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二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 作者:木塚ネロ

第二章

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第25話 勇者一行、虐殺と血に笑う

「その通りだ。さぁ、俺は俺の誓いを果たそう!! 必ず殺す! 全員殺す!! まずはお前からだ、ユーミス。絶望と嘆きと失意の底で、苦痛の果てに死んでいけっ!!」

 ようやくこの時が来た。体も頭も心もとっくの昔に戦闘準備は整っている。
まずは、真正面から力であいつの力を押しつぶす。

「戯言をっ!! たとえステータスを見なくとも貴方が弱体化していることぐらい感じ取れます!! 『緑雷一(ライトニ)』……」

 と、ユーミスが魔法を放とうとするが、驚いたような顔で途中で固まる。

「無駄無駄、さっきの短剣には魔力が練られるのを邪魔する呪毒の一種が塗ってある。解毒の魔道具を身につけても解毒しきるまではファイアーボールすら撃てねぇよ」

「くっ……」

 悔しげな顔をしたユーミスが後ろに下がって治療に専念する。記憶を取り戻した今のユーミスなら、ミナリスお手製の呪毒でも3分程度で解除にされてしまうだろう。

つまり、余裕でこいつらを皆殺しにできる。

「さぁ、蹂躙の時間だ。3分ポッキリの前座劇、特等席で観劇しながらテンションを上げててくれ」

そう、まずは肩慣らしも兼ねてじっくりと私兵が潰されるところを見てもらおう。
 用意するのは【始まりの心剣】と【心火の霊剣】。
 どちらともなく切った口火が爆発するように、戦闘は始まった。

「敵はたったの3人だっ!! 焦らず数で押し潰せ!!」

 ユーミスを庇うように立った男、確かロンベルトとかいう私兵の一人が冷静に指示を飛ばす。
敵の数は50人ぐらいだから、ノルマは15人くらい。だが、シュリアの村を襲って虐殺を繰り広げたこいつらは基本的にシュリアの獲物なのだ。なので、俺とミナリスは人数は抑え目で、やり過ぎないように我慢我慢。

「……ハハハッ!! ほらほらほらっ、どうしたどうしたっ!! もっと本気でやれクズ虫がっ!!」

 俺たちが三方向に散ると、飴にアリが集るように、数に押された自信を根拠にカスどもが飛びかかってくる。

当然、いつかの魔物の群れのように一撃で殺しなんてしない。後で邪魔が入らない程度で済ませていいのだから、出来るだけ長く苦しむように致命傷を負わせよう。

「な、なんだこい、ぐあぁつ!!」

「速すぎっ、ぎゃあっ!!」

「や、やめっ!? がふっ!!」

 擦るように浅く両目を切り裂き、両足の健を断つ。崩れて落ちてくる体の腕の骨を逆折りにして、わざと痛いように折れて尖った骨が内側から飛び出すようにする。
 瞬く間に地面に転がるのは三つの奇怪なオブジェだ。

「クハハハッ、んっ? やべ、ミスったなぁ、一人気絶させちまったか」

 せっかくゆっくりと命が消えていく感覚を味わってもらおうと思ったのに、あれでは気を失ったままで、そのうち失血死して終わりだろう。
 まぁ一人ぐらいはいいか、なんせまだ獲物はこんなにもいる。

「どうした、ビビってんのか? 傭兵上がりだろうにだらしねぇなぁ、おいっ」

 見てみれば最初の勢いは消え、怯えた様子で飛びかかるのをためらっている。復活するのを待つ程、俺は親切ではない。

「「ぐぉあぁああッ!!」」

そのまま敵の集団に飛び込み、鎧の隙間を縫うように正面のふたりの肘を貫く。切り飛ばしたりはしない、一気に強すぎる痛みを与えるとまた気絶させてしまうかもしれないからな。

「バカがッ、死ねっ!!」

 両手の武器を突き立てたのを見て好機と見たらしい獲物が一匹、また懐に飛び込んでくる。
それは、基本的に間違いではない、好機と見て迷うほど練度の低い人間はここにはいなかった。問題なのは、それが好機ではないということ。

「ぎゃやあああっ!!」

「クズにバカ呼ばわりはされたくはねぇなぁ、おい!」

 虫の羽のような向こう側が透ける薄さの刀身と赤い色をした柄を持つ【薬湯虫の羽剣】。
唇、鼻、瞼とその鋭い刀身で顔面の凹凸をそぎ落とされた男が上げる苦痛の声が耳に心地いい。

その一振りで【薬湯虫の羽剣】を消して【始まりの心剣】と【心火の霊剣】を引き抜き、自分の体と平行になるように(・・・・・・・・)足の甲から踵に向けて剣を突き立てる。
その状態でガラ空きの胴体を力を込めた蹴りで吹き飛ばした。

「ぐぉぎゃあぁああああっ!!」

普段と同様に一瞬だけ魔力操作による強化を施した蹴りの威力は生半可なものではない。
十分な魔力を注ぎ込んで硬度を上げた心剣に対してそいつの体の肉は脆すぎた。力に対して横に広がる刀身に縫い止められてそいつの体から足首より先が文字通り引きちぎれる。

「やめっ、化物ぉっ!!」

「おっと、逃げるなよ、寂しいじゃないか」

「ギャアアッ!!」

 一人が声を上げて逃げ出そうとするが、天駆で射角を確保して、数打ち品の長剣を使って物理的に足を地面に縫いとめる。

俺の近くにいる奴らは、逃げるために俺に背を向けることすら恐ろしくてたまらないようで身動きがとれないようだった。

「くそがっ、あんなんだよっ!! お嬢、まだ魔法は使えねぇのか!!」

「あと、もう少しで解けますっ、時間を稼いでください!!」

「馬鹿言うんじゃねぇ!! あんなの相手に時間稼ぎなんてできるかっ、俺は逃げるぞっ!!」

「なっ!? 裏切るのですかっ!?」

「うるせぇ糞レズ女っ!! 命があっての物種なんだよっ!!」

それでも逃げようとするバカもいた。だから、見せしめ(・・・・)用の投げナイフを投げつけてやる。

「ぐげっ!! ぎゃああぁあっ、痛い痛い痛いっ!!」

狙い通りにロンベルトとかいう男の肩口にナイフは突き刺さった。そして激痛に目を剥きながら狂ったように痛いと連呼しながら地面を転がる。

ナイフに塗られていたのは逃げ出そうとした相手のために用意しておいたミナリス謹製の激痛毒だ。効果はその名のとおり、痛覚を引き上げた状態で延々と全身が痛み続けるというもの。
血の巡りを良くする効果もあるので気絶もできず、普通の毒と比べても効果が現れてから緩やかに生命力を奪っていく、苦しめることに特化した毒だ。

「だからぁ、逃がさねぇよ? 盛り下がることはしないでくれないかなぁ、お前らが生き延びたかったら俺たちを殺すしかないんだ」

「「「ひっ!!」」」

 魔力もなにも載せていない純粋な殺気を叩きつける。

「それこそ死に物狂いでかかってこい、全部真正面からたたきつぶしてやる」


             ☆


「ギャアアッ!!」「もうっ、やめっ」「溶けるうぅっ、おれの、俺の腕がァああ!!」「熱い熱い熱いっ!! 体が燃えてるっ!!」

「くふっ、くふふふふっ!! ほらほら、どうしたんですか? たかが小娘、嬲ったあとに味見するんでしょう?」

裏の仕事を請け負う者ということで、もう少しやると思っていましたが、全然見当違いでした。
事前に調べてあったレベルやステータスにそこまで大きな差はありませんでした。
平均レベルは大体50程度、冒険者のランクで言えばD級中位からC級下位程度の強さです。対して、私のレベルは76、レベルに差があっても数字だけを見れば、4人も同時に相手をするのは厳しい戦力差。

とはいえ、技巧のステータスもD+まで上がっていますし、『幻炎毒鬼』も加味すれば相手にならないというのがご主人様の判断です。

技術が甘すぎます。剣の振り方一つでも引き出される結果には雲泥の差が出る。戦い方に差が出る。
剣の振りが遅い、状況の判断が遅い、力の入れ方が不均等で逸らすのが楽すぎる。

裏の仕事といっても、格下相手を大人数でなぶるか、寝ている間に暗殺するというような、戦闘技術そのものを磨いてきたわけでもないのでしょう。要するに、ただの雑魚です。
これは確かに、ご主人様が言ったように戦闘ではなく蹂躙です。

(っと、いけません。今回は脇役、脇役です。あまり私が欲張ってはいけませんね)

「死ねこのクソあばずれの売女がっ!!」

「誰が売女ですかダニの分際で」

「ひぎゃぁぁあっ!?」

 振り下ろしてきた剣を持つ手を切り飛ばすと、返り血が少し頬に飛び散りました。
汚い、いろいろ含めて顔が自然と歪みます。

 しかし、痛めつけながら殺さない程度にする手加減というのはなかなか難しいものです。ご主人様は難なくこなしますが、私にはまだ内蔵の隙間を縫うように剣を突き立てたり、動く相手の皮膚を薄くそぎ落とすように剣を振るうようなことはまだまだできません。修練不足です。
なので、今回であれば指とか耳、目、あとは男であれば性器、女であれば胸と、削って切っても問題ない箇所を狙おうと初めから決めていました。

「どうせもう使わないのですし、切り取ってしまっても構いませんよね?」

「え、ぎやぁああああっ!!」

「うるさいですねぇ、犬でも去勢されれば大人しい性格になるのに。あぁでも、そういえば、犬ほどの知性もないダニでしたね。そう考えれば仕方なくもありますか」

泡を吹いて倒れるダニを足蹴にし、次の標的に向かう。

「さぁ、退屈させないでくださいよ? 私が主体で暴れまわれるのはここが最後なんですから。くふっ、くふふふっ!!」


           ☆


「何なんだこの人形っ、やめっ、目が、目がァああっ!!」

 きっとこの男は、美味しい野菜を持ってきてくれたおじさんを殺した。

「姉ちゃん!? いや、偽も……、がっ」

 きっとこの兵士は、笑いながら仲良くしていた近所の子供たちを殺戮した。

「やめっ、俺は味方っぐぇ!?」「ち、違うっ、俺じゃねぇっ!! 剣と鎧が勝手にっ!! ぐぇ!!」

 きっとこの外道どもは、心の底から楽しんで母様とシェルミーを死に追い込んだ。

「くすっ、クスクスクスッ、あぁ、存分に恐怖するですよ」

 グルメなネコさんは目玉をくり抜いて、鼻を切り落として、耳を引きちぎって、最後には舌を引き抜いて食べている。

クマさんは相手の親しい人間の影人間を作って、躊躇ったり迷ったりしたところで確実に仕留めていく。

 シュリアは『傀儡憑代』の魔力の糸を伸ばして剣や鎧を操って同士打ちさせたり、自分の手にした剣で無理やり自害させたり。

レベル的にはシュリアはとても弱い。けど、この『傀儡憑代』は人間を相手にするにはとても使い勝手が良かった。

だって、誰も彼もが強度の高い金属の鎧を来ているのですから。
腕力で抵抗されても魔力に特化したシュリアを超えるほどでもないのです。抑えきれないまでも、少し動きを鈍らせるだけでネコさんとクマさんが確実な致命傷で、けどすぐに死なないぐらいの傷を与えてくれる。

「あぁ、痛いです? でもまだ足りないです。蹂躙される側の痛みをもっともっと味わうのですよ」

そう、シュリアがただただ殺しを楽しむことができる。この3分間は、海人様とミナリスさんがシュリアが楽しむために用意してくれた舞台。
ユーミス姉様の言葉に従って、村人たちを殺したり捕縛したりした奴らを、この手で殺すための舞台。

「アハッ、もっと苦しむですっ、もっと泣き喚くですっ!! 村のみんなはただそれだけの自由すら理不尽に奪われたっ!!」

クマさんが殺したフルプレートの死体を直接操って、クズどもを殺してやる。

「やめっ、やめてくれっ!! お、俺らはただ雇われてただけでっ」

「巫山戯るなですっ!! 雇われたから仕方ないとでも言うつもりですかっ!! だったら、何一つとして悪いことをしていなかった村のみんなはどうなるです!! ただささやかに過ごしていた日常に土足で踏み込んで来たくせにっ!!」

「ぎゃっ、いでぇっ、やめ、ぎゃあああっ、がふっ!!」

 怒り任せに右腕、左足、右足、右腕と切り落とし、最後に喉を貫いて殺してしまったです。

「あぁ、失敗です。喉を刺す必要はなかったです。……殺してしまったらそこで終わりなのに」

 ギリッ、と奥歯がなる。

…………3年、3年間です。

 母様とシェルミーが、村のみんなが、弄び続けられていた時間。
あの地下で生物としての尊厳すらも踏みにじられた人外にまで貶められて。

それが、数時間にも満たない苦痛で死ねるのだから、できる限り許される範囲で苦しむだけ苦しめばいいのです。頭の中が全部グチャグチャになって、壊れるほどに。

「そうです。全部、全部、グチャグチャに壊れてしまえばいいです。キャハッ、キャハハハハッハハッ!!」

「『ニシシシシシッ!!』」

「『クシシシシシッ!!』」

 ネコさんもクマさんも、シュリアの気持ちに共鳴するようにけたたましい声を上げてくれました。

「ひっ!! ごふっ!?」

「ぎっ!? がっ、ぎゃぁああっ!!」

「クスクス、あぁ、もう、濡れてしまいそうなのですっ!!」

 さぁ、もっともっと楽しむです。
自由にできる時間はそれほどない。海人様とミナリスさんが取りこぼし分は調整してくれるから、好きに暴れていいと言われている。
だからシュリアは、この限られた時間を舐るように、しゃぶるように。

――――――最後の一瞬まで味わいつくすのです。

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