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二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 作者:木塚ネロ

第二章

53/110

閑話 とある魔術師の日記

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#>#年

○月 ×△日

最近、魔道具の研究が行き詰まり始めています。
原因ははっきりとしています。私に魔法の才能が乏しかったからです。
 私は一度に扱える魔力の量が少ない分、それを全く無駄が出ないように細部までコントロールすることで補ってきました。ですが、それだけでは届かなくなってきている。魔力の出力が上がらないままではこのあたりが限界なのでしょうか、いや、諦めるわけにはいかない。
私は絶対に街の石碑に名を刻まなければいけないのです。

そうしなければ、私に甘いお父様もこの関係を許してはくれない。
待っていてください、ソーリィ。その時こそ堂々と…………。



#>#年

○月 ×△日

 今日もダメでした、失敗だった。
私の魔法の才能は一番得意な風の属性でも、並を少しだけ上回る程度。レベルもこのあたりの魔物では上がりにくくなってきている。
魔力は修練を続けていけば少しづつでも確実に扱える量が増えていくらしいですが、それでは遅いのです。

今はまだいい。けれど、いずれは私とソーリィの仲を引き裂くような縁談話が舞い込んできてしまう。

それまでになんとかしなければ…………。



#>#年

○月 ×△日

今回はやり方を変えてみた。
制御はより複雑になったが、一定の効果は認められました。けれど、それでも石碑に名を刻めるような魔道具を作るのにはやはり根本的な魔力の出力が足りない。

石碑に名を刻むには、石碑に宿る古代の英霊に認められなければならないとされている。石碑の台座に魔道具を捧げたときに、英霊に認められる魔道具を置ければ石碑にひとりでに名前が刻まれることになる。

どうすればそんな強力な魔道具を生み出すことが出来るのだろうか。

ごめんなさい、ソーリィ、不甲斐ない私を許して。
 私たちが一緒になるのにはまだ時間がかかりそうなのです。



 #>#年

○月 ×△日

 今日は学舎にエルミアの街の商会の人間が訪れてきました。私が作った研究途中の副産物に目をつけたらしいです。
市場に出せばそこそこの値で売れるだろうと言われましたが、私は発明家になりたいわけじゃない。小物な道具を作って小金を稼いで満足したいわけじゃないのです。

それでも、研究にもある程度費用がかかるので、自由に使えるお金はあっても困らない。だから、エルミアの商会にいくつかに降ろした。

そのときは考えていなかったが、今こうして日記を書いているとなかなか良案だったと思える。
 多少であっても、これで私の名が広まって名声が高まれば、無事に石碑に名前を刻むことができた時の願い事に意見をされにくくなるかもしれない。

 エルミア家の始祖様が残した、『エルミアの石碑に名を刻む栄誉を得たものの願いを叶える』という家訓は絶対のものと家には伝えられていますが、それぐらいなら許そうと思ってもらえる要素は多いに越したことはないのだから。

それにしても、今日のソーリィは可愛かった。
頬をピンクに染めて私の名前を呼ぶ姿はたまらないです。



#>#年

○月 ×△日

今日は怪しげな商人に声をかけられました。
エルミアの町はいろいろな人が入り混じるためにそういった手合いの人間も数多い。
いつもなら適当に会釈して去るところでしたが、どうしてか話を聞いてしまいました。
 ですけど、商品を見せてもらった時にすごい掘り出し物を発見しました。

悪魔の召喚石です。

売っている商人にはその価値がわからなかったのでしょう、ただのガラクタと捨て値同然で売られていたのを買い取って、そのまま家に戻りました。



#>#年

○月 ×△日

 仕立て屋に密かに頼んだ衣装が届きました。
それを着た今日のソーリィはとても色っぽかったです。衣装が違うだけで、全然印象もガラリと変わってしまうものなのですね。これは凄い発見です。あぁ、今度はどんな服を着てもらいましょうか。

本当に、なぜ女同士で好きあってはいけないのでしょうか。何も万人にこの関係を認めてもらいたいとは思っていません。

でも、せめて、大切なお父様とお母様には認めて欲しい。

 個人邸宅で私が直接雇っている使用人は私とソーリィの関係を知っていて黙っていてくれているけれど、それ以外の使用人に気付かれたら…………。

  #>#年

○月 ×△日

今日、下調べを終え、入念に準備をした上で、悪魔を呼び出してみました。
悪魔は精霊の一種です。大きな対価を望む代わりに、呪いの知識や力を与えてくれる。
そこで、奴隷一人の命を捧げ、魔法の才能を手に入れる呪法がないかを尋ねてみると、悪魔はただ一言、『ある』と答えました。
 それは特殊な魔法陣を使い、血縁関係にあるものを魔法陣の中に長い時間留めておくことで才能を奪い取るというもの。
あぁ、神様は私の味方なんでしょう。

魔法の才能があって、私と血縁関係があり、それでいて長時間拘束しやすい人間。

私にはそれがいます。
お父様が使用人に手を出して生まれた子供、異母姉妹。
名前は確か、シュリアと言ったはずです。

やっと光明が見えてきました。
これで、ソーリィと一緒になる道筋が立ちました。
作戦を教え、これで私たちの仲が認められる日に大きく近づいたと言ったら、ソーリィは嬉しそうに喜んでくれた。
手伝えることはないかと自分から申し出るソーリィは本当に健気で愛らしい。思わず3回戦まで燃えてしまいました。



#>#年

○月 ×△日

作戦はうまくいきました。
やはり、私には幸運の女神様がついているようです。狙っていたかのようなタイミングで問題を抱えていたシュリアの信用を得て、屋敷に招くことは出来ました。

悪魔が求めてきた、魔法陣の知識と、起動に必要な特殊な魔力の対価も、同時にうまいこと処理することができました。
取り調べ中に魔族に仕込まれた罠のせいで死んだということにして実験台も相当数確保できた。

あとは、あの愚かな異母妹が、あの魔法陣の部屋から出ないようにするだけです。

今はまだ、私の才能(・・・・)をあの子が持っている。それを使って魔法陣を破壊されてしまうようなことがあってはならない。そうでなくとも、魔法陣から出られてしまえば再び起動するのに悪魔に対価を支払わないといけなくなります。

あの村のような、閉鎖的で都合のいい材料はそうそうありません。それに、さすがに同じように「魔物に洗脳されて……」という偽装でまた一つ村を潰すのは難しい。



魔法陣が100%効力を発揮し終えるまでは、彼女にとっていい姉を演じ続けなければなりませんね。



#>#年

○月 ×△日

重要な発見です。
私がいい姉を演じて仲睦まじい様子を見せた日のソーリィは嫉妬に狂ってとても情熱的になるのです。

ソーリィも貴族ですが、位が下の分家から奉公に来ていることになっているので、普段はメイドとして立場を意識しているのか、たとえ寝屋であっても感情を隠そうとするのです。
そんなソーリィが独占欲を丸出しにしてくれるのはとても嬉しいですね。興奮します。



#>#年

○月 ×△日

 今日、王都に住んでいる両親から手紙が届きました。それとなくわたしに婚姻を結ぶ気はないかと尋ねる内容でしたので、火の魔術で灰すら残らなくなるまで燃やし尽くしました。

両親は王都での生活がよほど水に合うようで、エルミアには滅多に帰ってきません。私が領主の仕事をこなせるようになってから向こうに移り住んだので、もう4年になるでしょうか。
町の運営の方はもともと雇った役人に任せ、今の仕事は基本的にただ領主家の裁可の印を書類に押すだけなので、特に問題はありません。

ただ、私が縁談を断り続けていることが少し心配になってきたのか、最近はそういった催促が増え始めています。
あぁ、早く石碑に名前を刻んで、ソーリィと正式に結婚式を上げたい。


 …………………………
…………………
…………


#>#年

○月 ×△日

魔法陣の効果を実感し始めました。
シュリアが持っていた魔法スキルの熟練度が私に加算され、あんなに頑張って訓練したのがバカみたいに熟練度が加算されていきます。
魔法のスキルレベルも、この半年でもう一つレベルが上がっています。
ただ、一気に扱える魔力量が増えたせいで、細かい制御の難易度がとても上がってしまいました。それでもこれならきっと、いずれ大魔道具とさえ呼ばれるような代物を作れるようになるでしょう。
今は、魔法の制御の訓練をしながら、魔法陣の効果が完成するのを待ちましょう。


 …………………………
…………………
…………


#>#年

○月 ×△日

そろそろ、魔法の効果の完成が見えてきた。
 魔法の効果が完成した後の計画もそろそろ考え始めなければいけませんね。
 まずはシュリアの『緋の瞳』。
あれはいいものです。魔道具の材料にして、感知系の魔道具にしましょう。
元々は私の才能を持っていたからですから、魔力の受容性も高いはず。きっと出来損ないになってしまったアレらとは違って、いいアンデットとして使役できそうです。


 …………………………
…………………
…………


  #>#年

○月 ×△日

ついに、魔法の効果が完成します。

思えば、想像以上に長い時間がかかりました。
あの子にはそれだけ、身の丈に合わない量の才能を私から掠め取っていたということですね。
とはいえ、それも明日の朝には全て私の元へと戻ります。
今後も色々と手伝ってもらうことになるでしょうし、その対価として、明日の終わりまではいい夢を見させてあげましょう。私は、お優しいお姉様なのですから。


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「なるほどね、そういうことか」

 俺は努めて心を平静に保つように意識しながら読み終えたユーミスの日記を閉じた。

――――……くだらない。
くだらないくだらないくだらない、本当にくだらない。

ユーミス、これがお前が魔道具を生み出そうとした理由か。これが俺を裏切った理由か。

 町の石碑に自分の魔道具を認めさせて、堂々とお気に入りのメイドを伴侶にする。

そのために俺を裏切り、そのためにシュリアを利用し、多くを犠牲に夢への積み石を重ね上げて。

「…………まぁいい、あのメイドだけが大切なのかと思ったが、両親や使用人もそれなりに大切に思ってるのか。ならそいつらにも舞台に上がってもらおう」

気付かれないように日記を元の場所に戻し、俺はまた一歩、復讐の調味料を見つけたことに喜びながら、ユーミスの館を後にするのだった。
次回から、具体的な復讐が始まります。
お楽しみにしていてください。
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