、本だな」
「ーーどんな本なの!?」
「・・・bad end 1章」
「ーーやっぱり真希ちゃんは最高ですか!?」
「「「ーー最高〜!!」」」
「何でお前等が答えるの!?」
などと馬鹿みたいに続き、安泰のチャイムが鳴った瞬間、隣の授業が終わって教室の前を通った教師に見つかり、教師が教師に怒られるという意味不明な光景のあと、カーテンを解いてくれた。
だが、事情を話すと
「早く小波を捕まえろ!!
俺は・・・俺は今!失恋したー!!!!」
「あんたもか!!」
急いで教室から出て逃げ回る。
だが、奴らも追って来て、校内中走りに走った。
下駄箱、体育館、屋上、音楽室、美術室、和室、
・・・etc。
最後にグラウンドの端っこの木に隠れる。
なんとか向こうは見失ってくれたようだ。
そして現在に致る。
はぁーっと、ため息をはくとその場に俯く。郁河さんってあんなに人気あったんだな〜。
あの顔だからしょうがないと思うけど・・・。
俺もさっきは違う意味でモテてていたし・・・・。しばらく此処でのんびりするか。ちょうど雑草が短く出てるし、寝るのにはもってこいだ。
予定を決め、寝転ぼうとすると、
「ありゃ?仁君?」聞き覚えのある声にがばっと顔を上げる。そこには、下は青いブルマで上は白に青ラインの体操着を纏った郁河さんが見下ろしていた。
「あ〜。やっぱり仁君だ。駄目ですよ、授業サボっちゃ!!」
ぷーっと膨れ顔になる。・・・・・・その顔は可愛すぎるだろ。
「い、いや、ちょっと心に傷がね」
「そうなんですか!?」
「えーと、まあそんな感じ。それで癒えるまで休憩ってわけ」
「へぇ、大変ですねぇ」
だいたいは真実と合ってるように伝えると、
「じゃあ私も休憩できるよう手配してきます☆」
「はっ?」
理解に遅れた俺を放置し、郁河さんは体育教師の所に行き、会話をする。
「まさかあいつ・・・」
嫌な予感から10秒後、話しをつけてきたらしく、急いで戻ってきた。
「許可出ましたよ〜」
手を振りながら、笑顔で話しかけてくるアイドルを見て、俺はもう笑うしかなかった。
「どうして笑うの・・・じゃない。笑うんですか?」目を丸くして、?が頭の上に出現する。
「だってさ、さっきの郁河さんの無邪気な所がかわい・・・じゃなくて、えーと・・・そう!楽しいから!うん、楽しいからだな!」
苦しい訂正をする。だが、もししていなかったら俺はあの子のことを、か、か、かわ、可愛いって言ってしまっていた。
そんな柄にもないことを言いたくはなかったし、
とてもじゃないが
顔をまともに見られない・・・。・・・・・・でも言ったらどうなるだろう?自分で未来予想図を描くと、あーなってこーなっていい感じになり、それから・・・恥ずかしいわ!
頭を抱えたり、考えるポーズをしたりと、わけのわからん行動を暇そうだなと思ったのか、
「じゃあ一緒に見学しましょうか!」
「ああ、そうだなって・・・なんで?」
「なんでも!いいから一緒に体育見学しましょ!なんだかんだでまだお話してませんし」
しょうがないか。・・・・・・あれ?今気付いたけどさっき敬語じゃない部分があったよな・・・。もしかして郁河さんって・・・。まぁ後で聞くか。すくっと立ち上がろうとする、がその時事件は起きた!
体力が限界に近いため、
ちょっとバランスを崩した俺は、何かを支えにしようとしたら手に、柔らかい感触に包まれる。
「「あっ」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・長い空間ができる・・・・・・。
「ご、ごごごごごめん!!」慌てて身を引く。
「はうぁ・・」
ぺたんと座り込み、呆気にとられた顔がよく見えた。・・・
嗚呼、やっちまったなぁ・・・・・・。
さっきのは苦手とかそういう類いではない。むしろ嬉しい、いや気持ち良かった。
だけど、長いこと女の子と接触がなくて、話すだけでも緊張するほどだから、体の一部が触れるなどしたら、反射的に避けてしまうようになっていた。しかもそれが胸だなんて・・・。終わった・・・。彼女にとっては傷つく行為に間違いはない。
「えと、あの・・・その・・・」オロオロする郁河さん。
「あ、ごごめん!変なことしちゃって」
「えっ?あ、いえ、こちらこそごめんなさい!なんかドキッとしちゃったけど・・・」
呆然としていた小さい体はさらに縮まり、俯いた。
「えと、じ、じゃあ見学しようか」
何も言わず頷く。
ぎこちない先導で、生徒達がよく見えるとこまで移動する。ある程度のとこまで来て、ここでいいかと確認をすると、一言
「・・・はい」と気まずい了承を得て、
そのままそっと座る。郁河さんも少し距離をおいて腰をおろす。
・・・・・・・・・・・・・・沈黙が痛い・・・・・・・。ここは俺が何か言わないと!
「「あの・・・」」
二人の声が重なり、ますます互いを意識して顔を真っ赤にさせる。
「・・・え、えっと、何?」
「じ、仁君の方こそ何ですか?」
「お、俺!?」
「は、はい!ここは男性からですよ〜」
あははと笑いながら、手でお先にどうぞみたいなジェスチャー。「あ〜・・・何で敬語なのかなって思ってさ」「えっ? だって・・・、年上ですし・・・」
困ったそぶりを見せながら、体をもじもじさせる。
これがまた可愛い〜!
「でも言いにくくない?」うーん、と少し時間をあけ
「・・・まぁ、多少は話しにくいです」
「じゃあ普通に話そ」
「でも・・・そんなの」
「いいからいいから」
「・・・・・・はい」
「じゃなくて!」
「・・・うん」
よし!これでOK!
敬語って難しいからなぁ。俺は元サッカー部だったけど、中1の頃は先輩には敬語で話してて、つい同級生にまで敬語を使っちゃったことがあったからなぁ。
あん時の恥辱といったら・・・・・・。郁河さんのクラスの体育を見ながらほのぼの懐かしむ。
「・・・じゃあ・・・私のこと、・・・真希と呼んでくださ・・・呼んでね?」
「ああ・・・・・・へっ?」
今何と言った!?
「・・・ぱ、Pardon?」
「もう〜!私のことは真希って呼んでってば〜!」
名前で呼べって・・・
「「「「「「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」」」」」」
授業をしていた2年までが
声をあげる。
体育するふりをしていて聞いてたのか!?
いや!そんなことよりヤバイ!名前で呼ぶ=親しい中じゃねぇか!
しかもま、ま、真希なんて言ったら俺は!
ーーおい糞先輩さんよぉ。何名前で呼んどんじゃ!!
ーーお前わかってんのかぁ!?名前を呼び捨てにした瞬間、それは我ら会員及び!真希様への冒涜とみなすぞこら!!
ーー隊長!!こういう人類が決してなってはいけない実像のような奴は、体に覚えさせといた方がいいと思いますよ!!
ーーそうだな!!ホッチキスと針持ってこい!!
穴を開けまくって
腐った細胞を取り出してやる!!全員で取り押さえろ!!
なんてことに成り兼ねない!
それだけは回避せねば!「ダメ・・・かな?」
「え〜と・・・じゃあ」
全員がこの瞬間、このシーンのために静かになる。
体育の奴らも、校舎からこっそり覗く生徒多数も。
「じゃあ・・・」
「「「「「じゃあ?」」」」」プレッシャーが押し寄せる。
ようは呼び捨てじゃなけりゃいいんだ!それなら・・・
「真希ちゃん」
刹那、大地が揺れた!
「・・・・・・・あれ?皆さん・・・怒ってらっしゃる・・・?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!
学校内にいる奴らは片手でシャーペンを真っ二つに。体育してた奴らは、サッカーボールを同じく片手で
パーンッと破裂させる。
「ーー真希ちゃん・・・だと?」
一人が呟く。
「えーと・・・?」
「ーー全員・・・竹刀を持てー!!」
「「「「「はいっ!!!!」」」」」
どこに隠していたのか、大勢が竹刀を構える。
「ーー奴を討ちとるんだー!!」
「「「「「うおーっ!!」」」」」
「えぇぇぇぇぇぇっ!?」
第二次イジメ大戦発令。
そして少年は塵になった・・・。 |