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フライングソーサー214 
作:東樹 九林



宮瀬直樹は平穏な日常を送りたい。


 返ってくる言葉はいつも同じ

    ――――信じられない

 返す言葉もまた、いつも同じ

    ――――俺も
        僕も、
        私も、信じられない

 相手の否定に同意を示しつつも、続く言葉に理解を求める。

    ――――けど、見たんだ。
    ――――この目で、
    ――――宮瀬の
    ――――NBAばりの
      
        ス ラ ム ダ ン ク を

 クラスマッチの後、何度、何十度、何百度、その問いと答えが繰り返されたのか。
 放課後までには、”60秒の宮瀬タイム”は学年全てに知れ渡っていた。

 様々な目撃証言を交えながら。

<証言1> 山口 春菜   aka はるちゃん
 「もおー、とにかくすごかったの!!
  ガーって、ギューンって、バーンって!!
  誰も宮瀬くんを止めらんないし、宮瀬くんは止まんないの!!」
 「0対6で勝ってたのに、最後のたった60秒で逆転負けしちゃったのよ!!
  そんでもって、最後はゴールに直接ガシャーンよ!!
  あたしもうびっくりしちゃったの!分かる!?アタシのこの感動!!」
               いや、わからん。

<証言2> 前橋 結
 「同じ日本人とは思えない動きだった」
 「リバウンドに入ろうとした瞬間に、もう宮瀬の身体が俺の前を飛んでて………
  信じられるか!?俺の目の高さの所に、アイツの腰が来てたんだぞ!!」
 「ダンクは鬼頭で見慣れてるつもりだったんだけど………本当のスラムダンクっていうのは、迫力が段違いなんだな」

<証言3> 折田 忠
 「別に信じらんちゃ、よかよか」
 「あれは、自分の目ん玉で見らんちゃ信じられんもんやけん」

<証言4> 後田 啓介
 「俺より速い奴を、初めて見た………」
 「全力で走っても、それでも引き離されたのは………あれが生まれて初めてだ」
 「ダンク?ああ………度肝を抜かれたよ!!」

<証言5> 吉川 みく   aka きーちゃん
 「いやー、いいもん見せてもらったよ」
 「TVでしかみれないような極上のスラムダンクをさ、おんなじコートに立って、たった数メートルの距離で見れたんだよ!!
  何万も金出して、スーパーコートサイドの席をゲットしても得られないくらいの大興奮だったね!!」

<証言6> 檜山 文子
 「推定ですけれども、90センチはジャンプしてました」
 「リングの高さが305センチ、
  宮瀬君の身長が178センチ、
  腕を伸ばして、推定230〜240センチ、
  リングよりもボール一個近く宮瀬君の手が高かったから、最高到達点が320センチほどと仮定します」
 「とても、中学生の………いえ、日本人のバネとは思えないほどのジャンプ力でした」

<証言7> 相羽 美夏
 「えっと、あの………その………なんか、すごかった」

<証言8> 猿渡 哲弥 (体育教師 試合時、審判)
 「――――俺も長年体育教師やってきたが」
 「あんな凄い生徒は見たことない。
  いや、日体大(日暮里体育大学)のバスケ部でも、あの身長であんなダンクが出来る奴は………いなかったな」
 「ダンク以外でも、あらゆるプレイが、天才的だった」

<証言9> 鬼頭 大樹
 「――――もう、忘れたい」


 目撃者、総数55人。
 各々、クラスメイトに、部活で先輩に後輩に、下校中に友達に、帰ってから親兄弟にその日の衝撃を伝え………

 翌日には、もう学校全体に宮瀬 直樹の名が轟いていた。

 宮瀬はクラスマッチの活躍などなかったかのように、それまで通りに、のんびりと、ぼんやりと地味ーに学校生活を送っている。

 しかし、宮瀬を見る目は変わった。
 しかし、宮瀬を取り巻く環境は変わった。

 今まで、宮瀬に興味を持たなかった奴らが、やたらと宮瀬に絡むようになってきた。
 宮瀬をアイドル視する奴らの登場である。
 当下校時には、先輩後輩問わず、好奇の視線に当てられ、

「ほら!ほらほら見て!!あれよあれ!あれが宮瀬くんよ!!」
「ええ!あの子が!?
 普通にしか見えないんだけど、てゆかイケてな〜い」
「そこがイイんじゃない!」

 ピーピーピーピー外野のうるさい事。
 
「宮瀬ーー!!頼む!バスケ部に入ってくれーー!!」
「お前の力で、俺たちを………全国に連れて行ってくれーー!!」

 休み時間毎の、前橋と後田によるバスケ部への勧誘はもはや一組の名物となった。


 周囲の激変に、宮瀬は、ふぅ、っと溜息一つ。

「みんな、早く忘れてくれないかなぁ………」












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