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その刃、蒼く。-Living Bible-
作:D



エピローグ


 辺りは暗く、冷たい空気が肌を突き刺す。

 足元は固い岩盤が広がっているが湿気で濡れており油断すると滑って大怪我しかねない。

「結局さ、賢者って何だったんだろうね」

 少年の声が洞穴にこだまする。

 鬱屈した気分を紛らわせるつもりだったのかも知れない――カインはふと、そんな疑問を口にした。

 銃の設計図を帝国に遣した時、賢者はカインの前に姿を現した。戦争によって街と家族を奪われた少年だったが、姉だけは一緒だった。失うことの辛さを知った少年は姉だけは守ろうと心に誓った。帝国に拾われ暗殺技術を叩き込まれ力を手に入れたが、まだ姉を救うには足りない。もっと力が、いや力をも超える何かが必要だった。

 そんな苦悩する彼を見透かしたように賢者が現れたのだった。

(取引だったんだ。僕は姉さんを守りたい。そして彼らは世界を守りたい)

 この世界こそ、彼らなのだろう。

 カインは確信していた。だからこそ彼らは戦争を終わらせようとし、魔術師の力を警告し、銃や兵器の恐ろしさを知らしめた。

 世界を守ろうと必死になるのは、自分たちを守ろうとしているからだ。姿を見せないのは、見せるべき姿を持っていないからだろう。だからわざわざ代弁者を使う――カインの前に現れた賢者も、人の体を使っていた。

「彼らは世界そのものよ」

 前を進んでいた姉が答える。

 彼女もカインと同じ結論に至ったのだろう。だからこそ、こんなところにいるのだが。

 ザラスシュトラが死に、ツァラトゥストラは皇帝となった。魔術師たちはラクシウス率いる処刑部隊改め、魔法警察によって監視されているため今までのように野放しではない。魔法の力は抑制され、殺人以外の利用価値が模索されている。

 そして、銃の設計図は破棄された。

 姿を消したアルベールがまた何か企まなければ良いが、その時はまた止めればいい。

 そう、世界は平和になったのだ。また戦争が起きないとは限らないが、今のところそんな気配はない。好き好んで戦争を起こす者はいないのだ。ただ、戦争を利用しようとする者はいる。その元凶さえ食い止めればいい。

「カイン、見えてきたわ」

 姉の言葉に我に返る。

 暗い岩肌の中にぽっかりと浮かんだ白い穴――洞穴の終わりが見えていた。

 やがてその出口に辿り着くと、暗闇に慣れていた瞳に鮮やかな青空が滲みる。自然洞窟を越えた先の眼下には渓谷に囲まれた豊かな平原が広がっていた。

「よくもまぁ、こんなところ見つけたもんだね」

「まったく……潰すほうの身にもなれっていうのよ」

 シェラはやれやれと嘆息する。

 この渓谷の谷間にアジトがあるという情報を掴んだ。

 帝国謀反を企む反乱軍のアジト。いつになっても平和を脅かそうとする勢力は現れる。カインたちはそういった組織を調査し、また抑止する任務が与えられていた。

(姉さんだから……僕たちだから出来ることがある)

 戦争や魔術師、反乱。

 姉弟は様々な試練を乗り越え、そして変わらない意志を持ち続けた。

 その二人を主人公にして、新たな物語が紡がれるのだ。預言書とはその物語を記すことを示唆していた。そして物語の終わりは世界の終わりを意味する。だから物語を終わらせるようなことがあってはならないのだ。

「奴ら、魔界から怪物を召喚できるらしいから気をつけないと」

「魔法、銃と来て今度は怪物ねぇ。まったく・・・・・・面白そうじゃない!」

 そう、物語はまだ終わらない。

 時が来たらその話を語ろう。そして耳を傾けて欲しい。

 君の心の中にある僕たちの物語を――世界を存続させるために。



ご愛読ありがとうございました。

えーとあとがきで宣伝ってのもあれなんですが・・・次の作品アップしました。端的に言うと夏休みの探検のお話です。

夕空町探検隊 - 斜陽の傷痕 -
http://syosetu.com/pc/main.php?m=w1-4&ncode=N7268E

最後にもう一度。

その刃、蒼く。-Living Bible- を読んでくださり、本当にありがとうございました。













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