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二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む 作者:木塚ネロ

第一章 

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第20話 勇者、食器をミナリスに奪われる

途中、ステータスの表示が携帯の方だとわけわからん表示になってしまっています。PCと携帯両方で見やすい書き方が見つけられなかったので後書きに見やすく載せています。
「はぁあっ!!」

「ギィイイイイゥ!!」

 ザシュッと骨ごと筋張った肉を断つ感触が手に返ってくる。

 痛みに上がる鳴き声は全長2mはありそうな大きさのイノシシのような姿をした魔物のものだった。ただし、似ているだけで明らかにイノシシと違う生き物なことは、鮮やかな緑色に染まっている体毛と頭部に生えた拳一つ分程度の大きさの黒い一本角が示していた。

 『グリーン・ボア』と呼ばれる動物型の魔物で、ゴブリンと並んで駆け出しの冒険者の飯の種になる魔物だった。ゴブリンよりも個体数が少なく(と言うよりもゴブリンが繁殖し過ぎなのだが)、一撃の力はゴブリンを軽く上回りながらも基本的に攻撃が直線の突進だけという狩りやすい相手なのだ。
 なによりも、ゴブリンと違い、こいつらの肉は食える。
 うまいわけではなく、どう頑張っても最下級の肉と言う立ち位置から脱出できない肉だったが、干し肉として加工するとかなり長持ちするために稼ぎの少ない駆け出しにとっては頼りになる非常食になるのだ。

「ギャアアウッ、ギャアアッ!!」

 すれ違いざまに切り飛ばした右の前足のせいで立ち上がれないグリーン・ボアの首を【始まりの心剣】で綺麗に刎ねた。噴き出す赤い血に後ろ足を持って思わず血抜きしようとしてしまったが、もう十分すぎるほどグリーン・ボアの肉は確保してあるので木に吊るすことはせずにそのまま地面に放置することにした。
 あと数時間もして戻ってくれば、犬型の魔物のガルムたちが血の匂いに誘われて群がっていることだろう。あいつ等はあまり頭はよくないので周囲の警戒などすることもなくその場でグリーン・ボアの肉を喰らい始める。
 そこを後ろから奇襲すれば楽々と経験値をゲットできるという作戦だ。

「ふぅ、これでようやく3000越えたかぁ……」

 そうして一度、ミナリスが待っているはずの拠点に戻ることにした俺は元来た道を戻りながら、先程の戦闘で獲得した経験値をステータスボードで確認していた。

 街の壁から外に出てから二日。
 俺は王都を取り囲む森に住むゴブリンやらグリーンボア、ガルムを狩りまくっていた。

 もちろん、経験値を貯めて戦力を増強するためである。
 王女の近衛騎士として召喚の時に周りにいた連中程度ならあの倍ぐらいの人数に正面から囲まれたところで切り抜けられるだろう。しかし、基本的に見栄えと地位を重視したステータスだけのお飾り騎士どもと違い、騎士団長が率いる実戦部隊はそんなわけにはいかない。

 前者は親が貴族だったりして従者に囲まれた安全なレベリングでレベルだけ上げた連中だった。いわゆる民衆などへのパンダとして使う「憧れの騎士様」を演出するための飾りなのだ。
 後者は戦うために存在する武力としての本物の騎士だった。魔物討伐や戦争の先陣を駆け抜け、生死の境界線の上で死神とワルツを踊ってきた力の騎士。当然、体のいたるところに傷跡が刻まれ、民衆の英雄として喧伝するには憚られる容姿となっていることもままある。

 だが、その力だけは本物だった。

 今のままでは正面から10人以上に囲まれたら多少の被害を覚悟の上で逃げるしかないだろう。そうしなければそのまま無残な骸を晒すことになる。
 レベルを上げることに経験値を割くにしろ、心剣を解放する方に経験値を割くにしろ、まずはとっとと力を手に入れなおすことが最優先で進めなければならないことだった。

「とはいえ……、この-20000はいくらなんでも多すぎんぜ神様よぉ……」

 思わず深くため息が漏れる。
 ちなみに、この二日でゴブリン、グリーン・ボア、ガルムを累計で50匹近く殺しているはずだったが、それで手に入った経験値はおおよそ2000程度。
 割り振ってない分も合わせて振り分けられる経験値は3000ちょっとしかなく、20000には遠く及ばない。しかも、二日で50匹近くも殺せたのもいくつかの群れを運よく発見できたためであり、コンスタントにこの数を狩るのは厳しいものがある。

「くっそ、何が強くてニューゲームだ。二週目の方が育成ハードモードじゃね?」

 王都周辺の魔物はかなり弱く、魔物の平均レベルは20程度が平均だった。これは城壁のある街の中で生まれ、仕事も街の中だけで基本完結してしまう職に就いた成人男性のレベルとほぼ同じくらいのレベルだった。
 レベルが同じ=戦力が同じということではもちろんない。同じレベルでも基本的に魔物の方がステータスが高く、戦い方も本能に強く刻まれているために戦闘の訓練もしていない普通の人間が1対1で正面からやり合えば同じレベルのゴブリンでも負けるだろう。

 しかし、ここで重要なのは、手に入る経験値はレベル差ではなく、ステータスの差で補正がかかっていると言う点だ。いくらレベル差があったところでステータスが劣る相手を殺しても多くの経験値は手に入らない。
 そして、俺のレベルは現在1だったが、心剣と、確認はできていないが【称号(・・)】の効果で相当底上げされ、偏りを考えなければおおよそ50レベル程度のステータスがある。

 いくら同じレベルでの強さが人間よりも高いとはいえ、ここら辺の魔物は確実に『格下』でしかなかった。

「レベルアップはしばらくお預けだな。取りあえずは、【八目の透本剣】から解放だな」

 ステータスボードを表示させると、心剣の欄から【八目の透本剣】をタップする。

===============================

 【八目の透本剣】

 習得条件:全てを見通すと呼ばれる『八目水晶』を所持しているい
      ずれかの心剣で切断すること。

 習得効果:対象の情報をより詳細に『鑑定』することができる。

      一度鑑定するか、倒した魔物、アイテムの情報を蓄積し、
      後に閲覧できる。

      閲覧許可のない相手のステータスボードを盗み見ることが
      できる。

      《パッシブ効果》 魔耐 +50

   必要解放経験値:0/3000   配分可能経験値量 3011
===============================

 経験値を割り振ってから、ウィンドウを消し、右手に【八目の透本剣】を作り出す。
 手に収まったのはサバイバルナイフと呼ばれる形状の心剣だった。軽く反りの入った大型のナイフは、刃の反対側にギザギザの凹凸があり、肉厚の刀身部分は親指程度の大きさの丸い穴が8つ空いている。
 開いた穴には虹と同じ七色に淡く色づいた水晶と、黒に色づく水晶がはめ込まれていた。
 柄の頭の部分には本の意匠が浮かび上がる透明な水晶が取り付けられ、そこに金属の輪が嵌められていた。

 その金属の輪を四分の一ほどクルリと回転させると閉じられていた本の意匠が開いたものに変わった。それと同時に浮き上がったのはステータスボードと似た緑色の半透明の板、データボードだった。

===============================

  鑑定目録・魔物             検索 _____
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ゴブリン類
   ゴブリン
   ソードゴブリン
   アーチャーゴブリン
   マジックゴブリン
   モンクゴブリン
   セージゴブリン
   レッドゴブリン
   ブルーゴブリン
   ………………
   …………
   …… 
===============================

 「へぇ、一度目の時のデータは消えたわけじゃないのか」

 一応、画面をタップしてアイテムの方のデータも表示してみたら、きちんとデータは表示されていた。
 剣の柄頭につけられた水晶の輪を再び回転させてデータボードを閉じると、鞘がないので刃の部分を革紐でぐるぐると巻いて剣帯に吊るした。消してしまうと鑑定が使えなくなるし、出しているだけならMPも消費しない類の心剣なので常時出したまま身に着けておくようにしていた。

「ステータスオープン、『鑑定』」

 次は開いた自分のステータスボードに対して【八目の透本剣】の効果である『鑑定』をかける。すると、青色のステータスボードから浮き上がるようにして緑色のデータボードが現れた。

===============================
  宇景海人
 隠しステータス     魔法適性
  技巧:SSS      炎系統適性:0  光系統適性:0   
  思考反応速度:SS   水系統適性:0  闇系統適性:0
  身体回復速度:F    風系統適性:0  無系統適性:0
  状態:健常       地系統適性:0  系統外適性:0

 獲得称号
  異世界人 勇者 心剣の担い手 俊足の覇者 鉄壁の守護者
  魔王の討伐者 世界の敵 技巧を極めしもの 逃亡者 
  復讐者を誓いしもの 復讐者の主
===============================

 さて、これですべてのステータスの要素について出揃ったところで各種ステータスについて改めて示しておく。

 『HP』
 ヒットポイント。
 生命力を表す数値であり、傷を負ったり、毒や病に侵されたりすると減少する。
 この値が0になると死亡する。

 『MP』
 マジックポイント。
 体内に存在する魔力を表す数値であり、魔法を使ったり、『威圧』『魔刃』などの一部のスキルを使用すると減少する。

 『筋力』
 発揮することのできる身体的な力の上限値。

 『体力』
 発揮することのできる身体的な力の持続力。

 『耐久』
 物理的な攻撃を受けた際に、HPに受ける影響をどれだけ抑えられるかの数値。

 『敏捷』
 瞬間的に出せる身体速度の上限値。

 『魔力』
 魔法やスキルが発動する最小魔力以上の魔力を込める際に出せる出力。

 『魔耐』
 魔法や魔力そのものによる攻撃を受けた際に、HPに受ける影響をどれだけ抑えられるかの数値。

 ここまでが一般的なステータスボードに載っている能力の値だった。ステータスボードは他人からは見えないが、自分の分は誰でも見ることができ、本人が許可すれば他人にステータスを見せることも可能だった。(奴隷商で許可も得ずにミナリスのステータスを見ることができたのは、称号【復讐者の主】の効果だった)

 しかし、この世界の人間には知られていないが、実際にはこれ以外にもステータスとして存在しているものがある。それが、現在表示されているデータボードには隠しステータスだった。
 これは、ほかのステータスと違い、数値ではなく上はSSSから下はGまでの段階であらわされている。それぞれについての説明すると、

 『技巧』
 身体操作などのステータスの技術レベル。
 ステータスとして存在している値をどれだけ上手く扱えるようになるかを表した位階。

 『思考反応速度』
 五感やスキル、魔法等で得た情報を処理する速度。
 特に戦闘時における思考の速度について表した位階。

 『身体回復速度』
 HP、MPなど自然回復速度についての位階。
 状態異常からの自然治癒、欠損部位の修復速度などにも影響がある。

 と言うようになる。

 これらについては【八目の透本剣】だから表示されるものであり、『鑑定』の効果を持つ魔法を使っても表示されることはない。

 魔法適性については、魔導士ギルドが製作・所有している『適性水晶』でも大雑把に判断することができる。結構な金がかかるため、多少の余裕もない人間は試しもしないのだが。
 この魔法適性は魔力とは別に、その系統に属する魔術のレベルの上がりやすさと魔力を魔法として変換する際のやりやすさに関わってくる。

 簡単にいえば、適性が高い系統の魔法ほどスキルがよく育ち、魔力を魔法にするときの魔力の操作が簡単にできる。たとえば、炎適性が高ければ『火術魔法』のスキルが早く育ち、難しい魔法も低い人間よりもずっと楽に使えるようになると言うことだった。

 ちなみに、無系統は『フォースアップ』や『フィジカルアップ』などの強化魔法などが該当し、系統外魔法は呪術、幻術、精霊魔法や儀式魔法などの特殊な魔法が該当している。この系統外はそれ以外に他の炎、水、風、土、光、闇、無の7系統と重複するような効果の魔法も多く、詳しい関係がどうなっているのかはいまだ解明されていなかった。

 この魔法適性は完全に生まれたときの才能で決まり、その後はほとんど変化することが無い。

 さて、ここまででお気付きだろうか。俺の魔法適性は全て0である。
 つまり、俺は魔法が使えません。そもそも魔力を魔法として組み上げることができないのです。

 とはいえ、心剣の特殊能力は魔法と同じようなものだったし、これらは自分で魔力を加工する必要はなく注ぎ込めばいいだけのものなので特に問題はなかった。
 しかし、大抵の特殊能力が魔力を馬鹿喰いする上、威力も高いものばかりで小回りが利かないという欠点もあるが大抵の魔法は質と規模さえ考えなければ似たようなことは出来たのだ。

 話を戻して、最後が称号についてである。
 これについては、俺自身もよく分かっていない部分もあるが、パッシブ系スキルと同じように何かしらの条件を満たすことが獲得につながるようだった。

 称号によって効果はまちまちであり、たとえば『異世界人』の称号なら固有技能『多言語理解』を得るし、『勇者』の称号なら経験値の獲得とスキルの熟練度に成長補正がかかる。技巧を極めし者なら、訓練をサボれば落ちる技巧のランクがSSSで固定させる。

 この称号も【八目の透本剣】の鑑定でしか見ることはできず、基本的に知っているものはいない。しかも、獲得条件も表示されず、推測できるものについてもスキル以上に難易度が高いもののようでそもそも称号を持っている人間自体が珍しい有様だった。

「やっぱり称号もそのままなのか……」

 鑑定がなかったために確認できなかったが、ステータスを見る限り解放されている心剣の効果を鑑みても耐久、敏捷、魔耐の値が高かったのでそうじゃないかとは思っていたが、やっと確認を取ることができた。

 いくつかのことを確認し終えたデータボードを消すと、ちょうど拠点にしていた猟師小屋にたどり着いた。

「あ、ご主人様。お帰りなさいませ」

「……おい、ちゃんと寝てろって言っただろうよ」

 額の汗を軽く拭ったミナリスに少しだけ顔をしかめながらそう言ってやる。
 出かける前にきちんと寝ていろと言ったのを忘れたらしいウサ頭が、猟師小屋の前の少しだけ開けた空き地で剣で素振りをしていた。
 今は人目が存在しないので幻術を解いてモフモフのウサミミとフリフリの尻尾を揺らしていた。

「もう大丈夫です、小一時間ぐらい前に衰弱の状態異常解けましたし。それより寝たきりで過ごしていたほうが体に悪いです」

 涼しい顔をして言うミナリスは確かにすっかり健康な状況に戻っているようだった。
 一応、さっき手に入れた鑑定を使用してみる。

===============================
  ミナリス
 隠しステータス     魔法適性
  技巧:F        炎系統適性:20  光系統適性:89   
  思考反応速度:E    水系統適性:61  闇系統適性:85
  身体回復速度:D    風系統適性:22  無系統適性:38
  状態:健常       地系統適性:11  系統外適性:118

 獲得称号
  復讐者の従属者 幻炎毒鬼の持ち主 生命を作り替えしもの
===============================

 さすがは獣人らしく、回復速度が並ではなかった。
 ちなみに、この回復速度、一応魔法やスキルなどで上がるのだが一般的な戦闘経験のあるベテラン兵士でEランクが平均だった。

「確かに衰弱は解けてるみたいだな」

 それにしても、ミナリスは光・闇・系統外の適性がかなり高い様だった。一般的に魔法適性が40を超えたらその系統の魔法の魔術師を目指すべきと言われるが、獣人が拡散しやすい魔力の性質を持っていなければ固定砲台として後衛に育てても一線級の魔術師に育っただろう。
 魔力を魔法にしてもその拡散性は変わらないのでその方向はなしになるのだが。

「まぁいい、とりあえずは飯にするか」

「はい、支度はできています」

「ん、ありがとな」

「奴隷として当然の務めですから」

 魔力酔いをしていた時は褒めると照れたように顔を赤くしていたが、今ではすっかりポーカーフェイスが板についたようで(褒められるのに飽きたとは思いたくない)すっかり余裕の表情を見せるようになったミナリスと小屋の中に入った。
 小屋の中にはベッドが二つと(一つは猟師が獲物を山積みにするところに布をかぶせて作った即席のベッドだった)小さなテーブル、それから小さな暖炉があるだけの簡素な部屋だった。

 二日前に初めて訪れたとき、埃だらけで長年使われていなかったことが窺える猟師小屋を軽く掃除した後、衰弱の緩和ポーションが切れたミナリスをベッドに寝かせて、それからとにかく食事と睡眠を繰り返させた。

 獣人の高い回復速度もあって、痩せこけてそぎ落とされたようになっていた体の肉はすっかりと元通りになっていた。
 肌と髪には艶が戻り、深く刻まれていた目の隈も見る影も無くなった。
 ただ、胸の大きさだけは元の大きさまでは戻らなかったようで(それでも明らかに平均以上の大きさはあったのだが)本人は微妙に落ち込んでいる様子だった。

 そして、この二日の間に復讐心のすり合わせも行った。
 契約時の追体験はいわゆるダイジェストのような感じで、感情と簡単な経緯はしっかりと焼き付けられるが、そこに至る詳しい流れまでは把握しきれない。
 まず初めに聞いたのはミナリスが目指す復讐の理由とその相手。

 助けた相手に裏切られ、味方と信じた相手が敵に回る。
 復讐する理由なんてものは誰も彼も似たようなところがあると思っていたが、あまりにも俺と似た復讐理由に胸糞が悪くなったのは確かだ。

 話を聞いている間、聞いた後も、ミナリスには何の言葉もかけなかった。
 辛かったなとも、許せないなとも、慰めの言葉をかけることはなかった。

 同情など格下の人間に無関係な人間が掛ける蔑みのセリフでしかない。たとえその言葉が善意から出たものであったところで、その言葉の本質は変わらない。

 だからこそ、似た感情を抱える人間はその同情がどれだけ屈辱的な言葉かを知っているがゆえにそれを口にしない。
 ……それを口にできるのは、この熱に焼き焦がされたことが無い人間だけなのだから。

 さらに言えば、この復讐はミナリスのものであると同時に既に俺のものでもあるのだ。残念ながら自分の境遇を自分で憐れむような時期はとっくの昔に過ぎ去っていた。

 そうして昨日の夜で俺とミナリスが出会うところまでの話が終わり、今度は俺の番と俺の出自までを話した。
 異世界から召喚された勇者であるということ。一度この世界を体験し、王女やかつての仲間に裏切られ、復讐を誓ったこと。二度目が始まった直後に王女とその近衛騎士どもを伸して逃げてきたこと。

 一通り話を終えたところで、ミナリスは話を半分ぐらいしか理解できていないようだったが、追体験を経験したこともあって、何度か詳しい説明を繰り返したところでようやく理解できたようだった。

 よく考えてみれば、この世界の基準ではもともと普通の村娘でしかなかったミナリスが読み書きができる(たまに来る行商人やその護衛に教わっていたらしい)だけでも十分優秀なのだ。
 おそらく、ミナリスはそうとう地頭がいいのではないかと思われる。

 美人で頭がよく、運動もできる。地球にいたころなら高嶺の花と言うやつだっただろう相手とこうして共犯者なんて関係になっているのだから不思議なものだ。

「ご主人様、どうぞ冷めないうちに召し上がってください」

「ん、おお」

 テーブルに肘をつきながら、丸太を切っただけの椅子に座ってそんな回想をしていると、グリーン・ボアと少量の干し野菜のスープが出てきた。
 塩ベースで作られたスープはあたたかそうな湯気を立てていてとてもおいしそうに見える。少なくとも、俺がミナリスに作っていたものよりも確実にうまいだろう。

「あれ、この食器はどうしたんだ?」

 街で用意したのはフォークで、スプーンは用意していなかった。だが、スープが入った底が深めの木の食器の前には木のスプーンが置かれている。

「私が木の枝を削って作りました。フォークよりも食べやすいかと思ったので」

 たしかに、スープの肉や野菜は細かく切られていて、フォークでは少し食べにくかったかもしれない。

「へぇ、器用なもんだな。村でもこういうことやってたのか?」

「はい、冬の間、木の彫物を作って家計の足しにしていましたから。でも、それはあまり出来が良くないので、あとで作りなおそうと思います」

「そうか、俺は十分使いやすいスプーンだと思うけど……」

 俺の目線では十分だが、ミナリス的には不満が残るらしい。
 まぁ、俺が良い出来と言っても出来を考えるのはミナリス自身だと思うので本人が納得できないならそれでもいいと思うことにした。

 気を取り直してさっそくスープを食べ始めることにする。

「お口に合うとよろしいのですが、どうでしょうか?」

「んんっ、うまいよ。ミナリス、料理上手かったんだなぁ」

 よく考えてみれば初日の料理(魔物化毒&対魔物毒が仕込まれてはいたが)も見た目だけは普通にうまそうだったのを思いだす。
 味のよく染みた肉や野菜を食べているうち、気が付けば夢中になってスープを飲み切っていた。

「ごちそうさま、美味しかったよ」

「お口に合ったようで良かったです。ですがその、ごちそうさまと言うのはどういう……?」

「ああ、俺が元いた世界の挨拶の一つだよ」

 そういうと、ミナリスが少し不安げな表情をした。

「ご主人様が元いた世界の……。あの、ご主人様はいつか元の世界に帰られるのですか?」

「ああ、安心しろ。何があっても復讐が終わらないうちにこの世界から帰ることはないよ」

 そう言うと、ミナリスはどこかホッとしたような顔になった。

「それにたぶん、全部の復讐が終わって、いろんなことが自分の中で区切りがついて、無理せず安全に帰る方法が見つかったとしても、俺はきっと帰らない。もう、戻れないし作り直せないだろうから」

 そういうと空になった自分とミナリスの食器を持って立ち上がった。

「さ、余計なことは後回しにして復讐を全て成し遂げてから考えればいい。それより今は目の前の問題を解決することがから始めよう」

「ご主人様、食器は私が片づけるので置いてください」

「まず一番最初にやらないといけないのは、戦力を増強することだな」

「ご主人様、食器は私が片づけるので置いてください」

「……あの、ミナリスさん? 話、聞いてます?」

「ご主人様、食器は私が片づけるのでおいてください」

「………」

 俺は軽く微笑んだまま、食器を渡せとばかりに両手を差し出したまま頑として引かない態度で謎の迫力を醸し出すミナリスに気圧される。先程見せた少し不安げな様子など幻だったのだろうか。

「ご主人様、食器は、私が、片づけます」

 いったい何が彼女を駆り立てるのか、微笑みから表情をピクリとも動かさずにゆっくりとミナリスが告げる。
 その謎の迫力に押されるまま、ミナリスの手に食器を置くと満足そうに一つ頷いて食器を自分の前に引き寄せた。

「それで、この後は具体的にどうなされますか、ご主人様」

「あ、ああ、えっとだな」

 まるで何事もなかったように尋ねるミナリスに、一瞬『あれ、何言おうとしてたんだっけ?』という気分になったが一つ咳払いして思考を切り替える。

「んんっ、いまから十日間、ここから少し先にある未発見のダンジョンに潜って、中の魔物を全て掃討しに行くぞ(・・・・・・・・・)

「……え?」

 小屋の中を一度沈黙が支配した後、ミナリスが思わず漏らした声が響くのだった。


携帯だとステータスが見づらいと言いうご指摘を受けましたので、どうにか綺麗に表示しようと考えたのですがうまくいかなかったので、あとがきに書かせていただきました。申し訳ありません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宇景海人
 隠しステータス    
  技巧:SSS         
  思考反応速度:SS 
  身体回復速度:F    
  状態:健常       
 魔法適正
炎系統適正:0  光系統適正:0
水系統適正:0  闇系統適正:0
風系統適正:0  無系統適正:0
地系統適正:0  系統外適正:0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ミナリス
 隠しステータス     
  技巧:F           
  思考反応速度:E    
  身体回復速度:D    
  状態:健常       

魔法適正
 炎系統適正:20  光系統適正:89
 水系統適正:61  闇系統適正:85
 風系統適正:22  無系統適正:38
 地系統適正:11  系統外適正:118
+注意+
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