フライングソーサー214 (28/53)PDFで表示縦書き表示RDF


bjリーグのライジング福岡、参入初年度なのにプレイオフ進出おめでとうございます。
フライングソーサー214 
作:東樹 九林



こんなところで


 ズダァアン
 という重苦しい音が響いた。
 それは、ジャンプ中にデイビスのエルボーを喰らった宮瀬が、背中から固いコートに叩きつけられた音。
「ナオキィ!?」
 アタシはたまらず声を上げた。
 あの落ち方はヤバい。背中と、後頭部もぶつけたはずだ。 宮瀬は、コートに倒れたまま、ピクリとも動かない。

 審判の笛が鳴り、試合が止まる。

 もうブーイングどころの騒ぎじゃない。宮瀬を心配するどよめきと、TGNの暴行に対する怒声がステレオで体育館を震わせる。
 ドゥドゥが猛然と抗議…というよりもTGNに猛烈に罵声を浴びせる。(何語で言ってるかわかんないけど)
 TGN側は、殺気を消そうともせずドゥドゥにメンチを切り返す。喧嘩上等って態度だ。
 内芝とクラレンスがドゥドゥを羽交い絞めにして動きを止めてはいるが、一触即発の不穏な空気は拭い去れない。
 審判が、退場でもなんでもなく、単なるディフェンスファウル一つしかデイビスに課さなかった事が、雰囲気の悪化に拍車を掛けた。
 今度はクラレンスが審判に詰めよって抗議する。内柴は二人をなだめようと必死だ。
「わざとだろ、あの肘!………と、言ってるわ」
檜山さんがクラレンスの言葉を通訳してくれる。
「……間違いないわね。明らかに、ボールとは狙いがちがってたわ」
 前橋ときーちゃんが眉間にシワを作った。
「審判ぬるすぎだぜ」
 今にも乱闘が開始されそうな緊迫感が漂う。
 誰かが『カーン』とゴングを鳴らしたら途端に殴り合いが始まるだろう。
「…………ナオキ………」
 交通事故のような衝撃で、倒れた宮瀬は十秒以上経つのに、未だピクリとも動かない。脳震盪になってるのかもしれない。
倒れた宮瀬を見下して、介抱するでもなく助け起こすでもなく、ただ見下ろしていた南部が口を開く。
「ナオ、いつまで寝てんだよ」
「………………」
「こんなところでつまずいてる場合じゃねーんだろ?
 なら、さっさと起きろ」
 突き放した口調の南部の声が届いたのか、
「…………っ、クゥ…………」
 うめきながらも、ようやく宮瀬が上体を起こした。
 会場全体に安堵の溜め息が響く。
 乱闘寸前にヒートアップしていたドゥドゥも審判に詰め寄っていたクラレンスも、宮瀬の介抱に向かったお陰で、なんとか乱闘は回避された。あーやれやれ、と内柴が肩を揉む。
「………立てるか?」
「………立、て…ます、よ……」
 ヒジを食らった時に口の中を切ったのだろうか、口の端から流れる血を拭いつつ、宮瀬は立ち上がろうとして……
「ク……っ!?」
ふらついて、倒れかけた。明らかに無理をしているのがバレバレで、
「ダメだ。
休め。
血を止めてこい」
 南部は、ベンチを指差した。
「多すぎる血の気が抜けて、ちょうど良かっただろう。
…頭冷やしてこい」
 3Q開始五分、宮瀬がベンチに下げられる。
「ただし、怒りと悔しさまでは捨てるなよ」
 唾でも吐き捨てんばかりに表情を悔しさで歪めて。
「試合に戻ったら必ず復讐しろ。お前のやり方で」













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