第十六話 シュウ再びその一
シュウ再び
「サフィーネ」
あの神殿の一室で紫の髪をしたあの男が赤い髪の女に声をかけていた。
「はい」
その女はそれに答えた。整った顔に異常に露出の高い服を身に纏っている。一見すると高貴な雰囲気が漂うがすぐにそれは何かしら危険な香りに変わる。そうした妙な雰囲気を持つ女であった。
「ラングランとシュテドニアスの戦いはどうなっていますか」
「はい」
彼女はそれを受けて話しはじめた。
「既に戦局は決しています。ラングラン軍はシュテドニアス軍を国境にまで追い詰めています」
「やはり。戦力差は如何ともし難かったようですね」
「それにシュテドニアス軍内部の分裂もあるようですわ」
「ほう」
紫の髪の男はそれを聞いて興味深そうに声をあげた。
「ロボトニー元帥が更迭されたのは御存知でしょうか」
「そうらしいですね、ゾラウシャルド大統領との対立の結果だとか」
「はい、その結果軍では強硬派が実験を握りました。その代表がラセツ大佐です」
「ラセツ?ああ、あの時の」
彼はそれを聞いて何かを思い出したように呟いた。
「彼がですか。そしてどうなりましたか」
「前線に戦力を集結させております。ラングランと決戦を挑むつもりのようです」
「それはまた随分強気ですね。戦力はあるのですか、今のシュテドニアスに」
「国内に残っている全ての戦力を動員するようです。その中には変わった魔装機もあります」
「変わった魔装機」
「はい。何でもバイラヴァというようです。それで今の戦局を挽回するつもりのようです」
「シュテドニアスも後には引けないようですね。しかし流れはもう決まっています」
「はい」
「時が来ました。サフィーネ」
彼はここであらためて彼女の名を呼んだ。
「あれの準備はもう整っておりますか」
「何時でも」
彼女は妖艶に微笑んでそう答えた。紫の男もそれを受けて笑った。
「ならばよいです。では行きましょう」
「はい」
「モニカもね。宜しいですか」
「・・・・・・わかりました」
彼女はその名が出ると一瞬言葉を詰まらせた。だが心の中にある感情を押し殺してそれに応えた。男はそれを知ってか
知らずか彼女に対してまた言った。
「それでは行きますよ」
「はい」
二人は部屋を後にした。そして何処かへと姿を消したのであった。
マサキ達はラングランとシュテドニアスの境に来ていた。そこにシュテドニアスの最後の防衛ラインがあるのだ。彼等はそこに向かって進撃していたのだ。
「さて、と。そろそろだな」
軍の先頭には魔装機やオーラバトラーがいた。彼等は軍の先陣を務めていたのだ。
「シュテドニアス軍が出て来るぜ。皆用意はいいか」
マサキが他の者に対してそう問うた。その横にはヴァルシオーネがいた。
「何時でもいいよ、腕が鳴るねえ」
「リューネは何時でもそう言うな」
「そうかなあ。あたしはそうは思わないけれど」
「いや、前にも言ってたぜ。まあそれはいいや」
マサキはここで視線を前に戻した。
「それよりも・・・・・・来るぜ」
「ああ、わかってるよ」
リューネはそれに頷いた。そして彼女も前を見据えた。
「皆、行くよ」
「了解」
魔装機とオーラバトラー、そしてゴーショーグンはそれぞれ散開した。そして敵に向かう。その後方にはグラン=ガランとゴラオンがいた。二隻の戦艦も戦闘態勢に入っていた。
シュテドニアスの魔装機が来た。彼等は空を飛びサイバスター達に迫る。だがここでサイバスターがファミリアを放った。
「クロ、シロ、行け!」
「あいよ、マサキ」
「おいら達に任せとくニャ」
二つのファミリアがまず敵を一機撃墜した。それを合図にラングラン軍は一斉に攻撃を開始した。だがシュテドニアス軍は数を頼んで彼等に迫る。だがここでオーラバトラーが前で出て来た。
「やるかよっ!」
「いっけぇぇぇぇぇっ!」
チャムが叫ぶ。ショウのビルバインは抜いた剣を真一文字に振り下ろした。それでシュテドニアスの魔装機を両断した。
「うわああああああっ!」
両断されながらもパイロットは何とか脱出した。そして墜落する機体から逃げる。彼は何とかそこから逃げ出すことに成功した。
「助かったみたいだな」
ショウはそれを見て少し安堵した顔になった。
「やっぱり死んじゃうと後味悪いもんね」
「ああ」
チャムの言葉に頷いた。
「戦争だけれどな。それでも死ぬより死なない方がいいさ」
「うん、そうだね」
「ヘッ、そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえぜ、ショウ」
だがここで隣に来たトッドがそう言った。
「また来るぜ、敵に情をかけるよりこっちが生き残るのを優先させな」
「トッド」
「トッドの言う通りよ、ショウ」
ここでマーベル達もやって来た。
「今は敵を倒すことだけを考えましょう、戦争なんだから」
「わかってる」
ショウはそれに答え敵をまた一機撃墜した。今度はオーラショットであった。
「これでどうだ」
「そうよ、それでいいの」
マーベルはそれを見て満足したように頷いた。
「行くわよ」
「ああ」
マーベルはショウに前に出るように言った。ショウはそれに従い前に出る。そして敵をまた一機葬った。今度は剣で斬り落としたのだ。
「西部の姉ちゃんもやるねえ」
「トッド、貴方もよ」
だがマーベルはクールにトッドに対してもそう言った。
「敵が怯んだわ、今がチャンスよ」
「了解、じゃあ行くか」
「ああ」
オーラバトラー達は前に出た。それに魔装機達も続く。ゴーショーグンもその中にいた。
「真吾、あたし達も行くわよ」
「真打ち登場ってね」
「よし」
彼はレミーとキリーの言葉を受けて動いた。ゴーショーグンの手にサーベルが宿る。
「ゴースティック!」
それでもって周りにいるシュテドニアス軍の魔装機を切り前へと出た。
「あのでかいのを先に倒せ!」
彼等は目標をゴーショーグンに定めた。忽ち数機がやって来た。だが真吾達はそれでも冷静さといつもの調子を捨て去ってはいなかった。
「来たわよ」
「ここは一つ大きいのといきますか」
「よし」
真吾は頷いた。それからゴーショーグンの全身にエネルギーを溜めた。
「行け・・・・・・」
ゴーショーグンからエネルギーが矢の様に放たれる。そしてそれは一斉にその数機の魔装機に向かった。
「ゴーフラッシャーーーーーーッ!」
それで以って魔装機達を撃ち落とした。それからサイバスター達と合流した。彼等は退くシュテドニアス軍に対してさらに攻撃を加えていった。
戦いはラングラン軍が優勢であった。彼等は先陣のみでシュテドニアス軍の主力部隊を相手にし、十二分に戦っていた。だがここでシュテドニアス軍も反撃に出た。
「おっと!」
マサキは地上からの攻撃をかわした。そして下にいる敵に目をやった。
「チッ、またあのデカブツがいるぜ」
見ればそこには移動要塞がいた。攻撃はその要塞からのものであった。それも一両ではなかった。
何両もの移動要塞がそこにいた。彼等は陣を組みラングラン軍に対して攻撃を仕掛けていた。それを受けてまず彼等は移動要塞の射程外にまで退いた。その間にシュテドニアス軍も退いていた。
「さて、どうするかだな」
マサキは下にいる移動要塞の部隊を見ながら言った。
「合計で七両か。また大勢やって来たな」
「それだけシュテドニアスも必死だということだ」
ヤンロンは落ち着いた声でそう答えた。
「彼等も後がない。思えば当然のことだな」
「けれどこのままじゃあたし達も進めないよ。どうするの?」
ミオがここでそう尋ねた。
「何とかしなくちゃいけないのはわかっているけれど」
テュッティの声は考えるものであった。
「七両もいるとね。やっぱり難しいわ」
「いや、そうでもない」
ここでタダナオがそう言った。
「奴等の陣を見てくれ」
彼は他の者に移動要塞の陣を見るように言った。皆それに従い下にいる移動要塞を見下ろした。
「円陣を組んでいるな。一両を中心として」
「ええ」
「互いに一定の距離を置いて。そこに付け目がある」
「付け目!?」
「ああ」
タダナオはそれに対して頷いて答えた。
「付け目なんだ。まずはそれぞれ周りにいる六両の移動要塞を狙う。魔装機神とヴァルシオーネでな」
「俺達でか」
マサキがそれを聞いて言った。
「そうだ、そして残る一両は俺がやる。ここは任せてくれ」
「いいのか?」
「何、心配はいらないさ」
彼はそう答えて不敵に笑った。
「それよりも移動要塞の護衛にさっき退けたシュテドニアスの魔装機がやって来ている。他の魔装機とオーラバトラーはそっちを頼む」
「了解」
「オーラシップの護衛もな。そしてゴーショーグンだが」
「やっと出番といったところか」
「ああ。中央の要塞を頼む。派手にやってくれ」
「了解」
「派手なのは得意だぜ」
彼等もそれに同意した。これで作戦は決まった。
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