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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

試験編 第一章「テストは利用するもの」

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04-13 集まる偶然


不吉な未来が見えた気さえしたフリーレだが一度それを棚上げする。
今は正気に戻った教師陣に事情を説明するのが先とそれを行った。
その最中に彼女が手配した事になっている回収部隊が到着したが、
落ち着いたとはいえ“表向き”原因不明の集団暴走となっている。
全員が検査と経過観察もかねて学園外の病院へと運ばれる事となった。
そして残した四人に対してフリーレは事実の口止めを求めた。

「さて、お前たち。解ってると思うがこの件の問題点は他言無用だ。
 偶然居合わせたナカムラたちは私がもう事情を聞いた事にして
 聴取を免れさせる予定だがブラウンは口裏を合わせてほしい」

「ええ、わかってます。
 今日のことを全部見てたのは俺だけですし聴取は覚悟してますよ。
 精神スキルや犯人の存在にナカムラがやらかした事は内緒ですね」

こんな事態に巻き込まれて何も聞かれない事は彼も想定していない。
学園内の誰が犯人か分からない以上事実を隠す必要性も彼は理解している。
“やらかした”と言われた彼は渋い顔だが自覚はあるので黙っていた。

「ああ、それで頼む。
 この状況では残念ながら技術科3-Bの試験は中止せざるを得ない。
 生徒の安全を考えれば試験全体を中止にしたいが理由を話せないからな。
 ふぅ、ともかくお前はあとから本部の方に自分の機体に乗って来てくれ」

この状況で続けるしかない事に溜息を吐きながらも彼に指示を出すと
打って変わって険しい表情を浮かべると厳しい視線と怒声を飛ばした。

「それとそこの小娘共はとっとと自分の試験エリアに戻れ!
 今回はこんな事になったから一応不問にしておくが次はないぞ。
 また好き勝手に動いたら減点どころか不合格にするから覚悟しておけ!」

事態の収拾に役立ち、吹聴するような者でないのは助かったが、
教師として試験中に勝手な行動をしたのを諌めないわけにはいかない。
脅しの意味で見た者を慄然とさせるような表情で彼女は強く睨みつけた。
しかし。

「……フドゥネっち、だからもうそんな怖い顔されても、ねえ?」

「え、あ、その……そこでわたくしに話を振らないでくださいまし!」

「な、に!?」

一度無くした威厳や迫力は簡単には戻ってこないものである。
彼らの回収で動揺が落ち着いてしまったのもフリーレには悪く働いた。
ミューヒは満面の笑みでありアリステルは戸惑っているものの怯えは無い。
これまでどの生徒も、昔と今の職場の同僚さえ怯ませていた顔が通じない。
シンイチを強襲したあげく撃退され、情けない言動を見せたことで
フリーレの放つ迫力は半減どころではすまないほど激減していたのだ。

「う、あ、うううっ………お前のせいだ!」

1時間ほど前までは通信モニター越しの怒声でも怯ませられたのに。
原因の少年に詰め寄った彼女は恨みがましい涙目で睨むが効果はない。

「厳しい鬼教師役がそもそもお前に合ってなかっただけだろ」

「いまさら変えられるかぁっ!!」

もっともな指摘。されど遅すぎた指摘に感情的になって叫ぶ。
胸倉を掴まれ体を揺さぶられながらそうだろうなと呟く彼だ。
兄との関係修復に挑戦するだけでいっぱいいっぱいな彼女が
職場での態度も変えてみるなど完全にキャパシティを超えている。
だがその涙声の叫びに“もっと追い込んでみたい”とも考えていた。
無論さすがに彼も状況を考えて断腸の思いで自重したが。

「……なあお前ら、ちょっと仕事を頼まれてくれないか?」

だから、でもなかったが元々考えていた事をふたりに頼む。

「自分のクラスに戻る途中。
 俺の所に来たような名目で他のクラスの状況を見てきてほしい」

言外に件のスキルを使われた生徒や教師が他にいないか確認してくれと
頼まれた彼女達は即座にその意図と自分達が適任だと気付いて頷いた。

「なるほど、わかりましたわ。確かにわたくしたちだけでしょうね。
 試験中に他の試験エリアを見て回っても受け入れてくださるのは」

「どっちかといえば拒否できないだけ、だけどねぇ。
 でもボクたちならおかしいとも思われないし、任されたよ!」

学園ツートップを止められるのは彼女の威厳失墜でもう誰もいない。
その中に実行犯がいたとしても彼女達ならば不自然には思われにくい。
何かあれば自分かフリーレに連絡をと告げてその彼女に向き直るが、いない。
聞こえる嗚咽に視線を下げればシンイチの足元で女教師は崩れ落ちていた。

「わ、私の言う事はなにも聞いてくれないのに……ううぅっ」

自分が威厳を無くした裏であっさりと指示を聞いてもらえる少年に
朝の模擬戦のそれとは全く違う敗北感を覚えてしまうフリーレだった。

「あぁ……まあ落ち着けって、これはそういうことじゃないだろうが。
 だいいちお前はお前で色々することがあるだろう?」

「そ、それは、そうだが………形だけ残ってた自信が今晩だけで粉々だ」

それはもう残しておくより壊してしまった方がいいだろう。
とは思ったシンイチだがこれも口にするのはやめておいた。
これ以上使い物にならなくなったら困るという理由だが。

「おいおい、俺はあんたに説明してほしい事が山程あるんだが?」

励ますように肩を叩きながら意味ありげにアイコンタクトを送る。
それがシンイチと連絡をとろうとした当初の事情を彼女に思い出させた。
なぜ彼が試験官代理をする羽目になったのかを伝える予定だったのだ。

「ん、あ、そうか。そうだな。
 明日からの試験について話さなくてはいけないんだったな。
 お前ときたら私の出した試験の草案を完全に無視するのだから」

「いや、あれは甘すぎるだろう。
 やっぱりあんたムチより飴側の教師だよ」

ただそれは他の者に聞かせられないのか解った事を目で伝えながら
関係はあるものの聞かれても問題のない話でお茶を濁した両名である。

「先生、どういうことなのですか?
 試験についてはともかく、試験の草案というのは?」

ただこの場にはその会話の意味が解らない者が1名(・・)いた。

「ん、なんだナカムラから聞いてなかったのか。
 じつは人手不足もあって1-Dの試験官の代理をこいつに任せている」

立ち上がりながら意外そうな顔で告げられた話を理解するのに
座学トップの彼女の頭脳は僅かばかりの時間を必要とした。
それほどまでにそれはこの特殊な学園でも異例なことだった。

「…………え……え、えええええぇぇっ!?!?
 ちょ、ちょっと待ってください! 生徒が試験官なんて!
 いくらDクラスでも開校以来一度も無かったはずですわ!!」

特別科や成績優秀者が授業の補佐はしても試験官までした事はない。
食料確保に動いていた時にシンイチの所にやってきたアリステルは
まさか1-Dの試験官が彼だとは夢にも思っていなかったのだ。

「あはは………ヒナ、ヴェルブラ、これが正しい反応な」

「え?」

「あ!」

「知ってる事でも驚いておかないと不味いだろ、立場的に。減点2だな」

清々しい─どこか胡散臭い─笑顔で試験官らしく二人をそう評する。
瞬間、時が止まったように名指しされた両者の表情が凍りつく。
ミューヒは昼間に彼にどうして試験官をしているのかと聞くべきで、
ヴェルナーはいまアリステルと一緒になって驚くべきだった。
ふたりは彼女が気付いていない事に気付いていなかったのだ。

「っ」

どちらかあるいは両方が息を呑んで、どっと冷や汗が溢れ出る。
今の発言は二人がそれぞれ持つ秘密を暗に知っていると告げていた。
彼が明るい笑みを浮かべているのが圧力のように感じてしまう。

「何がかな?
 それに今は、ボクたちよりアリちゃんを見るべきだと思うよ」

「は?」

何とか平静に戻ろうと苦笑という笑みを浮かべられた彼女は指差した。
それが安直な話題の変更だと解っていて釣られてみたのだが
その先の人物によってシンイチは既視感のある輝きに晒される。

「転入して僅かひと月で開校以来初の生徒試験官に選ばれるなんてっ!
 わたくしが思った通り、やはりあなたはすごい方でした!!」

どこか陶酔した顔でその目をきらきらと輝かせる少女がそこにいた。
彼女と初めて街で会った時以上の熱い眼差しにさすがの彼もたじろぐ。
尊敬と憧憬の念と、それ以外の熱も混ざる視線は純粋で眩し過ぎた。

「うっ」

自分がどちらかといえば汚い側の人間だという意識がある彼には
いささか美化されてると感じられる彼女の眼差しは居心地が悪い。

「ど、どうするべきかな先生」

「こんな時だけ教師を頼ってきおって、知るか!
 ほら、夜明けまでに打ち合わせをしなきゃならんのだ。いくぞ!」

──こういうところが甘いんだよな
悪態をつきながらも救いの手を出してくれた彼女を好ましく思いながら、
仕返しでもあるのか首根っこを掴まれて引きずられるのを受け入れる。

「ああ、そうそう。似非(・・)ロケット学者」

「…………なんだ?」

そこへいかにもいま思い出したかのようにシンイチは呼びかけた。
どこか似非を強調した呼ばれ方にその意味を悟ってか彼の声は硬い。
しかしそれに気付いたようには見せずにシンイチは笑いかける。

「今日は懐かしい物を見せてもらったから久しぶりにはしゃげたよ」

だから、ありがとう。
そんなお礼の言葉に一瞬拍子抜けしたヴェルナーはしかし。

「今日のはその礼をかねたサービスだ………けどな。
 これ以上を知りたければ代償を覚悟してもらう」

───でないと次はお前があのダンゴ虫だぞ?
引きずられながらも口許だけに浮かぶ笑みに彼の背筋は凍りつく。
漸く自分がとんでもない相手に自慢の武器を預けたのだと気付く。
微動だにする事もできずに引きずられる少年をただ黙って見送った。

「は、ははは………おっかねえ……」

そして闇夜の森に彼の姿が完全に消えて、やっと緊張が解けたのか。
足元から崩れ落ちるようにその場に座り込んで乾いた笑みをこぼす。

「だから『名前だけなら知ってる』か………何者だよほんと」

自己紹介の時はなんとも思わなかったフレーズが今は重い。
好き勝手やっているため名が知られていたのだろうと思い込んだ。
だがシンイチがあまりに物知らずなので徐々に気になっていく中で
似非ロケット学者と呼ばれた事で彼はある懸念を抱く。

──気付かれているのではないか

と。
ヴェルナー・ブラウン。あるいはヴェルナー・フォン・ブラウンとは
過去実在したロケット工学者の名でありそれに似非をつけて彼は呼んだ。
つまりシンイチは最初からお前は偽者だと言っていたも同然だったのだ。
名前を知ってるとはその偽名(・・)の由来を知っているということか。
あるいはその名を騙っている彼の本名を知っているという意味だろう。

「で、どうする気なのかなBNDくんは?」

「ひっ!? は、はは……笑顔の破壊者の本領発揮かよ、最悪だ」

腰が抜けてしまった自分の背後に立った狐娘の言葉に顔がひきつる。
BND─ドイツ連邦情報局。一般には分かり辛い単語で彼女は尋ねたのだ。

──ドイツからのスパイさんはこれからどうする気なのかな?

無防備に近い状態にある彼の背後に立ちながら。
もはや十中八九脅迫としか思えない位置だった。
彼は振り返るどころか背後に立つ彼女を見上げたくもなかった。

「こ、この学園で君を敵に回して無事だった奴いないじゃないか。
 ナカムラはどっか君のそういう所と似た気配を感じるよ」

「ふふ、光栄だね……で?」

誤魔化しは許さないからさっさと答えろ。
まるでそういわれた気がして彼はまったく生きた心地がしなかった。
立場上彼女にまつわる黒い噂がほぼ事実なのだと知っているだけに
とぼける選択肢でさえヴェルナー(偽)には与えられていなかった。
弱みを握られ、様々な意味で潰された生徒や教師は一人や二人ではない。
そんな相手に自分と同列に扱われたお前こそどこの間者かと聞ける訳がない。
この都市では半ば公然の秘密として各国の諜報員たちが紛れ込んでいる。
無論ガレストからも、だ。彼は勝手にそういうものだと納得した。
単にそれ以上詮索して消されたくはなかったからであるが。

「信じてもらえるかわからないけど俺の担当は技術でね。
 彼の事は一応細かく報告は受けてたけど担当違いだよ」

だから彼はあえて正直に話すというスパイとしては暴挙な行動に出た。

仕事(これ)だって学園で学べる報酬(おまけ)があったから引き受けたんだ。
 元々技術班だからね。それ以外はどうでもいいんだ、正直にいうとさ。
 知り合った事ぐらいは話すけど、それ以上はしない。したくもない。
 君とあの彼を敵に回して、そのうえパデュエールがあれだもん」

割に合わないったらない。わが身が可愛い。そこまで国に忠誠心はない。
と、未だ彼が去った方角を熱い視線で見詰めているお嬢様の姿に溜め息だ。
完全に他の事に注意がいっていない。だからこんな話も出来るのだが、
あの熱の入れようでは下手な介入は馬に蹴られるだけではすまない。

「そのうえドゥネージュ先生とも親しいってなんだその最強の布陣。
 この三人揃えたら学園内で出来ない事を探す方が難しいじゃないか」

彼からすれば技術調査という名目で異世界の技術を学ぶのが目的である。
わざわざ要注意人物達と敵対して今の生活を棒に振る気はさらさらない。
良くも悪くも彼は自分の作りたい物を作りたいだけの技術者だった。

「ま、一応信じてあげるよ。ここではね」

その先はお前の行動次第だと言外に告げられるが彼は安堵の息をもらす。

「それだけでもありがたいよホント。
 ……でもなんでこんなことになっちゃったかな。
 ガレスト科学を学べればあとは本当にどうでも良かったのに……」

彼にとって間者という立場はここに潜り込むための理由であり、
利用しただけの仕事であまり真面目に取り組んではいなかった。
好き勝手やるのを隠れ蓑の一種だと嘯いて作りたい物を作ってきた。
その行動は敵を作ったが同時に厄介な人間関係を排除するのに役立った。
それがあと残り1年という時期になって色々と“力”のある者達に
正体を知られて目を付けられるなんて悪夢以外の何者でもない。
溜め息を吐きながらなんとか立ち上がると気落ちした足取りで
フリーレの指示に従うために自らの機体へと彼は向かっていった。




「…………なんでこんなことに、ね。
 ボクとしてはそこに彼の意志が殆ど介在してないのが怖いよ」

徒歩で去っていく背中に興味を示さないまま。
されど彼の残した言葉にミューヒは薄々考えていた恐ろしさに内心慄く。
フリーレが副担任になった事も彼女が保護監視役になった事にも
学園に転入してくる前にアリステルと知り合いになったらしいのも
どれにも彼の意志は介在していないはずなのに彼の利益となっている。

偶然ミューヒが監視役なったことで彼は隠し事が楽になった。
他の者ならもっと窮屈な学園生活を強いられていたであろう。
偶然にも惨敗した相手と似た雰囲気を感じ取って困惑させられ、
以後シンイチ個人に興味を持ったために報告が中途半端になっている。

偶然フリーレが担任にならなければ彼の事情は知らされなかった。
そして彼女でなければ戦いのみを報酬に味方に引き込むのは難しい。
また偶然『兄』の悩みを持っており彼自身が『兄』であったおかげで
相談事を通した形ではあるが取引の結果とは別の信頼を彼は得ている。

転入が彼女(アリステル)の態度が軟化する前だったら彼への当たりはもっと激しかった。
そしてその切っ掛けだったはずのあの日の外出は本人の強い希望である。
おそらく偶然そこで彼と出会って好感を持ったらしいのは今日の態度や行動を
見れば想像に難くはなく再会時の様子を考えれば学園での再会すら偶然だろう。

出会ったのが(ヴェルナー)でなければシンイチは規格外の武装を手にできなかった。
偶然彼がシンイチと同じくグランファイザーという昔のアニメのファンで
運良く彼だけが精神スキルを受けず、偶々隣のエリアで試験を受けていた。
シンイチがそこの異常に気付き、それを調べようとしたおかげでの出会いだ。
何者かが件のスキルを使わなければ出会いもしなかったろうに。

「うわぁ、気持ち悪い」

感情がまるでこもってない言葉をひとり呟く。
偶然。偶然。偶然。偶然。その並びに鳥肌が立っていた。
これほどに揃ってしまうと一種の気味悪ささえ感じてしまう。
ましてやこの四名は同じ学園に所属しているがかなり接点が薄い。
1-D副担任と特別科トップと自由過ぎる第2位に技術科の問題児。
それこそ名前か噂程度なら互いにある程度は勿論知っていたのだが、
知り合いとさえ呼べないぐらい交友はほぼ無かったと言える程なのに。
シンイチを中心に急激に特出した何かを持つメンバーに縁が生まれている。
彼自身の態度や行動を見ればやはり偶然としかいいようのない形で。
少なくともここに彼女らがいるのは各々の意志であり偶然のはずなのに。

「これで終わるわけもないっていうのに、なんだか薄気味悪いなぁ」

騒動の予感をひしひしと感じているがゆえに偶然の頻発が恐ろしい。
振り返ればクトリア本土で犠牲者は無くとも爆弾テロを許したのは
彼が転入したその日ではなかったかとその偶然(・・)さえ疑いたくなる。
シンイチが乗っていた船に犯人たちも乗っていたというのだから余計に。
そしてその裏にはあの白い仮面の黒い靄がちらついて消えない。

「………考えても仕方ないか………ほらアリちゃん行くよ。
 朝までに全部回るんだからどのクラスをどっちが回るか考えないと」

「え、あ、はい! あの方から直々に任された仕事です!
 不肖このアリステル・F・パデュエール、全力でやらせて頂きます!」

頭を振って思考を切り替えると今夜人物評が大きく変わった少女を呼ぶ。
途端に宣誓のような大仰さで力強くそう述べた彼女はひとり燃え上がった。
余程シンイチから直接頼まれごとをされたのが嬉しかったようである。
微妙にミューヒの発言は聞いていなかったようではあるが。

「……これで自覚ないとかどういうことなの?」

握り拳さえ作って張り切っている姿に微苦笑を浮かべるミューヒである。
やれやれと首を振って、燃えている彼女の背を押して急かすのだった。

だが、彼女も自分が不自然な行動をしていたことに気付いていない。
彼女が他国のスパイ(ヴェルナー)を脅す必要性はかなり低かったのである。
既にシンイチに釘を刺され、それに彼は腰まで抜かしていたのだから。
わざわざ最後の駄目押しをしてまで彼女は彼の背後に立っていた。
同列に扱われたこちらへの詮索をさせないための牽制はあった。
余所の国の者を彼の間近に入れて探らせるわけにも当然いかなかった。
しかし彼の背後に立った彼女は果たしてそれを考えていたのか。
あの時、彼女は『ナニ』を自らの意志で守ろうとしたのか(・・・・・・・・)
本人が一番分かっておらずその不思議さに気付いてもいなかった。

+注意+
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