アマギディオン 〜いつか見た空の青の下で〜(20/38)PDFで表示縦書き表示RDF


アマギディオン 〜いつか見た空の青の下で〜
作:東樹 九林



第二章 2


「嬉しかったらすぐ人に抱きつくんですか?犬ですか貴方は」
口先尖らせジト目で一瞥くれるエリーシャに恐縮しつつ、しどろもどろに弁解する。
「いや………何でだろ?今までこんな気持ちになったこと無いんだけど………」
ぽりぽりと指で頬を掻いて、視線はエリーシャから外れて右往左往。
「なんというか愛しさ募ってというか、可愛さ余ってというか………」
「………………………」
「何でだろう何でかな?胸の奥がギューッとなって、こう、うーん?」
 自分でも良く分からない感覚を説明するのは難しい。
「………いいです、もう。聞いてる方が恥ずかしくなってきました」
 結局、すぐにエリーシャに止められた。
「コウキ君。そんな気持ちになる度に誰彼なく抱きついたりしていたら、いつかセクハラで訴えられますよ?」
「せ、せくはら?そんなつもりじゃなかったんだけど………」
「初犯が私でよかったですね。私は訴えなどしないので安心してください。
ですが、そんな風にむやみに抱きつくのは、以後禁止します」
「………禁止………善処します」
頷く僕に、エリーシャは笑顔で了承。が、即座に難しい表情になって、
「はぁ、それにしてもコウキ君は年上相手(ディド)だと硬直してしまうのに、年下相手(エリーシャ)になるとスキンシップ過多になるのですね……嬉しいような悔しいような………複雑です」
なんだか口の中でモゴモゴと一人言を呟いていらっしゃるエリーシャ。少し話しかけるのを躊躇ったが、
「それで、特訓って何するの?宇宙でやるの?」
「………そうでした。まずはコウキ君の武装を取りに行きましょう。修行も鍛錬も何もかも話はそれからで」
 スゥ、と二人を乗せた銀の槍が動き出す。地球に背を向け、月に顔を向けて。
「月に、(ウトナピシュテム)に戻ります」
灰一色の月面平野。荒涼とした乾いた大地。
嘆きの海と言われるその場所に、引くも進むも(まま)()らぬ哀れな人間の寄り合い所帯が一つ。
「あれが………ウトナピシュテム」
なんて頼りない灯り。
地球を失った迷子たちの避難所(アジール)
地球の大きさと比べて、何て卑小な棲み処。
地球の七大海六大陸の広大さと比べては、もはや穴倉同然。
悲しくなる。生まれ故郷(ちきゅう)の素晴らしさ暖かさ優しさを知らずに、あんな所で百年も人は細々と生きてきたなんて。
何よりも、此処には空が無い。青い空が、どこにもない。
星を包み、命を守り、命を育む青い空が無い………それが、とても、悲しかった。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう