〇月×日(晴)
今日は良い日だ。少なくともあんな事が起こるまでは、間違いなく良いこと尽くしだった。いつも遅刻ギリギリの俺が、今日に限って目覚めが良かった。食べる事の無い朝食も今日は食べた。天気も良いのでテンションも上がって来る。
「いってきま〜っす」
一人暮らしにも関わらず、大声でそう叫んで会社へ向かう。
そう言えば、今日は大事な会議があった事を思い出す。
(こんな大事な日に、こんなに調子が良いなんて……。こりゃ昇進も近いな……)
と、一人でニヤニヤしながら歩いているうちに会社に着いた。
自分のデスクに着くと、オレが密かに狙っているN子さんが声をかけてきた。
「どうしたの?今日はやけに早いじゃない」
「ふっふっふっ。今日は大事な会議があるのでね、こうして朝早くから出勤した訳だよN子君」
「ふ〜ん、まあ良いけどね。じゃあ頑張ってね」
………やはり今日は良い日だ。まさかこんな朝早くからN子さんと話しが出来るなんて―――
こうして一人喜びに浸っているうちに、いよいよ会議の時間が来た。
今思えば、この時から微妙な違和感はあったのだ。
「え〜、ではこの件について坂田君」
会議が始まって数十分。いよいよオレの出番が来た。
「はいッ!!」
と、勢い良く立ち上がった瞬間だった。オレの腹部に不具合が生じた。
「うッッッッ……」
思わず中腰姿勢で停止するオレ。無言の時間が会議室に流れる。
「どうした?坂田君」
上司がオレに声をかけてきた。しかしこの時のオレに、他人の言葉に反応するだけの余裕など無く、自分の体との相談を続ける。
――
…………ヤバい
我慢が出来ないと悟った。再び襲い来る便意。
さらに沈黙し続けてから、オレは出来るだけ腹部に負担をかけないようにこう言った。
「……ぁの……トイレに……行っても……良いでしょうか……」
……上司達に、驚きによる沈黙が流れる。
しかし次の瞬間、沈黙が笑いへと変わった。
「なんだ、君は小学校の先生に(トイレは授業の前に)と言われた事は無いのか?まあ良いだろう。早く行って来い」
「……すみません。……有難うございます。」
と言って会議室を出る。オレが廊下に出た途端、会議室の中は爆笑の渦だ。
結局、オレはトイレに間に合い、会議にも戻る事が出来た。しかし、次の日からオレのあだ名が[脱糞王]となったのは、皆さんも想像できるだろう。 |