アマギディオン 〜いつか見た空の青の下で〜(12/38)PDFで表示縦書き表示RDF


アマギディオン 〜いつか見た空の青の下で〜
作:東樹 九林



第一章 11


「アマギディオン………聖戦(アマギディオン)………」
 
僕は何度も、何度も、その言葉を呟く。
「僕が………こんな、化け物と?」
 先ほどの光景を恐怖と共に思い出す。超常の力を持って全ての生命を殺戮するミゼリコルディア、たった一人でも数億の生命を殺せる『刺客』を。
「む、無理だよ!無茶だよ!ぼ、僕がこんな化け物に勝てる筈ないじゃないか!?」
「コウキ君が敗北すれば、最早誰もガモンハイドに太刀打ちできる存在はいなくなります。そして、戦力を失った月の世界は…再び地球と同じように滅ぼされるでしょう」
 淡々とした口調のエリーシャ。それは逆に暗い未来を想起させる。
「コウキ君だけが、最後の希望なんです」
「そんなこと………言われ、ても。僕にはそんな力なんて微塵もないよ!」
「力はあるんです、間違いなく。記憶喪失の所為で、その使い方を思い出せないだけ」
 なおも渋る僕に、エリーシャのキツイ視線が返される。
「ならば、身体で思い出させてあげます」
 髪を掻き揚げて、片手を伸ばす。
「シュベルトライテ!」
 号令一下、光と共にエリーシャの右手に大きな槍が出現し、構えた――僕に向けて。
 巨大な、エリーシャの身長より大きい槍。魔法を学んでいないものでも肌で気づくだろう、この槍の巨大な魔力が、大砲やミサイルよりも危険な神威兵器だということを。
「否が応でも、無理矢理にでも思い出させてあげます。あなたの力を」
 白銀に輝く鋭い槍の穂先が、僕に……僕の心臓に向けられる。その目には本物の殺気。
「本気で死線をくぐれば、力も発揮されるに違いありません」
「お、お嬢様〜?あんまり手荒なことはぁ〜お止しに〜〜」
 エリーシャの後ろでおろおろするネルさんは止めようとするが、
「今のコウちゃんの状態を知るにはそうするのが一番だろうね………やる価値はあるよ」
「は、はっど………?」
 ハスドルバルが、笑って凶行を促す。
許可を得たエリーシャは口元に笑みを浮かべて腰を落とした。
「避けるか、止めるか、弾くか――さもなくば死か」
「エリー…………シャ?」
 身が竦む、身が凍る、身が縮む。
「大丈夫ですよ、コウキ君の技なら私程度の突き、軽々と避けられるはずですから」
 ニコリとした笑みは却って恐怖心を増した。
「それに、万が一避けられなかったとしても、アンヴァリッドならすぐに再生しますから、心配はいりません」
 恐怖で固まり、逃げる事も出来ない僕はただジタバタと意味の無い行動をとる。
「殿方が取り乱すなんて、みっともないですよ」
 ダメだ、動けない、みっともなく声を上げ、助けを乞おうとして………
「ハッド……誰か………誰か、助け……!」
 ――――衝撃が胸を貫き、僕の意識は闇に落ちた。












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