アマギディオン 〜いつか見た空の青の下で〜(7/38)PDFで表示縦書き表示RDF


アマギディオン 〜いつか見た空の青の下で〜
作:東樹 九林



第一章 6


「そもそも『ディド』って………誰?」

 ――――絶句。
 そうとしか言いようの無い表情に、全員が固まっている。
「………なん、ですって………?」
 ややあって口を開いたエリーシャの声は乾いていた。信じられない、という思いでいっぱいになった表情で。
今はもう亡く、目の前の少女の母であり、僕のパートナーであったという夢の中の(ひと)。僕が知ることを当然として口の端にのぼるその人の名前。
「母の事を…知らないと…言うのですか…?」
 エリーシャの顔は、呆然から次第に変わっていき、
「あなたのパートナーですよ?それを知らないと言うのですかコウキは!」
しかし、僕にはその人物の事すら分からないのだ。
「知らない、知らないんだ………僕はその人の事を………本当に、知らない………」
激しい調子で詰め寄るエリーシャに僕はうろたえる。
「で、ですが、先ほどはコウキ君から母の名を口にしたではありませんか!」
「分からないんだ、その人の事。夢の中で見ただけで………」
「そんな……それでは母があまりにも…!」
 激昂寸前のエリーシャを、ハスドルバルが止めた。
「エリーシャ、少し下がっていなさい」
「でも、コウキ君は私の!」
「いいから、ここは私に任せなさい」
「―――はい、お爺さま」
 不承不承、エリーシャは下がる。怒りに震えるエリーシャの代わりに、ハスドルバルが質問してくる。
「コウちゃん、本当に君はディドの事を知らないの?」
 僕は無言で頷く。頷く以外に何も出来ない。
「ディド・バルカ――――僕の姉のディドの事。コウちゃんをアンヴァリッドにして、絶滅戦争で共にミゼリコルディアの脅威から人々を護り続けた『神仙女王』、そう言っても分からないかい?」
「あんばりっど………?みぜ……こる?」
 連発される知らない単語に、首を傾げる。僕の様子を不審気に見ていたエリーシャは、やがて何かに思い至ったらしく、恐る恐る口を開いた。
「まさか………コウキ君、記憶が………?」












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう