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スタイリッシュ武器屋 作者:弘松 涼
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119 教師

 ヴァルナと珍念。
 それはまさしく動と静。剛と柔。熱と氷。

 同じひのきの棒の使い手ではあるが、その動きはまるで両極端。一方はまるで全身に唸りの雄たけびのような熱き気迫を背負い血に飢えたかの如く獰猛な獅子に対して、もう一方は、爪を隠し急降下にて正確に獲物を捕える鋭い爪を隠し持った鷹。

 力にものを言わせ目の前のものをすべて叩き壊す剛剣使いと、音も立てず静かに最小限の動きで城を攻め落とす策士。


 そんな二人は姫菊とアークを守るように互いに互いの背中を預け、敵にひのきの棒を向けた。


 群れを成した大衆も、さすがに圧倒的な二人の気迫に押され喉をゴクリと鳴らした。


 その時だった。


 また新たなる者が、この騒ぎに駆け付けてきた。

 暑苦しい野次馬の中、やや浮いた格好である。
 ビッシッとしたスーツに黒いネクタイをした男。
 年齢は不詳。
 美しい顔立ちで若くも見えるが、40代と言えばそのように見えなくもない。
 やや紫がかった長い黒髪が風になびいている。

 
 大衆たちはその男を知っていた。
 だから大衆たちは、顔を見合わせて笑った。
 すごい味方がやってきたからだ。


 彼が加われば、大僧侶珍念と聖騎士ヴァルナがいても互角に、いや、もしかしてそれ以上に戦えるかもしれない。

 だってその男は、ヤンキー共が支配していた回復魔法専門学校を立て直した熱血教師。その噂はアイゼンハードに住む者なら誰でも知っている。水晶玉から流れる良い子の教育番組ではひっきりなしで彼の活躍が放映されていた。

 どういう訳か、ヴァルナと珍念。どちらも正義に属する者達ではあるのに、神聖なる殺人野球に反対する非国民をかばった。
 それは重大な犯罪である。
 そう学校で習った。

 この世界の教育者は、殺人野球は正しいと教えている。

 この世界を憂う有名ミュージシャン達は、こぞって殺人野球を美化する詩を歌に込める。
 政治家や哲学者、はたまた牧師や将軍といったこの世界の指導者と呼ばれる者たちは、殺人野球こそこの世を幸福へと導く正しき法だと説く。


 そんな時代――


 目の前にいるこの男は、教育のプロだ。
 教育番組では毎日のように褒めちぎられていた。
 だから大衆のひとりが叫んだ。


「鬼頭先生! 私はあなたを尊敬しています。あなたはたったお一人で、あの荒れ狂っていた3年C組を鎮圧したとお聞きします。あなたは偉大なる教育者。あいつらは殺さずの野球を広める非国民です! 聖なる教育の名の下に裁きの鉄槌を!!」



 鬼頭こと、暗黒鬼神ヴァルザークは、熱烈になにか一生懸命ほざいている大衆に軽く視線をなげかけると、得物を取り出そうとゆっくりスーツの裏に手を忍ばせた。


「私はあまり手加減ができない性質タチだが、よいのか?」


 大衆はにんまり笑う。――やったぞ! 鬼頭先生が力を貸してくださる。これであの非国民とそれをかばおうとする猪口才なひのきの棒戦士らは、泣き叫ぶこととなるだろう。奴らの悲壮感漂う顔を見る為に俺達は生まれてきたのだ。そう学校で習った。これが正しい者の崇高なる生き方なのだ。そう義務教育で無償提供される教科書に書いてあるのだ。――そう呟きながら、鬼頭を加勢するために弓を構える者や、ゲヘゲヘと涎を垂らしながら醜悪な笑みを浮かべてカメラを握りシャッターチャンスを狙う者まで現れた。

 鬼頭はもう一度、静かな口調で念をおす。

「本当に良いのか?」

「もちろんです。はやくあの非国民たちを血祭に上げてください!」
「そうか……」
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