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フライングソーサー214 
作:東樹 九林



巨人達の遊び場の小人


 ざわつく会場の中、コートに立つ十人のプレイヤー。
 二メートルを越える巨人達の遊び場に、一際小さく見える宮瀬。まるで、小人のように。
 たった数メートル先に、宮瀬がいる。
 ………プロの選手として!!


「これ………夢じゃないよね………?」
「は、はは、これ、ドッキリかなんかか……?プロだってぇ……うそだろ?」
 アタシ達は、絶句している。
 目の前でおこっていることが理解できない。
 常識が邪魔をして、理解が追い付かない。

 あの試合を共にして、宮瀬の活躍を、宮瀬のプレイを、宮瀬のスピードを、宮瀬の身体能力を、宮瀬の、ダンクを、見たアタシ達ですらこうなのだ、ましてや知らない人にとっては
「中坊がデビューだってぇ?おいおい冗談にもほどがあるぜ」
「どうせ客寄せパンダだろ」
「宮瀬………なおき?聞いたことあるか?」
「いや、しらね」
「十四歳!?いくらなんでもこどもすぎよ」
 会場内、観客の間には
「人気取りにしたって、もっとやり方ってもんがあんじゃねーか?」
「おいおい、バスケなめてんじゃねーぞ福岡さんよ!」
 前代未聞の事件に、期待よりも先に疑問のほうが立つ。
 TGN…富山ゴールデンナゲッツの選手達は、宮瀬を小馬鹿にするようにニヤニヤと笑う。
 TGN監督・平石修は頭の上で指をくるくる回し『本気か?』とアピールし、FFS…福岡フライングソーサーズ監督・スールシャールは満面の笑みで『本気だ』とアピールを返した。
 平石は肩を竦める。
 非難と懐疑と不審の声が重なる中、宮瀬は、

              不敵に、笑っていた。

 それを見たアタシの背筋が、ぞくぞくするほどに。
 アタシは手にした宮瀬のメガネを胸元に押さえる。
 不安と、期待で、いっぱいになった胸に。

 ざわつきが収まらないまま、試合開始の笛が鳴る。

 ジャンプボール。
 中央で審判の手から放られたボールは
「ぅっぺい!」
 ををっ、と重低音のどよめきが起こる。
 ほとんどジャンプすらせずにエゴロフが叩いて富山側のボールになった。
 試合が開始しても宮瀬はコートの中。
 スタメンとして、巨人達の遊び場に入り込む。
 ボールを持ったTGNポイントガード、デイビスはドリブルでボールを運ぶ、アタシ達の逆側のコートへ。
 宮瀬は、デイビスのディフェンスにつく。遠ざかる宮瀬。
 鬼頭よりも大きなデイビスの背中に隠れて、宮瀬がほとんど見えない。
 デイビスが、ハリウッド映画に出てくるギャングのようになんか叫んだ。意味は分からないけど、とりあえず汚い言葉だろうなあ、とだけは推測できる。
「こどものくるところじゃない…ですって」
 鈴を転がすような声にアタシは振り向く。
「同時通訳ありがとう、檜山さん」
「え、英語聞き取れるの!?」
「さすがタカチューNo.2の成績優秀者!」
「すげー、こっちもすげー!?」
 みんなの反響は予想外だったようで、檜山さんの顔がリンゴのように赤くなる。
 富山の選手たちがゆっくりとそれぞれのポジションに移動し、攻撃を組立て………
「―スリー!」
る、前に、宮瀬のディフェンスなんて無きが如く、頭越しにシュートを放つ。
 シュパっと小気味よく音を立てて、ボールはネットをすり抜けた。

 0―3

「小さすぎて視界に入らなかった…ですって」
「あいつムカつく」
「でも、あの身長差はキツイよ………」
 ―――高さ。
 富山が、自分たちの強み、高さを見せつける。
 宮瀬が178。デイビスは196。
 身長差は18センチ。
 鬼頭よりデカイ選手が、後田並のスピードで走るのだ。
 高さは、絶対。
 身長差は、あらゆる面で不利になる。 
 いくら宮瀬がダンクができるほどのジャンプ力があっても、それだけでは、プロになんて………
「通用するはず、ねーだろ!」
 『身長だけならプロ並み』の鬼頭が、声を荒げた。
「この俺でさえ、高校生の兄貴達とバスケすると苦戦するんだ!
 プロとやって………俺達中坊に何ができるってんだよ!?」












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