挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スタイリッシュ武器屋 作者:弘松 涼
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

61/145

61 激突! まさかの魔王戦2

『ダメだよ! エリック。伊藤の言うことを聞いたら!』

 ニートの腕輪には、またミシリと亀裂が入り、表面の塗装がはがれていく。
 時折漏らす『痛いよ』という苦痛の悲鳴が、腕輪にとって凄惨な現象であることを如実に物語っている。

 だが伊藤さんは、間違ったことを言わない。

 伊藤さんの言葉の裏には、次のような意図が眠っていた。

 更に悪い条件下で戦え。
 さすれば、勝機が見える。

 魔王にとって最も有利な提案をすれば、必ず魔王は乗ってくる。



 俺は5秒欲しいと言った。
 その5秒間で、俺はひのきの棒を拾うと見せかけて、実は罠を仕掛けておいたのだ。

 
 魔王には、破壊したくない何かがあると睨んでいる。
 それは何か。


 異空間という提案に、奴は乗ってきた。
 それは奴にとって、好条件だったからだ。
 続いて奴がするだろう行動。
 それは破壊したくない何かを、安全なこのオフィスに隠す。俺を異空間に連れ込み、制御不能の凄まじいパワーを心置きなくぶちまかしても大丈夫なように。
 それほどまでに大切な宝を持っているということだ。

 あくまでこれは仮説。

 だから俺が提示した5秒。
 すなわちそれは、俺が戦闘の準備をするのではなく、俺が魔王へくれてやったサービスタイムだ。
 言っておくが俺はプロのニートだ。
 ニートは籠城のエキスパート。
 籠城に必要なのは、相手の情報を正確に察知する能力。つまり優れた観察力だ。ニートの俺は、如何なる些細なる動きだろうが見逃すわけがない。

 
 俺がひのきの棒に視線を落とした瞬間――時にして0.415秒。魔王はデスクの引き出しに何かを隠した。

 仮説は当たっていた。
 奴は大切な何かを持っている。

 それは何か。
 簡単だ。

 ニートの持つ優れた観察力により、それが何かを見破っている。
 魔王の首にかけていた和風の宝石が、今、姿を消している。

 
 そして俺にはニート奥義、風林火山がある。
 今の俺は風よりも速い。
 続いて2.157秒後、俺は奴のデスクから、そいつを盗み出した。


 そして俺の手には、奴が大切そうにデスクにしまった宝石がある。
 伊藤さんはそれを知っている。
 それを証拠に、伊藤さんは言った。

 ――俺が手加減をしてやったら、俺は負けるだろう、と。

 それは俺が宝石を盗み出したと同時に、だ。
 この人は、シャープなメガネ越しに俺の所為をすべて見ている。

 さすがだぜ、伊藤さん。
 この禍々しい宝石が勝利のカギを握っているって事だよな。俺は伊藤さんに目配せをした。小さく首を振ったように思えた。唇が少し動いたような気がした。そこから小さく「それは他力本願の勾玉です」と囁いたのが聞こえた。俺はニート。ニートは微生物の声をも聞き分けることができる。だから人間の発する声を聞き間違うことなんてありえない。


『……エリック。ダメだよ。エリック、痛いよ』
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ