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スタイリッシュ武器屋 作者:弘松 涼
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62 激突! まさかの魔王戦3

『エリック……。ダメだよ……』

 ニートの腕輪の表面は徐々に崩れていく。
 このままだと、この腕輪、本当に壊れてしまう。

 壊れたらどうなるのだろうか。
 壊れたくないから、これほどまでに俺を阻止しているのだろうか。


『エリック……。おいらがエリックを守る。だからおいらは……』


 こいつ、何を言っているのだ?
 また戯言か。


『確かに伊藤はすごいと思う。
 何手も先を読んでいるのは本当だろう。
 だけど、おいらしかエリックを救えないんだ……
 その為においらがニートの腕輪になった……
 おいらが死ぬと……』



 くぅ。
 あ、頭が。


 思わず後頭部をおさえてしまった。
 あの時と同じだ。
 天下一ニート選手権を思い出そうとしたら、必ずこの現象が起こる。


 だけど今回は、今まで起きていた一時的な頭痛とは違った。
 一瞬ではあったが、過去の記憶がよみがえったのだ。

 目の前に、恐ろしい情景がフラッシュバックされた。

 熱帯植物が生え茂る無人島。
 ここで俺達は容赦ないサバイバルをしていた。



 ――こ……これが……天下一ニート選手権……なのか……



 俺の手には銃がある。
 俺は誰かをかばって洞穴に隠れている。
 その子は怪我をしている。

 君は誰……?
 女の子のようだ。
 年齢は13、4歳くらいか。
 緑色の髪の毛、とび色の目に耳は尖っている。
 確か、ノームとかいう種族だ。

「エリック……。おいらはもうダメだ。だから先へ行って……」

 迷彩服を着た俺は、ノームの少女に向かって叫んでいる。

「何を言っている! コロア。頑張るんだ! ここで負けていいのか?世界中のニートを守れるのは俺達しかいない。あの過酷だったニートアカデミーを首席で卒業した俺達しか!」


 ニートアカデミーって何だ?
 うぅ。あ、頭が……



『ダメだよ。エリック……
 思い出しちゃダメだ。
 ゴメン。変な事を言ったのはおいらだったね。
 忘れてよ。
 そうしないとエリックが、腕輪になっちゃうから!』


 なんだと!?
 それはどういう意味だ。


 ニートの腕輪……
 こいつはノームだった。そして俺と共にニートアカデミーを卒業した、ニートタクティクスの使い手。
 名前はコロア。



 俺は勝負を焦っていたのかもしれない。
 少なくとも俺が腕輪になってしまうと聞かされて、動揺していないと言えば嘘になる。
 無意識のうちに事を急いでしまった。
 対魔王戦において優位に立てた筈だったのに、慎重に行動できなかった。伊藤さんは言った。油断すれば負ける、と。
 油断したわけではない。
 ただ。
 俺は動揺を隠しきれなかった。

 気が付いた時には、手に入れた『他力本願の勾玉』を魔王に向けてかざしていた。

「おい、魔王、これ、大切なもんだろ?」


 さっきまで舐めきった顔つきだった魔王の形相が一変した。


「クソニート。それをどこで手に入れた!?」


「マヌケな魔王だ。ニートと舐めるからこうなる。これがてめぇにとって大切なものくらいお見通しだ。ちなみに俺のレベルは75。これくらいの物を破壊するなんて造作もない。だから取引をしようぜ」


「ぐぬぬ……。やはりすべて伊藤か。クソニートに知恵などない。伊藤が密かに知恵を貸していたのだろ? 伊藤さえいなければ、お前に勝ち目などない」


 魔王が両手を前に向けた。
 攻撃魔法を放ってくるのか。

 咄嗟に俺は、他力本願の勾玉を前方に構えた。
 これは魔王にとって大切な物だ。だからこうすることで、容易に攻撃などできない。


 だが。
 俺の考えは甘かった。


 魔王の掌が光ったと同時に、周りの景色が一変した。
 上下左右、どこまでも白い空間。
 もしやここは異次元。

 目の前には魔王。
 更に、リディス王女、フロイダ、その他快適勇者ライフのスタッフ全員までいる。


 いないのは伊藤さんだけだった。


「ふふふ、クソニートのエリック君。あなたの人質はその宝石。で、私の人質はこのお姫様。私が本気を出せば、ここのいるすべての人間は一瞬で消滅する。
 さて交渉の続きをしましょうか?
 ひとつ忠告をしておくわ。あなたがその宝石を壊そうとした瞬間、お姫様とあなたはこの世から消え去る。
 あれ、何かな、その頬を伝っている汗、さっきまでの元気はどうしたのかな? どう、分かった? あなたは伊藤さえいなければ、ただのクズニートなのよ」

 
 絶体絶命の局面に立たされてしまった。

 
 だけど伊藤さんは言った。
 もっとも最悪の選択肢をしろ。
 それが勝利への道だと。



 ニートの腕輪のかすれ声が聞こえてきた。

『エリック……。おいらはお前が好きだ……。だから……死なないで』
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