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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

ガレスト学園・試験編 プロローグ

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03-26 対価戦闘





四国に匹敵する面積を誇る海上都市クトリア。
そのほぼ中央にある学園の裏手には都市のほぼ半分を使った人工の大自然がある。
森林があり、河川があり、山脈があり、洞窟があり、荒野があり、湖がある。
生物すべてにとって害獣でしかない輝獣の発生原因となる次元エネルギー。
それを地球全体から集めて故意に輝獣化させ他の地域の安全を確保する。
同時に学生たちの実戦経験を得るための野外フィールドにもなっており、
授業や自己鍛錬の一環として許可さえ取れば学園関係者は気軽に入れる。
逆をいえば関係者以外はフィールドを囲む軍事レベルの出力を誇るバリアで
不心得者の侵入と内部の輝獣が外部に進出することを防いでいる。

「っ、このっ!」

「よっとっ」

本来ならば、だが。
許可なくば不可侵であるはずの自然の中に許しなく入った二つの影。
学園関係者なのか否かという点においては関係者ではあるのだが、
様々な事情から記録が残ってしまう許可を取らずに忍び込んでいた。
位置としては奥地過ぎずバリアからは程遠い絶妙な距離にある湖の畔。

「ぐっ、ちょこまかと!」

「いや、どっちかというと動き回ってるのあんただろうが」

それなりに開けた場所で一組の男女が片刃実体剣(ブレード)一本で切り結んでいた。
雪のような白髪を揺らすジャージ姿の女性が気合のこもった一閃を振るい、
それを自前の体操服姿の少年が最小限の動きで避けながら苦笑している。

「このスピードでも当てられんとは! 化け物かきさま!」

「生身でこんな速さ出して、余波で大地割ってる奴に言われたくない!」

格好こそまるで体育授業のように見えるが女性の速さは尋常ではない。
疾風と呼ぶにまさに相応しく、振るわれる一閃は雷光よりも苛烈。
少年の周囲の自然環境を無情にも、無残にも破壊し尽くしていく。
確かに少年のいうとおり彼女に誰かを怪物と罵る資格はないだろう。

「くくくっ、だがそれがよい!!
 やっぱり私の目に狂いはなかった! お前はじつにいい!!」

むしろ当てられないことに喜色を増していく女性の顔に正気の色がない。

「バカいうなこの戦闘狂い!」

だがそんな彼女の猛攻をすべて避けきっているうえに軽口を返せる彼は何者か。

「っ」

否、実際はそのすべてを完全に避けられているわけではない。
女性の文字通り大地を割る剛剣に己が刃を当てて、僅かにそらしている。
優しく撫でるかのような繊細な剣捌きの前に女性の剣は本領を発揮できない。
それはまさに柔よく剛を制すという言葉を見事に体現した剣技であった。
そして傍目には防戦一方に見える攻防も彼らにとってはそうではない。
刃をそらすたびにその瞳には隙を見逃さない獲物を狙う狩人の目が宿っている。
女性も興奮しているわりにそれには目聡く気付いており深く切り結ぶことをせず、
一太刀振るっては離れるという当ててはいないがヒット&アウェイを繰り返していた。

「……おい、そろそろ時間が無くなってきたんだが?」

その状態がいくらか続き、うんざりしてきたのか少年が提案する。
互いの予定や条件(・・)を考えるともうこの戦闘を終えたいのだ。
空中に現在時刻をモニターで表示して訴えるが女性に聞く耳はない。
この場合は戦いに興奮しきっていて、見える目がない、なのだが。

「フフフッ、いい! この胸に来る緊張感!
 身体中がカッカッしてくるぞ! もっと、もっとだ! いくぞぉっ!!」

作りとしては美貌といえる顔を狂喜の感情で満たして叫び、彼女は地を駆ける。

「………やっぱやめとけばよかったかな、これ」

嬉々とした笑みを浮かべて突撃してくる相手を前に今更な溜息を吐く少年。
手甲状態のフォスタが小さく輝き、彼女のスキル発動を訴えていたのが見えた。

「『ショートランド』!」

それでも彼女は事前に決めたルールを守って音声操作で使用している。
ならば少年も約束を勝手に違えるわけにはいかないと変わらず本気で対峙する。
そのためにまず少年は意図的に彼女ではなく周囲に視線と意識を向けた。
戦いの中で相手から目を離すなどというのは本来ならば自殺行為である。
先程までのようなヒット&ウェイ戦法なら尚更だがこれはそうではない。
いま使われたスキルは目で追うことが無意味で不可能なのだ。
何せ、姿が消える。

「あちゃぁ、何気に昨日より間隔が短くなってやがる」

正確には超短距離間で空間転移を繰り返しているためそう見える、だが。
少年の周囲に出ては消える女性の影。時に正面、時には死角に。真後ろにも。
現れては消える彼女はいかにもそのまま斬りかかってきそうな体勢だが、
即座に消えては次の地点に現れ、またも消えるという行為を繰り返す。
少年からすれば方向も距離もバラバラな転移であり動きを予測しづらい。
消えたあとでまた同じ場所に現れることさえあるのだから。

「伊達に縮地(ショートランド)じゃないってか。安易な翻訳しやがって」

ガレスト語のスキル名を日本語に翻訳してから英語に翻訳したのか。
それとも少年が日本人なため和製英語のように翻訳しているのか。
どちらにせよ出ては消える女性の動きを風景の変化のように
受け取りながら、埒もないことを頭の片隅で少年は考えていた。

「今更だけどさ、それ絶対生徒に向けて使うスキルじゃないだろ。
 教科書にも超上級スキル扱いでしかも使用禁止って書いてあったぞ!」

余裕があるというよりは相手の大人気の無さのせいだ。
あらかじめ決めていた戦闘空間内での連続短距離転移は次が予測できない。
そのため強制的に先手を取られるという反則に近いスキルであるのだ。

「実戦」

「では」

「私」

「以外に」

「だれも」

「使えなかった」

「スキル」

「だからな!!」

あちこちに顔を出しながら語るので言葉が途切れ途切れで伝わり辛い。
目で追おうとすれば彼女が何人もいると錯覚してしまうほどの頻度だ。
半ば以上呆れた顔をする少年だがブレードを握る左手は緩んではいない。
そして空手である右手も即座の事態に反応できるよう自然体で待機している。

もう既にこれが彼女の十八番スキルであるのは充分に知っている。
こんな戦いをするのは何も今日が初めてのことではない。もう半月以上だ。
そして反則気味のこのスキルを味わうのもこれで通算四度目なのである。
最初に襲われた時、急激に距離を縮めて背後に立ったのはこれだった。
そう、ならばこそ彼は先手は取れなくとも気配で後の先は取れる。
だが既に三度破られているスキルを承知で使う以上、考えあってのこと。
後の先を取られない、ないし取られても構わない戦術があるはずだ。

少年はそう考え、力みを抑えた自然体で全方向に意識を向けている。
だらりとブレードを下げているのもどこからでも対処するため。

「『アイ』」

「『シクル』」

「『レイ』」

「『ン』」

少年は途切れ途切れの言葉を脳内で並べる。アイシクルレイン。
直訳して氷柱の雨。その性質とショートランドの組み合わせに胸中で笑う。
それは単独使用なら使い手の前方から槍状の氷柱を連続射出するスキル。
だがそれを少年の周囲を転移し続けながら使うとどうなるのか。

「つららの雨が降るでしょう、ってか?」

それも空からではなく全方向から。とはいえ。
先端が鋭く尖った氷槍群に囲まれているがその顔に焦りも動揺もない。
この使い方をした場合視覚から相手に与える心理的威圧効果はじつに高い。
鋭い氷の矛先が自分を全方位から取り囲んで一気に迫ってくるのだから。
だが“経験値”という意味において人類で彼に勝る者などいない。
微塵も臆することなく自身も身を守るためのスキルを使用する。

「『ウインドシェル』!」

防御系自然干渉型・風属性下級スキル。
風で形作られた膜のような殻が少年の体を覆って隠す。
降り注ぐ氷柱は渦巻く風の殻の前にいとも簡単に弾かれていく。
転移し続けながらの発動がそれらの勢いを最低限のレベルにしていた。

「かかったな!」

しかしそれは彼女の想定の範囲内。
もとよりショートランドも、その最中のアイシクルレインも。
それに対する彼の迎撃か防御を誘ったもの。彼女の狙いはその隙。
もともとウインドシェルはさほど高い防御力があるスキルではない。
粉塵や煙、ガスといった気体状のモノを防ぐのに適したもの。
“必殺”を狙う渾身の一閃を防ぐことはできはしない。

「はあぁぁっ!!」

あえて風の膜をまとった彼の真正面に出て、ブレードを振りおろす。
加減を考え片手のみで握りだが彼女はそれで充分だと勝利を確信する。
何せウインドシェルにはある欠点がある。密度の濃いエネルギー製の風が
流動しているためか視界が一部遮られて外部を把握しにくくなる。
目の前に立てばさすがに気付かれるが一瞬の遅れは生まれる。
それは短距離転移し続ける彼女にとっては願ってもない時間。
気合の声と共に彼女の剣が風の殻を切り裂き、その中の少年に届いた───

「っ!?」

──瞬間、彼女は己が敗北をつきつけられた。
これは模擬戦(・・・)だ。倒すのはいいがケガはもちろん殺すのは当然ご法度。
ゆえにこの戦いを終わらせるのは文句なしに“入った”一撃を繰り出した方。
傍目には少年の首元に刃を振り下ろした形で寸止めした彼女の勝利に見える。

「くっ、誘われたのは私の方だったか」

「そういうこと……ちょっと誘いが露骨だったからね」

だがしくじったと悔しげな声をあげた彼女に答える声が“下から”届く。
そこにはもう一人の少年が屈んだ状態で己が剣を女性の腹に当てていた。
にやりと少年が笑えば、立っていた少年の姿が揺らいで掻き消える。

「やはりデコイ映像……見えにくいのはこちらも同じだったか!」

悔しげに女性の表情が歪み、その瞳には怒気さえ浮かんでいる。
負かした相手ではなく初歩的なトリックに騙された自身への怒りだ。
これにて18戦18勝0敗。それがこの二人のこれまでの結果。
悪目立ちしている転入生と学園最強の実技担当教諭の戦績である。
この結末を見ればどちらが連勝しているのかは語るまでもないことだった。



ある日からナカムラ・シンイチとフリーレ・ドゥネージュの二名は
早朝この野外フィールドにて毎回違ったルールながら模擬戦を行っていた。
今回に関していえば使えるのはスキル(音声入力のみ)とブレードだけ。
そして開始した地点から半径100メートル以上移動しないという単純なもの。

ではなぜこの二人がそんなことをしているのかといえば、単純な取引だ。

シンイチが自らの秘密を守るための取引相手に選んでいたのは彼女。
実技担当教師として最も頼りにされている学園最大戦力という立場と権力。
そして彼女が最も欲しかったモノと彼が容易に提供できるモノが合致したためだ。
つまり、一度は断った彼女からの戦ってほしいという話を受け入れたのだ。
無論いくつかのルールと交換条件を提示したうえで、だが。

・この取引のことを誰にも教えない。また知られないように全力を尽くす。

・シンイチと戦って知り得た情報をもらすことも禁止する。

・シンイチの異常あるいはおかしな点について指摘してもいいが説明は求めない。

・言葉使いは当人同士のみの場合はどれだけ砕けていても気にしない。

・簡易を含めた外骨格を使用しない。大規模な破壊痕を残す武装やスキルも禁止。

・自らの立場が悪くならない範囲で学園生活のサポートをすること。
 このサポートとはシンイチが現状以上に注目されないようにするのを主とする。
 そのためならシンイチの立場、成績、扱いが下がるのも良しとする。

・模擬戦ごとに知っている範囲、教えてもいいと思える範囲で質問に答えること。
 ただしシンイチがそれをなぜ聞きたいのかは詮索せず質問内容を誰にも教えない。

・これらを守る限り、フリーレからの戦闘要求は可能な限り叶える。

彼女はその条件に対し、いくらか考えたものの受け入れた。
条件そのものに怪しいものはあったが叶えられないものではないため。
それ以上に彼女の戦いへの飢えがかなりたまっていたともいうが。

シンイチからしてみてもあまり情報を開示せずに得られる協力者は貴重だ。
さらにその対価がバトルマニアの欲求を満たすだけなので格安ともいえる。
また秘密らしい秘密を教えていないので取引が破断しても問題が少ない。

互いの旨みがかみ合った取引の結果この模擬戦はほぼ毎朝続いてもう半月と少し。
カレンダー上ではもうすぐ5月が終わり6月に入ろうかという時期になっていた。

ここをその場所にしたのは彼女が事前許可なく入れる権限を持つ者であり、
他に利用者がいなければ完全に無人なため秘密にしやすいからである。
この時間帯なのは両者にとってあいている時間がそこだけだからだった




「ぷはぁっ、まったくっ……毎回お前の発想力には感心する」

ジャージの上着を脱いで湖に頭を突っ込むようにして軽く汗を流す女性。
1-Dの副担任である教師フリーレはそんな豪快さを見せつつも、
恨みがましい目つきで汗ひとつかいてない己が生徒を睨んでいた。

「そうか? 当然の発想だと思うけどな」

涼しげな顔で大石を腰掛けにしている男子生徒シンイチは首を傾げる。
それぞれのスキル特性を知れば誰でも思いつきそうなものだと彼には思えた。
その様子に溜息を吐きながらフリーレは勢いよく振り返って指摘する。

「ぉぉ」

「内外が見えにくくなるウインドシェルと目の前では使えないデコイ。
 言われれば確かにうまい組み合わせだ。慣れているほどハメられる」

デコイとは補助系に分類される敵を欺くスキルだ。
通常フォスタ等で表示・投映されている映像はあえて解像度が下げてある。
技術が高い弊害というべきかモニター映像ですら現実的(リアル)過ぎるためだ。
それを逆に利用したのが間近でも見分けがつかない立体映像による(デコイ)
撤退時の囮。乱戦を煽る虚。全体の数を誤魔化す嘘などに使われるスキル。
とはいえ相手の見ている前で使えばこれほど無意味なスキルもない。
その欠点を視界を遮る欠点を持つスキルで補ったのは確かに見事といえた。

「だがガレストの戦場の主流は外骨格装着が前提の集団戦だ。
 思いついても使う場は限られてくるし例え一対一の場合でも
 これは最初の一回でしか使えないハメ技だ。ガレスト向きじゃない」

「そりゃそうだが……ああ、なるほど。
 装備が優秀過ぎて互いに死人が出にくいガレストだとそれは流行らないか」

外骨格装着が前提ということなら余計に。
あれは装着者を守るためのシステムが十全に用意されている。
敵対陣営がそれを互いに用いて戦えば死人が出ない事は無くとも数は減る。
少なくともこちらの常識的な戦争とは比べ物にならないほどに。

「………相変わらず、怖いくらいに察しがいい。
 いまは人間同士の戦争は無いから主な相手はテロリストか輝獣だが、
 昔は同じ相手と何度も戦場で出会うなんてことはざらにあったらしい」

一期一会になりやすいテロリスト相手ならばともかく。
知能なんてものがほとんどない輝獣相手に奇策はあまり意味がない。
わざわざこんな一度だけしか相手を騙せない方法を考えるぐらいなら
その時間で自分を鍛えるか強力な武装の扱いに慣れたほうが建設的なのだ。

「それなら奇抜な(スキル)を考えるより基本能力を底上げすべき、か。
 いやはや道理にかなっている。俺のような才能の無い奴には無理な話だが」

「何が才能が無いだ。
 なら、それに負けてる私はなんだというんだ……」

シンイチは本気で(・・・)才能は無いと思っているし事実なのだが、
連敗を喫している彼女からすればそれは嫌味にしか聞こえない発言だ。
ふてくされたように口を尖らせていじける姿に思わず彼は苦笑する。

「事実だよ、俺のはただの奇策と技の勝利って奴だ」

「奇策と技、ねえ。
 交流開始直後には、それらを駆使すればステータスの差など、
 といって挑んでくる武芸者がいたらしいが全部返り討ちだったぞ?」

彼女本人が相手をしたことはないがそうだと聞いていた。
そのためシンイチの言葉はていのいい誤魔化しにしか聞こえない。
だが、彼はそうではないというかのように付け加えて否定する。

「それはあんたらと戦える下地ができてないからだよ。
 同じ土俵の上にも立てない奴の技や策なんてたいして意味がない。
 “ワザ”が通用するのはせいぜい自分より一段か二段上の相手までだろ」

それ以上の開きが出れば、それは技ではどうしようもない差となるのだと。
驕るでも自慢するでもなく日の昇る方角のような常識として淡々と話す。
少なくとも彼にとってワザというのは同じ土俵(ルール)の中で通用するものだ。
ゾウやクジラに達人とはいえ人間のワザが通用するのかといえば分かり易い。
武術の技は相手が同じ人間であることを前提としているのだから。
ステータスを鍛えあげた人間とまるで鍛えていない人間との間には
それだけのポテンシャルの違いがあり、それだけ基準が違うのだ。

「ん、なるほどな……役割分担がない世界だからこその発想だな。
 戦う才や能力がない者はそもそも戦う必要が薄いからなガレスト(こちら)は」

その違いが戦いに関する考え方の違いの原因かとうんうんと頷くフリーレ。
これではどちらが教師なのかという光景だがシンイチの関心は別にある。
黙っているか穏便に指摘するかで悩んだが結局はいつもの通りにする事に。

「………あのさ、先生」

「ん、なんだ?
 あっ、すまないな。こっちが色々聞いてしまって。そろそろお前の───」

「───これ以上見せつけられるとこっちも我慢できないんだけど?」

「へ?」

どこか楽しげで─既視感のある─笑みを浮かべたシンイチの言葉に戸惑う。
意味が分からないことは解っていたのか。彼女の顔を指差し、それを少し下げた。
釣られるようにして視線を下げれば、当然そこにあるのは彼女の視界を遮るモノ(・・・・)

「そこまで着痩せするとはな。推定より1カップ上のGか。すごいな」

「────っっ!?」

彼女が脱いだ上着の下は中身を窮屈そうに押し込めたスポーツブラだけ。
どこか上気した色の肌や汗に濡れていたせいか意図してないのに艶めかしい。
それを指摘するかのような既視感のある笑みと視線に一気に赤面し、
胸元を隠すように腕を組んだうえでシンイチに背を向けた。

「おっ、お前っ、人が真剣に喋ってる時にどこ見てるんだ!?」

普通ならこの程度の格好では彼女は何も気にしなかったろう。
裸でもなければ下着姿でもないうえに彼は本質的に自分の生徒でもないから。
そういった色欲にからんだ視線をまるで向けてこないゆえの安心感もあった。
現にそうはいっていても彼の目に“いやらしさ”はまるでないのだが、
はっきりと指摘されてしまうとどうしてか恥ずかしい。

「ふふっ、文句なら受け付けないぞ。無防備にさらしたのはそっちだ。
 しかも年頃の男子には目に毒なほどすごく立派なモノをさ」

シンイチは彼女をからかう意図満載の笑みだけを浮かべている。
しかし言っていることには一理あるためか彼女に反論が浮かばない。

「さらにいうと、人気はない、体力を少し消耗してる、異性と二人きり。
 信用してくれてるのは嬉しいけどもうちょっと警戒しようね、先生?」

にっこりと微笑みながらまるで教師が生徒を指導するかのようにいわれる。
これでは立場があべこべだと悔しいやら恥ずかしいやらで余計に顔が熱くなる。

「へぇ、なるほど。
 先生は普段は気にしないが指摘されると恥ずかしいタイプか。
 いやはやなんとも揉みがい、もとい弄りがいのある────よっと」

その様子を楽しげに見据えていた少年の頭が、不意に横にずれた。途端。

「っ、なんだ!?」

湖畔からほど近い水面から二メートルほどの水柱があがる。
それはすぐに消え、ゆっくりとだが元の静かな水面に戻っていく。
だがそれはナニカがそこに落ちたのだと如実に表していた。

「……お前の方から飛んできたような気がするぞ?」

「くくくっ、お前の方が先に爆発しするとは、ちょっとからかいすぎたな」

言葉だけは反省したような物言いなれど、押し殺した笑い声が台無しにする。
不思議がるフリーレを余所に彼はあらぬ方向にVサインと笑顔を見せるのだった。



「でかけりゃいいのかーーーーーーーー!!」(誰かの魂の叫び)

ばっちりバレている狐の監視。
じつはこいつ同時にふたりをからかって遊んでいたという。
+注意+
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