もやもや〜
昨日電車で会った郁河真希。
結構可愛い子で、学校でもかなりの人気があるらしい。ファンクラブまで結成されているありさまだ。
そんな子と仲良くなっちゃっていいのか・・・。
翌日、電車で平生通り
学校に登校していると、
・・・・・・出会っちゃった。
例の後輩に・・・。
「あ、昨日の・・・」
「えーと、おはよう。・・・郁河さん」
一瞬名前で呼ぼうかと迷ったが、本校の生徒もいるし、ファンクラブの皆さんもいることだし・・・・・・。
ちらちらと四方八方からの視線。
朝は穏やかな時間を過ごしたいのに・・・。
「おはようございます!あの、本読みましたか?」
・・・本?
あの『bad end 1章』ってやつかな。
「ごめん、まだなんだ」
「そうですか・・・」
しゅんとなる。
そしたら、これを見たファンクラブの一部(10人程)が、怨念じみた眼でこちらをにらみ、ぶつぶつ愚痴を言い始めた。
ーー真希ちゃんをがっかりさせやがって!
ーーだいたい誰だ!あの世間知らずは!
ーーあいつたしか小波仁とかいう3年生だぜ!
ーー年上がでしゃばんな!ーー俺が奴を登校拒否にしてやる!
ーー待て、会員No.38!その役目は俺が!
ーーしかし、No.6で隊長クラスの貴方様にもしもの事があったら我々は!
ーー馬鹿者!!大切なのは俺じゃない。・・・真希様だ!!!
ーー隊長〜〜!!!!!
・・・・・・などと、わけわからん会話が端っこで執行されていた。「・・・? どうしたんですか?」
「え? あ、いや・・・その本は今日の休み時間にでも読んでおくよ」
笑いながら答える。
これが苦笑いということは郁河さんはわからない。
「ありがとうございます!・・・あ、そろそろ着きますよ。どうせですから、このまま一緒に登校しません?」
「へっ?」
この爆弾発言が、周囲の殺気をヒートアップさせた!
「〜〜〜っ!トサカきたー!!もう我慢できーん!おいっ!小波仁!てめえ、さっきからふざけやがって!この会員No.6の俺と勝負しやがれ!」
・・・暑苦しい人だな。
しょうがない、暇つぶしにしてやるか。
「郁河さん。先に行ってて。話なら昼休みでもできるから」
「はいっ!それじゃあまた後ほど」
電車を降り、手を振りながら遠ざかっていく影。
ふふふ。これで心置きなく闘えるな。俺達も電車を降りて、互いに向き合う。
「・・・で、俺達は何をするんだ?」
「くっくっくっ。それは!学食にある幻のステーキを先に買った者勝ちだ!!」
「な、なんだって〜!!」
ーー心底驚いた。
まさか、1日にたった1つしか出ないステーキを買うなど、喧嘩で1人に対し600人に勝てと言っているようなもんじゃねえか!!そもそもだるいわ!!
さすがにこれは無理と判断し、反抗の意思を伝える。
「だいたい教室の位置で決まるから勝負になんねえんじゃ・・・」
「安心しろ!!スタートの位置は校門からだ!」
「いや、しかし、他の生徒が奪うんじゃ・・・」
「大丈夫だ!!No.1に頼み、全生徒に協力するよう手配する!」
「いや、でも・・・」
なんとか断ろうとする。
だけど、次の言葉にぴくりと身体が反応する。
「・・・逃げるとは、背中を見せることだ。それでいいのか、お前は?向かってくる仇敵を避けるのは勝手だが、
その行為は弱気者を示す事になる」
「・・・っ!!」
この言葉・・・。『bad end 1章』。
・・・・・・なんだ?
この嫌にもやもやする感じは!?
「さぁ、どうした!受けるのか?受けるのか!?」
意気揚々とやる気を見せてくるが、そんなものを見る余裕はどこにもなかった。
「やんのか!?やんねえのか!?」
「あのー、すみません。」端から駅員が声を掛ける。
「あ!?なんだ!?おま・・・え・・・は・・・・・・・・・どうもでーす」
ペコペコと頭を下げる。
「困りますねーお客さん。ちょっと来ていただけますか?」
ニヤリと微笑み、腕を引っ張って室内に連行された。
「えっ?俺だけ?いや、ちょっ、えとっ、あ、お、お前等助けろ!」
見守る会員達に手を伸ばしたら、それを見捨てるかのように敬礼していた。
「「「どうかご無事で!!」」」
かなり時間をロスしたため、学校には1時間目の途中に着いた。
教師に色々聞かれることはなかったが、視線が集中し、多少気まずい雰囲気が流れていた。
まったく・・・。ただでさえクラスで浮いているというのに・・・。
その後の休み時間、俺は考えていた。
これからあの子とは、できるだけ避けた方がいいかもだな。
めんどくさい事がかなり生じてくるし。
「それに・・・」
向かってくる相手に会いたくなかった。
『会って逃げるより、会わないまま前に進む方が楽だしな』
いつもの俺ならそう言うだろう。
だけど何かひっかかる。
今ある状態を手放したくないような感じで・・・。
端っこの席で、自分と向き合っていると
「仁君いますか〜?」
ひょこっと教室のドアから悩みの可愛らしい元凶顔を出す。
「「「「仁君!?」」」」
クラスの男女全員が耳を疑う。
しまった!!そういえば郁河って、年上にも人気があったんだった!!
ゆらりと立ち上がる生きた男の屍達のような感じの奴ら。そして凝視する女の骸っぽい人達。
これはヤバイ!いろんな意味で!
「こなみぃ・・・。どういう事かな、これは?」
「さっき、仁君って言われてたよなぁ?」
「説明してもらおうかぁ?」
皆さんのいきなりの追い詰めに慌てふためき、
「えっ、いやー、その・・・。あ、教師来たって!席に戻ろうぜ」
と、ごまかそうとする。
が、教壇で教師は泣いていた。
「・・・先生は今、失恋をした気分だ。よって、この授業は小波の尋問とする!文句はあるか!?」
「「「「ありません!!」」」」
「教師ですら想いを向けてたのか!!」
「・・・あのー、これってどういう状況ですか?」
黙っていた郁河が、事態をまだつかめない顔できょとんとしていた。
すると
キーンコーンカーンコーン。
迷彩の鐘が学校中に普ね渡る。他の教室は一般のチャイムだろうが、此処に至ってはLEVELが半端なかった。まるでス○イムとメタルスラ○ムの出現率くらい差があった。
この場に居合わせた男子には儀式のチャイム。
女子には裁判のチャイム。教師には惨敗のチャイムに成り代わっているだろう。そして俺には奈落のチャイムになっていた。 |