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二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 作者:木塚ネロ

第三章

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プロローグ

メラメラと燃え上がる火の手が、俺の間違いの象徴とも言える建物を焼き焦がしていく。
俺が怒りのままになで斬りにした三十を超える下種共の血で多くの湿気を含んだ建材の木々が、バチバチと音を立ててその身を赤熱した黒へと染め上げていく。

「…………」

 俺は返り血に重くなった服を纏い、ただその光景を黙ってみていた。
怒りのままに暴れ回ったときの心の荒れようが嘘のように静まり、だが、思考だけが空回りするように何度も何度も同じことを考え続けている。

これは別に、特別な出来事だったわけじゃない。

 似たような話は世界を見渡せばきっといくらでもあった。
それこそ元の世界にだって、平和な日本でなら特殊な話でも、世界を見回せば珍しい話ではなかっただろう。家族とコタツでミカンを食べながら、テレビの特集で見た似たような出来事を、ひどい話だなんて無責任な言葉を吐いていたのを覚えている。

テレビで、新聞で、ネットで、探そうと思えばいくらでも見つかったに違いない、そんなありふれた出来事。

 そして、元の世界よりもずっと剣呑なこの世界なら、さらに珍しくもない話。
どこまでも腐った作り話が、どこまでも当たり前のように起こりうる出来事だというだけの話。

それは、たとえ俺が関わり合いにならなかったとしてもいずれは起きてしまったかもしれない可能性。



けれど、そんな事実には一欠けらの意味もありはしなかった。



結局、俺が間違えなければ防げたかもしれない出来事で、たった四文字の言葉すら許されずに奪われた。

怪物じみた力があっても、そんなものに何の役にもたたなかった。
自己満足な善意があっても、そんなものはただ傷つけるだけの刃に変わっただけだった。

慟哭に意味はない。泣き叫ぶことに意味はない。

 俺が本当に殺してやりたい相手は今でもきっと、富を貪っているのだろう。
この場に残っている奴らがアイツに見捨てられた、いや、アイツに処分してほしいと願われた奴らだと分かっていた。

分かっていて、それでも俺は全く合わない帳尻を少しでも合わせるように殺すしかなかった。

「く、くくっ、あはっ、アハハハハハハハッ!!」

 あぁ、なんて滑稽で、反吐が出そうになるほど最低な現実だ。

「何が勇者だっ!! 何が化け物だっ!!」」

 惚れた女すら守れずに、俺のために自ら犠牲になる道を選ばせて。

 レベルと力ばかりを磨いてきたのに、起きてしまった災厄の仇すら打つこともできなくて。

「アハハハッ、アハハハハハハハハハハハハッ!!」

おかしくて、おかしくて、可笑しすぎて。

 俺はただ、もう枯れ果てたと思っていた涙とともに狂ったように笑うことしかできなかった。





 それは、絶対に忘れられるはずのない記憶。
返り血に染まる頬を伝い、朱色が混じった涙を流した日の出来事。
役立たずな俺の手を濡らした赤い血は、あの日にも、そして今もまだ乾くことなく俺の手にまとわりついている。

この血はきっと、アイツの怨嗟の血でしか洗い流すことはできない。

それはまるで祝福のような、呪いのような、纏わりついた罪科の血だ。

短いので次回更新は明後日です
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