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スタイリッシュ武器屋 作者:弘松 涼
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120 ゆとり教育と野球1

 ――鬼頭が来たからには、もう大丈夫だ。殺人野球を止めようとする不届き者たちは、正義の鉄槌が下される。

 姫菊達を取り囲む大衆の多くは、そう信じている。
 壁の前後、そして建物の上にまで大衆は武器を構えている。
 敵には聖騎士のヴァルナや大僧侶珍念といった恐ろしい使い手がいるが、こちらには教育のプロがいるのだ!


 まだ鬼頭は敵か味方が分からないといった状態なのに、教育者=殺人野球を肯定する者といった図式は完全にできあがったいた。

 だから鬼頭を疑う者など、どこにもいなかった。

 鬼頭に追随するかのように、大衆の手には弓やボーガン、魔法の杖が握られている。中にはピストルやマシンガンといった近代兵器まである。
 この剣と魔法の世界に近代兵器がどうしてあるのだろうか。
 もし近代兵器があるのなら、剣や弓といった武器が廃れていくだろうに。


 なのに大衆の手には、弓や魔法の杖に混ざって、ワルサーp99が握られているのだ。


 その裏話を良く知る者が、先ほどから遠巻きから見つめる者がいた。
 それはスポーツ用品店にして球界のドンともつながる豪商のゴンザークである。


 彼は知っていた。
 ここ最近、異世界のチキューとかいう不思議な星から時折転生者がやってきているのを。
 本当はかなり昔からその奇妙な超常現象は起きていたのだが、ここ数年は若干動きが変わっていた。

 それ以前はブサメンニートが車ではねられたり、企業戦士が過労死したり、階段から落ちたりといった不慮の事故が多かったのだが、それを知った一部の文才達がひそかに異世界転生をテーマに小説にした。
 それは一大ブームとなり、次々とコミカライズやアニメにまでなった。
 それを見た少年少女、はたまた大人は、今度は自分が転生する番なのでは!? と考えるようになっていった。
 もしそんなことが起き、異世界転生したときに、圧倒的チート化できるように、化学兵器や近代兵器の作り方をあらかじめ学習する者まで現れたのだ。

 そしてしばらくして彼らの番もやってきたのだ。

 だから剣と魔法の世界なのに、ちらほらとではあるが近代兵器が散見できるようになっていった。

 さらに、これにはまだ続きがある。

 この超常現象にいち早く気付いたスポーツ用品店であり豪商のゴンザークは、転生者に近づきこっそりと武器を盗みレプリカの製造に成功したのだ。
 故にゴンザークの店には異世界チキューで生まれた化学兵器がズラリと並んでいるのだ。


 それと同様に、このことはひそかにではあるが、国の上層部にも知られていた。
 そして異世界チキューには高い文明があるということも。

 ピストルという筒を握れば、魔力など全くないものが、遠距離攻撃できてしまうのだ。その威力は半端ではない。本来長年修行をして手に入れるだろうスキルを、たった一瞬、ピストルという武器を手にすればいとも簡単に使えてしまうのだ。


 王は考えた。
 どうすれば、このアイゼンハードの地に、そのような高い技術を持った者達を輩出できるのかを。

 そして王は転生者の一人とコンタクトを取ることに成功した。

「急務のところすまぬ。どうか教えてくれないか?」

 長年ニートをやっていた青年は、鼻くそをほじりながら王の前に立っている。失礼とは思ったが、王には彼がそれなりの人格者には到底思えなかった。だが彼は、ピストルを作ることができるのだ。いったいどういう教育を受ければ、そのような高い技術を手に入れることができるのだろうか。

「そなた達はどういう勉強をしてきたのだ。どうすればそなたたちのようになれるのだ」


 髪の毛がボサボサの青年は、指についた鼻くそをピコンと飛ばして、こう言った。

「ぼくらが受けてきたのは、ゆとり教育だよ」

 ゆとり教育。
 なんだ、それは?
 その教育を施せば、剣と魔法など遥かに凌駕する、ピストルやサブマシンガンを生み出せる圧倒的な人材が輩出できるのか!?

 そうなのか!?
 そうとしか考えられない。

 王は青年からゆとり教育のイロハを根掘り葉掘りしつこく聞き出し、それを全62巻の教育マニュアルにまで落とし込み、アイゼンハード中の教育機関に徹底させた。


 ゆとり教育は、こうして施行されたのだ。
 だがその結果は悲惨なるものだった。
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