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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

帰還の波紋編 プロローグ

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04-?? マイナス系問題児

実際この手のタイプの問題児はなんて呼ぶんだろうね?

※04の話が予想外に膨らんでしまったので数字を?に変更しました(汗)
 一応04軸の最後らへんの時期の話と思っていただければ。
──問題児



この言葉を聞いていったいどんな人物を思い浮かべるだろうか。
非行に走って喧嘩にあけくれ行き場のない憤りや不満から大人に反抗する不良か。
突拍子もない言動で場を引っ掻き回すだけひっかきまわすトラブルメーカーか。


実のところ“彼女”はそういう問題児しか知らなかった。


何かをしでかす(・・・・)から問題児なのだとずっと思っていたのだ。
だからこの学園で“彼”の行動を見た時、唖然としてしまったのである。
何もしない(・・・・・)ことがあそこまで問題になることがあるのだと。


ここは『UN=ガレスト合同特殊高等学校』で通称は『ガレスト学園』という。
科学技術が発達した異世界『ガレスト』の知識や技術を学ぶ場所。
両世界の橋渡しとなり両世界を担う次世代の若者を育てるために作られた学校。
8年前から続く一種の異世界ブーム、ガレストブームもあって入学希望者は多い。
学園の理念ゆえ徹底した実力主義であり厳しい選抜や試験を突破した者だけが入学できる。

ゆえに現在ここに通っている生徒は将来を有望視される“選ばれた者たち”。
素行が悪い者が全くいないわけではないがルールを守らない者はおらず、いても些細な事。



───あいつが転入してくるまで、だったけれど



4月の終わりに転入してきた彼の奇行は初日からひどかったといわれる。
“いわれる”という曖昧な表現なのは噂の域を出ないからだが、
その後の彼の態度を見て誰もが本当でも別に不思議ではないと思ったせいもある。
例えば学園の案内役になった女生徒の説明を聞いていなかった、らしい。
そのさいにあちこちの備品を壊したが、一度も謝らなかった、らしい。
上級生から態度を注意されても無視して相手にしなかった、らしい。
その初日から堂々とガレストから連れ込んだペットと一緒に通学した、らしい。
担任教師との挨拶でかなり失礼な態度をとった、らしい。
学園のルールを『逆手』にとって他の生徒を盛大にバカにした、らしい。

あくまでらしいがつく噂だが彼女は多少の脚色はあっても事実だと思っている。
風紀委員という立場にあった彼女は話を聞いて即座に注意し教師陣もした。
けれどまだその頃はこの場所に慣れてないのだろうと皆は考えていた。
少しすればいつしか慣れ、この学園の特殊さを理解するのだと。

けれど彼は決して変わることなく転入から約二か月が経過しても変化しなかった。

転入したてに比べれば問題を起こす()そのものは減っている。
けれどそれは彼が周囲と関わらないようにした事で必然的に減っただけで、
彼がこの学園に馴染んだわけでもそのルールを守っているわけでもない。
声に気付けば反応こそするが余程簡単な事でもない限りまともに答えようとしない。
相手が誰であれそれは変わらず真面目だった授業態度も最近は居眠りばかり。
しかも普通授業は真面目に受けるのにガレスト関連だけなのが余計に反感を買う。
何も答えない。何もしない。誰とも関わらない。頑張らない。人のいう事を聞かない。
見事なほどに「ない」行動ばかりで彼は学園を盛大に引っ掻き回した。

結果教師陣を含めて他の生徒とのいざこざは尽きないが本人は気にし“ない”。
それどころか周囲のすべてを無視して何が起きても表情一つ動かさ“ない”。
そんな態度をしていたら目を付けられ『力』で潰されるのがこの学園の常。
しかし彼は露骨に生徒たちがこの学園で得た力さえも相手にし“ない”。
誰の何を見ても聞いてもされても石ころでも見るかのような興味の“ない”目。

彼女を含め、大半の生徒が遠回しにバカにされていると感じて憤っていた。

その怒りの声すらも理解でき“ない”といわんばかりに彼は首を傾げるだけ。
あまりの態度に気味悪がって話題にあげるのも嫌がる生徒が出てくるほど。
そしてついには教師陣すら彼に構うなと、放っておけと言ってくる始末。

──悔しい

これが彼の出した結果、示した実力のためなら彼女も誰も何も思わない。
この学園は実力主義である。学年も学歴も家柄も資産も親も運も関係ない。
ただ能力と実力を示せばこの学園ではさまざまな特権が与えられる。
寮の部屋は広く快適になっていき設備の優先的な使用権を手にし、
授業免除や新型(・・)や強力な武装(・・)も優先して配備もされる。
卒業後の進路だってそういった生徒たちには厚遇が約束されている。
だから皆、上を目指して頑張り続けている。誰もが努力を怠ってはいない。
少なくとも彼女が知る人たちはそうなのである。


───なのに、努力もしない無能のあいつが好き勝手するのは許されない!


彼女の場合は他にも色々と問題の彼にはいいたいことがあるのだが、
それ以上に彼女『千羽(せんば) 陽子(ようこ)』は立場上見逃すわけにはいかない。

政治レベルはともかくとして民間レベルで異世界交流が始まったのはまだ8年前。
だからこの学園でもまだまだ教師陣が異世界文化に慣れておらず人材が育っていない。
そういった新しいモノを受け入れやすい子供と固定観念が強い大人の差が明確に出た結果だ。
そのため生徒の起こした問題は同じ生徒に解決させる風潮がこの学園にはある。
結果、普通の学校と違い委員会や生徒会の持つ権限は創作物のそれのように強くなった。

しかしながら問題だったのは何もして“ない”者を取り締まる校則が基本無いこと。
それらは何かに違反して初めて彼女ら風紀委員が取り締まれる者となるのだから。
憎々しく陽子は思うが彼が受け身であり無反応が顰蹙を買おうが悪いのは先に手を出した方。
だから彼女は怒りを持ちながら彼を助け我慢できずに手を出した方を処罰するしかない。
それを彼がまた対岸の火事のような他人事として見ているために陽子の憤りは募る。

───最悪で最低な奴。どうしてこんな奴がこの学園に通えるのよ!

彼がこの学園に入学せざるを得なかった事情。
特殊な異世界漂流をした人間であることを彼女はよく知っていた。
その保護の名目もあってこの学園にいることは容易に想像できてしまった。
だからだろうか全身から来たくもないのに通わされている感を常に出している。
学園にも他の生徒にもガレストにも興味のない無関心な目でいい加減に日々を過ごす。
事情を知るだけ余計に彼女は彼のそんな態度が許せない。究極に感情を逆なでされる。

どうして普通にしてくれないのか。
どうしてわざわざ問題を起こすのか。
どうして自分達をかき乱すのか。

───どうしてあの男は私達を困らせることしかしないのよ!

その問題の生徒の名は『中村 信一(なかむら しんいち)』。
ステータス最下位(オールD)の無能ながら境遇()だけで入学を許可された異端児。
なんだそれはと陽子は静かに怒りを燃やす。自分達の8年を否定するかのような存在に。
異世界の実在が公となり世界中が大きく動く流れの中で精一杯頑張ったこの8年を。

───許さない

何より大事に、誇りに思っている所を侮辱された。
たとえ彼本人にそのつもりがなかったのだとしても、許せない。
そして何よりこの学園には彼のような者は必要ないと断じる。


───私が絶対にあいつを追い出してやるんだから!




「そうでしょう陽介(ようすけ)っ!」

廊下を歩く女生徒・陽子は隣りにいる自分の顔を男っぽくしたような男子生徒に、
これまでの二か月で積み重なった強い想いを激しいほど熱く語って聞かせた。

「………姉ちゃん、うるさい」

けれど陽介(おとうと)は冷めた態度で溜め息まで吐くと紙パックのりんごジュースを啜る。
あまりに拍子抜けな熱の無い態度に彼女の目が驚愕に見開かれ、少し唖然としてしまう。

「な、なによそれ。あんただってあいつは気にくわないって」

「ああ、だから関わらないようにしてるんじゃないか。
 姉ちゃんは風紀委員だから仕方ないけど、俺どこの委員でもないし」

気に入らない相手と関わる気がない。
その態度はどこか問題の男と似ていて陽子は苛立ちを覚える。
しかし確かに委員になっていなければ関わっていたかは微妙な所である。

「まあ姉ちゃんのことだからさ。
 無駄に(・・・)責任感やら義務感でしつこく注意したんだろうけどさ」
「うっ!」

さすがに生まれた時からの付き合いか。容易く的確に彼女の痛い所を突いている。
親や友人からも彼女のその背負い込み過ぎる所や使命感が強すぎる所は指摘されていた。
少し肩の力を抜けといわれるが入れているつもりがない彼女にはかえって難しい。

「で、でもそれを抜きにしたってあいつの態度はひどすぎるでしょうが!」

「それはそうだけどさ、今の俺たちにそんな事気にしてる余裕あるのか?
 なんのためにこれからフィールド貸し切ってまで練習すると思ってんだよ」

「あうっ、それは……」

冷静な弟の指摘に彼女はただ言葉に詰まるだけ。
本来やらなくてはいけないことを“彼”関係で振り回されて出来ていないのだ。
これ以上の鍛練不足は本番(・・)に確実に影響するだろう。

「もう半月もないんだぜ、俺たちのデモ戦。
 無様なところは、絶対に見せられないんだから」

そういって意気揚々と肩で風を切るように進む双子の弟の姿に、
“そうだった”と気持ちを切り替えた陽子は気合を入れるために自らの両頬を叩く。
今から約半月後にガレスト学園は外からの客を招き入れての『授業参観』が行われる。
授業参観といっても普通のそれとは意味合いが違い文化祭や学園祭にテイストは近い。
“生徒の学園での活動による成果の発表などの目的で行われる学校行事”という意味では。
その価値(・・)という意味では大差があり生徒達の未来を決めるかもしれない重大行事。
なにせ政府の高官から異世界ガレストの関係者に各企業の重役やらスカウトも集まる。
そこで実力を見せれば在学中はもちろん卒業後も便宜を図ってくれる。
この姉弟はそこで学園側の代表として選ばれ、外部のプロと戦う予定。
学園からすれば教育がうまくいっていることを示すプレゼンであり、
外部の人間からすれば生徒たちのレベルを測る滅多にないチャンス。
そこで優秀な働きを見せれば当然注目を集められ、就職にも有利となる。

「……俺たちはさっさと成果だして母さんを楽させてやる。
 そう決めてこの学園に入ったんじゃないか」

だから風紀委員のことは少し頭の隅においておけという言葉に陽子は頷く。
何より授業参観である以上、生徒たちの保護者も来れる。なら無様は見せられない。

「そうね、見に来てくれる母さんにもいい所見せないとね!」

「あったりまえだ」

いつもの笑顔に戻ったと安堵しながら強気に返す弟。
背負い込みすぎるが気持ちの切り替えの早さは見習いたいと思いながら。
一方の姉は弟の言葉に問題児のせいで忘れていた初志を取り戻していた。
ふたりで一緒に証明すると誓ってこの学園に入ったことを。
この6年(・・)女手一つで育ててくれた母の頑張りが無駄ではなかった事を。
自分たちこそがその証明であると世界中に見せつけてやるために。

「なら善は急げ、早く行くわよ!」

「……ハイハイ」

遅れていた原因が何を、という言葉を飲み込んで
自分を追い抜いていく姉の姿に弟は呆れながらもついていく。
ふたりの脳裏に浮かぶのは異世界交流で変わっていく世界の中で、
身を粉にして自分達を育ててくれた母の姿であり、その教えだ。
“これからの時代は力を手にしなければ何もできない”
“あなたたちは強くなってほしい”
“弱いままでは、生きていくことすら難しい”
そう嘆く母のため、だから力を手にするのだと姉弟は誓ったのだ。
だから何があっても負けないと、姉が気持ちを新たにしている中。
弟はくすりと意地の悪い笑みを浮かべるとぼそりと呟く。

「……憧れのあの仮面さんも見てくれるといいね、姉ちゃん」
「よ、陽介ななななにを!?」

強い決意を見せていた顔は一転戸惑いと共に赤に染まる。
沸き上る正体不明の感情を誤魔化すように彼女は弟に詰め寄った。

「あ、あの人はべ、べべべ別に関係ないじゃない!」

突然いわれたことに動揺しながらもなんとか言い返した彼女だが、
陽介は信じた様子もなく鼻で笑って狼狽える姉の姿で遊ぶのだった。

「いや弟としてはようやく姉さんに春らしい春が来て嬉しいよ、うん」

「だ、だから違うってば!!」

そのネタでのからかいは結局目的地に到着するまで続くのだった。
だから彼女は気付かなかった。弟がずっと全く別のことを考えていたなど。


───話をすり替えて誤魔化すの、もう限界だよ兄ちゃん(・・・・)
+注意+
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