アマギディオン 〜いつか見た空の青の下で〜(13/38)PDFで表示縦書き表示RDF


アマギディオン 〜いつか見た空の青の下で〜
作:東樹 九林



第一章 12


 最早何度目になるのか、目覚めた時には同じ天井。
「あれ?」
「お気づきになられましたか?」
 執事のゴルヘグが上体を起こした僕に気づき、声を掛ける。
「なんで、ぼく……?」
 エリーシャの槍に刺された筈なのに……ピンピンしている。絶対死んだと思ったのに。
「痛……」
 と、胸の真ん中に焼け付く様な痛み。しかし、もちろん風穴なんて開いていない。痛みからすると痣くらいは出来てそうだが、気絶するほどの重症とはほど遠いものだ。
「一応、手加減はしてくれたんだね」
 本当に刺し殺されるかと思っていただけに、ほっと一息をついて、傍らに立つエリーシャに笑い掛ける。
「………コウ、キ………くん」
 しかしエリーシャの顔は蒼白。まるで亡霊でもみたかのように僕を見ている。
硬直しているエリーシャを代弁するかのように、ゴルヘグが口を開く。
「いいえ、エリーシャ様は何一つ手加減などしておられませぬ。あの瞬間、コウキ様は確実に絶命しておられました」
「……………え?」
「エリーシャ様のシュベルトライテに胸を貫かれ、即ショック死。しかし流石はアンヴァリッドと申すべきでしょうか。心臓を完全に貫かれながらも再生するまでに僅か三十秒。伝説級に力のある不死者(アンデッド)でもここまで速やかな再生はなかなかできぬというのに」
「な、何をいって………」
 ゴルヘグの言葉の意味を理解できず呻く僕の手が、ジュクジュクとした液体に浸る。
「………え?」
 手が、血に浸っていた。
ベッドは大量の血を吸っていた。
まだ固まっていない赤い血が、部屋中を赤く汚していた。
その血は誰のものか?
考えずとも、気づいてしまう。
 胸の真ん中に痛み………傷なんて無いのに。
だけど血に汚れた服が、部屋が、証明していた。
「………コウキくん、そんな……わたし、避け…られると、思って、た………のに」
 信じられないと、力ない目で僕を見るエリーシャ。その手に握られた白銀の(シュベルトライテ)には………緋い液体。
 僕はエリーシャの槍に貫かれ、即死し………そして、即『再生』した。
やや後方で、ハスドルバルが立ち尽くしていた。
「君が、本当に能力まで喪失しているとは………な」
 血の飛沫で顔を汚したまま。
「自己再生能力は往時のまま。しかし……」
それは、死刑判決を受けたような、絶望の顔だった。
「復活したヤグチ・コウキに『剣聖』としての戦闘力は皆無………か」
 ハスドルバルは沈黙する、深い絶望に沈み。少年の姿のまま、老人の翳を滲ませて。












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