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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

試験編 第二章「テストを利用するモノ」

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04-30 彼らを負かしたモノ




────いい、私のかわいいアリス


    なにがあってもこれだけは忘れてはダメよ


    パデュエールの女には決してやってはいけないことがあるの────







戦場を砂地の地上に移した2-A及び3-Aと義勇軍ベータチーム。
試験と思い込むがゆえに必死な生徒達の食らい付くような攻勢は
墜落による混乱と子供と侮る驕りを突くように彼らを追い込んだ。
20あった敵影を今ではおよそ半数近くにまで減らす事に成功する。
それでも経験差からくる立て直しの速さと全体的な能力や装備の差が
勢いで圧倒しようとする生徒達に抵抗し予想以上に時間がかかっていた。
だが戦いの流れはもう完全に生徒達に傾いており彼らの逆襲は僅かに遅い。
このまま押し切れると誰もが思った時、全員にある一文が通達された。


───これより全生徒スキル使用禁止


それによる驚きは度肝を抜く程だったが、じつは混乱はさほど無かった。
特別科にとって何らかの装備や機能の使用禁止状態での訓練は珍しくもない。
事前に生徒らにとって不利益な仕掛けがあるのを告げられていた事も大きい。
尤もその裏にある事実を感じ取った代表二名は大きく息を呑んだが。

「これを待っていたんだ!」

だからそこで多くの特別科生徒たちは初めて知ることになる。
戦いの流れというものは一瞬でひっくり返されてしまうのだと。





「実戦もろくに知らないガキが! 舐めんじゃないよ!」

女兵士の苛立ち混じりの怒号と共に生徒たちの悲鳴が響く。
怒りを込めた長柄の大槌(ハンマー)が生徒達を軽々と吹き飛ばして、宙に舞う。

「リゼット、オルト、カバーに入って!」
「はい!」
「了解です!」
「くっ、あと一歩でしたのにまさかここまで!」

混乱は確かに少なかった。
されどスキルが使えなくなった弊害は彼らの想定以上。
それは攻撃手段が狭まるなどという以上の脅威であった。
個人ごとのステータスで勝っているのは代表の二人だけ。
外骨格は学園では最も優れた物でも相手には一歩及ばない。
そして義勇軍はこれまで通りに何の憂いなくスキルを使える。
攻撃はもちろんあらゆる防御も身体強化を含めた各種補助も。

「下がって態勢を整えろ!」
「これ以上はやらせない!」

山吹色と紺色の外骨格を纏う男女の生徒(リゼットとオルト)が暴れまわる女兵士の前に立つ。
その手にあるのは両者ともにハンドガン型の銃器と片手の両刃剣(ブレード)だ。
牽制など入ってない連射で彼女を狙うがスキルの盾を使われ防がれる。
ただフォトンの弾丸を放つだけでは中級以上の防御スキルは貫けない。
いつもならスキルで威力の増強や徹甲弾化させるなどして対抗する。
それができない現実とその無力さに二人の従者は唇を噛んだ。

「まさかガキども相手に阻害装置に頼ることになるとはね!」

スキルを封じなくては押し込まれていたと理解しているのだろう。
それが余計にその女兵士に苛立ちを募らせ、力任せな大槌が落ちてくる。
二人は下手に下がれば後ろの仲間が追撃を受けるとブレードを重ねて
受け止めるが落雷のような衝撃を前に剣は硝子のように砕け散ってしまう。

「ぐあっ!?」
「あぁっ!!」

その一撃を前に吹き飛ばされながらも咄嗟に後ろに跳んで直撃を避けたのは
さすが特別科といえる反応だったが一時的な拮抗もできない現実に青ざめる。

「はんっ、素面ならともかく今は全身にスキルかけてんだ。
 私の一撃をガキに受け止められるわけないんだよ!!」

経験値を度外視すればそこまでのステータス差は彼らの間にはない。
だが身体強化スキルによる上昇が外骨格の差もあって大きな開きを生む。
スキル併用でなければ貫けないほどの防御の盾を作られてしまう。
外骨格だけでは耐えきれない攻撃をされ続けててしまう。
相手だけが一方的にスキルを使えることの意味は、あまりに重い。

「ならボクの愛を受け取ってみてと言ってみたり?」
「っ!?」

リゼットとオルト相手に苛立ちながらも勝ち誇っていた女兵士の耳に、
全く注意していなかった方向から声が届いて、咄嗟にそちらに目が向く
最初は何が見えているのか理解できないほど丸い“円”が見えた。
しかし次の瞬間には戦慄が走り大槌を盾のように構えてその“円”を受ける。
それは円錐状の突撃槍(ランス)。彼女の視点に合わせて真っ直ぐに投射されたのだ。
彼女によって。

「うぐぅっ!!
 第二位のミューヒ・ルオーナか! なんて馬鹿力!」

大槌の頭で鋭い穂先の受け止めながらその先の小柄な人影に向けて叫ぶ。
投擲された槍は受け止めたにも関わらず勢いがまるで落ちることなく、
女兵士の強化された肉体と各種防御スキルを前にしてなお、押し込む(・・・・)
その様子をヒナは朗らかに笑いながら、冷たく呟いた。

「やっるぅ!
 でも────コード発信、自爆(バースト)
「っ────!」

苦悶かあるいは悲鳴か。
それすらも吹き飛ばすような轟音と閃光に女兵士は呑まれた。
スキルは使えなくされたが武装の機能には何の問題も発生していない。
奪取阻止機能の最終手段たる自爆システムを彼女は躊躇いなく使った。

「……まずいよアリちゃん、これジリ貧パターンだよ」

長槍を回転させるように振り回して目前の相手を弾きながらヒナはこぼす。
センサーの類も機能しているため大槌の女兵士が爆発から逃れたのが見えた。
ダメージは与えられたが後方に戻って回復されてしまえばフリダシである。

「わかっています、ですが!」

それを背中合わせで聞いたアリステルは苦悶の表情を浮かべる。
唯一勝っていた数さえも態勢を整えだした彼らの前に圧倒されていた。
素のステータスが唯一彼らを上回る彼女ら二人を矢面に立たせることで
なんとか拮抗状態を維持しているがそれは苦肉の策としかいえない。

「あの方の真似は難しいですわねっ!」

「ハハッ、あれはできちゃうイッチーの頭がおかしいの!」

降り注ぐ炎の弾丸を共に切り払いながら本気の愚痴をこぼす。
なまじそれぞれのクラスで代表にされる人間が変わらなさすぎた。
彼女ら以外に自身を含めたクラスを指揮できる人材が育っていない。
アリステルは家柄も成績も優秀過ぎた。ヒナは言動が特出し過ぎていた。

「戦闘中に雑談とは随分余裕があるじゃないか!」

「他も思ったより動揺がないな。さすが、といっておこうか!」

切り払った火弾の後ろから突貫してくる二つの影と二つの一閃。
それを各々の武装で受け止めるもそこには苦虫を噛み潰したような顔。
彼女らの指揮能力は決して低くはないがどこぞの少年のように
自らも前線に立ちながら全体の指揮もとる、などというのは無理だ。
いくらマルチタスクが得意といってもそれにも限度というものがある。
通常戦闘時に扱う情報を自らが理解しながらさらに全員の状況を把握し、
目前の敵と切り結びつつ全体の戦況もまた見て皆に適切な指揮を出す。
毎秒数百発放つガトリング砲の弾丸を把握するより扱う情報が多過ぎる。

「さすが、なのはこれを読んでいたあの方ですけど、ね!」

「もっと具体的に教えておいてほしかった、よ!」

フリーレ─を装った彼─の特別試験開始を告げたメッセージ。
そこにあった言葉の意味を理解して片や悔しがり、片や恨み節を吐いた。
同時にそれをぶつけるように敵のバイザー越しにある顔面を殴りつける。

「狙って!」
「一斉射!」

たたらを踏む彼らごと狙うように後方に指示すれば襲うは数多の光の線。
通信すら使えないため指示は口頭のみになっていたが反応と精度は高い。
どの射撃も敵兵士を捉えていたが同じ色の光の壁に阻まれ届かない。

「っ……今までどれほどスキルに頼り切りだったか。
 イヤになるほど理解させられる光景ですわね」

「またひとつ賢くなったね!
 な~んてふざけてる場合じゃさすがにないよねぇ、来たよ!」

先程の二人と入れ替わるように襲いかかってくる複数の影。
この2クラスの代表たる彼女たちはそれをむしろ前に出て食い止める。
能力も装備も上の相手を抑えられる壁役になれるのも彼女らだけだった。
しかも指揮も壁も二人が半分ずつ請け負わなければ拮抗状態にも近づけない。
だが結果指揮の精彩は欠き、敵の撃退も進まず徐々に追いつめられている。

───どうすれば

アリステルは難しい状況での指揮をとりながら頭の片隅で思考する。
余計に全体指揮や目前の相手との攻防がおざなりになってしまうが、
ここで打開策を見いだせなければ総合力と経験の差で敗北と出会う。
押されている原因である様々な差はこの場ではどうしようもない。
スキルが使えればと思うが封じたのが彼らなら希望的観測はできない。
考えるべき手段は“ここにある自分たちが使えるモノ”でなければ。

───なにがわたくしたちにはある?

人数差はまだこちらが有利。相手は11人だがこちらはまだ28人。
スキルが使えない差を約2.5倍の人数差で抑えているのが現状だ。
しかし徐々にひとり、またひとりと倒されているのも現状である。

───時間の問題です

幸いスキルの封印は外骨格に何の影響もなかった。
こちらの飛行能力には何の障害もない以上、頭上を取るのは簡単。
しかしながらそこに陣取れても射撃兵装は事実上ほぼ無力化され、
空対地の一撃離脱などという戦法や技術はあちらの方が上手である。
また距離を取れば彼らに大型砲身(キャノン)を使われる危険性があまりに高い。
こちらも所持するが敵にのみスキルが使える状況での砲撃戦は勝ち目がない。
白兵戦の距離になっていることがある種その選択を遠ざけているのだ。

───この距離は崩せない

武装にもスキル阻害の影響は出ていない。
アリステルのフォスタには容量限界まで積み込んだ多量の武装がある。
それも特別科のトップたる彼女に与えられている学園最高峰のそれら。
だがこれを解放してクラス全員に装備させても攻撃力の底上げが限度。
そもそもそれでも彼らの武装と比べれば一歩スペックは劣ってしまう。
おそらくは拮抗してられる時間を延ばす程度の効果しかない。

───状況打破には足りない

相手は少ない人数で的確な陣形を組んで、堅実な攻撃を繰り返す。
冒険はせずこちらの戦力を徐々に減らすヒット&アウェイ戦法。
攻撃を加える者も後方からの射撃やスキルの援護で隙がない。
最初の油断や慢心は消え、確実に勝つ方法を選んできていた。

───これを現状で正攻法で崩すのは無理です

なら、必要なのは奇策。
彼らの動揺を誘い、陣形を崩せる一手を打つしかない。
アリステルは思いつく限りの意表を突く手を考えては却下する。
例えば彼女かヒナのどちらかが敵陣に突っ込んで内部から彼らをかき乱し、
その隙をつくように包囲戦を仕掛ける──という希望的観測による策だ。
この程度のことを読めない相手ではないだろうし突撃役が危険すぎる。
しかも奇策というのはうまくいけばいいが失敗すれば何らかの痛手を負う。
この状況で誰かが余計な動きをすれば拮抗が崩れて一気に敗れる事も。

───あの方なら、どうしますの?

たった二度。戦う姿を僅かに見ただけの少年。
それだけで強烈な印象を与え、どこまでも彼女自身を引き付ける存在。
彼ならば唯一勝る数さえ失い続けるこの状況でどんな一手を───

「ほらほら、最初の威勢はどうしたお嬢ちゃんども!」

「くっ!」

頭の片隅での思考すら遮る女兵士の猛攻に意識を切り替える。
襲いかかるは再び戦線に戻ってきた大槌を振り回す女兵士。
特徴的だった赤黒いバイザーは砕け散って顔が見えていたが、
この部隊を再びまとめあげた女傑の一撃は変わりなく力を響かせる。
外骨格越しでも体の芯まで衝撃を感じ、砂地ですら揺らがすよう。

「せめて、もっと手数があればっ!」

その槌捌きをいなしながら、もっと人数が欲しいと思わず嘆いた。
例えひとりひとりの力量や装備が劣っていてもそれを上回る数があれば。
そこまで圧倒的な数でなくとも別の一手を打てるだけの余裕が欲しい、と。
だがそれは“ここには無い”ものである。

───ほんとうに?

「っ、きゃあっ!?」

脳裏をよぎった疑問による空白がアリステルを大きく後ろに吹き飛ばす。
大槌の一撃をまともに食らった彼女は宙を舞い、大地に叩きつけられ沈む。
砂地のおかげで見た目ほど衝撃はないが逆に絡めとられ起きるのが遅れた。
その体を覆うように影が差して、少女はハッとなって顔を見上げた。

「戦闘中に考え事してんじゃないよ世間知らずのお嬢様が!」

倒れた自分に飛び掛かるようにして大槌を振り上げている女兵士。
咄嗟に砂に埋まった両手を無理やり引き上げて顔の前で交差させた。

「あ、ぐっ、ううぅぅっ!!」

盾代わりにした手甲とその表面にあるバリアによる衝撃緩和能力を
超えてくる一撃に体がさらに砂地に沈み込み、両手が痛みと痺れを訴える。

「アリちゃん!」
「アリステルさま!」
「おっと、悪いがパデュエールにはこのまま落ちてもらう!」

援護に回ろうとした生徒達は他の兵士たちに邪魔されてしまう。
一人で壁役をしなければならなくなったヒナは余計に動けなかった。

「さすがに十大貴族の血を引いてるだけはある。
 なかなかいい反応だったが筋力だけなら私が上さっ!!」
「あぁっ!!」

女兵士の叫びと共に大槌に込められた力が増す。
交差してそれを受ける腕もろともアリステルは痛みに悲鳴をあげた。
彼女の筋力はAランク。接敵時に確認したこの女兵士はAA+だった。
そこにスキルと外骨格による強化(ブースト)が加わればそれ以上の開きがある。
下が砂地なために力が多少余所にも逃げているが些細な違いといえた。
不利な体勢での単純な腕力勝負では万が一にもアリステルは勝てない。

──負け、る?

「そのきれいな顔にけがしないうちにおとなしく投降しな。
 あんたならいい交渉材料だ。全員の命の保証はしてやるさ」

もう力の差はわかっているだろう、と含みを持たせながら投降を促す。
されど少女の顔は苦痛に歪みながらもその強い戦意に陰りなどない。
むしろ武器をどかした瞬間に噛み付きかねないものを彼女に感じさせた。
そも投降勧告を聞いていたのかさえ怪しい熱意がそこにある。

「──けれない、っ!」

「なに?」

「負けられないのですっ」

交差した腕のまま大槌を全力で押し返そうと無駄なあがきをする。
女兵士は違和感を覚えながらも念のためさらに力を込めて押さえる。

「あぐっ!」

「力じゃ勝てないってのが分からないのかい!」

「任されたのですっ、頼まれたんですっ、わたくしは!」

アリステルはテロリストの話など最初から聞いていなかった。
しかも最初の意図的なそれと違い、これは本当に意識が向いていない。
大槌を叩きつけられた瞬間に連想された自身の敗北のイメージが
彼女の負けたくない理由を刺激して頭と心をそれ一色に染めた。

「たかがお嬢様風情が私を!」

「あの方に! 彼に!
 シンイチさんに任されたのに何もできずに負けるわけには!」

命を助けられ、憧れを思い出させてくれた恩義だけでは決してない。
アリステルという一人の少女に任せてくれたのがただ嬉しかったのだ。
そこにどんな思惑や戦略があっても関係ない。それだけが欲しかったから。
当たり前だった努力を当たり前に褒めてくれたことも誇らしく思えた。
だから応えたい。それを裏切りたくない。落胆など、されたくない。
義憤にも似た想いでそう強く誓っていた彼女だったがそれは、
その熱い想いを訴える声と目線はある懸念を女兵士に抱かせた。

「………あんたまさかその男のために戦ってると?
 十大貴族に名を連ねる者が惚れた好いたで戦うのか!?」

「あ! こらバカそれは!」

一般的にそれは『恋』と呼ばれても問題ない想いではないか。
ただ一人優れた聴覚でそれを聞き拾ったヒナは別の意味で青ざめる。
そしてアリステルにとってそれはあまりに予想外な表現であり、
また同時に胸にあった妙な空白にすとんとはまるモノだった。

「………惚れ、た?」

誰を。あの方を、彼を。
それを考えた途端アリステルの脳裏に浮かぶのはその姿だけだ。
“偶然”に出会ってから今まで見せてくれた姿と発せられた言葉。
すべてが彼女の頭と心を駆け巡って、湧き上がってくるものがあった。
決してそこまで多くはない一緒だった時間の中で胸にあった暖かさ。
他の異性と親しげな様子を見て胸を占拠した形容しがたい不快感。
それをこの瞬間まで少女はなんなのか本当にわかっていなかった。

「しかも地球人の名前じゃないか!
 貴族が聞いてあきれる! ガレストの面汚しめ!」

「────ああ、そうだったのですね」

だから去来していたそれらにようやく名をつけられて、少女の頬は緩む。
まるで万感の想いが込められているようでどこか朗らかな声がもれる。

「このっ!
 いいかげんに話をきっ、な、にっ!?」

しかしそれとは別に両の手から発せられる熱に女兵士は目を見張る。
押さえこめていたはずの大槌が交差したままの腕に、押し返されていく。

「ええ、それならなおの事負けられませんわ。
 パデュエールの女が、愛しい殿方の期待に応えられないなど!」

あってはいけませんもの───そうでしょう、お母様?
にこやかな笑みを浮かべた少女はそこで初めて女兵士をはっきり見た。
場違いといえる微笑みに毒気を抜かれかけた間抜けな顔がそこにある。
穏やかな微笑みが、ほくそ笑むそれに変わった。

「がっ!?」
「戦闘中によそ見はいけませんわよ?」

砂ごと蹴り上げるような一撃が腹部に入って後ずさる女兵士。
浮き上がって砂から脱出したアリステルは地表近くで彼女を見据えた。
その顔には驚愕がある。今ので腹部装甲全体に罅が入ったのだ(・・・・・・・)
スキルが使えない状況では生徒達には鉄壁だった鎧に明確な傷が入る。
それは自分たちの優位性を信じていた彼らの方に動揺を与えていた。

「おい、なんだ今のは!?」

「副隊長!!」

「これは……Aランクの力じゃない。何をした!?」

狼狽えながらも問うてきた彼らに少女はむしろ優雅にほほ笑んだ。

「ええ、一瞬状況に呑まれて勘違いしてしまいました。
 単純な腕力勝負で勝てないなら、それで戦わなければよいのですわ。
 時にそんな“開き直り”が必要だと彼に(・・)教えてもらったばかりでしたのに」

咄嗟に出てこないとはわたくしとしたことがまだまだです。
と、軽く頭を振りながら肩をすくめて余裕の態度を見せた。
その仕草と強調された“彼”の存在が女兵士の癪に障った。

「パデュエール! 地球に尻尾を振る売国奴が!」
「ま、待ってください副隊長!」

何かに勘付いたような仲間の声は激高した女兵士には届かない。
再び飛び掛かるように少女へと振り下ろした大槌は───砕け散った。

「なっ、なぜっ!?」

ただ愚直なまでに突き出された少女の右ストレートの拳によって。
驚愕に見開かれた目はその腕が金色の輝きを纏っているのを認めた。
それがさらなる衝撃を彼女に与えた。

「フォ、フォトン?
 っ、まさか過剰抽出、オーバーブーストだと!?
 馬鹿なっ、学生風情がなぜそれを!?」

その現象の意味に気付いた女兵士が信じられないと叫ぶ。
しかし少女はそれに対して不敵な笑みを浮かべて、背面ウイングを広げた。

「筋力では一歩劣っても精神ランクならこの中でトップ!
 フォトンを最大まで引き出して無理やり出力を上げればよいのです!」

その結果がこれだと示すように次の瞬間女兵士は宙を舞っていた。
驚きも抵抗も間に合わずセンサー類の警告と視線だけが少女を追えた。
距離の近さを無視した莫大なフォトンの放出による急加速。
その突進を乗せた左ストレートが大槌の長柄を折るように叩き込まれ、
続いて胸元に突き刺さると彼女を仲間の元まで殴り飛ばしていた。

「副隊長!」

受け身を取る仕草が見えない彼女を仲間が受け止めるが呻くだけ。
見れば胸部装甲はもちろん余波で罅の入った腹部も砕け散っていた。
外傷は見えないが突き抜けた衝撃にもはや自力で立つこともできない。
外骨格もこの損壊状態では戦闘などできるわけもなく事実上の敗北。
それも筋力で劣る子供の拳によって、だ。治療スキルを受けながら
彼女は目を驚愕の形で開いて自らを殴り飛ばした少女に向けている。
あり得ない、とその顔がそんな心情をすべて物語っていた。

「思いつきでやってみましたがこれはなかなかとんでもないですね」

咄嗟のそれの結果が予想以上だった事に少女は苦笑する。
外骨格の動力源も当然ながらフォトンを使用している。
各部の出力はそのエネルギー量によって強弱を調整しているのだ。
外骨格の性能とは突き詰めればどれだけ大量のフォトンを綿密に扱えるか。
どれだけの出力まで耐えられる性能があるかという話になっていく。
学園用は主に軍に配備されたモノから見るとおよそ二世代前の代物。
彼ら独自の代物とはいえ軍用に匹敵する外骨格からは二歩劣っていた。
装着者の筋力が敵わなければ力勝負では万が一にも勝ち目はないといえる。

「思いつき、ですって!?
 腐っても十大貴族というの!?
 精神AAAがここまでだったなんて、ちくしょうっ!」

されどここで僅かな例外を示す事柄がある。
エネルギー源であるフォトン結晶はそれぞれの端末のものだ
つまりそのエネルギーを取り出す量も装着者の精神ランクに左右される。
そのため例え外骨格や筋力が劣っていてもフォトンによる力押しがあれば
一時的に(・・・・)それらの差をひっくり返すほどのパワーを得られるのである。
少女は勝てない力勝負を必ず勝てるフォトン抽出量の勝負にすり替えたのだ。
軍関係者の間でその手法は緊急時の最終手段として一部には知られていた。
俗にオーバーブーストと呼称されるが、あくまで日本語訳なのを明記する。

「けど、あれは長続きはしないし全員ができるわけでもない!」

無論そんな事態でしか使用されない以上欠点はある。
第一に精神ランクが余程高くなければそもそも使えない。
そして外骨格と装着者に多大な過負荷を与える行為であったからだ。
想定以上のフォトンを無理やり流してスペック度外視の出力を得るのだ。
その挙動の反動は当然想定されてないのだから双方への負担は大きい。

「でしょうね。
 いまの動きだけであちこちエラー表示で真っ赤です。
 38%の回路が焼き切れて、しかも装甲まで歪んでしまいました」

それを彼女はひどくあっさりと認めた。
全身──特に両腕の装甲は火花が幾重にも散り、溶けたように歪んでいる。
特別科トップに貸与された外骨格だろうと精神AAAのフォトン量に
対応できるだけのスペックなどそもそもそ与えられてなどいなかった。
だがそれを落ち着き払った様子でくすくすと少女は笑いながら眺めるだけ。
彼女の目には自らの鎧の異常がそれこそ山ほど報告されているはずなのに。

「何がおかしい!? くっ、調子に乗るな、下がれ!」

隊長格が再び倒されたのを好機と見て仕掛けようとしたのか。
見るからに外骨格が機能不全に陥った少女を助けようとしたのか。
攻勢をかけてくる生徒達をスキルで牽制しながら一人の兵士が叫ぶ。

「副隊長がやられてもお前を失えばどの道貴様らの負けだ!
 仮に私たちに勝ててもフィールドには散らばった仲間達がいる!」

「……残念ながら、シンイチさんはあなた方を叩き潰せと仰った。
 逆にいえばわたくしたちはあなた方を叩き潰すだけでいいのです」

それだけで自分たちの役目は、この事態は終わるのだと。
アリステルの言葉にはそんな確信めいたものがあった。 

「なにを!? もう勝ったつもりか!」

同時に自分たちの勝利を確信もしている言葉に憤るが反応はない。
ただ静かにアリステルは自らの外骨格を解除して制服姿を見せつけた。

「はっ?」
「なにっ!?」

ふわりと地面に降り立つと自然な動作でスカートをつまんで一礼。
周囲が殺風景な砂漠であることが余計にその動作の場違い感が際立つ。
砂漠でパワードスーツというのも元よりあまりお似合いではないが、
ここは戦場になっており故障部位があっても解除するよりはマシだ。
あまりにあり得ない状況で無防備な姿を見せられて彼らは戸惑った。

「ふふっ」

少女がその一瞬の唖然と困惑が欲しかったのだとも知らずに。
恐ろしく自然で警戒心を呼ばない所作で彼女はフォスタを放り投げた。
それが自分たちの頭上目がけてのことより、ここに至ってさらに
装備を捨てた事実の方に彼らの困惑はより極まる中で少女は命じた。

全種兵装(オールウェポン)全解放(フルアウト)!!」

一瞬何を言ったのか義勇軍の面々はおよそ理解できていなかった。
人体から離れたフォスタはその武装としての側面は機能しない。
彼らが行動を訝しんだだけだったのはそんな常識があってのこと。
だからこそ、これは十分勝算のある奇策となりえた。
フォスタに搭載されたアリステルの全装備品の強制放出。
それこそが彼女が脳裏で引っかかった“そこにあるもの”だ。

「なるほど。それで足りない人手を補う、と。
 虫も殺せないような顔して存外にえげつないんだから」

得てして大貴族とはそういうものなのだけど、と。
意図に気付いて苦笑するのは同じ光景を知るもう一人の彼女だけ。
その視界の中で彼らの頭上3mにも満たない位置から全てが降り注ぐ。
ブレードがあった。ランスがあった。アックスがあった。ハンマーがあった。
ハンドガンがあった。スナイパーライフルがあった。バズーカがあった。
ブーメランがあった。ナックルがあった。サイズがあった。グレイブがあった。
シールドがあった。ナイフがあった。グレートソードがあった。

「へ?」

まるでガレスト武装の博覧会のようなラインナップだった。
実体刃からフォトン刃製の武器まで幅広く揃えられた各種兵装。
それが一瞬でも太陽光を遮るほどの尋常ではない量で落ちてくる。
あまりに異常な光景に間の抜けた声を出しても仕方がないだろう。
事態はそんな心境を慮ってはくれないが。

「っ、対ショック防御! ぼさっとするな!」

誰かがいち早くそれを攻撃と受け取って仲間達に訴えた。
使い手のない武装でもその重量によっては楽観視できない。
されどそれはいくらか遅く、幾人かが防御しきれず落下物に当たる。
あとはもうアリステルとヒナの予想通りの出来事が起こった。

「ぎゃああぁぁっ!?!?」
「あがゃぎゃぎゃっっ!?!?!」
「ぴぎぃぃっ!!!???」

単に頭に当たった者。思わずいくつか受け止めてしまった者。
その数ゆえに埋まってしまった者等が紫電の中で絶叫をあげた。
無事だったのは咄嗟に防御スキルで弾いた者達だけであったが、
彼らも何が起こったのか理解できずに呆然と仲間を包む電光を眺める。
しかし埋もれてしまった者を除けばその接触はほんの一瞬のこと。
激痛と全身の痺れを感じながらよろけた彼らは次に何かを踏んだ(・・・・・・)

「なっ、ん、だ、い、ま、っ、ぐぎゃあああぁぁっっ!!??」

再び聞くに堪えない絶叫が砂漠に轟く。
そして無事な者達はその足元に何があるのか気付いて背筋が凍る。
砂地に落ちた少女の武装が彼らの足場を埋め尽くすように存在していた。
少しでも触れればあの外骨格の防御をものともしない高圧電流を受ける。
そうだとわかってその場から足を踏み出そうとする者などいない。
飛行能力は既に破壊され、跳躍でどうにかなる範囲でもない。
いってしまえばそれは武装の形をした踏んでも消えない地雷。
彼らはいつのまにか周囲一帯を見える地雷原にされていた。

「う、うそだろおい?」

「奪取防止システムをこんな!?」

こんな使い方は知らない。こんな状況は見たことも聞いたこともない。
なまじ経験を誇り、されどこの8年を慎重に準備に使った彼ら義勇軍は
皮肉にも想定外の事態への対応力が著しく鈍って動揺から抜け出せない。
それを見逃すほどこの生徒達の指揮官“達”は甘くない。

「ああ、言い忘れておりましたが事前に発動条件は緩めてあります。
 また電圧も最高値まであげておきましたから例えほんの少しでも
 触れればかなりすごいのがきますので足元にはお気を付けください」

「パデュエール、貴様っ!!」

そういってクスリと和やかに微笑む姿が彼らの感情を逆撫でする。
楽に勝てるはずだった所詮学生程度の相手に墜とされたばかりか。
スキル妨害装置に頼ってまでひっくり返したのにまた追い込まれた。
その事実に元軍人のプライドや掲げた大義名分はズタズタだ。

「こうなればお前だけでも!!」

憎しみの怨嗟─という逆恨み─が込められた血走った眼で睨み付ける。
一斉に無防備な少女に銃口を向けたが相手の笑みを深めただけだった。

「あら、わたくしだけに注目していてよろしいので?」

大仰な動作で周囲を指し示せば、多くの影が自分達を取り囲んでいた。
否。全方位から襲いかかってくる生徒達の姿が見えて引き金もひけなかった。

「っ、しまっ!!」
「足元とアリちゃんばっか見過ぎだよ、へっぽこテロリスト!」

やってしまえ。
雄叫びと共に飛び掛かっていく特別科の生徒たち。
もはや10にも満たない人数の彼らに抑えられる勢いと数ではない。
足場の状況ゆえ満足に抵抗らしい抵抗もできずに押し込まれていった。
陽動の生徒達だけに気を取られ、少女の挑発に乗って意識を割かれ、
その裏で残りの生徒が囲み始めていた事に気付かなかった彼らの負けだ。
この地雷原の脅威は友軍にとっては何の障害にもならない点にもあった。
飛行能力を失っていない彼らには突撃の邪魔にさえならないのである。
兵士たちは哀れ、生徒達の袋叩きを受けるか武装の中に倒れこんだ。

「では今度こそ本当に、ごきげんよう」

そしてお嬢様らしい一礼がされた頃には全員が倒され、捕縛の身に。
アリステルが放出した装備品の中には手ごろな手錠や枷もあったのだ。
これが彼女の意図を理解していたヒナが即座に考え行った電撃作戦。
誰かがあの地雷原の致命的な欠陥に気付く前に終わらせる為の行動。
あれには実は“スキルで武装に触れずに吹き飛ばせば良い”という
至極単純にしてある意味とてつもなく間抜けな弱点があった。

「まったく、ボクが気付かなかったらどうするつもりだったの?」

制圧と捕縛を終えたヒナが呆れ顔を見せながら問えば満面の笑みが返る。

「同じ光景(モノ)を見ていたあなたならそんな心配無用ですわ」

それが理由だというアリステルに一瞬ヒナは呆気にとられた。
しかしすぐに居心地悪そうに視線をあらぬ方に向けながら頬をかく。
あれを見ていたなら絶対に気付くという強い信頼がどこかこそばゆい。
実際にフォローをしてしまった手前、余計に気恥ずかしいのだ。

「……わたくしあの部隊のまとめ役の女性にいわれました。
 お前は惚れた好いたで戦ってるのかって………」

その様子に微笑んでいた彼女だが即座に真剣な面持ちを見せて語り出す。
あの際の会話は当人同士を除けばヒナの耳にしか届いていないのだが
そんな事実を知らないアリステルは仄かの笑うように続けた。

「びっくりしました」

ぴくん。

「そうだろうね」

見ようによってはショックを受けたような表情での言葉に
だがヒナはこれといって反応を返すことはしなかった。

「ええ、全く予想だにしていなかったのですが………すっきりしました!」

ぴくぴく。

「そうだろうね」

元気よく朗らかな声は内容通りどこかすっきりしたものを感じさせる。
狐娘は特に、何が、とは聞かず先程と全く同じ抑揚の無さで返す。
それを見ているのかいないのかさらに続けて彼女はそれを告げた。

「わたくしシンイチさんを好きになっていたのですね!」

ぴくっ。

「そうだろうね」

無愛想に同じ返事を繰り返すがアリステルはその様子に
気付いていないのか興奮気味に次々とまくしたてていった。

「この胸にあるのがいわゆる恋心! わたくしの想い!
 初体験だったので全くわかりませんでしたが言われると納得です!
 他の女性と親しくしてるのを見てもやもやしたのも嫉妬でした!
 お母様から色々聞いていましたが実体験するまで分からないものですね!」

ぴく。

「そうだろうね」

恋心どころかその嫉妬心すらまるで宝物のように胸に手を置いて喜ぶ。
少女のそんな姿を見てもヒナの対応は同じ言葉を繰り返すだけのおざなりだ。

「ですので今ここに宣言します!」

「そうだ………なにを?」

しかしさすがにそれは聞き逃せず問えば彼女は人差し指を突きつけてきた。
それこそ名探偵が犯人を指名するかのようにビシッという効果音付きで。

「あなたには負けませんわよ!」

「……………………………………………ほわい?」

何の話だと思わず本気で理解できず下手な英語が飛び出す。
だが話の流れで推察できない事もないがその先があまりに突飛で
冗談かと思ったが相手の目にあるのは真剣さと恋の熱だけでヒナは戸惑う。

「まさか成績だけでなく恋でもライバルになるなんて。
 好みの容姿と世話役という立場でだいぶ出遅れてはいます。しかし!
 このアリステル・F・パデュエール、どちらでも遅れは取りませんわ!」

「うん、ちょっと落ち着こうか」

なんでそんな話になっているのだと彼女は思わず苦笑した。
先程まで自分と一緒に冷静に指揮してた人はどこに消えたのだと聞きたい。
しかし、その言葉にくすりと笑ったアリステルはこう切り返してきた。

「あら、わたくしは落ち着いていますわ。
 落ち着いていないのは─────あなたの耳と尻尾では?」

びくっ。

「はい?」

驚く彼女を余所に頭上の狐耳は逆立ち、尻尾は逆に力無く垂れている。
アリステルは自分の言葉にそれらがどう動いたかきちんと見ていた。

「この話をしだした辺りからどちらもせわしなく動いてましたわ。
 好きだとはっきりいえば耳は威嚇するように毛を逆立てて、
 しかし尻尾は正反対にぶらりと垂れ下がるだけ。
 表情よりこれらの方が正直なようですわね」

「なっ!?」

これでも貴族として人を見る目は肥えているのですよ、と。
にこやかにほほ笑まれてさすがにヒナも絶句してしまう。
自分にそんな癖があった事もだが彼女相手に見抜かれた事に。
年若くともそういった経験値は甘く見るべきではなかったのだ。

「お母様がいっていました。
 恋とはライバルがいればより燃え上がり互いに切磋琢磨できると!」

「ボクは別にそういう目でイッチーは」

「それがあなたであるなら相手にとって不足はありません。
 あなたもわたくしが相手だからと遠慮するような方ではないでしょう?」

「いやだからボクはねアリちゃ」

「正々堂々、戦って勝ってみせます。
 パデュエール家の女の誇りに賭けて!」

「……君こんどは本当にボクのいうこと聞いてないね」

再び人差し指を突きつけられてうんざりした顔で苦笑いである。
この様子では何を言ったところで彼女は自分の考えを決して
変えることはないだろうとヒナはがっくりしながら諦めた。

「そういうところはイメージ通りのお嬢様だよ君は」

「ふふ、今さらですがこの学園にこれてよかった。
 愛しい方と出会えて、競い合える友も出来ました」

「ふえ? 友? え、あ、ボク!?」

また話を聞いてないと項垂れれば突然の友人指名に驚く。
どうしてそういう話になるのか彼女は本当にわからなかった。

「はい! 恋敵と書いて友と読む!
 地球には面白い考え方がありますね!」

「……………なにか、微妙に間違っているような?」

日本語において似たフレーズを聞いた覚えがあるヒナは
そう感じたが明確に指摘することはできずに流すしかなかった。
日本人がいればおそらくは適切なツッコミが入っただろうに。

「あら、リゼットたちが読んでますね。
 そろそろ再編成や周囲への警戒をしないとまずいですしね。いきましょう」

そういって声の方に駆け出した少女の背中をヒナは遅れて追う。
これまでは運良く輝獣が戦闘中に発生しなかったがこれからは危ない。
即座に動ける者たちを編成しなおしてそれを警戒する必要があった。

「……………輝いてるなぁ」

現実的にそう考えながら追いかける背を見て思わずこぼす。
後ろ姿からでも感じる生き生きとした雰囲気は恋心を自覚した為だろう。
加えてヒナを勝手にライバルだと思い込んだのもあると当人は分析している。
振り向かせたい相手と競え合えるライバルの存在がただでさえ(・・・・・)輝かしい
彼女をより強く、そして華やかな煌めきを与えているようだった。





「……………違うよアリちゃん。ボクは………わたしはそんなんじゃない。
 必要悪でも、そこらで転がってる連中と同じ穴のムジナなんだよ」





それが─怪しくとも─一般人相手に恋だの愛だの。
ましてやその恋愛沙汰で貴族さまのライバルだのなんて皮肉だ、と。
自嘲気味な呟きは誰の耳に届くことはなく、されどその耳と尻尾は
共に力を無くしたように垂れ落ち、しばらく起きることはなかった。






フィールド制圧部隊ベータチーム──捕縛完了

2-A及び3-A合同チーム──再編成中

■■の恋心──????

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