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二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 作者:木塚ネロ

第二章

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第22話 悪魔の誘う声 2

新年あけましておめでとうございます!!
今年も本作品をよろしくお願いいたします。
 今日は悪夢のような日なのです。
持っていたはずのものが全部裏返って、……いや、違うです。
ただそれが触れられる幻影だったのだと気付かされてしまっただけなのです。

それだけでも十分にひどい一日。
いろんなものを失ってしまった一日。
なのに、

「惨めだよな、けどな、こいつだけじゃない。ユーミスの死にもこのままならお前は関われない。あいつは俺が殺す。お前の気持ちも事情も俺には関係ない、お前に遠慮するつもりは欠片もない」

気がつけば、飛び掛っていた。

でも、やっぱりシュリアには抗えるような力はなくて、無様に地面に引き倒されて背を踏みつけられる。

まるで御伽噺の意地悪な魔法使いのような人なのです。
分かったような口ぶりで、シュリアが駄目だったところを、目を逸らすなとばかりに上げ連ねて、見下したように笑って。

 シュリアから、最後に残った復讐相手すら奪おうとする。

「痛いか? 『復讐なんて諦めます』と誓うならすぐにでも足を退けてやるぞ」

 あぁ、耳鳴りがするです。
この男は何を荒唐無稽なことを言っているのですか。

「今抵抗せずにいるならこの場から逃がしてやる。同情してるのは本当だからな、いくらかの金だってやろう。どこかの田舎に引っ越して静かに暮らせばいい」

 そんなの、何の価値もないのです。

 もう戻れないのに。
 もう壊れてしまったのに。
 もう届かない場所になってしまったのに。

たった一人で、静かになんて暮らせるわけがないのに。

「そうか」

体を押さえつけていた足が退けられる。見上げた先でカイトさんはなにか、小さく笑っていた。
いつの間にか押しつぶすようなくらい威圧感も消え去っている。

アレ、そういえばこの人は精霊なんじゃなかったですか? あぁ、でも、そんなことも、もうどうでもいい、

 止めなければ、抗わなければ、目の前の相手に最後に残った復讐相手すら奪われてしまう。
それだけは耐えられない。ここで殺されてしまってもそれだけは許せない。

だから、その足に噛み付こうとした。
 また避けられて、惨めに踏み潰されるのです。きっと、今度こそ殺されてしまうのです。

当然だ、助けてもらったのに、恩を仇で返すようなこんな真似をして、相手からの提案も蹴り飛ばして、殺されても何もおかしくはないのです。

悪魔にも勝てなかったのに、それを圧倒した相手に勝てる道理はないのです。でも、敵わないと分かっていても、そうするしか道はなかったのです。

 復讐を諦める道はシュリア自身が絶ったのです。

それがどれだけ薄い可能性だったとしても、諦めて死を受け入れようとしたあのときに、死ねないと思ったあの瞬間に、最後の時までそう生きると決めたのです。

「っ、どうして、抵抗しないです」

なのに、叶わないと思っていたその行動は思いがけずに実を結びました。
本気で噛み千切るつもりで力を入れた口は、無抵抗にされるがままの相手にそれ以上の力を入れることができませんでした。

「ケジメだ。確認のためとはいえ、胸糞悪いことを言った自覚はあるからな」

「…………」

 そこで初めて、真っ直ぐにカイトさんの目を見たのです。
 暗い暗い、底なし沼のような光のない目。
復讐相手を奪う敵としてじゃなくて、彼自身に純粋に興味が湧いてくる。

「最初に言っただろ? これは勧誘だって」

「かん、ゆう……?」

「ああ、そうだ」

 感情の振り幅が大きすぎて、どこかボンヤリとした頭の隅から忍び込むように声が響いてくる。

「さっき、死んだほうがマシだって言ったな。だったら今日、ここで生まれ変わる手伝いをしてやるよ」

 まるで、悪魔のような笑みを浮かべてカイトさんは笑っている。

「なぁ、シュリア。俺と一緒に復讐しないか?」

 差し出された手は普通の人間の手と同じように見えました。でもきっと、これは悪魔の誘惑の手。
 一度でもその手を取ったら蟻地獄のように暗がりの底まで堕ちて行ってしまうような、そんな囁き。

「……一緒に?」

「ああ、いまここで選べ、共犯者になるか、傍観者になるか。俺の手を取るなら、力を与えてやれる。ただし、そこからはもう戻れない。ユーミスに復讐を遂げたあとも、俺の復讐心を一緒に背負い続けることになる。血よりも濃い契約。比喩じゃなく、俺が死ぬ時が、お前の死ぬ時で。お前の死ぬ時が俺が死ぬ時だ」

耳から入ってくる言葉はどこか遠く霞んで聞こえる。
あぁ、きっと、この人が本物の悪魔なのです。人を外道の道に引きずり込んでしまう、御伽噺の本物の悪魔。
 でももう、きっとそれで構わない。

「そんなのどうでもいいのです。知りたいのは一つです。あなたのその手を取れば、あの女は苦しむです? あの女が悲痛に歪む顔を見れるのですか?」

一緒にでもなんでも、シュリアがちゃんと復讐できるのならそれで構わない。
だから、知りたいのはそれだけなのです。それだけでいいのです。

「何を他人事のように言ってるんだよ。俺は『共犯者』になれって言ってるんだ。苦しみますかじゃない、苦しめるんだよ。何度も言ってるだろ、お前が決めろ。お前が選べ。お前が考えろ。俺は保証なんてしてやらない。都合のいい未来も見せる気はない」

「……あぁ、本当、悪魔みたいな人なのです。人を外道に誘っておいて、慰めの言葉も、未来の保証も、何もしてくれないなんて」

「他人任せの代償はもう痛いくらいに知っただろ?」

笑顔というには暗すぎるその顔に、口の端が釣り上がる。きっとシュリアは今、目の前の悪魔様と同じ顔をしている。

だからこれは、シュリアが何よりも欲しかった救いの手。
きっとシュリアを悪魔に変えてくれる手。

「お願いするのです。シュリアをあなたと同じ悪魔に変えてください。ユーミス姉様に復讐できるなら、シュリアの体も心も、魂だってカイトさん、いえ、カイト様に捧げてみせるです」

 差し出された手をシュリアは握った。


            ☆


「お願いするです。シュリアをあなたと同じ悪魔に変えてください。ユーミス姉様に復讐できるなら、シュリアの体も心も、魂だってカイト様に捧げてみせるです」

差し出した手を小さな白い手が握り返してきた。
しかし、悪魔に変えてくれとは。

「幽霊だったり、精霊だったり、悪魔だったり、散々な言われようだな。言っておくけど俺はただの人間だからな」

 シュリアを手を引いて立ち上がらせて、離した手に【復讐の聖剣】を、契約用の短剣で作り出す。

「ただの人間は、体が魔力だったり、そんな禍々しい、魔力で出来た短剣を作ることはできないのです」

「……まぁ、そこらへんの疑問については、半分ぐらいはこいつが解消してくれる。残り半分はまた後でだな、ほら、使い方は剣が教えてくれるだろ」

 作り出した【復讐の聖剣】をシュリアに手渡した。
 心剣がシュリアの手に渡った瞬間、『合格だ』と言わんばかりに暗く、けれど、太陽よりも強く焼け付く光を放つ。

「不思議な光です。冷たくて、暗くて、熱いです」

 手に持った【復讐の聖剣】を繁々と眺めるシュリアの赤い目が深く輝いている。
シュリアの手に移った【復讐の聖剣】はチラチラと黒い光の胞子を散らして、復讐者の門出をどこか嘲笑うように祝福している。

そうしてシュリアは、まるで宝物を抱きしめるような、そんな仕草で自らの胸に、手にした剣を突き刺した。

 一際強い光を放った後、まるで花を散らすように淡い光の胞子だけを残して消えて行った。シュリアにはもう、【復讐の聖剣】が突き立っていたことを示す痕跡は一つもない。

「くっ、あぁ、んっ」

 ミナリスの時と同じ、復讐心の追体験。
その時の感情さえも鮮明に思い出させられるその感覚は、二回目でも慣れることはない。
抑えようとして抑えきれるものでもなく、顔面が苦渋に歪む。

【復讐の聖剣】が残した闇色の光の胞子が消えきる頃に俺とシュリアの復讐は混じり合って一つになった。

「やっぱり、外からの同情とは違うな」

「あぁ、びっくりなのです。すぐに似たようなことをされた人に会うとは思ってなかったのです」

 シュリアは複雑そうな、諦観混じりの息を吐く。

「不思議な感じなのです、でも、いい力です」

 手を開いては閉じてを繰り返し、シュリアは周りを見回して、いいものを見つけたという表情でクスりと笑う。

「ちょうど、とってもいい材料が残ってるのです。記念すべき一号は、この子にするのです」

テクテクと歩いていくシュリアの先には猫のヌイグルミがあった。小さく笑い、しゃがんだシュリアがヌイグルミのお腹に手をかざす。

「ネコサンネコサン、どこですか?
 優しい国で時計は割れる。
冷たい氷の世界は割れる。
迷子のネコさん、さぁここです。
美味しいおやつはすぐそこです。
 ――――糸繰り踊れ、『傀儡憑代』」

歌うような独特な詠唱と高まる魔力に、赤と黄、黒の光の胞子が地面から吹き上がるようにシュリアの周りで舞い散る。
 変質したシュリアの魔力がヌイグルミにドンドン押し込められていき、それが最高潮に達した時、周囲に渦巻く光の胞子がヌイグルミへと収束した。

「んっ、はぁ、フラフラするのです。MP酔い……、キャハッ、キャハハッハハハッ!! さぁ、起きるのですよ、今すぐに」

ピク、ビクビクリッ、とシュリアの声に反応するようにヌイグルミが動き出す。
 一人でに起き上がった白い猫のヌイグルミはプルプルと体を震わせ、そのまま立ち上がった。

「へぇ、面白そうな能力だな」

「面白いのはここからなのです、ふふっ、ふふふっ」

深く熱に浮かされた表情のシュリアが楽しげに笑う。
シュリアを見上げた猫のヌイグルミはとても綺麗な所作で自分の主人に向けてひとつ礼をした。

その様子を見て満足そうにシュリアは微笑むと初めての命令をヌイグルミに下した。

「さぁ、初めての命令です。哀れな道化を喰らってくるのです、ちゃんと味わって食べるのですよ?」

「『ニシシッ、ニシシシシシッ!!』」

 口の端を釣り上げて笑う猫が、コクりとひとつ頷いた。

 ペタペタ歩くヌイグルミが、両手に持ったフォークとナイフをカツンカツンと床に引きずりながらずっと様子を見ていた悪魔のもとへと近づいていく。
俺が殺してやろうと思っていたが、ここで手を出すのは無粋というものだろう。
俺は一歩引いて様子を眺めることにした。

「『くっ、くそっ、なんだ、何だなんだよお前らっ!!』」

悪魔の体の修復は半分程度だろうか、最後の足掻きとばかりに残った体の密度を薄くして全身を再構成したようだった。

分が悪いと逃げ出そうとする悪魔に向け、ヌイグルミが素早く地面を蹴った。

「『馬鹿にしてんのかっ、寄るんじゃねぇっ!!』」

飛びかかってくる猫のヌイグルミを振り払うように振るった悪魔の手。

「『ニシシッ!』」

「『なっ、なにっ!?』」

だが、そんなもの屁でもないとヌイグルミが振るったナイフが一瞬で巨大化し、その腕を刈り取った。

「『ハッ、ハハッ、さっきの剣とは別物みたいだな、切り落としただけならすぐに吸収して……』」

 一瞬、焦った顔をした悪魔だったが、切り落とされた腕が【心火の霊剣】と同じようにならなかったのに安堵した表情を見せた。
けれど、その安堵もすぐに立ち消える。

「シュリアは、『喰らってこい』と言ったですよ?」

楽しげに微笑みを浮かべるシュリアの言葉を悪魔が理解するよりも早く、忠実に主人の命令を猫のヌイグルミは実行していた。

「『ニシシシッ』」

ザクリッ、と切り落とされた悪魔の腕をフォークで突き刺し、通常サイズに戻ったナイフ使って切り分けてそのまま口の中に放り込んだ。

「『…………は?』」

 その様子を、悪魔は呆然と見ていた。悪魔がほうけている間も猫のヌイグルミは食事を続け、あっという間に残りの腕も平らげる。

「『おい、ふざけんなよ……、喰った? オレ様の腕を、喰ったのか?』」

「キャハハッ!! ほらほら、どうしたです? とても面白い顔をしてるのですよ?」

 シュリアの嘲笑う声と、猫のヌイグルミはニシシッと笑う声が共鳴するように響く。
悪魔の問いに答えることもなく、猫のヌイグルミは悪魔の方に向き直ってナイフとフォークをキンッキンッ、と二回鳴らす。

「『クソッ、クソクソクソクソがァアアアア!! 何なんだテメェらっ!! ふざけんじゃねぇぞっ、魔力体を燃やす剣に、俺の体を食らうヌイグルミっ!? 反則だっ、ズルだっ!!』」

「ぷっ、くくくっ、悪魔が反則とかズルとか抜かすなよ」

 口出しするつもりはなかったのだが、あんまりなセリフに思わず笑いが漏れてしまった。

「『オレ様は悪魔だぞっ!? テメェらみてぇな下等生物とは違うんだっ!! なのにっ、なのになのになのにっ!!』」

 そんな、悲鳴とも抗議とも付かない声をあげて悪魔はヌイグルミとの戦闘を続けるが、まるで相手になってなかった。

元々、近接戦闘の技術なんてない悪魔、再生力も頼りにならないせいで、魔法を悠長に唱える余裕はなく、慌てて作り出した下級の魔法はひょいひょいと避けるか、フォークを使っていなされている。

 痛覚のない悪魔だが、恐怖は覚えるようで、端から斬られて自分の体が食べられていくのに顔の引きつりを隠す余裕もないようだった。

 そうして最後に、悪魔の首から上だけが残った。

「『悪魔のオレ様が、こんな人間だのエルフだの、クソみたいな下等生物に……っ』」

 もう悪魔の体を構成していた魔力は取り返しがつかないところまで小さく薄くなっている。
ここまで削り取られてしまっては周囲の魔力を取り込んでの再生もできず、放っておいても大気中に霧散してしまうことだろう。

「あ~ぁ、もう少し持たせて欲しかったなのです。せっかくのデビュー戦でしたのに……。シュリア、ツマンナイのです」

「まぁまぁ、このあとはユーミスも控えてるんだ。意味もなく長すぎる序章は蛇足だぞ」

「……わかったなのです。それじゃあ、これで最後にするのです」

 悪魔の前でしゃがみこんだシュリアはとても優し気に微笑んで、最後の命令を下した。

「最後の一瞬まで、シュリアが観察してあげるです。さぁ、喰らいなさい」

「『クソガアアアアアァアアアアァア!!』」

「キャハハハハハハハハッ!!」

「『ニシシッ!!』」

 ザックリと悪魔の両目にナイフとフォークを突き刺してえぐり抜いた目玉を食べたあと、残った頭を器用に宙に放り上げて齧り取るように飲み込んだ。

そして、満足そうにケプッ、と息を吐いたヌイグルミは最後にもう一度ナイフとフォークがぶつかる音を二回鳴らした。

と、その時だ、白い猫のヌイグルミとシュリアに変化が起きる。
白かったヌイグルミに濃い黒色の文様が混じっていく。
黒い影がまとわりつくように、白かった猫のヌイグルミはモノクロに変わっていた。

「……? なんか、体が火照って、熱いですっ、んっ」

ただ、それ以上に驚くべき変化が目の前では起こっていた。暗い魔力の渦がシュリアを取り巻いている。

「シュリアッ!? 大丈夫か!?」

 契約を結んだ以上、冗談じゃなくシュリアの危機は俺の、そしてミナリスの危機だ。
尋常ではない様子に大いに焦る。

「んぅ、危ない感じはしないのです。けど、なんか、焼けてるみたいに体が熱いです」

 どうやら、命に関わるようなことではないようで、シュリアは全く苦しそうにはしていない。

様子を見ていると、やがて魔力の渦は落ち着き、地下牢は元の姿を取り戻したのだが……。

「あー、これはまた、予想外だな」

「……変身なのです?」

 そう言ってシュリアは自らの体を見下ろす。
白磁のように白かった、押せばどこまでも沈んでいきそうな肌は、ミルクチョコのような褐色の肉感的な張りの強い肌に。金糸のような綺麗な金髪は、完全に色の抜けた銀へと変わっていた。
 破けた服の隙間から見える範囲でだが、腹部にも刺青を入れたような黒い文様が入っている。

シュリアが指先でクルクルと弄る髪が、地下を照らすロウソクの火に当てられてオレンジに光る。
どうやら、ヌイグルミが悪魔を取り込んだことでその魔力が逆流したのが原因のようだった。

「ダークエルフねぇ。はは、らしくていいじゃないか、悪魔にはなれなかったが丁度いいだろうよ」

「ダークエルフ?」

「今のシュリアのような褐色肌のエルフのことだよ。俺の世界じゃそういう知識があったんだ」

 別段エルフは珍しい種族ではない。実際、この街でも時々エルフを見かける。その魔法に秀でた種族の特性を生かして冒険者として身を立てるエルフも多いからだ。

 だが、いわゆる褐色の肌をしたエルフは、一度目の世界でも見たことはないし、存在も聞いたことはない。
てっきり存在しないものかと思ったが、そういうわけではないらしい。

 ステータスを見てみれば、『人間(エルフ返り)』となっていた種族の欄が『ダークエルフ』に変わり、固有技能『傀儡憑代』も追加されている。


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 シュリア 14歳 女 ダークエルフ
HP:292/332 MP: 780/780 譲渡中(525)
レベル:33
筋力:133
体力:213
耐久:154
敏捷:288
魔力:679
魔耐:582
固有技能:『緋の瞳』『傀儡憑代』
スキル:『気配察知 Lv1』『気配隠蔽 Lv1』
    『瞑想 Lv3』『剥ぎ取り Lv3』

状態:良好

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  シュリア
 隠しステータス     魔法適性
  技巧:E        炎系統適性:0  光系統適性:0   
  思考反応速度:E    水系統適性:0  闇系統適性:0
  身体回復速度:F    風系統適性:0  無系統適性:21
  状態:健常       地系統適性:0  系統外適性:154

 獲得称号
  エルフ返り 呪いを定着せし者 復讐者の従属者
 傀儡憑代の繰り手 悪に堕ちたエルフ
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「まぁ、とりあえず危険はないようだし、大丈夫そうだな」

「ダークエルフ……、いいです。本当に生まれ変わったような気がするです」

 自分の体を改めて見回しながらシュリアは言った。

「ほら、行くぞ。悪魔は殺したし、防御用の結界を少し無理に避けて入ってきたからな。ユーミスがそのうち気がついてここに戻ってくる」

 俺が地下牢の入り口付近に移動しようとすると、シュリアから待ったがかかった。

「あ、少し待ってほしいのです。みんなを解放したいです」

 シュリアは、白い猫から黒と白のマーブル模様になった猫のヌイグルミに命じて牢にいたアンデットたちを全て殺して回らせた。
アンデットは不死だが、体を損壊させて魔力が少なくなると存在を維持できず、骨すらもまとめて土塊に変わる。牢の中にはもう、アンデッドがいた気配は残っていない。

「早いところここを出るぞ。時間は有限だ、色々話し合わなきゃならないこともあるしな」

「はいなのです」

 階段のあたりまで来て、シュリアは最後にもう一度だけ振り返った。

「必ず、あの女に報いを受けさせるのです。みんなが受けた以上の苦しみを、絶対に与えてやるです」

暗い熱のこもる言葉に返事を返すもののいない。
そこにあるのは、ただ、うめき声の消えた地下牢だけだった。

 その後、振り返ることなく歩き出したシュリアの後を、黒に犯された白い猫のヌイグルミがてくてくと歩いていた。


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『傀儡憑代』 スキルレベル:  2

 自らの最大MPを代償に非生物を従者として、偽りの命を与える。従者の能力は与えられた最大MPと込められた感情の種類と強さ、周囲の環境により左右される。
また、従者に与えられる最大MPは魔力の最大値以下となる。

自律行動を取れる従者の数はスキルレベル×2体、手動操作の従者は術者の技量に依存する。自律行動を取れる従者が、特定の存在を喰らったときに、1種につきひとつ分、本体にその魔力を吸収することが出来る。新たに吸収した方が大きい場合はそちらに移行される。

【???????】

【???????】

 吸収リスト
『悪魔喰らい』

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新春一発目を狙ったわけではないですが、作者は主人公側への悪堕ちが大好きです。白エルフにワクテカしてた方は申し訳ありません。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
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