主人公がおっさんである事について
この小説はあくまでも私の考えであり、完璧な答えを導き出す物ではありません。あくまでも個人的な物なので、皆さんのご意見は聞き入れますが「絶対に違う!」と言う完全否定はお勧めしません。
この小説が皆さんの考えるきっかけとなれば、幸いです。
私の馴染みのユーザー、テイクと言う方が書いている小説、『とある中堅冒険者の生活』があります。読んでおられない方に、小説の内容をざっと説明いたしますと、チートを持たない30代半ばのおっさんが冒険者として生活をすると言う話である。他にもおっさんを主人公に扱った小説だと、最近では安登先生の遅咲き冒険者と言う作品が有名であり、この小説でもおっさんが主人公である。
他にもおっさんを主人公にしたファンタジー作品やSF作品など、なろうには少なからずそう言った作品を書く人が居り、同時にそう言った作品を支持する読者層が存在すると言う事である。
今回はそう言った『おっさんを主人公とした小説』について考察していきます。
おっさんを主人公にした小説、と言いましたが、一言におっさんと言っても色々とあると思います。
高校生の主人公がおっさんになって転生する話も所謂おっさんを主人公とした小説と言えなくもないですし、若返ったおっさんが10代くらいになって転生するのもおっさん主人公の小説だと言えなくもないです。
これについては一つ、兼ねてから思う事があります。それはおっさん主人公の小説が読みたい人達はおっさん的な精神の主人公の小説を読みたいと思うんです。おっさんを主人公とした時の強みと言うのは、やはりおっさんならではの精神だと思うんです。
主人公が若者の場合、若者ならではの未来にかける情熱、それによる無謀にも見える行動が強みだと思うのです。なにせ、若いからこその無茶な行動が物語として良く出来ていると思うんです。逆に主人公をおっさんにした場合は堅実さとか謙虚さとかが主にして出て来ると思います。彼らは多くの経験を積んで、なおかつ自分達が冒険者などで活躍出来る時間も大体分かっている訳ですから、謙虚さとか堅実な精神が出て来ると思います。
分かりやすく例を挙げますと、冒険者の主人公が竜退治を頼まれたとして若者とおっさんだとどう違って来るかを簡単にあげます。ちなみに、この主人公はどちらも命がけで戦えば、竜をぎりぎりで倒せると仮定します。
まず、若者が主人公の場合はまず、竜退治をした時の名誉を考えます。そしてそれを夢見つつ、竜を退治する仲間を集めて、竜を退治しようとします。そして主人公は多くの仲間と共に竜と対峙して、なんとか命からがら倒します。そこには若者の無謀さと無鉄砲さしかありません。
次に、おっさんが主人公の場合は竜を退治する為に安全な道を探ります。準備は完全に行いますし、仲間に対してもこれからの危険性について説明しながらそれでも仲間を集めます。そして主人公は多くの仲間と共に竜と対峙して、自分と仲間の身体とかを気遣いながら竜を倒します。そこにはおっさんならではの謙虚さと堅実さがあります。
若者だろうと、おっさんだろうと、一つの仕事に拘ると言うのはそれだけそれに愛着が湧いていると言う事です。未来や希望を、そこに導き出しています。
しかし若者は未来と希望だけを見て足元を見ておらず、おっさんの場合は未来と希望も大切ですが足元も見ています。要は、自分がどう言った立場なのか理解している、していないの違いが若者主人公とおっさん主人公の違いだと思います。
今までのケースだと、冒険者と言う、ファンタジーやSFで良くある話をしてきました。けれども、別にそれだけが主人公ではありません。刀鍛冶や錬金術師などの生産職、それに魔法使いなどもあります。若者は色々な事を想像して新しい事に積極的にチャレンジするハングリー精神で望みますが、おっさんは自分の過去の経験からどうすれば良いのかと言う事を学びます。
若者とおっさん。
ここまでの話だと、おっさんの方が良く見えますが、長所だけあるのではありません。おっさん主人公の場合の小説には色々と短所もあります。
まず1つに、なかなか新しい事を踏み出さない事。謙虚さとかの疑ってみる精神は立派だと思いますが、新しい事にチャレンジしないと小説として面白くありませんからね。それにおっさん主人公だと、『奴隷を助ける』とか『腐敗した政治を暴く』と言った大きなイベントとかに尻込みして、「ちょっと考える時間をくれ……」とか言って話が進みづらいです。
次に、おっさんは溜め息を吐きまくる傾向があるのも嫌ですね。おっさんは疲れていますので、要所要所で作者が「ふぅ……」とか「はぁ……」とか溜め息を吐かせる事が多いですが、そんなネガティブばかりだと読者も気が滅入るでしょう。
おっさん主人公。
友達に言わせると、「精神がおっさんなのは認めるが、身体だけがおっさんなのは認めない」と言っていました。これは、おっさんの魅力がその確かな謙虚さや堅実さだと言う事でしょう。
以上から考察すると、『おっさん主人公』は『精神的に色々と確かに考える所が素晴らしい』と言う事なのでしょう。
皆さんもおっさん主人公を読む時は、そう言った謙虚さや堅実さがどれだけ魅力的かを感じつつ読む事をお勧めします。
今回、話に出させていただきましたお二方の小説のURLを載せさせていただきます。
テイク先生作『とある中堅冒険者の生活』
http://ncode.syosetu.com/n0581ci/
安登恵一先生作『遅咲き冒険者』
http://ncode.syosetu.com/n5077bw/