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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

試験編 第一章「テストは利用するもの」

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04-22 試験?授業?鍛練?イジメ?



3クラス合同の試験が始まってから時計の長針が一周した頃。
手頃な大きさと高さの岩を腰掛けに試験官は生徒達を見守っていた。
あえて、重ねて記そう。見守ってはいるのだ。間違いなく。

『先輩方、覚悟してください』

『なにを! 1年どもになど負けて、なっ!?』

『い、いやあぁっ!!
 八本脚のカエルが空から降ってくるっ!?!?』

『ティラノもどきの大群とかなにそれ!?』

『ちょっ、なにこの数。ちょっと待って、ここってもしかして!?』

『うそ、だろ。ここCクラス向けのエリアじゃねえか!?』

『アハハハッ、ナカムラ試験官のムチャクチャ試験にようこそ!!』

『これぐらい序の口だと思うけどな、あの野郎!!』

『なんか色々輝獣が転がってくるんですけど!?』

『うおぉっ! 結晶いただきぃっ!!』

『待てっ、いくらでもやるからてつだ、うぎゃああぁっ!!』

斥候役たちが拙いながらも偵察を終えた1-Dはついに動きだした。
こちらの作業(・・)の成果も出始めた事で試験領域は阿鼻叫喚である。
幸か不幸か昨日で慣れ始めていた1-Dは諦めの境地であるが、
正真正銘初体験の2年生組は悲鳴をあげながらもがいていた。

「うむ、モニター越しの悲鳴もまた良し」

「キュキュキュ」

数多の空間モニターを眺めながらじつに楽しそうに笑う試験官(シンイチ)
それはもうこの場に彼らがいれば殴り掛かりたくなる程さわやかな笑み。
目まぐるしく各所で動く生徒達のそれらを監督・採点をしながら、だが。

「あ、あんたね、少しはこっちの悲鳴も聞きなさいよ。うがーーっっ!!」

「………いやお前のそれは悲鳴というより獣の咆哮のような?」

その態度に怒るように、自棄を起こしたような叫びが()から聞こえる。
しっかりそれを聞きながらも微妙にずれたツッコミをする試験官だ。
シンイチが腰掛けにしていた大岩は縦に長い柱のようなもので、
眼下では補佐役となった二名がとある作業をやらされていた。
試験官曰くの千本ノックを生身のままで。

「このっ、くそっ、これのどこが千本ノックだ!?」

「野球関係者に謝りなさい! あとあたしたちにも!!」

そういって怒り心頭で手にした武装を振り回すふたり。
千本ノックが得意か、と聞かれれば大多数はされる方を考えるだろう。
それゆえ二人が類似した形の特訓を想像したとして誰が責められよう。
しかしシンイチが彼らにやれと命じたのはノックする方の役目だった。
だがそれとてボールないしそれに似たモノを打つなら文句は出ない。
フォトンの大剣と鞘に納まった刀がバット代わりなのもこの際気にしない。
しかし、打ち飛ばしているのが輝獣(・・)なのは如何なものか。

「思ったより飛ぶなぁ。けっこう、けっこう……」

一つとして同じ姿のない輝獣が放物線を描いて飛んでいく光景はシュールだ。
それをやらせているうえに嬉々として眺めている彼もかなり、だが。

「しかし文句はきちんと出来てからしてほしいね。
 10体中3、4体ぐらいしかちゃんと飛んでってないぞ?」

「Cランクじゃ脆すぎるんだよ!!」

高い筋力を持つ彼の一閃、ならぬ一振りはいくら刃のない剣の腹でも
そのランクで耐えられるダメージを越えた威力を叩きだしてしまう。

「こらっ、だから力任せに振り回すんじゃないわよ!!」

苛立ちが混ざったスイングによって周囲3メートルの輝獣が“消滅”する。
トモエの八つ当たりも含む叱責にただただ彼は悔しげに表情を歪める。
自分がこれほど加減が下手だとは露ほども思っていなかったリョウだ。
尤も彼自身の成績表には注釈としてその点は記載されているが。

「お前はどっちかという転がしてるんだがな。
 霊力はともかくスキルは禁止してないぞ?」

「わ、わかってるわよ! 『エアバースト』!」

筋力が低く打ち上げられないでいたトモエは強がりながら
爆発のような衝撃波が眼前の輝獣たちを諸共に吹き飛ばす。
20に近い多数の輝獣たちは岩壁に叩きつけられ、霧散した。

「馬鹿っ! 吹っ飛ばすために上級スキル使う奴があるか!」

「この場合、威力だけの問題じゃないけどな」

自分から眼前の相手に放てば当然それは一直線の衝撃となる。
打ち上げる(・・・)には当然下から上に向く力の流れが必要であろう。
大地系による突き上げか風系による吹き飛ばしが妥当といえる。
しかし精神ランクが高くとも慣れ親しんだ霊力を用いた術と
全く系統が違うスキルの扱いが彼女はじつは苦手だった。

「っ、ぎゃ、ぎゃーぎゃーいわない!
 また背中にクモいれてちびらしてやるわよ!」

「い、いつの話をほじくり返してたんだお前!!」

「あの便利な呪符に頼り過ぎてたなぁ。
 ……自作(オリジナル)なのは、めっちゃすごいんだけど」

あと、なんていじめっ子だと呆れた目でトモエを見る。
自分のやっている事は完全に棚上げしてリョウに同情してしまう。
同情するだけで決して手助けも助言も一切しない辺りが彼らしいが。

「っていうかこんなのの何が次の一歩だボケぇっ!!」

「こき使いたいだけとかだったら殺す、もう殺すっ!!」

もはや八つ当たりなのか自棄なのか解らない表情でノックを続ける二人。
獣型。昆虫型。無機物型。無形型。多種多様な輝獣を吹き飛ばし続ける。
言うは易しだがすべて硬さと重さと形が違う。同じなのはランクだけ。
適切な力加減と方法を使わなければ飛ばす所か転がすのも難しい。
そして周囲を取り囲み増え続ける輝獣の群れは終わりが見えず、
ましてや意図がわからない上に神経を使う作業は精神をすり減らす。
彼らが苛立ち、冷静さを失うのは当然のことと言えた。

「あはは、いやあ若い者は元気だねぇ」

それゆえ予測できた事でもあり彼は縁側でお茶を飲む老人気分だ。
とはいえその眼光が鋭くモニターと彼らを観察しているのも事実だが。

『……あの、その、少なくともそのお二人は年上だと思うのですが?』

「……………………あ」

一つ増えたモニターからの声にいま気付いたとばかりに声をもらす。
豪奢な縦ロールのお嬢様が画面の向こうで苦笑いを浮かべていた。

『イッチーって、素で自分の年齢忘れてるよね』

その隣りにまた新たなモニターが開き、狐耳の女性が顔を見せる。
こちらはじつに楽しそうに意表をつかれた彼の顔を眺めていた。

「ほっとけ。ってかお前ら自分の試験は?」

『最中です。3-A(こちら)はクラスを二つに分けて競争中です。
 輝獣討伐数と結晶回収率を競ってますが実際は指揮能力を測り、
 部隊行動をどこまで取れるかを測る試験でしょう。
 片方を任された身としては責任重大ですが、相手がその……』

落ち着いた声で話しているが周囲からは怒号と轟音が聞こえる。
最後に言い淀んだのはあまりに勝負になっていないからであろう。

『アハハッ、アリちゃんが指揮官ならそりゃ士気が天地だよ。
 2-A(うち)は輝獣の個人討伐数で順位付けってところかな。
 だけど試験領域をさらに小さく区切った狭い範囲で、だからね。
 実質的には獲物の奪い合いだよ、あ、そこいっただきぃっ!』

画面越しに武器が振るわれる音と肉を裂く音が彼にも届く。
また同時に目の前で獲物を奪われた誰かの切実な悲鳴も。

「さすが特別科。余所と通信しながら、なんてのは朝飯前か」

『その数のモニター見てる人がいうと嫌味だけどそれぐらいはね。
 実戦だと指示を受けながら外骨格で戦場を舞う。なんてざらだもん」

指示を聞き、応答しながら目の前の状況に対処する。
ある種前線にでる兵士には半ば以上必須の技術といえた。
またその作業を楽にする装備の機能向上も行われている。

『まあ疑似フェイス画面や思念通信機能があってこそ、ですが』

実際シンイチの前にある二人を映したモニターは音声とそぐわない。
ただ真っ白な空間に彼女らの顔が映り適切な表情を浮かべているだけ。
またミューヒはともかく指示を出す側の人間が余裕があったとしても
シンイチと声を出して会話できるのかというとかなり無理がある。
いくら優秀であろうとも彼女の口は一つしかないのだから。
フォトンの意志に感応する性質を利用した思念による通信だ。

「………すごい技術だとは思うんだが、この感情はなんだろうか?」

あちらの魔法通信技能が高難易度であると知っているだけに、
フォトンと技術力で同様のことをされてしまうとどこか虚しい。

「まあ、別にいいけどさ………ああ、そうだ。
 昨日は助かったよ、おかげで被害者を全員把握できた」

別段自分が考えたわけでもない方法の話である。
即座に意識を切り替えた彼は昨夜の助力に礼を返した。
だがそれに一人は首を振り、もう一人は肩をすくめた。

『いえ、たいしたことはしていませんわ。
 実質やったことは見て回っただけですもの』

『結局そうじゃない人しか見つけてないしね。
 その後のことはイッチーとフドゥネっちに任せちゃったし』

「それでもありがとう、だよ。
 お前等じゃなかったらここまですんなりいかなかったろう」

だから助かった。と。
純粋な礼の言葉に彼女らも素直にどういたしましてと返した。
被害者が全員シンイチを襲った事は彼女らにも伏せられている。
フリーレがリョウの暴走を知った際に誰にも教えなかったからだ。
救援よりも誰にも行かせないで彼との約束を守る事を優先した。
そもフリーレが急襲しても対処した彼だ。リョウでは相手にならない。
それでも通信が繋がらなかったのでトモエのフォスタでの通信は
実は彼女が半ば以上様子を見に行こうとしていた瞬間でもあった。

『で、犠牲者全員引き取ったイッチーの企みは何?』

「結局それかお前。昨日も同じこと聞かれたぞ」

『そうなのですか? でも気にはなりますね。
 試験内容がどちらかといえばわたくしたち(・・・・・・)向けなのが』

『え?』

問い質す。
というよりはどうしてという疑問だけの彼女に彼は微笑を浮かべる。

「そう思うか?」

『ええ、合格点やエリアランクで誤魔化されてますが特別科並ですよ?』

試験というよりは授業の方が近いですけれど、と付け加えながらも
1、2年の下位クラスに与える内容ではないと彼女は口にした。
輝獣を三人一組で狩って結晶を集める。それだけならよくある内容だ。
しかしそこに1年生とはいえ第三者から襲われる要素を追加した。
さらに奪われた際の減点が無い事で警戒度を自主性に任せている。
自己の判断能力を鍛えるために上位ランクでよくある授業だった。
1-Dにとっては学年もランクも上の相手を襲えといわれている。
例えその中身が結晶を方法問わず奪うことだとしても難度は高い。
それ以上に自分より強いと解っている“人間”を襲う精神的負担は重い。
時折外部のプロを招いて行う模擬戦をアリステルらは連想した。

『いわれてみれば確かに』

『ミスタ・シングウジとミス・サーフィナの作業は一見珍妙ですが、
 やっていることは単純な輝獣との連戦であり吹き飛ばしているのは
 力加減と判断力をつけさせる為と後は……輝獣の補充でしょうか?』

「…………お前本当に補佐役向きだよな。正直、その手腕が欲しいよ」

『ま、またその話で………へ、わたくしが、ほ、欲しいっ!?』

『こらこら、そんなお約束な反応いらないから。
 どうして都合の良い所だけ抜き出しちゃうかな?』

「キュー、キュキュ」

ふたりの狐娘はそれぞれ別の相手を見ながら呆れた声をもらす。
一方の乙女はその視線に気付かず、一方の少年は笑って流している。
だがアリステルの推察は見事に当たっており彼の言葉はほぼ本音だ。
彼ら補佐役に命じた輝獣の千本ノックの意味はその通りであった。
眼前の二人に自分の短所を自覚させ力技で改善するためなのが一つ。
二つ目が同一エリアに3クラスも入った事による輝獣数の問題だ。
通常一つのエリアに存在する輝獣の数は同ランクの一クラス分程度。
より正確な表現をするなら一回の授業時間で全滅しない数が目安。
無論次元エネルギーが集められている関係で次々と湧いてくるが、
その増加数も計算にいれての数だ。Cランクなら程度の差はあれ、
3クラス分も生徒が入れば1、2時間で狩りつくされてしまう。
1-Dとて身を守る為にいくらか戦わねばならなくなるのだから。
そのための輝獣の補充という意味がこの疑似千本ノックにはあった。
また他にも試験の一環として参加中の3クラスを追い込む目的もある。
考えてほしい。次から次へと空から怪物が落ちてくる光景を。
それで冷静でいられる者は少ない。彼らへの特訓行為(イヤガラセ)である。

「といっても時間がないのが一番の理由だがな」

最も大きな理由は短時間での底上げを行うためにはそれしか無いから。
という身も蓋もない代物だが、今回に限っていえば笑い話ではない。

「とくにあの二人は能力そのものは悪くないんだがな。
 今日一日の突貫工事でどこまで自分の使い方を覚えるかが勝負だ」

『………つまりイッチーは明日何か起こるって言いたいわけ?』

褒められた方法じゃないと肩を竦める彼だがミューヒは言葉の裏を読んだ。
今日一日で彼らを底上げしなければならないコトが明日あるのだと。
その問いにシンイチは隠すことなくあっさりと頷きで返した。

「俺が首謀者ならそうする。
 最終日が一番みんなが疲弊し、そして終わりかけの安堵がある」

『だから皆さんをわざと追い込むような目に合わせているのですね。
 明日もこれと同等以上の試験と思ったら少なくとも安堵などしません』

そんな思惑もあるがこのタイミングは他にも都合が良い点がある。
もちろん何かを企んでいる者達にとって、という意味でだが。

「それに試験期間中の方が教師たちの位置と動きが読みやすいからな。
 特に最も警戒したい相手に確実に足かせがあるなんて嬉しいじゃない」

学園で企みをする場合、彼女は最も警戒するべき相手だろう。
それだけの実績とそれだけの戦闘力を持っている事が内外で有名だ。

『フドゥネっちのことだね』

『この場合の足かせはわたくしたち、なのでしょうけど』

頭で理解しているが言外に足手まとい扱いを受けた彼女らの表情は硬い。
疑似フェイスだが本人の生の感情が反映されている以上逆に素直といえた。
ただそれにいっそ珍しいくらいに意外そうな顔を浮かべたのはシンイチだ。

「なにいってんだお前ら?」

『へ?』

『はい?』

「明日、ナニカ、が起こった時。
 お前らまさか何もせずに自分だけ逃げる、とか言わないよな?」

にやり、とさわやかとは程遠い笑みは清々しい程に悪人顔だった。
その顔はこう語っている。ふたりはそんな無責任ではないだろう。
そんな臆病者ではないだろう。そんな卑怯者でもないだろう。
ナカムラ・シンイチが知るお前たちなら、と。

『も、もちろんです! わたくしが何もせずに逃げる?
 ええ、あり得ませんとも! 来るなら来いというものです!
 完膚なきまで叩き潰してやりますわ!!』

『え、ええっとぉ……ボクは逃げていいかな?』

「ダメに決まってんだろお世話係。しっかりと働け。
 嫌なら写真はオールデリートなうえに以後一枚も撮らせん」

案の定ともいうべき反応をするお嬢様を尻目に狐娘は苦い顔だ。
だが彼はそれを許さずにその立場を盾に、揺さぶって頷かせる。

『あははは……はぁ。
 2-Aだけだよ、それ以上は責任もてないからね』

『3-Aはわたくしにお任せを!』

「ああ、頼りにしてるよ」

『は、はい!』

『………そうか。
 純情な女の子はこんな風に悪い男に騙されちゃうんだ』

嬉しそうに頷くアリステルの姿にそんな世の真理を見た気がしたミューヒ。
シンイチは満面の笑みを浮かべているが胡散臭いにも程があった。
もはやわざととしか彼女には思えなかったという。

「そこっ! さっきから何楽しそうに喋ってんのよ!?
 ああっまたっ、もうっ! どうしてこう次から次へと!?」

そこへトモエの怒号染みた叫びが届く。
だが輝獣への対処に追われて彼の方を見ることができていない。
声だけでどうやら彼女からは楽しんでいたように聞こえたようだ。
シンイチ個人に限れば間違ってはいないので否定しきれない。

『ところで……どうして彼らの周りに輝獣が集まっているのですか?』

「そりゃこのへんに次元エネルギー集束装置が埋まってるからな」

何気ない疑問にあっさりと爆弾を投げ返され彼女らの顔が引きつる。
その装置の所在を明かすだけでも問題なのだがその間近での鍛練だ。
シンイチの意図は悪い意味で明白なので二人はどこか遠くを眺めた。

『そっ、それはなんとも……』

『イッチーってそういう顔して、本当に鬼だよね』

もはやいうまでもないがこのフィールドは恐ろしく広い。
地球全域から集めてきた次元エネルギーとて無限ではない。
元々ガレストに比べ、圧倒的に降り注ぐ総量に差があるのだ。
一か所に集めた所でガレストからすればたいした数は発生しない。
またそれを授業で使えるように調整するには自然任せでは不可能。
場所・数・質を操る為にフィールド各所にさらに集束する装置がある。
結果その間近では輝獣が発生し続けるポイントが誕生してしまうのだ。
トモエとリョウがいる。否、立たされた(・・・・・)場所がまさにそこだった。
発生速度を上回る処理スピードを出せない限り彼らは輝獣に囲まれ続ける。
打ち上げる方法を考える思考と力加減の制御に余分な時間を取られて
ふたりはただ輝獣を殲滅する以上に疲弊させられていた。

「壁にぶち当たってる奴は程度がなんであれ。
 限界まで追い込むのが一番手っ取り早い解決法なんだよ。
 余計な事を何も考えられなくなった時に選んだモノが答えになる」

ほら、と彼が指差せばふたりの補佐役はその動きを変えようとしていた。

「くそっ、こんなでかいもん振り回していられるか!」

『彼がこだわりを捨てるなんて……』

『グウちゃん大剣好きだったからねぇ』

苛立ったように大剣を投げ捨てると両手に小槌(ハンマー)を取り出し、
モグラ叩きならぬ輝獣打ち上げを始めて次々と輝獣を叩き飛ばしていく。
状況に合った武器選択というより大剣の扱い辛さが癪に障っただけだが。

「ああっ、もうっ! 全部あたしが投げ飛ばしてやる!
 『フィジカルブースト』『アクセル』『アームアップ』おおりゃあぁぁっ!!」

『……うわぁ、開き直ったねあの子』

『精神の高さにはそういう使い道もあるのですね。勉強になります』

複数のスキルによる身体能力強化の力技で輝獣を次々放り投げていく。
細身の少女が怪物の群れを彼方へ投げ飛ばしていく光景は一種異様だ。
それもベアハッグからの疑似ジャイアントスイングにヒナは目が点だ。
本人からすれば正道のやり方が性に合わなかっただけといえる。
あるいは苛立ち過ぎてスキルの力加減が面倒になったともいうが。

「ふふふっ………さて、それでやっと半歩だからな」

残りの短い時間で一歩進ませることができるかどうか。
軽い調子の声と違ってその眼光は暴れ回る二人を鋭く観察していた。

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