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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

波紋編 第二章「異世界な故郷」

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02-19 科学VS幻想3

週一更新になっているな。
……場面が続いているからもっと早くしたいのに……

魔装闘法術は決して己が肉体だけを強化する術ではない。
自らが直接触れている物質ならば何にでもかけることができる。
例外は魔力を持つ自分以外の生物と彼の爪のような特殊な物質だけであり
ただの天幕をその柔軟性を強化しつつ魔力で覆って強度を持たせるのも
清掃員が捨てたモップを光線を弾けるほど強化するのも朝飯前である。
あくまで使い手たる彼の技量ランクの高さゆえのことではあるが。


───これは困ったことになった


しかしそれでも本物の外骨格(パワードスーツ)と戦った正直な感想はそれである。
先程の簡易外骨格とは比べ物にならない防御力と個人結界(バリア)は予想以上の硬さ。
また衝撃を緩和する機能まであの重厚な紅い鎧にはあるらしく伝わりきらなかった。
魔力で内外から強化した拳は目論み通り結界を突き抜け相手に確かに直撃した。
その威力は魔装闘法によって筋力と耐久をCランク程にまで底上げし、
Sランクの技量でそれを十二分に引き出し調整した“必倒”の拳打であった。
あくまでも倒すための、彼が武装した人間に向けて放てる最大威力の拳。
それでも外骨格の装甲が窪んだだけで相手は即座に起き上がれた。
シンイチとしてはあの一撃で外骨格を完全に打ち砕く腹積もりであった。
あちらも正体を隠したいのは一緒なのだから肝心の武装を、
その要である外骨格を壊してしまえば撤退せざるを得ないだろうと。

簡易外骨格を基準にして五倍の強度を考えていたが実際は十倍強ほど。
結界を破るために拳表層の魔力を削られ、紅槍の無意識に近い動作で
後ろに下がられたことも相俟って威力が軽減されてしまっていた。
街のチンピラや傭兵もどきとは格の違う歴戦のそれを感じさせる反応だ。

マスカレイドの認識阻害も機能しているようだが対応している。
突っ込んできた槍をさばいたあとの薙ぎ払いは実に適切だった。
そして思い切りも判断も速い。あれだけあった槍をあえて捨て、
威力が段違いの銃器で牽制しつつ当初の目的を果たそうともした。
個人兵装のレーザー兵器などSFか特撮でしか見たことは無かったが
思わず弾いた光線は天井に大穴を開けて彼に空を見せている。

ふざけた威力だと思わず唖然となって固まったシンイチだが、
それを魔力で強化したとはいえモップで弾いた彼のいえた話ではない。
相手もそれにはさすがに驚愕し動揺しているのか動きが止まっている。
彼には助かる話だが根本的な解決にならない。このままでは決め手がないのだ
手段を選ばないのならいくらかあるのだが彼は手段を選ばねばならない。

『行くぞ』

ゆえにあえて呼びかけてから床を蹴った。
T字部分を上にしたモップを片手で握って振り上げながらの突撃。
驚愕に捕らわれていた“紅”は呼びかけに反応してこちらの動きをとらえる。
銃器と化した両手を向けるタイミングは逃していたが意識だけは遅れていない。
そうでなくては困ると胸の内だけで笑ってシンイチはモップを振り下ろす。
だがその前に舞い飛ぶ三本の槍が漢数字の『三』のように並んで立ちはだかる。
その後ろには四本目が浮かび、こちらに穂先を向けて待ち構えている。
こちらの一撃を受け止めてのカウンター狙い。
露骨ではあるが咄嗟の対応としては見事だろう。
それを誘われたのでなければ。

『フッ』

わざと嘲笑うような吐息をもらし、彼はモップを振り切った。
縦一文字の一閃は『三』を見事に斬り裂き、ただの六本の棒きれへと変えた。
相手の驚愕の声を無視し即座に獲物(モップ)を振り上げて、四本目を縦に切り裂く。
剛の型で覆わせた魔力の形は自由自在だ。対象の形状から大きく逸脱できないが、
棒状のそれを芯にして魔力の外装を刃状にするのは許容範囲だ。

『っ!』

光線に続き、武装をモップに切り裂かれて驚愕する呼吸が聞こえる。
だが敵もさる者。驚きながらもその手にはどこかから取り出された剣があった。
片刃の直刀。槍も含めて日本人的な意匠を感じたがいま考える事ではない。
モップを再度振り下ろし、それを直刀が迎えうつようにして鍔迫り合いに。
瞬間互いの刃先で火花が散って、モップの外装魔力がわずかに揺らぐ。
直刀の表層にも何らかのエネルギーが膜のように覆っていたのだ。
原理はともかくモノとしては酷似した武器がぶつかりあえば、
勝敗をわけるのは使い手の技量と中身の強度である。

軋む音を訴える中身(モップ)に舌打ちし切り結びは無理と判断。
柄の中程に持ち替え、T字に直刀の峰に引っ掛けるようにして寄せる。
鍔迫り合いで押し合っていた相手からの突如の引きにつんのめた相手へ
頭部目掛けて勢いよく空手の拳を叩き込み、わずかな窪みと衝撃を与えた。
それによりふらついた所へさらに頭部目掛けてのハイキック。

『なめっ、るな!』

それでも直刀を立てて盾のように構えた相手の反応には感心する。
だが繰り出したこの蹴りには威力はなくある事を確かめるための攻撃。

『弾き飛ばせ、重力(ガ・ゴルガ)

蹴りと刀がぶつかる寸前に呟き、ただの蹴りに重力魔法の力を与える。
見えなければ本当に魔法(ナニカ)をしたと分かるのか否かの確認。
この相手との戦いにおいて魔法という選択肢が使えるのか使えないのか。
それを判断するための一撃だった。

『くっ、ん?』
『なにっ!?』

だから、弾き飛ばせと命じて相手が吹き飛ばなかった事は想定外。
相手もまた予想していたものを下回る衝撃に戸惑うような声が出ている。
そしてそれは困惑と驚きの声の混じったものにすぐ変わった。

『はぁ!?
 急速落下中!? こんなときに誤作っ、まさか貴様か!?』

『そういうことか!』

『ぐあっ!?』

内心で舌打ちする。魔法選択を誤った、と。
即座に脚を下ろして窪んだ胸部目掛けてモップのT字を突き立て押し飛ばす。
純粋な力技な押し込みで紅に再び二本の轍を作らせながら距離を取った。

『……十八番の魔法が相性悪いとか、いつも通り引きが悪い』

理屈やシステムについては理解できずとも結果と発言で推測はできる。
重力魔法は効果を発揮せず、紅の外骨格がそれを落下と認識したのなら
あちらには重力に関係する装置があり、それによって中和されたのだと。
後々詳しく知ることになるが外骨格には反重力を使った飛行能力があり、
それには反重力スタビライザーという飛行中の姿勢制御の補助をしたり
急激な落下から装着者を自動で守るシステムが内臓されていた。
これが一方向からの強い重圧を受けて落下したと誤認し中和したのだ。
攻撃の衝撃を緩和することもじつはこれまでずっとしていたのだが、
強い重力()だけで押そうとしたために完全に無効化されてしまった。
これにより重力魔法は攻撃手段として使えなくなってしまう。

『ぐっ……さっきのは重力波による攻撃か。なんて旧時代的な。
 いったいどんなコンセプトの装備だ! 意味がわからん!』

唯一の収穫はそれ自体を未知なものだと思われなかったという事か。
口数が少なかった相手も理解できない装備─と思っている─の連続に
怒鳴りつけるように無茶苦茶だと言外に教えてくれていた。
古くて悪かったなと思うと同時にこれならばある程度は
勝手に未知の装備と誤解してくれると判断する。

『都合がいいといえば、いいんだけど……ちょっとショック』

釈然としない気持ちながら彼は大きく後方に跳躍して元の位置(・・・・)に戻る。
さらに下がったことに警戒する相手を見据えながらモップ剣で床の一部を切りとる。
長方形に裂かれたそれは引力に従って下階に落ちていく。寝転ぶ男達を乗せたまま。
そこへ落ちる彼らを追い抜く速度で魔力剣(モップ)を投擲し、二階の床に突き刺す。

点火(イグニッション)

ファランディア語での呟きの命令で魔力を遠隔爆破させ二階の床も破壊する。
出来た穴を通ってさらに一階まで落ちたのを音で判断し動きがない紅を見据える。
想定外はいくつかあったがまずは邪魔な存在を排除するのには成功する。

これで後ろを気にする必要性は完全になくなった。
相手が動かないのはこちらを警戒しているからだろう。
追尾できる兵器の大半が破壊されたこともあるのだろうが、
出来れば消した方が無難であるただの使い捨ての何でも屋と
モップでレーザーを弾いた謎の装備を持つ黒靄では脅威度が違うはずだ。
尤もそのおかげというべきかせいでというべきか取れる手段が減っていた。
元より彼の武器は少ない。己が肉体と魔装闘法、オロル鉱石の爪と魔法。
これまでの攻防でおそらく強くマークされてしまっている以上、
これ以上興味を引いたり脅威だと判断されるモノは出来れば使いたくない。
既にされない道はないのならせめてその程度を低くしたいのが本音だった。

『まったく、面倒なことだ……』

誰にも見えずに苦笑しながら足元にばらまかれているモノを素早く拾う。
三田と名乗った男を吹き飛ばした際に棚から崩れ落ちたCDケース。
それを魔力で覆ってフリスビーのように連続で投擲していく。
だがさすがに魔力が見えなくとも紅にはただのモノとは思われない。
本棚の時のように無視するという選択肢はないらしく直刀を再び構えた。

『いい勘してるな、だが……』

ただのモップでレーザーを弾き、武装を斬った。
ならばただのプラスチックのケースとて警戒はするだろう。
相手は冷静に投げつけられたそれを切り裂き、だが彼は点火と呟く。

『っ!?』

あちらからは投げ捨てたモップがどうなったかまでは見れていない。
音で二階の床を破壊したらしいことまでは察せられても爆発したとは思うまい。
先行した三枚のケースを叩き切った途端の爆破。衝撃で砕けて破片となったそれらが
散弾のように紅の装甲に降り注ぎ、後に続いたケースが手榴弾のように爆発する。

『ぐうぅっ!!』

衝撃と装甲に降り注ぐ攻撃に苦悶の声が聞こえた。
シンイチはそれを背にして次なる武器(・・)を求めて店舗の中に駆け込む。
魔装闘法術はモノを強化し武器でないモノを武器にすることができる。
これが彼があちらにいる時から手持ち武器を持ち歩かなかった理由の一つ。
彼にかかれば周りにある全てが彼の武器庫と化すのだから。

『じゃあ次はこれでいくか』

とはいえそのチョイスはあまりに、いやかなりの悪ふざけに思える。
取って返すようにソレを魔力剣の芯にしてこちらを見失った紅に斬りかかる。
それに気付いてすかさず直刀で受けとめたのはさすがの反応といえるだろう。

『はぁっ!?』

それでも自分が何と切り結んだのかを視認すればモップとは違う驚愕が出た。
言い訳を先にしておくのなら彼がそれを選んだのは偶然視界に入ったからだ。
そしてモップなどに比べればはるかに“剣”として使う適正は高い。
あくまでモップと比べるならば、だが。

『正義の刃、受けてみる?』

しかし手に持った瞬間彼の悪癖が出て、鍔迫り合いの中剣のスイッチ(・・・・)を入れた。

〈唸れ光の剣よ! ブレイドフラァァッシュッ!!〉

『なっ、なんだってぇっ!?』

途端“剣”はカラフルに発光しながら決まった音声を再生し相手を唖然とさせ、
その瞬間を狙って彼は直刀に受け止められた“剣”を強引に押し込み振り抜く。

『うっ、そっ!?』

『さすが日曜の朝を守るヒーローの剣は一味違うな』

嘯きながら“剣”を芯とした魔力の刃で直刀の刀身を叩き斬る。
相手からすればそれはまさに嘘だと叫んでもしょうがない光景。
そしてそんな隙を見逃すことを戦闘中の彼は決してしない。
叩き切った勢いを殺さずに剣を紅の装甲に押し当てると魔力を解放。
剣の形となった不可視の魔力衝撃波がまた紅を吹き飛ばす。

『え、ええぇえぁっ!!??』

それをされた武器ゆえに戸惑った悲鳴をあげながら。
相手の心境などは余所にして彼はご満悦な顔で手にする剣を肩で担いで笑う。
現在その時間帯を守っている『超剣戦隊ブレイドファイブ』レッドブレイドの剣を。
正確にはそれを模した子供向け玩具の店頭試遊品を彼は持ち出してきたのだが。

『ぐっ……ふ、ふざけたことを……っ!』

魔力衝撃波で弾き飛ばされた紅は内壁に叩きつけられるも、
即座に立ち直ったが装甲表面には一直線に斬られたような窪みが出来ていた。
ふざけているのは手に持って武器にした物と態度だけで威力は間違いなく本物。
紅はそれに小さな驚きを見せ、シンイチもまた小さく舌打ちする。

『ゼロ距離でもそれか……硬すぎるな』

思わず右手の爪に視線が行く。
そこにあるのはファランディアのレアメタル・オロル鉱石の爪。
正確には成長を止めた爪にコーティングしてある彼の唯一にして最強武器。
魔力を流すことで異世界(ファランディア)で最も高い硬度と特殊な力場を発生させる鉱石。
使い勝手は魔装闘法術に似ており形状のおかげで斬撃として使える。
これならばあの重厚な鎧を斬ることはできるだろう。十中八九、中身ごと。
これまで数度あの装甲に攻撃を当てた感触からの推察は当たっているはず。

『……出来るなら、とっくにやってるさ』

しかし自嘲するかのように呟いて、玩具を投げつけ飛び退く。
爆発を恐れてか相手も大きく後ろに飛び退いて互いにまたも距離を取る。
だが投げつけた玩具は床に突き刺さるも途端に砂のように崩れ去った。

『やっぱおもちゃに魔装闘法はいつも以上に無茶か………さて、面倒だな』

いつものように魔力負荷に耐えきれなかった武器の末路に苦笑しながら
狙っていた次の武器を拾って、シンイチは困ったようにひとりごちる。

───彼はあれからヒトを殺せなくなった

元々彼は殺人を肯定する精神性など持っていなかった少年だ。
自分は誰かに殺されることはあっても誰かを殺すことはない、などど
雑談の中の軽い冗談であったがそれぐらい彼は自分が誰かを殺すという
状況を全く想像できず、ゆえにその心的外傷はそうとうなものだった。
“黒嵐の悪魔”騒動で死人が出なかったのも突き詰めればそういうこと。
彼は感情的になって暴れながらも殺さない手加減を知らぬ間にしていた。
そして目前で起こる人死にをも彼は止めずにはいられなくなった。
利用された者たちを庇ったのも主犯の男達を庇ったのもそれが理由の一つ。
ゆえに彼は相手に致命傷を与えかねない攻撃も出来なくなっている。

最強の武器(ツメ)は使えない。魔法は隠す必要があり選択次第では効果がない。
魔装闘法術だけでは一歩届かない。そしていずれ魔力が切れれば使えなくなる。
そもそも自分には相手を殺しかねないほどの過剰な攻撃はできない。
未知の異世界武装を見に纏う正体不明の敵を前にして、
彼が望むとも望まぬとも被ったハンデは概ねそういうもの。

『まあ、いつものことなんだけどね』

まだ3割(・・・・)はある魔力残量を確認しながら彼は“槍”を構えた。
そう、これはわりといつものこと。よくやっていたこと。
正体を隠す。実力を隠す。異常性を隠す。優位性を隠す。思惑を隠す。
ならばこそ、これはいつも通りのことであり既に相手は罠の上。
誰にも見えないその顔で三日月が笑う。

『お前、なぜそんなっ!?』

その位置に誘導されたとも知らない相手からの驚きの声が届く。
だがその事実とは別にそれはそうだろうなとシンイチは普通に笑った。
彼が手にした槍は紅が背負っていた七槍の残った二本の内の一本。
誘導兵器と化して最初に突っ込んできた円錐状の槍である。
登録した持ち主以外に使えないようにするシステムがあるのだろう。
持っているだけで先程から神経を焼くような痛みが襲う。
かの電磁ネット程ではないが高圧電流が流れていると感じられた。
魔力の外装で抑えても静電気等とは比べ物にならない痛みと衝撃に
彼はずっと襲われていた。

『馬鹿な、本当に何を装着しているお前!?
 例え外骨格越しでも耐えられる痛みではないはず!』

『おいおい、戦いの最中は痛みなんぞ我慢するものだろうが』

だが、なんてことはない。痛みを訴え、治療するのはあとでいい。
そんなものはいくらでも後でどうにでもなってしまうのだから。
例え腕が吹き飛ばされるような痛みが連続しようが堪えるだけ。
それに動揺している暇など戦闘時にはないのだから。

『宿り、爆ぜよ、(ジバルド)

それが常識だろうにと当然のよう嘯いて、小さく魔法を呟く。
ランスの内部機構を破壊しながら溜まっていく雷のエネルギー。
自然の雷の数十発分のそれをため込みながらも“宿る”ために槍は壊れない。
そのため外部からでは雷光は見えず、見えたとしてもショートする火花だけ。
見えなければ魔法を使えない事情にはギリギリで引っかからない。
そして雷系の攻撃ならば威力を強めても事前に対策はされているだろう。
機械にとってそういったものが天敵なのは変わらないのだから。
うまくいけば繊細な回路を破壊できるかもしれない。
尤もこの場合はできなくとも何も問題はないのだ。
何せ。

──知っているか紅き鎧の戦士よ。
  お前の足元にあるのは何でも屋が仕掛けた爆弾だぞ?

玩具の剣を投擲されて飛び退いた先はシンイチらが集められた場所。
そこに爆弾があることを彼はあの少女から教えられていた。
あの時彼女が端末を掲げたのは自身の手際を誇るためではなく、
画面に映した爆弾の位置情報を彼に伝えるための行動だったのだ。
思い出して口元が緩む。

『いいアシストだ────縛り、封じよ、(フュント)

爆弾(それ)を知っていたのか知らなかったのか。
どちらにせよ何かされると勘付き動こうとした紅を突風が抑える。
わざわざ相手が開けた外壁から続く穴が吹き込んだように見せかけて。
設定した風の威力では止められるのは一瞬だがその一瞬で終わらせる。
足元目掛けてランスを投擲すると深々と床に突き刺さり、穂先が爆弾に触れる。
即座に込められた雷光が“爆ぜ”て、爆弾に誘爆。雷と爆風の渦が紅き鎧を襲う。
そして紅を“縛った”風はその爆風を“封じ”込め、建物への被害は抑え込む。
同時に内側に対流した衝撃にさらされた紅の鎧は見るも無残な形となっていく。

『っ─────!』

風で囲んだせいでその苦悶の声も悲鳴も聞こえなかったが、
特徴的だった紅の色は消え、黒焦げた装甲は崩れ果てていた。
稲光と衝撃の渦が収まったあとには残っていたのはそんな外骨格だけ。
人型を保ち装着者の姿を隠していたがあちこちで装甲は大きくひび割れ、
火花が散っていて素人目にも修復不可能なほどの損傷を与えていた。

『………それでも原型は保つ、か……恐ろしいな』

それぐらいの頑強さがあると解っていたからこその攻撃だったが、
実際に現実として見させられるとよりガレストの技術力に脅威を抱く。
しかも浅い呼吸音が聞こえ、視づらいが魂そのものにも変化はない。
爆風の渦の中で倒れる事もできなかったソレはようやくそこで倒れ込むが、
生命が残っているのは確か。それだけを確認すると背を向け去ろうとした。
あとはもう対策室の仕事だと考えて───────





「───────ま、て」




それを呼び止める男とも女ともつかない硬い声に動きを止めた。

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