ジリリリリリリリ・・・・・・──突然、目覚まし時計の音が部屋中に鳴り響いた。
少年は、音を頼りに、ベッドから手を伸ばして目覚ましを止めた。そしてそのまま、その時計を手に取り、目の前に持って来る。
時刻は、午前2時を指していた。
(時間か)
少年は時計を元の位置に戻すと、ベッドから出て着替えを始めた。
服装は、上下黒の装束。結○師の主人公が着ているのと同様の服装だと思って頂ければ良い。
「ようし、行くか!」
少年は気合を入れ、部屋の窓を開けて飛び出して行った。
少年の名は、雛森 一護。陰陽師・安倍 清明の血を引く霊媒師である。
そんな彼が向かった先は、ある墓地に隣接した公園である。
この公園には、夜中になると妙な事が起こると言う噂さがある。
ある人物は、人霊が出ると言ったり、またある人物は、妖怪を見たと言う。どちらにしても、迷惑な事だ。
(あそこか!?)
と、一護は瓦の屋根を蹴って飛び上がり、その噂の公園内に着地した。
(見た感じは普通の公園だ。しかし、霊気を少し感じる・・・)
と、辺りを見渡す一護。
「ピギャーッ!」
突然の鳴き声と共に、一護の背中から血が吹き出し、激痛が彼を襲った。
(何かいる!)
一護は警戒し、辺りを見回す。
しかし、怪しい者は見付からない。
(何処だっ、何処から来る!?)
と、その時、背中を何者かに押され、一護は吹っ飛んだ。
「うわっ!」
ドンッ!──腹這いに着地する一護。
「痛っ、誰だっ!?」
一護は立ち上がり、振り返った。
すると、明らかに人では無い者が、姿を現して一護に語り掛けて来た。
「貴様、普通の人間では無いな。あれだけの攻撃で立っていられるとは、霊力の高い魂を持つ者と見た」
「何だお前?霊じゃねえな。何者だ?」
「お前が知る必要は無い。お前は此処で死ぬんだからな」
と、黒い影は言った。
「ほぉ。言っておくが、俺は霊媒師だ。そう簡単に・・・」
一護がそう言い掛けると、黒い影は妨げる様に口を開いた。
「霊媒師など屁でも無い!」
黒い影はそう言うと、目にも留まらぬスピードで一護に襲い掛かった。
(消えたっ!?)
その瞬間、一護の体が真上に吹っ飛んだ。
「ふっふっふっ、視え無いだろ?」
その声と共に、一護の体は突然急降下。
「ぬぁっ!?」
ズシンッ!──一護は瞬く間に地面に激突した。
「こいつでトドメだ!」
と、黒い影が上空に現れ、急降下した。
一護は死を覚悟した。
(俺、死ぬのか・・・)
と、その時、接近して来る黒い影に向かって、明らかに人の物では無いシマウマ模様の腕が何処からともなく伸びて来た。
ボグッ!──シマウマ模様の腕は、黒い影を吹っ飛ばし、伸びて来た方向に戻って行った。
「なっ、何者だ!?」
体勢を立て直した黒い影は、腕の方を見ながらそう発した。
「きっ、貴様はっ!?」
黒い影は、目の前の人物に驚いた。
その人物は、ピンクの髪にトゲの付いた金属のブラジャー、シマウマ模様のパンツを履いた少女だった。
(何だあいつ?)
一護はそう思った。
すると、少女が一護に歩み寄った。
「貴様、並の人間じゃないな。普通普通の人間なら、とっくに死んでいる」
「俺は霊能力者だからな。霊的な攻撃には強いんだ」
「バカ者!
何故霊能力者ごときがあいつと戦おうとするっ!?まともにやって勝てる訳が無いだろ!
あいつはただの霊じゃない!悪魔だ!たかが霊能力者風情が悪魔に勝てる筈が無い!
今回は奇跡的に助かったが、もう二度とあんな真似はしない事だ!」
そう言うと、少女の体が突然吹っ飛んだ。
ドスッ!──少女は腹這いに着地。
「よそ見をしているからこうなるのだ」
と、黒い影。
(わ、私とした事が、背後への気配りを怠るなんて・・・)
「お前、大丈夫か?」
そう訊いたのは、蹌踉めきながら少女に歩み寄る一護だった。
「私なら大丈夫だ。そんな事より、動けるなら、今の内に、逃げろ・・・」
少女はそう言って立ち上がったが、直ぐに脱力して倒れ掛かった。
一護はそんな少女を抱き抱えた。
「阿呆、大丈夫なんかじゃねえだろ」
「はっ、放せ!貴様もやられるぞ!?」
と、少女はもがく。
「馬鹿野郎!目の前で人がやられてるってのに放っておけるかよ!?」
「ならば、二人共この俺に魂魄をよこせ」
そう言って、影が二人の目の前に現れた。
「だ、誰が貴様なんぞに」
と、冷や汗を垂らす少女。
「おい、人間。お前に選択権を与えよう。自分の命と引き替えにそいつを逃がすか、そいつを置いて逃げるか、好きな方を選べ」
その発言に、一護は少女を手放した。
「ほう、逃げる方を選ぶか」
「・・・・・・俺は・・・・・・」
「ん?」
「俺は・・・・・・逃げも隠れもしねぇ!」
「貴様、莫迦か!?私を置いてとっと逃げろ!」
「五月蝿え!こいつは俺が倒す!」
「人間がこの俺を倒すだと?
たわけ!人間如きにこの俺がやられる訳が無い!」
影はそう言うと、一護に襲い掛かった。
すると、少女は慌てて一護を突き飛ばした。
「うっ!」
影が体当たりし、少女は吹き飛んでベンチを破壊した。
「お前も殺られたいか。ならば殺してやろう」
影はそう言って、襲い掛かろうとした。
が、金縛りの様な現象が彼の動きを封じた。
「なっ、何だっ!?」
「白依霊呪縛だ」
一護はそう言って、影を囲む観音経を指差した。
「くっ、人間の癖にこしゃくな!」
影は霊力をあげ、観音経を破壊した。
(しまったっ、観音経が!)
と、焦る一護。
「ふっ、貴様はもう終わりだ!」
影はそう言って、一護に歩み寄った。
「待て、貴様の相手はこの私だ」
少女はそう言い、影に襲い掛かる。
グサッ!──少女の尖った五本の爪が影に突き刺さる。
「そんなもので俺を殺せると思うなよ?」
「何っ!?」
その瞬間、影の霊力が上がり、少女は吹き飛ばされた。
ドサッ!──少女は地面に叩き付けられた。
「おい!」
一護は慌てて駆け寄り、少女に声を掛けた。
「お前、大丈夫かっ!?」
その問いに、少女は立ち上がろうとするが、彼女に立つ力は残されていなかった。
「くっ・・・私は・・・もう・・・駄目だ・・・。お前だけでも、逃げるのだ」
「無理だ!俺には怪我をしている奴を置いて逃げるなんて、そんな事出来ない!」
「莫迦者!貴様が奴と戦って勝てぬ事は先刻承知だろ!?」
「・・・・・・」
沈黙する一護。
「貴様、奴を倒したいか?」
「えっ、あるのか!?奴を倒す方法が!?」
「ああ、一つだけある・・・否、正確には一つしか無い」
「どうするんだ、一体?」
その問いに、少女は数秒間を空け、こう言った。
「私と、融合するのだ」
「ゆ、融合って、どうやって?」
「説明している暇は無い。わ、わた、私と、き、き、キッスをするのだ」
少女はそう言うと、頬を真っ赤に染めあげた。
「きっ、キッスって、何言ってんだよこんな時にっ!?」
「良いから早くやれ!やられたいのかっ!?」
「わ、解った・・・」
一護は、少女に顔をゆっくり近付ける。
「ま、待て。お主の名を聞いておこう。
私は未鬼だ」
「そうか。
俺は、雛森 一護だ。お互い最後の挨拶にならない事を祈ろう」
一護はそう言うと、唇を重ねた。
その瞬間、二人の体が光りに包まれ、宙に浮き上がり、一つになった。
そして、その光りはゆっくり降り、徐々にそれが消えて行く。
「俺、参上!」
その言葉と共に、光りが消え去り、シマウマ模様の腕、鎧を着た翼の生えた男が現れた。
「なっ、何だとっ!?
鬼が、人間と、契約しやがった!」
(何だこれは?)
翼の男は、自分の姿を見るとそう思った。
「この姿は鬼の力を纏った物だ。お前は私と契約した事で、鬼の力を得たのだ。今の貴様なら、奴に勝てるだろう」
と、未鬼の声が頭に響く。
「な、何だか分かんねえが、勝てるって訳だなっ!?やってやるぜ!」
そう言って、翼の男は影に襲い掛かった。
「しまったっ!?」
影は慌てて避けようとするが、間に合わなかった。
「喰らえ!」
グサッ!──男の鋭く尖った爪が影に突き刺さる。
影は怯んだ。
「トドメだ!」
男は手を引き、グーにして殴った。
ズボッ!──男の拳が影を貫通した。
「ぐはっ!」
影は脱力した。
「死ぬ前に俺の名を教えておいてやるよ。
俺の名は、雛森 一護だ」
一護がそう言うと、影はボーンッと爆裂霧散した。
ピカーン──突然、一護の鎧が発光し、分離して未鬼の姿になった。
「一護と言ったか?
貴様、なかなかやるな」
「ああ、必死だったからな。それより、この首輪は何だ?」
一護はそう言って、自分の首に付いている首輪を外そうとした。
が、しかし、その首輪は外れない。
「無駄だ。それは私との契約の明かし。外す事は不可能だ」
「ケイヤク?何だそれ?」
「契約。簡単に言えば魔物を退治する為の儀式だ」
「魔物退治?」
「ああ、そうだ。先程貴様が倒したのも魔物の一種だ。
奴らは、魔界から現世にやって来ては悪さをする。私はそんな奴らを退治する為に現世に来た訳だが、どうもうまく力が出なくてな。そこで貴様と契約させて貰った、と言う訳だ。これからも私と共に魔物退治をして貰うぞ」
「嫌だね」
「ほぅ、逆らう気か?」
未鬼がそう言うと、一護の首を首輪がきつく絞めた。
「ぐっ・・・ぐるじぃ」
「残念だが、それを付けた者は、御主人に忠誠を誓わなければならない」
「御主人って、てめぇか?」
「そうだが?」
「ふざけんな!てめぇさっさと解約しやがれ!」
「無理だと言ったろ?」
兎に角だ──と、未鬼は続ける。
「貴様は私に忠誠を誓うのだ」
「断る!」
ギュッ!──更にきつく絞まる。
(くっ、こうなったらアイツを殺して・・・)
一護は未鬼に襲い掛かろうとした。
すると、突然、身体中にビリビリと電気が流れ出した。
「うわああああっ!」
悲鳴をあげる一護。
「因みに、契約者は主人を襲う事は出来ない」
「それを早く言え!」
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