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スタイリッシュ武器屋 作者:弘松 涼
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131 王の懺悔2

 暗い地下の一室。
 王の話は静かに続いている。

 ヴェルザーク以外の者は、破壊神がどーとか、ビッチあーとか、そんなことを言われても実のところピンと来ていないが、それでも話に集中していた。
 あーん、あーん(やばやば)と言っていたいた当の本人は、10秒程度で集中力が切れて、姫菊が与えてくれたぺろぺろキャンディー「あーん、あーん(うまうま)」と言いながらペロペロしゃぶっている。




 時折水滴の音のする地底で、王は淡々と話し続けた。




 * * *(ここからアイゼンハード王の一人称になります)


 当時の私は貧しかった。
 親に捨てられ、泣いている私を拾ってくれたのはエルフの女性だった。

 清楚で気品があり、本当に美しい女性だった。
 そして誰よりも優しかった。
 彼女はいつもボロボロの布の服を着ていて、アイゼンハードのダウンタウンの借家に住んでいた。家賃を払うのだって、ギリギリの生活だというのに、この私を拾って育ててくれたのだ。

 まだ6歳だった私にできることは限られているが、家の手伝いから料理、洗濯、その他、なんだってやった。

「いつもありがとう、アル君」

 お礼を言うのは私のほうだ。
 だからお礼を言われるたびに、なんだかこそばゆい気持ちで苦笑いを浮かべていた。
 ちなみにアルとは私のことである。
 私が持っていたお守りに書かれていた名前が、そうだったから……



 ヴァーン・イグナツァー・アレックス21世。



 その名前を耳にするたびに、子供心なりに大層な名だな、まるで他人事のようにと笑いもした。
 姉はその名を明かしてはいけないと言ったが、私を捨てた親に興味はもちろん、未練すらなかった。両親が何者かわからないが、まったく構わない。

 私を育ててくれているこの優しいエルフの女性――ウィハさんが、実の家族だったらいいなと心から思っていた。


 そんなある日のことだった。


 雨漏りのするあばら家では――
 いつも忙しそうに編み物をしていたウィハさんだったが、手を休めて私の方を見て微笑んだ。

「アル君。今やっているお仕事が一段落したら、少し余裕ができるの。どこか行きたいところ、ある?」

 すぐ傍に座って草履を編んでいた私は、手を止めて首を横に振った。

「え? いいよ」

 この家が貧しいことは知っている。
 だからそんなこと気にしないでいいよ――そんな気持ちで笑いかけた。

「あはは、子供のくせに何心配しているのよ。大丈夫よ。実はね、特別のお給金が入ったの。だから……」

「え、でも……。遠慮しとくよ」

「ダメ! アル君はね……。実は……」

 え? 実は?? 何??

 含み言葉を浮かべたウィハさんを、私は食いつくように見入った。
 ウィハさんは私と目が合うと、どういう訳か慌てて目をそらせる。


「あ、えーとね。実は、アル君はね、絶対に立派になるって思っているんだ。だから、小さなときに無理してでもたくさんのことを勉強しておいたほうがいいと思うんだ」

「ふーん……」

 普通ならこのように褒められたり期待されたりすればうれしいものだけど、どうしてか、あまり心が困っているように思えなかった私は、簡単に嘆息を吐いただけだった。
 でもまぁ、このように言ってくれているんだ。
 好意を断るのもよくないか。


 ……うーん。どこがいいかな?


 そういえばアイゼンハードには有名な動物園があると聞く。


 なんでも見たこともない珍獣や猛獣を、腕利きの勇者たちがハンティングして、しつけているらしい。
 そして先日、どうも若い勇者様が、物凄い伝説のモンスターを檻に閉じ込めたとか。
 確か若い勇者は、アイテムボックスの無双者らしい――
 そしてその珍獣とは、史上最強の戦闘能力を秘めているらしい。
 アイテムボックスとは――手をかざして念じればアイテムを収納できるだけの仕組みの、まぁこの世界の住人なら誰でも持っているいわゆるアレなんだけど、そんなアイテムボックスなんかでどうやって無双できるのかも気になる。


 私が動物園に行きたいというと、ウィハさんはニッコリと笑ってうなずいてくれた。
 その日は早く寝て、翌朝、早く起きて、たくさんのパンをリュックに詰め込み動物園に向かった。



 この時の私は、すごくわくわくしていた。
 まさか、その動物園で見たのものが……あいつで……、そして私の人生を大きく狂わせていくとは、その時の私に夢にも思わなかった。
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