挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

ハリネズミくんの冬

作者:ぐらんこ。
「おーしくら まーんじゅーう おーされーて なーくな」

「おーしくら まーんじゅーう おーされーて なーくな」

 ネズミくんとウサギくんが『おしくらまんじゅう』をしています。

「ああ、ぼく一緒いっしょにやりたいなあ……」

 ハリネズミくんはちいさくつぶやきました。

 ですが、そんなことはできないということをハリネズミくんはわかっていました。

 ハリネズミくんの体中からだじゅうえているとがった沢山たくさんはり

『おしくらまんじゅう』なんかをしたら友達ともだちを穴だらけにしてしまいます。

さむいなあ……。ネズミくんとウサギくんはあったかそうでいいなあ。
 しばらく一緒いっしょあそんではもらえなさそうだし、おうちにかえろう」

 ハリネズミくんはとぼとぼといえかえりました。

 ほんとはいえになんかかえりたくありませんでした。

 いえにいてもたいくつだったし……、さみしいおもいをすることもわかっていたからです。



「ママ! だっこして!」

「はいはい、こちらへいらっしゃい。
 はりはできるだけねかせてね。
 じゃないと、ママはぼうやのはりさってあなだらけになっちゃからね」

「うん! 大丈夫だいじょうぶ!」

 ハリネズミくんのおとうとがおかあさんにだっこしてもらって気持きもちよさそうです。
 とてもあったかそうです。

 ですがハリネズミくんは、おとうとちがってまれてからこれまで、だっこなんてしてもらったことがありませんでした。

 なぜなら、ハリネズミくんにはほか仲間なかま家族かぞくちがって、背中せなかだけじゃなく、おなかにも、つまりは体中からだじゅうはりえているのでした。

 それに、ちょっとドキドキするだけで体中からだじゅうはりがってしまうのです。

「ねえ、ママ?
 どうしておにいちゃんには、ぼくたちとちがって、おなかにもはりえているの?」

 ハリネズミくんのおとうときました。
 まだちいさいおとうとおな質問しつもん何度なんどもします。

 ハリネズミくんはそれをかれるのがいやでした。
 おとうとは、それをっているのか、ハリネズミくんは直接ちょくせつきません。
 でも、おかあさんには遠慮えんりょなくいてしまいます。

「おにいちゃんはね、特別とくべつなの。
 どんなにこわいおおきな動物どうぶつおそわれたって。
 どんなにするどきば動物どうぶつねらわれたって。
 体中からだじゅうはりまもってくれるのよ」

「ふーん。じゃあ、ぼくたちはこわ動物どうぶつおそわれたら、たべべられちゃうの?」

 ハリネズミくんのおとうと心配しんぱいそうにたずねました。
 するとおかあさんはわらっています。

大丈夫だいじょうぶよ。キュってまるまって、おなかえないようにすれば、こわ動物どうぶつは、はりこわくてげていくわ」

「そっかあ」

 ハリネズミくんのおとうとは、安心あんしんしたようにいました。
 そんなはなしいていると、いつもハリネズミくんはかなしくなります。

――まるまったら大丈夫だいじょうぶなんだったら、おなかはりなんてなくたっていいじゃないか

――さむふゆだれとも、くっつけなくってさみしいおもいをするくらいなら、ヤマネくんやリスくんみたいに冬眠とうみんでもしちゃえればよかったのに

 でも、そんなことをおもっても仕方しかたありません。
 ハリネズミくんのからだには、はり沢山たくさんあって、それに、冬眠とうみんなんてできないのです。

 ながくて、さみしい冬はまだまだつづきます。



 ハリネズミくんはやっぱりいえました。

 いえにいるとすこしは、あったかかったけど、おかあさんとからだをくっつけているおとうとていると、うらやましくてつまらなくなったからです。

 あるいていると、ヤマネくんのいええました。
 まどからなかをのぞくと、家族かぞくみんなでからだってねむっています。

 それをて、ハリネズミくんはまたかなしくなりました。

――ぼくはりは、ねむっているときだって、逆立さかだって、トゲトゲになるってってたな

――冬眠とうみんできたとしても、だれぼく一緒いっしょてなんてくれないんだ

――きっと、途中とちゅうさむくなってきてしまうだろう

 ハリネズミくんはとぼとぼとあるいていきます。

 やがて、ハリネズミくんはもりなかにあるちいさないずみにつきました。

 みずつめたそうでしたがとてもきれいです。
 ハリネズミくんはいずみなかのぞきこみました。

 んだみずは、なみひとつなく、ハリネズミくんのかおうつします。

「ああ、なんでかおだ。おなかだけじゃなくって顔中かおじゅうはりだらけだ。
 いっそこんな厄介やっかいはりなんてえてなくなればいいのに」

 ハリネズミくんが言うと、突然とつぜんいずみみずかがやはじめました。

 いずみからは女神様めがみさまあらわれました。

「ハリネズミくん。どうしたのですか?
 そんなかなしいかおをして」

 女神様めがみさまやさしくたずねねます。

 ハリネズミくんは、女神様めがみさまなら、なんとかしてくれるかもしれないとかんがえておもっておねがいしました。

ぼく……、体中からだじゅうに針があるのがいやなんです。
 普通ふつうのハリネズミに……。
 いっそのこと、はりのないハリネズミになりたいんです。
 女神様めがみさまちからでなんとかなりませんか?」

 それをいた女神様めがみさまいました。

はりがなくなったら、だれもあなたのことをハリネズミだってわからなくなりますよ」

「でもいいんです。ちょっとのあいだだけでいいですから」

「では、そのねがいをかなえてあげましょう。
 でも、それはよるになるまでのあいだだけです。
 よるになれば元通もとどおりりです」

 そういうと女神様めがみさまは、不思議ふしぎ呪文じゅもんとなえました。

 みるみるうちにハリネズミくんのからだはりえていきました。

 女神様めがみさまは、

「いいですか? はりえているのはよるになるまでのあいだだけですからね」

 とのこすと、いずみそこへとえていきました。



 ハリネズミくんはウキウキしていえむかいました。これでおかあさんに遠慮えんりょなくだっこしてもらえます。

 その途中とちゅうでウサギくんとネズミくんがあいかわらず『おしくらまんじゅう』をしています。

――折角せっかくだから、ぼくぜてもらおう

 そうおもってハリネズミくんはウサギくんたちに、こえをかけました。

「ねえ、ぼくれてよ」

 するとウサギくんが、不思議ふしぎそうなかおをしてききます。

きみだれだい?」

ぼくだよ。ハリネズミだよ」

 今度こんどは、ネズミくんがいます。

「うそだい! はりなんてえてないじゃないか!
 はりのないハリネズミはネズミだろ?
 だけど、ぼくとはちっともてやしない」

「ほんとうだよ! しんじてよ。
 女神様めがみさまちからはりを……」

 ハリネズミくんは説明せつめいしようとしましたが、

「なんだかへんやつだな。
 気味きみわるいから、あっちであそぼうよ」

 とって、ウサギくんたちってしまいました。

――そうか……、ぼくからだ……

――まったくちがったふうにみえちゃうんだ

――これなら、ひょっとしたらおかあさんにもぼくだってことを気付きづいいてもらえないかもしれない

 そうおもうとハリネズミくんはいえかえるのがこわくなりました。



 ハリネズミくんは、もりへとかえしました。
 せっかくはりくなったのに、『おしくらまんじゅう』もできないし、おかあさんにだっこしてもらえないのなら意味いみがありません。
 女神様めがみさまもともどしてもらおうとおもったのです。

「なんだ、めずらしい動物どうぶつだな。たこともない。
 だが、べてみる価値かちはありそうだ。
 ふゆだとうのにまるまるふとってべごたえがありそうだ」

 ハリネズミくんのまえにオオカミがちはだかりました。

 ハリネズミくんはこれまでも何度なんどもオオカミにおそわれそうになったことがありましたが、からだはりのおかげでべられることはありませんでした。
 でも、いまはそのからだまもってくれるはりはありません。

 ハリネズミくんは必死ひっしげようとしましたが、すぐにつかまってしまいました。

「そんなちいさなからだみじかあしげられるとおもったか?
 ネズミのようにすばしっこくもなければ、ウサギのようにぴょんぴょんはねたりもしない。こんなつかまえやすい動物どうぶつはじめてだ」

 そううと、オオカミはくちをあんぐりとあけて、するどいきばをむきしにして、ハリネズミくんをべようとしました。

 そのときです。

いたい!!」

 突然とつぜん、オオカミはハリネズミくんからはなしました。

「なんだ! さっきまでかったはずなのに。
 体中からだじゅうはりがあるじゃないか!
 それも全部ぜんぶとがっていて。
 おかしいなあ。ハリネズミなんかじゃなかったはずなのに。
 まあいい。ハリネズミだってべられるんだ。はりあたまからかじればいい」

 そううとオオカミは、ハリネズミくんをかじろうとしましたが……、

「なんだ! 顔中かおじゅうはりだらけじゃないか!
 これじゃあべられる場所ばしょなんてない。
 くやしいがあきらめるしかないのか」

 とって残念ざんねんそうなかおをしながらもりおくえていきました。

 ハリネズミくんがそら見上みあげると、そこにはつきかがやいていました。

 らないあいだよるになっていたようです。

 女神様めがみ不思議ふしぎちからがちょうどれたところでした。

 ハリネズミくんがいえかえろうとするとおかあさんがむかえにてくれました。

 ハリネズミくんは、おかあさんにさっきのオオカミのはなしをしました。
 それをいたおかあさんは、

「まあ、それはこわいわねえ。
 でもね、普通ふつうまるまったときかお一緒いっしょかくすものなのよ。
 あなたには必要ひつよういとおもっておしえてなかったわね」

 といました。

「そうなんだ……。じゃあ、やっぱりぼく体中からだじゅうはりって役立やくたたずなんだね」

 がっかりしてハリネズミくんがうと、おかあさんが、

「そんなことはないわよ。今日きょうはそのはりのおかげでたすかったじゃないの。
 それにね。つぎこわ動物どうぶつおそわれたときは、そのはなもちゃんとかくしなさいね」

 といながらハリネズミくんのはなをちょんとつつきました。

 そして、

「それから、あなたのにもね。そこにははりえてないんだから」

 とハリネズミくんのにぎりました。

 あったかいおかあさんのやさしいにぎられてハリネズミくんは、だけじゃなくて、からだ全体ぜんたいがぽかぽかするいい気持きもちになりました。
cont_access.php?citi_cont_id=289037266&s

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ