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スタイリッシュ武器屋 作者:弘松 涼
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139 真の勇者1

 勇者が裏で犯罪に手を染めていることは、偉い人はちゃんと知っている。
 いわばこのことは、常識なのである。

 なんたって勇者の生活を維持していくことは、困難を極めるのだ。


 そもそも冒険には金がかかる。
 そして勇者が助けるのは、いつもいつも力のない弱者ばかり。


 そりゃ、そうだろう。
 力のある者は、人の助けなど不要なのだから。


 だから勇者が助けるのは貧民街でなんとかその日暮らしをしている弱い村人だったり、痩せこけた貧しい村娘だったり、そんなリーチ寸前の者たちをカッコよく救い、何も告げずに去っていくのだ。


 それが真の勇者。


 時折、運よく襲われているお姫様と遭遇して救ったりするが、それで喜んではいけない。
 そもそもちゃんとした国のお姫様が、オークとかに襲われること自体がおかしいことである。
 確かにお金持ちの国の姫をヒットマンから警備して欲しいというニーズもあるだろうが、それらの発注率は極めて低いし、難易度が高い分、死ぬ可能性だって高い。

 だからその辺でわりと遭遇する襲われている姫は、大抵訳ありなのである。
 いざ助けてみたら亡国の姫だったりするわけで、当然の如く、金などない。
 お礼をしようにも、体で返すのが精いっぱいなのだ。

 例えどんなにお姫様が美人だろうが、そこで鼻の下を伸ばしてはならない。

 きっとその後、もっと大きなトラブルに巻き込まれるだろう。

 
 だから真の勇者は、村人やお姫様をかっこよくモンスターの群れから救う傍ら、裏で悪事を働いているのだ。

 助けたお姫様に向かって、髪をかきあげて歯をキランと光らせて礼など不要と告げながら、夜の街を徘徊しては「兄さん、いいブツあるよ~」てな具合で、危ない薬をばらないている。

 

 それが真の勇者の姿なのだ!



 だから打倒ヴァルナを誓う貴族の親たちは、腕利きのヒットマン(勇者)を雇い放題なのである。


「ククク。分かったか!? 勇者なんて所詮、悪よ」
「そうだな」



「ククク。どの勇者がいい?」
「こいつはどうだ?」


 一人の親が指さしたのは、勇者の中の勇者と名高い若き青年であった。
 彼の名は、ナルディアスという。

 
 ナルディアスといえば、ヴァルハード国の姫を救った英雄の中のスーパー英雄。

 
 されど普通に考えればすぐ分かることなのだが、そもそも一国の大切な姫をまとにも警備できない貧しい国なのである。

 礼などない。
 ある訳がない。
 あげたくともあげられない。

 それなのに救ったのだ。
 だって勇者だから。

 だから姫は、勇者ナルディアスにベタ惚れ。
 ヴァルハード国民はみんなナルディアスを尊敬している。


 されど礼は、ない。
 貧乏だから仕方ない。


 だからナルディアスも、こっそり犯罪に手を染めている。


 コンタクトを取るには、アイゼンハード5番街のダウンタウンの隅にある、エグラの酒場に12時過ぎにいけばいい。




 大抵、黒ずくめの重装備をしたまま、一人静かに飲んでいる。
 もちろん庶民は、この男をナルディアスとは知らない。
 知っているのは、一部の情報通な金持ちだけだ。


「ククク。俺に任せておけ」


 そう言って立ち上がったのは、大柄なひげ男だった。


 彼の名は、神田良蔵。
 アイゼンハード武器屋ストリートに神田商店という雑貨屋を開き、ひと山当てて貴族へ昇格したやり手の商人である。

 貴族の中には、こうやって成り上がった元商人も多い。

 その中でも神田商店は一際優れていた。

 神田商店と言えば、誰でも知っているアイゼンハード屈指の有名店である。
 神田は、商売の天才とまで噂されている。
 それほどまでに、ぼろ儲けしたのだ。


 それは、商売の相手を勇者に絞っていたからだ。


 彼は勇者にしか物を売らない。
 神田商店は、勇者の強い味方である。
 それが神田商会のポリシー。


 勇者は弱者のために頑張る。
 装備を充実させて、仲間を雇い、弱者を悪者から守る。
 言い換えれば、弱者のために働く。
 それが真の勇者の生き様。

 

 神田の言葉を借りて言い直せば、勇者は弱者へ金を使う。
 勇者は弱者のためだけに、金を使うのだ。
 勇者はあっちこっちから金を摘まんでは、弱者へ流す。
 それが真の勇者の生き様。


「ククク。だから勇者相手に商売すれば儲かるのさ。ククク。アハハハ!!!」


 勇者が裏で犯罪に手を染めていることは、偉い人はちゃんと知っている。
 いわばこのことは、常識なのである。

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