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スタイリッシュ武器屋 作者:弘松 涼
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8 戦術指南 初級編1

 とうとうアルビレオの丘に着いちまった。

 ごつごつした岩陰から顔だけのぞかせて見上げると、遥か上空にはワイバーン。
 全長10メートルはあるだろう超ド迫力の巨大翼竜だ。
 顔はまさしくドラゴン。
 全身は黒ずんだ紫色をしており、高速で旋回している。


「マジで来ちまったな」
「はい。急ぎましたので30分足らずで着きましたね」


 さわやかに言うなや、伊藤氏。
 それよか珍念、大丈夫か?
 散々走って息も絶え絶えなのに、とんでもない化け物を目の当たりにして戦意喪失って感じだ。

「やはり本日はレッドドラゴンを選択しなくてよかったようです。珍念様、どうぞ、これをお飲みください」

 伊藤氏はどこからか水筒を取り出して、コポコポと注いだ。

 私はハッとした。
 そうか!
 そうだよな。
 やっぱりそれしかないよな。

「も、もしかしてそれはパワーアップドリンクか? ドーピングして戦うって魂胆だろ。なんだよ、安心したぜ。私にもくれよ!」

「これはただのお水です。お水とは喉が潤い、呼吸が楽になり、そして声が通りやすくなる道具です」


 いや。
 それは分かっているけど。

「声って、もしかしてマジであれをやるのか?」

「はい。左様ですが」


 珍念の声が必要って、あれしかないじゃん。
 とんちという珍妙なスキルだ。

「ワイバーンに効くのかよ」

「ワイバーンはドラゴンのような高い知能を持っていません。大丈夫です」

「アホだから問答で騙せるっていうのか?」

「はい」

 私は言葉を失いかけたが、それでも食らいついた。

「つーか、そもそも人間の言葉が理解できるのかよ!」

「理解はできませんが、問題ございません」


 ダメだろーが!

 丘に到着する前に、私と珍念は軽く手ほどきを受けた。
 ひのきの棒タクティクス 初級編だそうだ。


「ヴァルナ様の攻撃力は24。
 ひのきの棒の破壊力を足しても25です。
 ワイバーンの防御力は125あります。
 通常の打撃ではまったく通用しません。
 初級コースでは、珍念様の活躍が大きなカギとなります。
 ヴァルナ様は、ひのきの棒対空迎撃奥義、回転空烈斬を使用していただきます」


「ま、待て!
 私は今一つ飲み込めていない。
 もう一回説明を頼む」


「どのあたりが不明確なのでしょうか?」


「全部だ。
 まったく意味不明だ。
 なんだよ。
 ひのきの棒対空迎撃奥義、回転空烈斬って」


「先ほどの練習では、うまくできていましたよ。ここまで飲み込みが早い方はなかなかいません。自信をお持ちください」


「いや、原理つーか、どうしてこれで勝てるんだよ! その理屈が分からん」


「必勝です。ヴァルナ様はブーメランという武器をご存知でしょうか?」


「あぁ、それは分かる。
 敵に投げつけて、また手元に戻ってくる何度もリサイクルのできる便利な道具だろ?」


「一般にはそのように言われております。
 ですが果たしてそうでしょうか?
 原理は翼の揚力の原理と、ジャイロスコープの右手の法則の組み合わせで説明できますが、風や敵の質量まで計算して手元に戻すことはかなりの高難度となります。
 300ゴールドもするブーメランを使用するよりも、5ゴールドのひのきの棒を使用した方がリーズナブルかつ、100%手元に戻ってきます。
 これでヴァルナ様は遠距離攻撃も可能になりました。
 たしかに魔道士や武道家もHPやMPを消耗して遠距離攻撃もできますし、弓矢を利用しても同様の効果を期待できますが、ひのきの棒を利用すればほとんどノーリスクで遠距離攻撃ができるのです。そして手元に戻ってくるので、壊れるまで何度でも活用できます」


「棒なんて、投げたらいってらっしゃいの片道切符じゃないか!」


「いえ、100%手元に戻ってきます」


「どうして?」


 伊藤氏は真上を指さす。
 そりゃ、そうさ。
 真上に投げたら100%落ちてくるさ。


 そうなんだ。
 私は棒を上空に高く投げろとだけ教わった。
 これが、ひのきの棒対空迎撃奥義、回転空烈斬らしい。

「ぶつけて倒すのか?」

「中級編では物理攻撃も利用しますが、現状のヴァルナ様の攻撃力ではほとんど効果がありません。投げるだけです。ぶつけないでください。投げたら勝ちが確定しますから」


 意味が分からん!
 だが伊藤氏はさわやかに続ける。


「丁度手頃なサイズのワイバーンがいますよ。
 全長8メートル35センチとやや小柄ですが、速度は256km/hでております」


 キーンとうなるワイバーン。
 やるしかないのか。

 果たして珍念のとんちと、ひのきの棒対空迎撃奥義、回転空烈斬というなんとも摩訶不思議な連携技で、レベル30の勇者パーティを軽く殲滅できる化け物と渡り合えるのだろうか。

 珍念は水をゴクリと飲んだ。

「ボクは大丈夫です。しくじりません。フィニッシュをお願いします」

「……お、おぅ」

 あの臆病者だった珍念が、戦闘態勢に入った。
 さすがの私も、珍念に続くしかなかった。
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