フライングソーサー214 (27/53)PDFで表示縦書き表示RDF


フライングソーサー214 
作:東樹 九林



さーど


 休憩は終わり、試合が再開する。

 TGNの大男達が殺伐とした表情で会場入りした。
 TGN監督、平石も太った顔を憤怒の形相にして、後半開始を待つ。
「うわ、ありゃ絶対ハーフタイム中に監督に絞られたね」
「このまま何も出来ずに帰る気はないってツラだな」
 きーちゃんと折田が
「こわいこわい」と身を縮めた。

 前半とコートが変わって、FFSのオフェンスが向こう、ディフェンスがこっちになり、宮瀬はアタシ達に背を向けてプレイするようになる。
 デイビスの壁に阻まれて宮瀬の姿がほとんど隠れてた前半よりは宮瀬を見やすくなったけど……
(顔見えないのが、残念だなぁ……)
 宮瀬はどんな顔をしてプレイしているんだろうか?すごく気になる。

 小さな宮瀬のユニフォームに、214の背番号が踊る。

 小さな背中……178センチだから小さくはないはずなのに、周りが大きすぎて、相対的に小さく見えてしまう、宮瀬の背中。
 細い手足………一般的な太さはあるはずなのに、周りが丸太のようにプロレスラーのようにゴツい手足をしてるせいで、宮瀬の手足が今にも折れそうな小枝に見えてしまう。

 前半は宮瀬のスーパープレイに興奮して気付かなかった所が、ハーフタイム明けで一度気持ちをリセットしたことで見えるようになってくる。
 …………見えるようになると、途端に怖くなる。
(絶対、無理してるよ)
 そして、アタシの不安は的中した。

 でも、このquarterは宮瀬にとって苦難の始まりとなってしまった。
 TGNの平石監督は、宮瀬潰しに、仁義無き戦法を取った。
 ……プロの洗礼を浴びた、といってもいい。

 開始三十秒。
 宮瀬がスピードに乗る前に、体に腕が巻き付けられる。
 …せっかくの速攻のチャンスが、ファウルで潰された。

 1分12秒。
 抜かれそうになった所で、足を引っ掛ける。
 宮瀬の体がコートに打ち付けられる。 ファウルの笛が鳴るよりも速く、ブーイングが館内を響かせた。

 2分3秒。
 フリーに成りかけた宮瀬のユニフォームを掴んで、強引に止める。

 2分54秒。
デイビスの速攻を止めようとした宮瀬に、肩からぶつかって宮瀬を吹っ飛ばした。転倒はしなかったけど、スピードを削がれた。
 ファウルの笛は鳴らなかった。

 攻防、局面を構わず、TGNの各選手が宮瀬にぶちかましていく。
 ダンプカーのようなゴツい身体が宮瀬にぶつかってくる。 宮瀬が跳ぶ前に、シュート体勢を取る前に、徹底的に潰す。結果、宮瀬の身体が傷ついていく。

 宮瀬のリズムが崩れて、FFSのあらゆるプレイが狂いだす。
 パスが繋がらなくなって、無理なオフェンスを仕掛けたドゥドゥがボールを失う。
ボールが回ってこない内柴が立ち尽くす。
繋ぐべきか撃つべきか迷って南部のプレイが鈍る。
ゾーンディフェンスが崩れないせいでクラレンスがゴール下で動けなくなる。
 FFSの得点が止まり、TGNが連続で決めて、点差が縮まってきた。
「卑怯だな、あいつら」
 べンチからファウル専門の選手が宮瀬にぶちかましては交代していく。
 汚いファールの連続に、会場全体がブーイングに包まれる。

「………えげつねえ」
 折田がうめく。
「バスケってぬるいスポーツだと思ってたんだよ………今まではな」
 サッカー部の有田が、うめく。
 一発レッド→退場もあり得るサッカーと違い、バスケの場合ファウルが五つまでカウントされないと退場はない。(超悪質な場合は除く)
 それは裏を返すと、『退場さえしなければ、ファウルしてもいい』ということにもなる。
「考え直すわ、こりゃ、サッカーよりひでえ」
 そう言い捨てるのと、松山の肘が宮瀬の顔を直撃したのは同時だった。












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