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二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 作者:木塚ネロ

第三章

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第13話 勇者、夢見の理由を知る


 それは遠く、だが、確かに今も胸の内にある、この世界がいとおしいと、守りたいものだと思わせてくれた日々の記憶。

多くのものに穢されてなお、この世界の破滅を望まない歯止めとなった大切な毎日のこと。


                   ☆


「う、うぐぬぅ……」

 俺の目の前にはAランクの魔物の討伐依頼以上に達成困難な問題が横たわっていた。

「ほらっ、勇者の兄ちゃん」

「うぉっ!? ちょ、ちょっと待て、待つんだケリーっ!!」

眼前に迫ったソレが少年の手でウネウネと身を捩らせるのに、俺は思わず身を引いた。

「いいか、よく待て、考えろ。やっぱりおかしいって、な?」

 少年が手にした桶の中に山と積まれている中から、その一匹を取り摘まんで食べろとばかりに差し出してきたその生き物は、緑白色をしたミカンぐらいの大きさの何かしらの虫の幼虫だった。

そいつが体の腹を摘ままれたまま、でっぷりとした身をよじらせる様子に、自然と顔が苦い顔になる。

 レティシアと初めて潜ったあのダンジョンのおかげで、『アレに比べればだいぶマシだよな?』と多少グロいぐらいの虫系の魔物とも軽くやりあえるようになった。

だが、さすがにそれとこれとは別である。

食べられないものではないのは知っているし、確かにおいしいのかもしれないが、虫を食べ物として見てこなかった日本人としてはどうしても遠慮したい、絶対に遠慮したい。

「好き嫌いしちゃだめって言ってたの、勇者のおにいちゃんだよー?」

「うッ、シェンファ。いや、そりゃそうなんだがな? ほら、お兄ちゃんはもう大人だし、勇者だからさ、もう十分、強いから好き嫌いしても大丈夫なんだぞ?」

「えーっ、ずるいずるいーっ!!」「兄ちゃんのずるっこー!! 勇者のくせにー!」

「知らん知らんっ、大人っていうのはちょっとズルいもんなんだ! 勇者にだって苦手なものくらいある」

 子供特有のクリクリッとした目でぶーぶーと文句を垂れる子供たちから、明後日の方向に視線を逸らして非難の声に耐える。

「もう、なんでそんなに嫌がるんだ? 滋養もあるし、うまいんだぞ、こいつ」

「ねー、トロッとしててちょっと甘くて、おいしいのにねー。もったいないよねー」

「うぅ、せめて齧らず一口で食べてくれ……」

「「よく噛んでゆっくり食べなさいって言ったのは?」」

「…………俺でした」

 『食べ物をよく噛んでから飲み込む』というのは現代日本人なら、子供の間に一度は親や先生から言われる説教だろう。
だが、こちらの世界にはそんな常識はない。
むしろ、食べ物は食べられるときに、少しでも時間を置かずに、新鮮なうちに食べたほうが良いとされている。

それもある意味わからなくはないのだが、やはり、栄養を取るという面でも、消化を助けるという面でも、ゆっくりと噛んで食べ物は食べるべきだろう。

(とはいえ……)

 食えないものは食えないんだよ、むしろ君たちはなんでスナック感覚で生きたままソイツを齧れるの? ケリー、口の端から垂れてるの涎だよね? 虫の内臓じゃないよね?

「あっ、もうケリーったら、口から虫さんの中身垂れてるよ」

 ペロッ、とシェンファがケリーの口の端から垂れていた物体Xを舐めとった。

「わっ、ば、バカッ!! 何するんだよっ!!」

照れる少年と、不思議そうにする少女。日本なら小学校の低学年ぐらいの年齢だ。
 段々と女の子と接するのが恥ずかしくなる年頃のケリーがぶっきらぼうにそういって顔を赤くするのを、シェンファは不思議そうに見つめていた。

なんとも微笑ましい光景である。
ケリーの手の桶の中で身をよじらせる多数のそいつらと、舐めとった物体Xの正体について思考を放棄しておけばの話だったが。

「ケリー、シェンファ……、すまん、カエルはなんとかなったが、やっぱり俺にそいつは無理だ」

 本当、日々をたくましく生きている少年少女には申し訳なかったが、このゲテモノだけには手を出したくない。

「あ、海人様、やはりまたこちらにいらしていたんですね」

「ん、メテリアか」

「あ、聖女のおねぇちゃん!」「勇者のおにいちゃんのこと迎えに来たのー?」

 と、孤児院の庭先にいた俺たちに声をかけてきたのはメテリアだった。
今日もそこそこ日差しが強いのだが、相も変わらず裾丈の長い修道服を着ている。まぁ、その修道服を着てすらはっきりとわかるあの巨乳で薄着になったら、俺の精神衛生に悪いことこの上ないのである意味助かってはいるのだが。

妹の舞やアレシアなどで美少女には見慣れてきたが、たった一つ年上なだけとは思えない包容力の清楚美人は正直、とてもよろしい目の保養だ。

今更だが、この異世界、元の世界よりもずっと美形の比率が高い気がする。

「えぇ、ちゃんとお土産も持ってきありますよ。ここに来る前に焼き上げたリコルのパイです」

 優し気にほほ笑んだメテリアが開けたバスケットの中からは、甘い匂いとともにうまそうなパイが姿を現した。

「「わーいっ!!」」

「こらお前ら、先に食べようとするんじゃないっ、ミュン先生やほかの連中とも分けて食べるんだっ!」

「「あうぅ」」

 慌てて手を伸ばそうとした二人の手をペチペチッ、と叩く。

 女の人は基本甘いものが大好きだが、あの先生は特にそれが顕著な人だ。
日頃、多くの子供たちの面倒を見ながら働いているし、たまにはこんな息抜きがあってもいいだろう。

「とにかくグッジョブだ、メテリア」

「グッ、じょぶ? ですか?」

「いい仕事したってことだよ」

「いえ、すべてはルーナリス様の導きに従ってです、私は当然のことをしたまでですから。海人様」

 メテリアはそういって先ほどとはまた違った静謐な笑みを湛え、両手を目の前で組んでそのルーナリス様とやらへの祈りをささげた。

「それから二人とも、今日はいつもより沢山持ってきましたから、慌てなくても大丈夫です。……差し入れを持ってこれるのも、しばらくはこれが最後になりますから」

「…………」

 メテリアの言う通り、俺たちは今日を最後に、この町を離れることになる。
段々と魔族との戦争が現実身を帯び初めて来ている。

紆余曲折はあったが、帝国も獣国も、本格的な衝突に向けて戦争の準備を始めた。
 この町に来た目的も果たし終えたことだし、俺もここでのんびりとしているわけにはいかない。この戦争は、俺が魔王を倒さなければ終わらないのだから。

「ちぇー、なぁなぁ、もっとこの町にいてくれよ。せっかく仲良くなったのにつまんねーよ」

「そうだよ、そうだよ。私、聖女のおねぇちゃんのお菓子もっとたべたいっ!」

 それを聞いた子供たちはまたもやブーブーと文句を垂れる。

「あなたたち、そう無茶を言うものではありませんよ」

 と、そこに現れたのは孤児院をやりくりしているミュン先生だった。

「「せんせー!」」

「勇者様には勇者様のお仕事があるのですから。ごめんなさい、この子たちが無茶を言って」

「いや、いいんですよ、寂しいのは俺も同じですから」

 なんとなく孤児院を切り盛りしている院長先生というと、優し気な年寄りのイメージがあったが、ミュン先生はかなり若い。
最初は元冒険者の旦那さんと二人で孤児院を切り盛りしていたらしいのだが、経営難を改善するために狩りに出た森の中で運悪く強力な魔物と遭遇し、帰らぬ人となってしまったらしい。
経営難はその旦那さんが使用していた業物の武器を手放すことで解消することができたそうだが、以来、ミュン先生は一人で孤児院を経営するようになったそうだ。

「ミュンさん、私が焼いたリコルのパイです。よかったらこの孤児院の子供たちと食べてください」

「まぁ、ありがとうございます。きっとほかの子たちも喜びます。よかったら今お茶を淹れますから一緒に……」



「海人お兄ちゃあーんっ!!」



「おっと、トリア、危ないから急に飛びついてくるのはやめろって言ってるだろ?」

 背後からドサッ、と突然背中にかかる体重を受け止めながら返事を返した。

 この孤児院の中で一番最初に知り合ったのがこのトリアだ。
そもそも孤児院と関わりあうようになったきっかけもこのトリアを魔物から助けたのが始まりだった。

孤児院の中でも年上で、マセた部分があるこの少女は少しでもミュン先生の助けになれるように周囲に黙って近くの森へと薬草を取りに行っていたらしい。
孤児院の子供たちは8歳を超えると街の中での雑用をはじめ、少しずつ孤児院にお金を入れ始めるのだが、ギルドで手伝いをしていたトリアはその割の良さに釣られ、たった一人で薬草を取りに街の外に出てしまったのだ。

 そこをたまたま通りかかった俺が助けて以来、孤児院の中でも格別懐かれている。遠くからでも俺を見かけるとダッシュで駆け寄り、こうして飛びついてくるようになった。

「いやっ、嫌々ッ!! トリアもお兄ちゃんと一緒に行くっ!!」

「トリア?」

 背中にヒシっ、としがみついたトリアは、お出かけ用の服装に自分用の小さなポーチを手にしているようだった。

「離れるのやだもんっ!! お兄ちゃんがこの町を出て行っちゃうならトリアもついてくのー!!」

この辺りでは珍しい黒一色の髪に、同じく黒い瞳。
 どことなく顔だちも日本人に似ていて、ちょっと甘えん坊なあたりも含めて、俺自身がどうにも小さいころの舞を思い出してしまう。

「と、トリア、とりあえずおちつけ、な? 何も今すぐに出ていくわけじゃ……」

「嘘だもんっ、今日帰っちゃったら明日にはもう町から出て行っちゃうんでしょ!!」

「ダメですよ、トリア。勇者様の邪魔をしちゃいけないでしょう?」

「やだもんやだもんやだもんーっ!!」

「トリア……」

 いつもならミュン先生の言葉には素直に従うトリアだったが、この時ばかりは俺の背中の服をギュっ、と掴んだまま、ぶんぶんと頭を振っていた。

区別をしているつもりはないが、やはり孤児院の子供たちの中でもトリアへの思い入れが強いのは自覚していた。
ここまで意固地になっているのなら、俺が少し無理やりにでも引きはがして諭すべきなのだろうが、涙でいっぱいの目をしたトリアを見るとどうしても強硬手段が取れなかった。

「……トリア、分かってくれないか? 俺がこれから行く場所はとっても危険なんだ、そんなところにトリアを連れてはいけないんだよ」

 一寸先は暗闇だ。
この二年間という月日の間に、俺は強くなった。だが、俺の知らないところでトリアの身に何かあったとき、すぐに駆け付けられるとは限らない。

何より、互いに互いがどす黒い殺意を持って殺しあう戦場なんかに、子供たちを連れていけるわけがなかった。

「ううぅ、うーっ」

 返事はなかった。だが、確実に服をつかむ手が緩んだ。

「頼むよトリア。それにトリアがここから出て行ったら、孤児院の子供たちはどうするんだ? みんなが寂しがるし、トリアはお姉ちゃんなんだから、小さい子たちの面倒だって見ないといけないだろう?」

「……ひぐ、うぁああああああああああんっ!!」

 トリア自身、その言葉に納得したのか、服をつかんでいた手からは力が抜けた。代わりに抑えきれない感情を吐き出さんばかりにトリアは大きく鳴き声を上げた。

「あぁあ、もう、泣くな泣くな。せっかくの美人さんが台無しだぞ」

 火が付いたように泣くトリアの頭をゆっくりと撫でてやる。途中、気を利かせたミュン先生が、子供たちを連れて、メテリアと建物の中に入って行った。

「ひっく、ひく」

 そのまましばらく優しく頭をなでてやると、トリアの気持ちもやっと落ち着いてきたようだった。

「そうだ、いいものをやろう」

「いいもの?」

「ああ、そうだ。本当は故郷の妹へのお土産にと思ってたんだが……、トリアにあげるよ」

 それはエルフの森で土産用に手に入れた、紐に木彫りの小鳥がつけられただけのシンプルなペンダントだった。

「さっ、ほら、よく似合ってるぞ」

 トリアの首からペンダントをかけてやれば、小鳥の目の部分の水晶が太陽の光に反射してきらりと光った。

「ほんと、似合ってる? トリア、かわいい?」

「ははっ、おう、かわいいかわいい」

 子供のころの舞と全く同じ反応に思わず少し噴き出してしまった。
 やっぱりこの年頃の女の子が考えることは似たようなものなのだろう。

「えへへっ、だったらトリアっ、勇者のお兄ちゃんのお妾さんになるー!!」

「ぶっ!! と、トリア!? そんな言葉どこで覚えてきたんだ!?」

 なんとなく微笑ましい気分になってたところに突然ぶち込まれたセリフに、思わず噴き出した。
 いや、「○○くんのおよめさんになるー!」とかそういうノリなのはわかるが、なんでお妾さんなんだ?

「えっとね、ギルドでお手伝いしてた時に受付嬢のお姉さんから「本妻よりお妾さんのほうが好きになってもらえる」って言ってたよ」

「……お兄ちゃん、そんな話は聞きたくなかったよ」

「?」

 そうかぁ、あのほわほわした天然系のお姉さんが、そんなことを言っていたのかぁ。
…………あぁ、闇が深い。

「だからね、お兄ちゃん」

「ん? なんだ?」

「また、会いに来てねっ! トリア、待ってるから!!」

 そういって、トリアはそのたんぽぽのような明るい笑みを浮かべた。

「……ああ、必ずな」

俺は、安心させるようにもう一度笑みを浮かべて笑った。


            ☆


「…………夢、か」

 目を覚ました俺は、ゆっくりと体を起こした。部屋の中はまだ少し薄暗い。

少しだけぼーっとする頭で記憶を掘り起こした記憶には、昨晩たどり着いたダートラスの町の宿という情報が刻まれている。
酒場で飯を食いつつ、その酒場の主人に金を握らせて、柔らかベッドな宿を聞き出してたどり着いたのがこの宿だ。

「…………」

この世界で、俺は力を手に入れた。
すべては無理でも、守りたいと思ったものくらいは守れるはずだと、本気で考え、疑いを抱くことすらもしていなかった。

だから、俺はあの時、確かに笑っていた。
 必ず、俺がこの子たちを守ってみせると思っていた。

 …………ろくでもない結末の原因は、大体がそんな慢心が引き金だ。
なかなかにブラックな現実で、その引き金を踏んでしまった身としては笑えない話だった。

「にしても、我ながらめんどくさい神経してるなぁ」

俺はここまでセンチな人間だっただろうか?
昨日寝る前に、そういえばエルミアでも昔の夢を見たなと思いだしてちょっと嫌な気分になったが、まさかまたもや昔の夢を見ることになるとは。

「…………もしかして」

 スッ、と無音で作り出したのは【復讐の聖剣】。

鑑定を掛けて表示されたのは【復讐の聖剣】の取得条件とその効果。
ただ、表示される内容に、少しだけ変化があった。

空白だった部分に浮き上がってきたその内容は【トラウマにつながる経歴を夢に見る】。

「なんとも曖昧な……」

 ため息をつきたくなるような曖昧さ加減。
いつ夢に見るのかも、どれがこの効果の夢なのかも判断するすべがない。

 さっきの夢も、トラウマにつながる記憶としては可もなく不可もなくな記憶だ。

「うーん、これは……」

俺のスキル、心剣は割と不親切にできている。
獲得した心剣の能力は手にした時点でなんとなく理解でき、鑑定を掛ければ詳しい説明を知ることができる。ただ、そこで終わりにはならない。

心剣には裏能力と呼べるような力が存在している。それは鑑定で【???????】の様に確定表示されるものもあれば、今回の【復讐の聖剣】の能力のように鑑定ですら欠片も存在を確認できないものもある。
心剣を獲得するときの様に一定の条件を満たせば使えるようになったり、今回の様に元からその力の影響を受けていて、それを自覚することで鑑定にも表示されるようになったりと、どうにも使い手には不親切な設計をしていた。

 例えば、少し前に改めて能力を全開放した【水妖精の雫刃】で言えば、流体操作はとある魔物を倒したときに手に入れた。だが、流体の温度操作は俺が戦闘の中で感じた違和感を手がかりに試してみて確認できた力だ。
 たぶん、俺が気付かなければずっとそのままだっただろう能力。

まぁ、別に心剣は誰かが俺に使いやすいように作ったゲームのシステムじゃないんだから仕方がない。
一度目で嫌というほど思い知らされたのは、世界は考えるよりも徹底的に不都合に作られているということだ。だから、いつだって、俺が考えた絵図と世界はズレる。

「んみゅぅ、ご主人様……?」

「あ、悪い。起こしたか?」

 俺の右隣のベッドで軽く目を擦りながらミナリスが身を起こした。

 三人部屋に川の字に三つのベットが並べられたその宿の部屋だ。
部屋を分けるのは断念した俺だったが、代わりにちゃんと一人一つ、大きめのサイズのベッドを確保できる部屋にした。
夢見はともかく、寝心地自体は満足のいくものだ。ふかふかベッドはやはり正義である、間違いない。

「んんっ、んーっ、ふぁふぅ。ご主人様、キースー」

 軽く伸びをしたものの、ぼーっとしたままの低血圧なミナリスがふにゃりとした表情を浮かべる。
最近は元々あったしっかり者の、というか、メイドとしての振る舞いに隙が無くなりつつあるので、出会ったばかりのころのいろいろと不慣れだったミナリスを彷彿とさせる貴重な時間である。
とはいえ、寝る時はワンピースのような薄布一枚で寝ているミナリスだ。いろんな体の凹凸が首やら腕やらを出すための隙間から覗き見えてよろしくない。特に朝はまずい。

「はいはい、まずは顔洗って来いな」

「みゅんっ、ふぁい」

 人一人分あるかないか程度のベッドの間を飛び越えてきたミナリスの頭を片手で抑え、ミナリスに外套を羽織らせてとっとと外の水場へと押し出した。
顔を洗って本人がしっかりと目覚めるころにはこのボーっとしている間のことは忘れているみたいだから、これで問題はない。

「それからシュリア、踏みつけるつもりはないから床でスタンバるのはやめなさい」

「はぅ、海人様、いじわるなのです」

 ぷぅー、と唇を尖らせるシュリア、だが床からは動かない。

「…………いいからお前もとっとと顔を洗って来い、この貧乳駄犬が」

「は、はうっ!! りょうかいなのですぅ~!!」

 仕方ないので一段、声を低くして段々と定例化し始めている罵倒を口に出した。
普通なら怒ってもおかしくないことを言っているはずなのだが、ぶるりと体を振るわせたシュリアはどこか嬉しそうに外へと向かっていった。

「…………はぁ、なんでこうなったのか」

とても、とても、頭が痛い。
しかも、その原因が俺にあるらしいあたりが、なお頭が痛い。

「…………いかん、考えるのやめよう、ドツボに嵌まる」

 人の趣味趣向なんて言うものは他人がどうこう言ってなんとかなるものじゃない。
別にそれが悪いわけでもないし、それよりも今は目先のことを考えるべきだろう。

「さてと、俺も顔を洗いに行きますか」

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