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スタイリッシュ武器屋 作者:弘松 涼
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65 激突! まさかの魔王戦6

 立ち上がったものの、やばい状況は変わらない。
 このまま真正面からやりあうと、100%勝ち目はない。

 激痛の走る胃を左手でおさえちまう。
 嫌な汗ばかり、とめどなく流れてくる。


 魔王の指先は青く光った。
 俺に向けたと同時に光は線となり、こちらに向かってきた。
 かわしたつもりだったが、左肩をかすめた。
 かすめただけで、肩から血が吹き上がった。
 後方の炸裂音で振り返る。
 魔王の放った光線が、地へ激突して大爆発したのか。
 その爆風で体が持ち上げられ、10メートル以上吹き飛ばされた。



 魔王の表情は涼しいままだ。
 奴にとっては、なでる程度の軽い一撃だったに違いない。
 だが、俺のHPがほとんど削りとられた。


 万事休す……か。



『エリック』


 ニートの腕輪……


『大丈夫だ。
 エリックにはニートタクティクスがある。
 戦わずして勝つのが、プロのニートだ!』


 ニートの腕輪は、またメシリとヒビが入った。
 俺が前へ進もうとすれば、必ずこの現象が起きる。
 きっとコロアは、なんらかの力でおさえられているに違いない。
 だから、これは必死の叫び。


 コロアが言った通り、俺には強力なニート三大奥義がある。

 寂しいニートが、一人部屋で籠城することにより大自然の声を聞き取れるようになった、バイオマインド奥義――壁ドン・床ドン。

 そして籠城を極めしニートが、巨大モンスターの体内に侵入して、同居することができる、憑依奥義パラサイト。

 そしてニートの苦しい私生活を乗り越えることにより奇跡的に開眼できる、疾風爆裂奥義風林火山だ。


 だが、果たしてこの状況下で、効果を発揮できるだろうか。
 ここは次元の狭間。力を貸してくれる微生物はいない。そしてパラサイトできる巨大モンスターも同様。さらにこの腹痛。今のままでは奥義、風林火山の発動は難しい。
 せめてこの激痛を和らげる方法はないのか。


 ひとつある!



 7時25分を切りぬける、唯一の方法が。


 俺は魔王に背を向けて走った。


「ふふ、逃げるの? 所詮クソニートのやることはどいつもこいつも同じね。ニート上がりのダメ社員がいつまで経っても会社に来ないから、家を訪ねたことがある。
 その時もそうだった。
 クソニートは、最後は尻尾を巻いて逃げるしかできない。
 ふふふ。あはははは」


 ああ。
 そうさ。
 ニートとは逃げる生き物。

 働くことからも、就職活動からも、職業訓練さえ、逃げる。
 そして戦うことからも。


 それでも走った。

 そうさ。
 ニーとは逃げることにより、追いつめられた精神的苦痛を和らげ、HPを回復させることができるのだ。


 それに――


「魔王。ニートは逃走のプロだぜ?
 てめぇのとろい足では追いつけないだろ」



 乗ってこい。魔王。


「ふん。ニートのクセに生意気ね。そんなこと言ったら、あなたの死期が更に早まっちゃうだけよ」


 その言葉、そのままそっくり返してやる。


 魔王は猛烈に走り寄ってくる。


 奴は知らねぇようだな。
 プロのニートは、なぜ働かないのか。
 俺は真のニート。
 ニートとは、働かずして勝つことができる。

 本当はそれだけではない。
 己のルールで働くことを封じてきた。
 あまりにも強大過ぎるニートの力をセーブするためにだ。


 それを今こそ解放してやる。


 俺は更に足を加速させる。
 腹痛は更に和らぐ。


 だが魔王の追随は、猛烈に速まる。

 距離にして、残り3メートル、2メートル、1メートル――


 魔王はすぐ後ろだ。


「クソニート。死になさい!」


 俺は振り返った。
 右手に握るひのきの棒をうならせる。


 すなわちこれはカウンター攻撃。
 俺の放つひのきの棒の一撃が、奴の顔面をとらえた。


 ひのきの棒が粉々に砕け散る。


「お、おのれ! クソニート!!」


「いいのか、魔王。逃げるのなら今のうちだぞ」


「何を言うか! あんたの雑魚い攻撃なんて、全く効いていないわよ!」



 ひのきの棒の一撃だ。
 それに引き替え奴の防御力は99999999999999999999999もある。
 カウンター状態でクリティカルヒットしたが、ノーダメージだったに違いない。



 実は俺は、逃げながら魔王を観察していた。

 以前から魔王の反応に疑問を感じていた。
 最初は単にブラック企業の社長と思っていたから、それほど疑問視することもないような理由なのだが、奴の反応は鈍すぎる。
 そして動きも単調。
 最初に細菌攻撃したときも、次に大切にしていた宝石を奪ったときも、奴は戦闘のプロを感じさせるアクションをしていない。
 単に力任せに怒りをあらわにしているだけだ。


 俺は様々な強敵を倒してきて、一定の経験を積んでいる。
 強い敵は単にパラメーターが高いだけではない。
 戦闘経験により、それなりの状況判断能力が備わっている。
 だが、奴はそれができていない。
 普段、力を封印していたせいなのか、それ以外の理由があるのかは知らないけど、紛れもなく戦闘の素人。


 そして伊藤さんは言っていた。
 勝つのは俺の方だと。



 俺はアイテムボックスから二本のひのきの棒を取り出した。
 そして回転しながら突撃していった。


 奥義、風林火山を併用した、ひのきの旋風棒アタックだ。


「な、何を小癪な! だけど突っ込んでくるなんて、無茶苦茶おバカね。所詮ニート、低知能生物。一撃で粉砕してあげるわ」


 大きく剣を構えている魔王。


 だが、分かっていないようだな。
 ひのきの棒は、すぐに折れるんだぜ?


 左右に握ったひのきの棒は2,3周回転するとバキボキに折れて霧状になる。
 これが俺の狙いだ。
 ひのきの棒の木片が生み出す霧が、魔王の視界を奪う。

 折れたと同時に伊藤さんから購入したアイテムボックスと連動したソケットから素早く取り出し、装備し直す。

 俺の回転攻撃は鋭さを増していく。


「み、見えない! クソニート! ど、どこよ!?」


 魔王はデタラメに虚空をブンブン斬りまくっているだけ。


「でも無駄よ。全く効いていないから! あたくしの防御力は99999999999999999999999あるんだからね。早くやめることね。ひのきの棒がなくなるわよ」


 俺は魔王の周りにまとわりつきながら、更に回転を速める。
 俺の体が巻き起こす竜巻がバチバチと放電を帯びる。
 高速回転によりひのきの棒に真空属性が付加され、防御力無視の貫通攻撃となった。


「いたっ、いたいじゃないか! なに、ちょっと痛いわよ! こら、やめろ!」



 左右のひのきの棒が、魔王の体力を削っていく。
 ここからだ。
 連鎖的な大打撃が始まる。
 3秒以内の連続攻撃は、連携とみなされる。
 爆発的なダメージが、魔王の体に刻まれていく。


 魔王の防御力は99999999999999999999999あるが、全く関係ない。
 俺の攻撃力715にひのきの棒の1が加わり716となる。
 更に二刀流で倍の1432。
 クリティカルが発動して、1ターンの総ダメージは2864。
 2ターン以降は20%の連携ダメージまで蓄積されていく。



1ターン目2,864ダメージ
2ターン目6,874ダメージ
3ターン目11,685ダメージ
4ターン目17,459ダメージ
5ターン目24,388ダメージ
6ターン目32,702ダメージ
7ターン目42,679ダメージ
8ターン目54,652ダメージ
9ターン目69,019ダメージ
10ターン目86,259ダメージ
11ターン目106,948ダメージ
12ターン目131,774ダメージ
13ターン目161,566ダメージ
14ターン目197,316ダメージ
15ターン目240,216ダメージ
16ターン目291,696ダメージ
17ターン目353,472ダメージ
18ターン目427,603ダメージ
19ターン目516,561ダメージ
20ターン目623,310ダメージ


 中略


80ターン目36,090,199,655ダメージ
81ターン目43,308,243,022ダメージ
82ターン目51,969,895,064ダメージ
83ターン目62,363,877,513ダメージ
84ターン目74,836,656,453ダメージ
85ターン目89,803,991,180ダメージ
86ターン目107,764,792,853ダメージ
87ターン目129,317,754,860ダメージ
88ターン目155,181,309,269ダメージ
89ターン目186,217,574,559ダメージ
90ターン目223,461,092,908ダメージ
91ターン目268,153,314,927ダメージ
92ターン目321,783,981,349ダメージ
93ターン目386,140,781,055ダメージ
94ターン目463,368,940,703ダメージ
95ターン目556,042,732,281ダメージ
96ターン目667,251,282,174ダメージ
97ターン目800,701,542,045ダメージ
98ターン目960,841,853,891ダメージ
99ターン目1,153,010,228,106ダメージ
100ターン目1,383,612,277,164ダメージ



「……クソニート!!! や、やめてぇ……。あたくしのHPはまだまだあるのよ。絶対にひのきの棒の方が先に尽きるわよ。だ、だから手を組もうよ」


「誰が組むか!」


「ニ、ニート様。いいの? あたくしは最強の魔王よ。もしかしたら第三形態とか第四形態とかあるかもしれないのよ?」


「あればあったで潰すだけだ!」



 それにこの物言い。恐らくない。きっとこれが最終形態だ。だから遠慮なくいかしてもらう。
 俺の攻撃はまだまだ続く。
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