頭が重い…。
途中でクーラーのタイマーが切れたらしく、シャツが有り得ない量の汗で濡れている。上体を起こしてみて、自分の部屋じゃない事に気が付いた。
「は?どうなっているんだ?」
ベットの上に座り直して、重たい頭を軽く振る。カーテンの隙間から朝日が眼を射て、次第に記憶が蘇ってきた。
「大西、今日のMVPだろ、イッキいけよ。」
「打線だけじゃなくて酒にも強くないと、英雄やっていけねぇぜ?」
…あぁ。なるほど。
イケナイ事だけど、部活終了後、打ち上げをした。名目は【3年生との紅白戦で、俺のヒットでさよなら勝ちしたから】
「あいつらに乗せられたな…。」
思い出した記憶の断片とこの状況からして、つい飲みすぎてそのまま寝てしまったので、大方誰かが連れ帰ってくれたんだろう。小綺麗な部屋の様子からすると、関根や河合ではなさそうだ。でも『人は見掛けによらず』とも言うし、泊めてくれた礼も言わないといけない。
ドアに向かって歩いてみると、頭は重いのに体はそうでもなかった。二日酔いと言うよりも、単に眠り過ぎなのかも知れない。壁に掛る時計から、もう昼近い事を確認する。
「おっと。」
ドアノブに触れるより先に意外な人が目の前に現れた。キャプテンの高島だ。
「お、おはようございます。あの、なんかお世話になったみたいで…」
慌てて頭を下げた。高島は俺を上から下までざっと見る。
「大西、何も覚えてないのか?。」
「…すみません。」
多分、いや絶対怒られる。先生にバレて『大会辞退』になったら、クビだけじゃ済まされない。
「…まさかついてくるとはなぁ…。」
「え?」
恐る恐る高島の顔色を窺う。
「打ち上げしてたってな?…あぁ先生には隠してる。関根や河合にも口裏合わせてもらったからな。」
「すみません。…えっ!?」
再度謝って、顔を上げると新聞をつき出された。
「英雄は短命と言うしなぁ。大西、そう言う事だ。」
高島が笑って、俺の肩をポンッと叩いた
…ようだった。だが実際は手は体をすり抜け、後ろの棚に触れた。
社会面の隅に書かれた小さな記事…
─公園の池に誤って転落…水死─
「俺が通りかかったら、あの二人、先生と思ったらしい。おまえの酔いを覚まさせようとして池に落としたら…そのままポックリ。ただの事故で片付けられたから、次の大会にも出られるしな。一見落着だ。」
高島がコメディアンのようなアクセントで説明する。
「分かったら、関根と河合にも挨拶してこい。…まぁあの二人に見えればの話だが。」
俺のシャツからポタポタと汗が…正確には池の水が…落ちてくるが、それが床を濡らす事はなかった。
──友達だと、いい先輩だと思っていたのに『人は見掛けによらず』…だな。
──END── |