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スタイリッシュ武器屋 作者:弘松 涼
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32 激突 善悪のタクティクス1

 アモンの軍団を一掃させて、地上へと戻りました。
 ダンさんは、涙ながらにあたしたちの手を取ってお礼を言いました。

「ノエルちゃん、シュバルツァー、本当にありがとう。ありがとう」

「いいよ。それよりこのオルゴール、あたしには貰えないよ」

 何度も返そうとしたのですが、どういう訳かダンさんはオルゴールを受け取ってくれません。

「それを見ると、娘を思い出すんだ……。
 もう終わっちまったけど、辛いんだ」

「そうですか。
 分かりました。
 あたしの宝物にします」

「すまねぇ。
 それより今度は俺がノエルちゃんの助っ人をする番だ。
 ノエルちゃんも恐ろしい強敵に挑むんだろ。
 アモン戦で俺もかなりレベルが上がった。
 ノエルちゃんの盾くらいは務まると思うぞ。
 力を貸すぜ!」


「え! 本当ですか?」


 シュバルツァーさんは腕を組んだまま何やら難しい顔をしています。

「おい、おっさん。
 やめておいた方がいいんじゃねぇのか?」

「それはどういう意味だ?
 俺が足手まといとでも言っているのか?」

「あぁ、そうだ。
 ノエルはこんな子だ。
 足手まといになるなんて口が裂けても言えないだろう。
 おっさんだけじゃねぇ。
 俺だって足でまといになるかもしれねぇ。
 ノエルよ。
 お前にとって俺たちが戦力になるのなら、喜んで力を貸すつもりだ。だが、みんなでおててを繋いで仲良く頑張ろうといった、学園祭のノリで考えたら駄目だぞ。俺たちがいたら、ノエルにとって有利か不利か、お前が得か損か、それだけで判断するんだ。
 厳しい言い方をするようだが、もし味方をかばいながら戦うハメになってみろ。
 リスクを背負うだけだ。
 だってお前が挑もうとしている奴は、アモンより強ぇんだろ?
 魔法を跳ね返せる野郎なら俺がいたら邪魔だし、一撃必殺系の攻撃ができる奴なら、おっさんはお前をかばって即死するぞ」


 シュバルツァーさんはハッキリ言って強いですし、頭も相当キレます。
 同行してくれたら本当に心強いです。

 シュバルツァーさんのスキル、ストーキングディスティネーションを発動させるためには、対象者の顔写真が必要です。
 ゴンザの写真さえあれば色々できそうですが、あいつは大の写真嫌いでした。家に忍び込んでも写真を手に入れることはできないでしょう。

 それにゴンザは、他力本願の勾玉を所持しており、他人のスキルが略奪できるそうです。
 伊藤さんは、ゴンザは魔王にもっとも近い存在になるかもしれないと言っていました。

 スキルを略奪するのには一定条件がいるようですが、もしシュバルツァーさんのストーカータクティクスを奪われたら、あたしに勝ち目があるのでしょうか?



 ゴンザとシュバルツァーさん、この二人を同時に相手するようなものです。




 とにかくゴンザについて知っている事、そしてこれからすべき事をすべて話しました。


「……なるほどな。
 伊藤先生は獄中。
 そして敵はスキル略奪系で、ラクライナの牢獄で張っているのか。
 下手に乗り込めば、スキルがぶん取られてしまうかもしれない。
 そうなったら一巻の終わりだ。
 それにしても妙だな。
 そいつ、もともと長きに渡って鑑定スキルしか持っていなかったんだろ?」


「そうです。そのスキルも盗んだと言っていました」


「ここに来てようやく俊敏性強化のスキルを手にした。
 そんなスキル略奪なんてすげぇ技ができたら、ドンドン自分を強化していくってのが普通だ。
 俺の勝手な憶測だが、奴は敢えて力を隠していたんじゃねぇのか?」

 
 「どうしてですか?」

「目立ちたくない、そういった心理があればこういう行動をとる。
 つまりマークされないように弱いふりをしていた。
 だが、来るべき時が来た。
 もしその仮定が正しければ、奴は一気にスキルを吸収していくだろう。
 これは、かなり危険な相手だな。
 じゃぁこうしよう。
 俺がいたら不利になると判断したら、俺は迷わず転移で消える。
 おっさんが邪魔になると分かれば、おっさんをどっかに転移させて、俺だけ戻ってくる。パーティ全員がヤバイと思えば、即、みんなを連れて逃走を選択する。
 それでいいか?」


 あ、賢い。
 そうすればゴンザの顔を知ることができるし、その時は一旦逃走しても今後どうとでもなる。


 だから「うん」と頷きました。

 

「よし、じゃぁとりあえず、街まで連れて行ってやる。俺につかまれ」



 *



 転移魔法で街の入り口まで連れて来てもらいました。

 あれ?

 門の付近に、カトリーヌがいる。
 誰か待っているのかな?
 腕にはリンゴの入った籠をぶら下げている。


「おーい、カトリーヌ!」

「……あ、ノエル。私、あなたを待っていたの」

「え、どうして?」

「あ、いや……。あの後心配でね。無事で何よりだよ。あの……。お腹空いたでしょ? 良かったら食べて」

 真っ赤に熟れたおいしそうなリンゴを、あたしに差し出してきました。

 どうしたんだろ?
 言葉を詰まらせて、なんかビクビクしているような気もします。

 
 でも何となく分かります。
 きっとこんな気づかい、今までのカトリーヌなら絶対にしないでしょう。
 もしかして勇気を奮って、あたしを待っていたのかな?


 ニッコリ笑って「そうなんだ。ありがとう!」と言ってあげました。

 あたしはカトリーヌからリンゴを受け取ると、ダンさんとシュバルツァーさんにも手渡してあげました。

 シュバルツァーさんはカトリーヌをじっと見つめています。
 あなたが気にかけていた九九も言えない少女は、こうやって思いやりのある女の子に成長したのです。

 だから小さな声でそっと教えてあげました。

「さっき言っていたストーカータクティクスで救われたの、この子だよ」


 きっと嬉しいのでしょう。
 シュバルツァーさんは、瞬きひとつせずにカトリーヌを見つめています。


 あたしは、かぷりとリンゴをかじりました。
 甘酸っぱい香りが、柔らかく漂います。

「おいしぃ」

「良かった」



「ノ、ノエル!
 食うんじゃねぇ!」


 え!?
 シュバルツァーさん?
 なに?
 どうしたの?


 カトリーヌも、真っ青になって「ど、どうしたんですか?」と震えているし。

 それに、もう飲み込んじゃったよ。
 ダンさんもおいしそうにかぶり付いています。


「俺には毒感知のスキルはない。
 だからこれに何が混入されているのか、まったく分からない。
 だがストーカータクティクスで培った眼力がある。
 後ろめたいことをするとき、人は必ず視線をそらす。
 野郎である俺に合わさないなら分かる。
 だがカトリーヌは誰とも合わさない。
 ノエルを喜ばせる為にやっているのに、ノエルの目をまったく見ていない。
 いや、見ることができない。
 つまりこれには何かを混入させているから。
 ノエル、おっさん、指を口の中に突っ込んで早く吐け!」


 あたしはびっくりしました。
 カトリーヌはあたしを助けてくれた。
 なのに、どうして?
 嘘でしょ?
 シュバルツァーさんが深読みし過ぎているだけなんしょ?



「ふはははは。
 よくやったぞ。
 さすが我が娘だ」

 この野太い声はゴンザ。
 門の後ろから、ゴンザが姿を見せた。


「ククク、そのリンゴには、強烈な痺れ薬が入っている。
 これでお前は身動きすらとれない。
 更にだ。
 あらかじめこの辺一帯にトランスファー・アンチフィールドという魔法を使用している。
 ボスクラスのモンスターがたまに使う、戦闘から転移魔法で逃走できないレアなヤツだ。
 お前が転移魔法を使えるようになっていても、ほんの数メートル先に移動するくらいしかできない。
 まぁ、ここまでしなくとも実力だけでお前をふん掴まえることなど容易なのだが、俺は美しく勝利する完璧主義者なのだ。
 俺には一切の死角など存在しない。
 ククク。もはや逃げる事は出来ないぞ!」


「……パパ。約束よ。
 言われた通り、ノエルにリンゴをあげたわ。
 だから、もう伊藤さんを苛めないで」


「あぁ、約束する。金輪際、伊藤には手を出さない」


 シュバルツァーさんは苦い顔をしている。


「くそぅ。
 なんてことだ。
 分かっていたつもりなのに……
 ノエルの先生を嵌めるなんて、敵は相当な手練れと分かっていたつもりなのに……
 慎重に動くとあれほど自分に言い聞かせたのに、完全に先手を取られてしまった」

 
 シュバルツァーさんの視線はカトリーヌに向く。

 
「どうでもいいが、カトリーヌよ。
 お前の親父の目、平然と嘘をつく糞野郎の目をしているぞ。嘘八百を並べ、適当にごまかし、利用できる奴はすべて利用できる極悪人の目だ。
 まさか自分の娘まで利用しようとはな……
 反吐が出る外道だ」


「え?
 パパ。
 ホントよね?
 絶対に伊藤さんを助けてくれるよね?」


「あぁ、本当さ。
 そんな初対面の若造と俺、どっちを信じる? 俺が今まで間違ったことを言った事があるか?
 ついさっきもそうだろ?
 お前は正しいことをしたいって言ってたよな。
 どこのバカに触発されたのか知らねぇが、そんなことをしたら負け組の人生を送るハメになるぞ!
 思い出してみろ。
 頑張っている奴や正しいことをする奴は、いつも損をしているだろ?
 ほら、損の代表選手、ノエルを見てみろ?
 いつも可哀そうろ? 哀れだろ?
 更にこうやって俺に命まで狙われなければならない。
 でも、もしノエルが悪になれたらどうだろう?
 俺と一緒に悪い事が出来て、ハッピーな毎日を過ごせる。
 悪こそ最強最高の世渡り術だ!
 違うか?」



「あ……
 はい……」


 シュバルツァーさんの肩が震えている。


「どうして悪ってのは、そんなに虫唾の走るクズばかりなんだ!
 まだ善悪の区別がつかない幼い子を、何故、不幸の谷へ突き落とすような真似をするのだ!」


「誰だ? お前。
 ははん。ノエルはエルフだから、育てれば高く売れると踏んだ下種の一人か。
 そうやって訳の分からん戯言をのたまわっているところから、かなり自分に自信があるとみた。くだらん見栄は怪我の元だぜ?」

「自信ではない。
 俺が発している言葉は、揺るぎない信念だ!」


「信念?
 ギャハハ。
 バカはそうやって自分を何か特別な者と思い込み、すぐに自惚れる。
 まぁ、いいさ。
 あんたはそれなりの実力があるのかもしれんが、悪い事はいわん。
 今の俺は最強だ。
 関わらない方が身のためだぞ。
 ノエルを見捨てて逃げるのなら、特別許してやる」


「彼女には、もし俺が邪魔になるなら逃げると言った。
 だが俺が必要とあらば、喜んで業火の中へでも飛び込んでやる、そう告げた、が」


「そうか。
 可哀そうにな。
 その愚かな見栄のせいで、お前は無残にも肉片の一つすら残らず四散するだろう。
 強ければ強い程、俺のタクティクスは豪快に火を噴くぜ。
 おめぇも俺に逆らってきたバカ共のように、牢獄にぶち込んでやる。
 50年、いや100年くらい入れてやろうか。
 いんや、折角だ。
 俺の新しい力を拝ましてやるよ!
 お前、良かったな。
 光栄に思えよ。
 覚醒したゴンザ様の栄えある最初の被験者になれるんだぞ」



「てめぇのつらは、この目に叩き込んだ。
 俺は地の果てまで追いかけるストーカーだ。
 狩るのは悪のみ。
 良かったな。
 俺の獲物に抜擢されたよ、あんた」
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