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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

試験編 第一章「テストは利用するもの」

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04-17 故郷の異能

この作品は分類上ファンタジーです!


「…………どうしたものか」

シンイチは倒れた生徒の山を見比べながら腕を組んで悩んでいた。
精神スキルを解除した生徒と意識を奪っただけの生徒に別けて、
後者を順次一人ずつ解除していたが途中でやめざるを得なかった。

「参ったな、こうなるともう自前の魔力使うしかないが……」

携帯モードのフォスタを握って溜め息をもらす。何せ真っ暗だ。
風景がではない。フォスタの画面が何も映していないのだ。
電源を落としたわけでもないのに作業途中に急に光が消えた。
手甲状態から勝手に戻ったばかりか何をしても反応がない。
完全に機能を停止しているのかエネルギー抽出もできない。

「うーん、ついに壊したか?」

比較的ガレスト製の装備は使う分には壊れにくいために
幾分か忘れていたが彼は手にした武装をよく壊すクラッシャーだ。
扱いが悪いのではなく彼の力に物体が耐えきれないだけなのだが。

「考えてみればこれって精密機械だよな。
 俺が好き勝手に使ったから中にガタが来たのか?」

そんな推測は立つものの結論としては解らない。
分かりそうな者と連絡を取ろうにもその通信機器がこの状態だ。
仕方ない、と誰かのを借りようと手近な生徒に手を伸ばして───

「っ!?」

───本人も訳が分からないままその場から跳び退っていた。
どこか愕然とした表情のまま先程まで自分がいた場所を見る。

「……んん?」

その岩の大地には明らかにナニカで穿たれた二つの穴がある。
ただそのナニカの姿がどこにもなく、フォトンの形跡も見えない。
しかし本人にとってそれ以上に不可解なのが“避けた理由”だ。
半ば以上体が勝手に反応して動いた事実に彼自身が戸惑う。

「なんでその程度の攻撃で……」

今までも本能的に脅威を感じて攻撃を意識せず避けた事はあった。
しかし穴の深さと岩肌の硬さから推定される威力は警戒する程ではない。
反射的に動くにしても腕を振るうだけで良かったように思えた。

「ちょっとっ!! 見えてるならボサっとしてないでよ!!」

「っ!?!?」

そこへ怒声とも注意とも取れる機嫌の悪そうな声に思わず素で驚く。
気配どころか物が動く音や空気の流れの変化さえ感じなかったのに
声の方向に視線を向ければ、一人の学園生徒が堂々と立っていた。
しかし何故なのか意識的に注視しないとどうしても視界から消える。
女子生徒であるのはシルエットと声で判別できたがそれ以上が解らない。
見失わないようにするのが精一杯でそれ以上の特徴が視認できないのだ。

「これは……認識阻害だと?」

それでも強く意識して凝視するとその姿勢に訝しむ。
半身の構えで左腕を大きく前に突き出し右手を頬の横に置いていた。
まるで弓矢も無いのにそれを引き絞っているかのようにポーズ。
その体勢と彼女自身からの警告に慣れ親しんだ警鐘が頭で鳴る。

「打ち滅ぼす、あたしはすべてを……っ、だめっ! さっさと横に跳ぶ!!」

「冗談だろ!?」

彼女の右の指が何かを“離した”動作をしたのを何とか視認して、
半ば以上疑いながらも本能が危険と判断して彼は横に跳んでいた。
途端に衝撃音と共に大地に穿たれた小さな穴が生まれていた。
まるで目視できない矢が放たれたように。

「おいお前なんのつもりだ!?」

「うっさいわね!
 したくてして……壊す、なにもかも壊して……違うあたしは!
 体が勝手に、うっ……みんなに認めさせて、くっ、言う事聞かなっ、うぐぐっ!」

何によってかは不明なれど攻撃を受けたのは事実。
問い質す声に少女はそれ以上の逆切れ気味な怒声で言い返す。
その合間に脈絡のない言葉が、誰かたちのそれと似た声が混じる。
そしてその動作は再び見えない弓を引こうとする自分を必死の形相で
抑え込もうと独り奮闘しているようにも見える───気がした。

「っ……」

それがよく見る夢の─過去の─光景に重なって彼はもう駆け出していた。
見えない弓矢を“ある”と仮定しその射線を避けつつ一気に詰め寄る。
己と格闘していた少女は気付くのが遅れるもその(・・)間合いで反応した。

「え?」

「くっ!?」

謎の認識阻害で何をしようとしているのかが見にくかったが、
それでも再度頭で警鐘が鳴って彼はその場で強引に踏み止まる。
途端に彼の目前で鋼の一閃が通り過ぎていき僅かな前髪を奪われた。
突然シンイチが迫ってきたせいか。それとも彼女の抵抗が負けたのか。
彼女は驚いた表情のままで今度は現実に見えるソレを抜いていた。

「………っ、こ、こらバカ何してるの!?
 あとちょっとでバッサリだったじゃない!
 あたし血まみれになるのなんて嫌だからね!」

「に、日本刀だと?」

心配交じりの怒声を聴き流しながら振り抜かれた刃に目が奪われる。
少女自身と同じく注視し続けなければ存在を見失いそうになるが、
その特徴的な刀身の形や刃紋、丸鍔を見間違う日本人はいないだろう。
そしてそれはすなわちある事実を表している。

「………銃刀法違反ではなかろうか?」

「あんた学園生徒にそれを言う!? しかも今!?」

真剣の切れ味とその刀身の長さは完全にその法に違反していた。
尤もここはクトリアであるため日本の法律が及ぶ場所ではない。
また普段から武装を所持する生徒にそれを問うのは少々ズレている。

「うっ、あたしが証明するんだ、母さまたちを……あ、いやっ避けてぇっ!!」

両手で構え直された刃と共に踏み込み、躊躇いなく振り下す。
悲鳴混じりの注意をあげるも避けられないと思って両目を瞑った。
だが袈裟斬りを狙うその体の動きを彼は余裕を持って見ている。
認識阻害があろうとも先の居合紛いの一閃で長さは把握できた。
軽く下がるだけで剣先が体をかすめることもない。

「っ!?」

ただ、そうしようとした瞬間背中に氷塊が滑り落ちた。
それは不味いと自分の物ではない数多の経験値が突如訴えてくる。
説明しようのないくせに絶対的な勘に苛立ちながらシンイチは従う。
下がろうとした自分を強引に半身をとらせて紙一重で剣閃を避ける。
空ぶった刀は岩の大地に深く切り込んで、衝撃と共に割れた。

「ぐっ、なに!?」

無論刀身がではない。その一閃の軌跡に沿って一直線に大地が、だ。
見えないナニカが通り過ぎていくかのように岩肌に刻まれる溝。
目の前で起こったその現象に左手を押さえて彼は距離を取った。

「あ、ぁぁ……まさかあんた腕!?」

「一応繋がっているよ、肉体的にはな」

切ってしまったのかと恐れる震えた声にその腕を振って答える。
僅かに腕先の回避が遅れたせいか手首が剣閃の延長線上にあった。
大地を割った衝撃が当たったのかそこから先の感覚が消えている。
物理的な衝撃は戦闘を意識した肉体の耐久力を越えなかったが、
腕先の魔力あるいはもっと根本的なナニカを持って行かれた(・・・・・・・)

「カムナギの刃が通らなった? あ、が……間違ってなんかない!!」

安堵以上に愕然とする意志とは別に身体は次の攻撃を放つ。
ナニカを投げつけるような動作と共に幾枚もの紙が飛んできた。
体から離れたためか途端にそれが何なのか視認できて思わず笑う。
謎の模様が描かれ、中央に『爆』の字を持つ縦長の長方形。

「今度は呪符ときたか!」

見えない弓矢。本物以上の日本刀。そして呪符。
笑ってはいるが苦いものであり半ば以上現実逃避に近い代物だ。
認めたくない可能性が頭に過るのを出来る限り否定しながら、
大きく飛び退けば一瞬前までいた場所に符が当たり爆炎をあげる。

「くっ、ファランディアじゃあるまいし本当に何者だお前!?」

闇夜を照らす炎の灯りでも彼女の姿を見せてはくれない。
シンイチは意識的にその奥に立つシルエットを睨みつけた。
フォスタは機能停止中。ステータスカードを翳す余裕はない。
ならばと彼は自らの眼の機能を切り替えて少女の魂を覗き見た。
そこから大雑把にステータスだけでも見ようとしたのだ。しかし。

「なん、だと?」

「あたしはできるんだ! みんなが認めるほど強くなれば!
 父さまたちは何も間違ってなんか…あ、もっと遠くへ逃げて!!」

その前に再び弓を構えた彼女に、そこに流れる力に目を奪われた。
今はっきりと彼女が再び手にしている実体の無い弓矢が見える。
それを形作っているその力の正体と共に。

「魂の力で模られた弓矢!?」

「くっ、うっ、こ、こんな事のために修行したんじゃないのに!
 誰にも否定なんかさせるも…いやっだめぇっ!!」

泣いているような声と共に放たれたのは実体のない一矢。
蛍の光のような淡い光で模られたそれは空間を裂くように飛ぶ。
込められた“力”を推進力にしているのか通常の飛矢よりも速いそれ。
だが手品のタネがばれた上にその目で見えているのでは話にならない。
まるで日常の一コマのような軽々しさで光矢は彼の手に掴まれた。

「なっ!」

「まごうことなきホンモノか。その歳でよくやる。
 あっちのエセ老神官どもじゃ猿真似もできやしないぞ」

あの一瞬で模られた弓矢が持つ現実への干渉力は侮れない。
また先程の見えない斬撃も同種の攻撃なら軽んじる事はできない。
未だに左手の感覚は薄く、回復にはまだ少しかかるのが予見される。
魂の力を十代の少女がそこまで扱える事を彼は素直に称賛した。

「末恐ろしいな、まったく……もっと早くに気付くべきだった」

そして眉間を狙った矢を握り折りながら漸く彼女を見れた。
未だ燃え上がる火柱に照らされた異人然とした整った相貌は
驚きに目を見開いているがその色は地球の常識内での青い瞳。
熱風で揺れるポニーテールは珍しくもない明るい栗色の長髪。
彼女がどちらの世界の者であるのかをある種雄弁に語っていた。
日本刀を携え胸元に符を張っている姿は妙にミスマッチだが。

「魂を見る力……言いかえれば霊感ともいえるか。あるいは霊能力。
 さしずめその体を覆っている膜は隠形の術といったところか?」

「なっ、そこまで知ってるなんてあなたまさか!?」

「当たりか…………ラノベの知識もたまには役に立つものだな」

「土御門本家の、ってラノベ!?」

次元漂流前にハマっていた陰陽師が主役なそれを思い出して苦笑い。
尤も相手もまさかの情報源により表情を驚愕の色に染めているが。
一方でシンイチの顔はどこか情けなく、落ち込んでいるようだった。
その存在をもっと早期に気付く事ができたはずであったと。

「本当に転入したばかりの俺は余裕が無かったようだ」

輝獣について最初に説明を受けた時、フランク教諭はなんと説明したか。
いくつかの説明の中で地球にある怪物や妖怪、UMAなどの伝説や伝承は
輝獣がモデルになっていると言い、実際それが世界的な定説となっていた。
さすがに全てではないだろうが輝獣がモデルとなった可能性は高い。

そうであるなら、それらと戦っていた(・・・・・)とされる人々(・・・・・・)は架空の存在だろうか。

エクソシスト、陰陽師、巫女、霊能力者、魔術師、魔女、呪術師。
実在したモノから完全に架空のモノまでその手の名を持つ者達はいた。
全員ではなかっただろうしそう名乗った者の大半は偽者だろう。
しかし架空の怪物のいくつかが実在する輝獣を“もと”にした以上、
彼らの“力”もまた実在した可能性は少なからずだがあったのだ。
一般的には無いものとして扱っていたこの世界の人々ならともかく、
それらが実在する世界(ファランディア)の知識を有する彼は気付かなくてはいけない。
目の当たりにするまで考えもしなかった自身に彼は呆れていた。

「何の話を、うぅ……認めさせる、みんなに、あいつらに!
 っ、あ、またカムナギを、ああっうるさい!
 母さまの刀はこんな事のために、っ、いやあっ!!」

怒りと悲鳴が混ざり合う中、力強い踏み込みで鋭い一閃が振るわれる。
まるで一人芝居。されど決してそんなものではないと彼の眼は知っていた。

「そうだろうなと思っていたが、やはりか」

今夜だけでかなり見慣れた頭部のリング。
しかし彼女のだけその輝きは点滅を繰り返して安定しない。
強く輝く度に叫ばれる必死のそれはずっと彼の耳を奪っていた。
ただまず先に判断しなくてはいけない事柄があっただけであり、
シンイチはどれひとつ彼女の叫び(悲鳴)を聞き逃してなどいない。

「……まずいな」

視認できてしまえばもう彼女の挙動は恐れるほどではない。
抜き身の刀を再度構えての踏み込みは慣れたもので素早く、
そして素人とは思えないキレと技が確かにそこにある。
確実にどこかで学んだその卓越した刀捌きも目を見張るモノだ。
しかし実戦向きではない型通りのそれは美しいがゆえ読みやすい。
だからもはや彼女の攻撃に脅威はない。問題なのは別のこと。

「やだ、やだっ、こんな……みんな殺す、殺す、殺す!!」

流麗ながらも基本通りの剣閃を避けながら彼の顔から色が消える。
魂の力─霊力のおかげなのか事前に精神干渉系への対策があったのか。
なんにせよその抵抗手段のせいで(・・・)彼女の精神に負荷がかかっている。
彼女の未熟さかスキルは対象外だったのか中途半端に意識を残す事しか
出来ず、これまでの犠牲者たち以上の過負荷が脳と精神を圧迫している。

またこれまでの者達が冷静さを失った動きだったのを考えれば
彼女の動きそのものが見事なものであるのもそのせいであろう。
中途半端に意識を残し、そして中途半端に操られた結果だった。

「面倒な………とりあえず自然破壊はいけないぞ?」

「あたしの意志じゃ、う、く、力を見せつけて認めさせればきっと!!」

彼女が─正確には暴れるよう命じられた肉体が刀を振るう度に
淡い光の霊刃が撃ちだされ大地や周囲の木々を容易に切り裂いていく。
さてどうしたものかとその堂に入った刀捌きを避け続けながら考える。
全く関係ない方向に意識を誘導しても応急処置にもならなくなった。

見えている以上、剣閃やこの霊刃を避け続けるのは簡単だ。
だがそれを掻い潜りリングのある頭部に触れるのは骨が折れる。
彼が見つけたスキル解除法は一瞬でも直接触れる必要がある。
一度避けて踏み込んだ所で返す刀で斬られてしまうだろう。
肉体が耐えられても感覚を無くされては身動きがとれない。
無論彼女の安全を考えないならいくらでもやりようはあるが
ソレを考えない男ならそもそもこんな面倒に関わってなどいない。

「違うっ、う、ううっ、はぁ、はぁ、はぁ。
 あんた余裕ぶっこいてないでさっさとどっか行きなさい!
 これは大事な刀なの、あんたの血なんかで汚したくないのよ!」

どうすべきか。選択肢を絞っていく中で彼はその叫びに目を瞬く。
暴れようとする肉体に必死に抵抗する姿と合わない物言いは
現実に本当にいたのかと彼をして心底驚かす言動だった。
同時にそれとは別の複雑な感情を呼び起こすものでもあった。

「…………まったく、そんな状態になっても他人に逃げろ、か。
 お前みたいのがいるからあの日の俺はいつまでたっても惨めだよ」

彼女は最初から言い方こそ乱暴だったが彼の身を案じていた。
自分ではどうにもならない中それでもそう言える者がいる限り、
泣き叫んで助けを乞うしかできず悲劇を呼び込んだ自分は今でも滑稽だ。

「なに嬉しそうに笑ってるのよ!? ちゃんと話聞いて、ぐっ、ダメ!?」

だというのにどうしてこの顔はそんな表情を浮かべているのだろうか。
これだから自分の対人運は意地が悪すぎると吐き捨ててしまいたい。
代わりにこの暖かい感情で胸を満たしたいと思いながら、毒を吐く(・・・・)

「ふん、できるならやって見せろ。
 そんなナマクラで俺を斬るだと? 寝言は寝て言え」

「あんた今までの何を見て、くっ、許さないっ、五月蝿い黙れ!」

瞬間大事な物をけなされたためか彼女の正気の瞳にも怒りが宿りだす。
それを見た彼は彼女が積み上げたであろう武の努力を、鼻で笑った。

「素人のチャンバラごっこのナマクラがなんだというのだ。
 それで戦う? 強さを証明する? バッカじゃねえの?」

「なっ、あんた、ぐ、あ……お前に何が!!」

「さてな、愚かな娘を持ったご両親が可哀そうだとは思うがね」

「っっ、母さまたちを悪くいうな!!
 どいつもこいつもふたりをバカにして、笑って! お前もか!!」

その怒りは果たして正気か暴走のそれか。どちらでもいい。
胸の痛みなど無視するだけ。そんなもの比べるまでもないのだから。

「そりゃ笑うさ。
 あれだけ刀振り回して当てれもしない。
 インチキ霊術使っても何一つ俺みたいな子供に通用しない。
 ねえ、そういうのを無駄な努力といわずになんていうの?」

「あっ、ぐっ、無駄なんかじゃ、ない! インチキでもない!
 あたしが証明するんだ! 母さまたちは恥なんかじゃない!
 ふたりはただ愛し合っただけなのに! それが失敗や間違いなもんか!
 誰にだって、何にだって、絶対に否定なんかさせるものか!!」

今まで一番強く、そして一番乱雑な踏み込みで一閃が振るわれる。
それがきっと彼女の一番奥にあった感情なのは嫌でもわかる。
いったいどんなゴミなら子供にこんな思いを抱かせられるのか。
反吐が出る思いで自分をそいつと同列に並べる言葉を吐く。

「でも、なにもできないお前は失敗で間違いだろ」

よくもまあすらすらと出てくるものだと悪い意味で感心してしまう。
そんな軽い現実逃避でもしなければその目を直視する事はできない。
美しい青い瞳が大きく見開かれ、そしてひび割れた。

「あ、う、あ、あああああああああああああぁぁっっ!!!」

リングが一際強く輝き、その相貌から正気という正気の色が消える。
悲鳴のような叫びと共に振り下ろされた刀はあまりに大振りで拙い。
二の太刀を考えず刃筋も立ってない乱暴な剣はあまりに隙だらけ。
それをついて乱暴な振り下ろしを紙一重で避けて懐まで踏み込んだ。
剣先が大地を割った時にはもう彼の手は少女の顔面を捕捉している。
正気を無くした剣は全く反応できず、その目は気付いてもいない。

「ごめんな」

そんな自己満足の謝罪を口にして彼女の額に魔力の指弾を浴びせた。
衝撃に頭が揺らぐ中リングは消滅し体は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。
その膝が地面に当たる前に受け止めてしっかりと抱え上げ───ようとした。

「ん?」

「っ、触らないで!」

バチンと大きな音を立てて助けの手は強く拒絶される。
そしてそこには刺々しい怒りと殺気をぶつける少女の憤怒があった。
+注意+
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