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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

修学旅行編 第一章「彼の旅はこうなる」

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04-84-08 解らない、という罠

サブタイの意味は次々話で。



予想外の人物からの暴露に空気が固まり、無言が流れた。
誰もが呆気に取られた顔で半ば思考を停止させている。
おかしなことに暴こうとした者も暴かれた者達も同じ反応をしていた。

「………し、知って……いた、じゃと?」

「シンいったい何時からそれを!?」

どれだけの沈黙があったのか。信じられないとばかりに呟いたヨハンの
声に引っ張られるように我に返ったリリーシャが驚愕の眼で彼を見る。
そんな素振りを感じたことは彼女は一度も無かったのだ。

「最初に会った時からだけど?」

「ぇ、えええぇぇっ!?!?」

「やっぱり気付いてなかったか。
 ステラ、ロベリア、ルイス、クララ、俺は今朝言ったはずだぞ?
 たいていの事は見れば解る(・・・・・)って……特に戦闘中は全力だと」

「ぇ、ああっ!」

名指しされた四人は今朝の会話が意味する本当の意味を察した。
血の繋がりは余程見目が似ていなければ外見からは判断しにくい。
特に彼女達はその性質は似通っていても容姿の共通点は少ない。
それでも見ただけで解ったという程の『眼』であるのなら彼女達の生まれ。
生命創造の禁忌の秘術によって生まれたことが解ってもおかしくはない。
むしろその一番に特異な点を彼の眼が果たして見逃すだろうか。
彼と初めて会った時はそのまま戦闘になったのだから。

「他にもアースガントの裏事情や機密を何度も喋ったと思うがな。
 あれには、自分達が王家に保護された経緯も知ってるんではないか、って
 思わせるためってのもあったんだ。暗に、知ってるよ、って伝えるためにな。
 けど見事に気付かないでやんの! お前らも案外抜けてるよなぁ、くくくっ」

そういってシンイチは可笑しそうに笑う。
誰かをからかって遊ぶ意地の悪い─彼らしい─いつもの笑み。
人見知りの彼が、それでも最初からずっと見せていた素の顔。
禁忌の命であると端から知っていても彼のそれは暖かなものだったのだ。
知っていたのに、嫌悪することも同情することもなく、ただ普通に笑みを。

「っ、あ~~っっ! もうっなんですかそれ!!
 いつ打ち明けようかと悩んでいた私が馬鹿みたいじゃないですか!」

「姫さま!?」

「ちょっとそれは!」

その事実に惚けていた彼女達の横で告白されたそれにメイド達は目を見開く。
自分たちの正体を知っていて彼女達を匿って育てたアースガント王室の罪。
大っぴらになれば国に迷惑がかかる秘密を教えようとしていたとは。
尤も姫からすれば半ばシンイチに彼女達を託すのは決定事項に近かった。
ならばその秘密を知ってもらうのはその前提条件の一つであった。
その意識が先走り過ぎて、既に知っている可能性に至らなかったのだが。

「バカ、な」

それらの驚きに現状を忘れかけていた彼女達の耳に静かな驚愕の声が届く。

「知っていて、自らを犠牲にしてまで助けた、だと?
 ホムンクルスだぞ、造りだされた命だぞ、人間ではないのだぞ?
 なぜそれで平然と自分の命を張ってまで守ろうとできるのだ!?」

再び訳が分からないとばかりに叫ぶそれに、
おかしな話だが内心理解を示していたのはリリーシャ達のほうであった。
生命の創造は許されざる行為。それによって形作られたヒトならざるモノ。
それがホムンクルスという忌むべき存在。発見次第処分(・・)しなくてはいけない()
それが常識で、当たり前で、だからそんなものに体を張るなど埒外だ。
ましてや自らを傷つけてでも助けるなど、どんな無法者や偏屈者でもあり得ない。
けれど。

「おいおい、その禁忌を堂々と破った第一人者のお前がそれをいうか?
 それにそんなこといわれても、見ての通り俺は異世界人だぞ。
 この世界の常識を知ってはいても刷り込まれてるわけねえだろ」

「待て、チキュウという世界でも生命の創造は禁忌だと!」

「そりゃそうだがこちとら異世界漂流から魔獣に魔法に邪神に魔王だぞ?
 今更ホムンクルスだのなんだの言われても特別驚きもしないっつーの」

「ぇ、ぇぇぇ……」

生まれも育ちもこの世界である彼らには分からない感覚ではある。
彼もこれが地球の話であれば知った時にはそれなりに驚いてはいただろう。
ただ一種のファンタジック(なんでもあり)な世界であるこの地において空想存在との
出会いの連続を終えた彼からすれば、ホムンクルスぐらいいるだろうな、
という認識にしかなっていなかった。

「そもそも既にそこにある命を生まれ方で否定するなんて傲慢な真似はとてもとても」

できやしないとどの口がいうのかという事を嘯くシンイチ。
だが生命創造に付随する倫理の問題に対して彼は真にそういうスタンスだった。
それは基本的に誰にも尊大に振る舞う彼だからこそ妙な強さを持った言霊を持った。
皆が皆、それにまるで存在を許されたような安堵とも感激ともつかないながらも
落ち着いた表情を見せていた。

「………」

唯一の例外は皮肉にも世界の常識を破った側のヨハン。
愕然とした様子で固まった彼は言外に常識を傲慢と切って捨てた少年を見ていた。
その内側にある感情は伺い知れないが瞳に宿るのは動揺と、苛立ち。
それは、かつての自らの覚悟を貶められたように感じているのか。

「それにこいつらを見てヒトじゃないとか考える方がどうかしてる」

意図的にそれを無視して満面の笑みを浮かべた少年は彼女らを見た。
じつに楽しげな表情とその声は強烈に嫌な予感を覚えさせる代物。
また何か突拍子もないことを言い出す時の顔ではないか、あれは。

「まず、副メイド長のフラウだが」

「え、私?」

指名されたのは豊かな栗毛色の髪を持つ物静かな雰囲気のメイド。
何事が始まるのかと推測すら出来ぬままソレ(・・)は始まった。

「見た目も中身もわりとおっとりとしてるけど周囲をよく見てる奴でな。
 けどじつは一番怒らせると怖いんだと。その点ではリリーシャやステラも
 気を使ってて、でもアクセ好きだからそれで誤魔化されててちょっとチョロイ」

「…は?」

本人も周囲もなんでそれを知ってるのかと。
そしてそれをなぜ今語っているのかと困惑する中で、視線は次に向かう。
同じ相貌で短髪ながら明るい緑とオレンジという別の髪色を持つ双子メイドへ。

「ミヤとカヤはさ、見た目通りの双子でどっちも小さな悪戯が好きだ。
 髪の色が明確に違うのをいいことにたまに幻術使って入れ替わって遊んでる。
 尤もミヤの対象は皆だけどカヤはしれっとミヤに仕事押し付けて楽しんでる」

「「ふあっ!?」」

ささやかな悪戯を暴露され揃って素っ頓狂な声をあげて固まる二人を余所に、
彼の視線は薄水色の髪をツーサイドアップにしているメイドに向く。

「セーラは年齢的に上と下にちょうど挟まれたせいか苦労人だ。
 何かあってみんなが無表情気取ってても一人ハラハラしてたりな。
 でも案外抜け目無くてバレない範囲で裏でサボってたりするんだけどね」

「な、ななっ!?」

まさかの暴露に狼狽する彼女を楽しげに眺めて、赤毛の三つ編みメイドに目が移る。

「アリッサは快活な娘でな。身内の前だとはきはきとした元気娘だが
 その分お前らの中だとドジが多くて、影ではそれなりに落ち込んでたりする。
 まあ復帰も早いからそこは羨ましいガッツある娘だよ」

「なんで知って!?」

驚愕するアリッサに、見てたから、とさらなる暴露をしながら
続いてにやりとした顔を向けられたのは灰色の髪をまとめたメイドが
何をいわれるのかと若干頬を引き攣らせていた。

「カトレアは一番物静かだけど付き合いのいい奴でな。面倒見もいい。
 あと小魔獣(小動物)好きでたまに日向ぼっこしてるヨーコとかをじっと見ててな。
 その姿がいっそお前が小動物かよって感じで可愛かったな」

「ふへっ!?」

予想外の目撃情報に変な声を出したカトレアを放置して、彼は次を見る。
スミレ色のセミロングを揺らして自分はいいと首を振るメイドが一人。

「クララはふわふわした見た目に反してちょっとした毒舌家でな。
 なかなかに抉ってくるが、どうもそっちは無意識の天然さんらしい。
 それで相手を傷つけると申し訳なく思ってフォローに回る優しい娘だ」

「っっ!」

自分とはそこが違うと漏らしながら毒舌家を絶句させると次に視線が合ったのは
若干色素の薄いブロンドをソバージュ風にしているメイドで、びくりと震えた。

「ロベリアは根の気性は荒いけれど可愛い小物好きなんだよ。
 こう、小さな宝箱にいっぱい入れてたまに眺めてニマニマしてる。
 本人はそれを隠せてると思い込んでるんだが、残念身内には周知の事実だ」

「ええっ?!」

驚いたロベリアがみんなを見れば、さっと全員が目線をずらした。
だがクリーム色の長髪を揺らしたメイドはその先で彼と目が合う。

「ハンナは細かい所に気付ける気遣いさん。お菓子作りが趣味で配るんだが
 つい自分のまで配ってしまって落ち込んでたから俺のをちょっと分けたら
 ひとりではしゃいじゃって、あれは見てて面白かったよ」

「あ、あの時急に見つかったお菓子ってそれ!?」

見られていたと真っ赤になるハンナを余所になんとなく次は自分と読んだのか。
小さく悲鳴をあげたのはセミロングのピンクブロンドを持つメイド。

「ルイスは深窓令嬢みたいな外見と違って行動力溢れる、失敗してもめげない子だ。
 まあ、人目がないと暴走してとんでもない所に突っ走っていくんだけどな。
 前に食糧探しで、一人険しい山を登り始めた時はどうしようかと思った」

「あ、あれはっ、そのっ、ぅう、あ、ゎぅ…」

あの時は地味に大変だったと笑うシンイチに羞恥で俯くルイスである。
そして最後に残ったひとりであるメイド長はこの状況で何を言ってるのかと
不機嫌極まりない表情で少年を睨み付けたが彼は一度も彼女自身を見ることなく
背を向けてどこ吹く風だ。目だけはヨハンを見据えて視線で威圧しながらも
意識は背後に向けて、ただ今日までを思い返すように呟く。

「……ステラは誰よりも無表情だが意外に考えてることが顔や動作に出る。
 妹達と主人が大好きで大事だって、全部の所作から見えるいいお姉ちゃん。
 それだけ情が深くて、熱い……いいメイド、いい女だよ。
 あいつに、仕えてもらえる主人は幸せだろう」

しかし果たして当人はその声色にある微妙な違いに気付いているのか。
顔を赤くしていたメイド達は一斉に長姉へと意味ありげな視線を向ける。
──今のはどういうことでしょうかメイド長

「………………………お前達、なんですかその目は?」

「いえ」

「これといって」

「別に、ええ別に」

「ずるいです、とか」

「もやっとする、とか」

「仲が良いのですね、とか」

「やっぱ胸か、とか」

「特段に思っては」

「ええ、いませんよ」

メイド長(姉さん)

まるで、事前に打ち合わせでもしていたかのような十の言葉の連鎖。
さすがは幼少期から共にメイドとして育てられた姉妹たちか息が合う。
長姉たる彼女からすれば嫌なコンビネーションの発揮で、針の筵の心境だ。
尤もそれはまだ嫉妬と呼ぶには幼い感情ではあった。どちらかといえば
この少年が認めるほどステラが自分達を常に想って愛情を向けていた、
という指摘への照れ隠しが多分にあったのだ。
さりとて。

「いいなぁ、みんな……私も何か言われたい」

少年からの扱い(暴露)を羨ましそうに眺める姫にメイド達は全員反応に困ったが。

「くっ、あはははっ!! ウケるっ!
 この状況でみんな口説くとかっ、さすが信一!! アハハハッ!
 っ、あたたっ!? やば傷開っ、ハハっ、でも痛いけどおかしい! あははっ!!」

一方で床をばんばんと叩きながらその様子に一人爆笑している勇者もいたりするが。

「…………何が言いたいのだ、貴様?」

そんな中、なぜか何もせずにいた除け者扱いの主犯は総括(結局)を問う。

「ん、だから、ステラ、フラウ、ミヤ、カヤ、セーラ、アリッサ、
 カトレア、クララ、ロベリア、ハンナ、ルイス……の話だけど?」

「この状況でよもやそんな与太話をするかっ、どこまで愚かなのだ!!」

何かあるのかと警戒していたのか、ふざけるなと怒号をあげるヨハン。
その裏でひとりリリーシャだけが首を傾げた事に気付いた者はいない。

「わかんない? うーん、そっか……やっぱわかんないか(・・・・・・・・・)

何せ、次の瞬間彼女達は背筋に怖気が走るのを止められなかったのだから。
シンイチの言葉の質が、半月前の夜のそれになったと本能で理解する。

「最低だな、あんた───────恥を知れ」

静かな口調なれど笑みのない顔が断罪の刃のようにそう彼を斬って捨てる。
脈絡のない一方的な言葉なれど、極端に切り替わった雰囲気と双眸の圧は
反論を許さぬ力を持っていた。

「もういいや、なんか面倒になってきた。
 このままお前の時間稼ぎに付き合ってやろうかと思ったけど……」

「時間稼ぎ? どういう意味じゃ?」

「そういうのいいから。とっとと出てこいよ、なっ!」

そういってシンイチはただその場で腕を振るった。
だが魔力を視認していた全員はその魔腕が伸びたのを視る。
そしてそれが戦闘の余波で生まれた瓦礫を吹き飛ばしたのも。
その背後で今夜だけでどれだけ見慣れたかという幼顔が驚愕に染まるのも。

「き、貴様っ、瓦礫どころか幻術も一緒に!?」

「本当の切り札の準備のために、あたかもこちらが本命だと思わせておく。
 悪くない手だが、相手との力量差とかもろもろを考えてやらないとな」

最初からバレバレだったぞ、と不敵に嘲笑う。
うまく騙せていたと考えていたヨハンはそれが掌の上であったと知って、
わかりやすいほどにその幼顔を真っ赤にして彼を睨み付ける。

「ほら、怒ってないでさっさとお前の切り札を出せ。待っててやるからさ」

「っっ! 舐めた真似をっ!!」

あからさまな挑発に怒髪天を衝くが如くの激昂する“だけ”のヨハンに溜め息まじり
に呆れた視線を送るシンイチは億劫、否、面倒そのものといわんばかりの顔で
こういった。

「俺の目を誤魔化せると思った事といい、まだ分かってないようだな。
 お前が相手してるのはどんな才能もどんな努力もどんな英知も叩き潰す最低な力だぞ?」

わざとらしく大げさに肩を竦めながら首を振る。
さも当たり前の事実を語るよう淡々と勝てるわけがないのだからと。
まるで親切心から出たような口調で、且つ尊大なそれで続けた。

「ゆえに────存分に抗え、ニンゲン。身の程を知るにはそれが一番だ」

超常なる存在からの一方的な言葉と哀れみ。それを語るはたかが十代の小僧。
屈辱しか与えぬであろうそれはヨハンにもう何度目かも解らぬ激情を沸かせる。

「驕るな、若造が! 貴様の方こそ知るがいい!
 お前のそれは決して無敵の力などではないことを!」

怒号に応えるように魔力が唸り、空間に傷をつけるように陣を描いた。
彼を囲むように刻まれたのは五つの魔法陣。それがナニカを呼び出す類の
それであると見抜けぬ者はこの場にはいない。誰かの息を呑む音が合図
だったかのようにそこから現れたのはすべて円筒型の透明なケース。
赤子ならば充分詰め込めるであろうサイズのそれが魔法陣から一つずつ。
いかにも怪しげな色つきながら透き通った薬液が満たされたその中に。

「人間の……脳?」

皺だらけのその肉塊が、確かにそこにある。

「シン、あれはまさか!?」

驚愕は一瞬、その意味に聡く気付いた姫の言葉に彼は頷くのを答えとする。
だが宣言通りかそれしかせず、ヨハンに早くしろといわんばかりの顔を向ける。
侮りとしかいいようのない態度に舌打ちしつつも好機と見たか。これまで
シンイチに対峙させていた肉体を呼び戻す。

「ぬ、手間取ってたのは結局それ以上の肉体をここでは作れなかったからか」

納得だと頷く少年の発言はほぼ無自覚な独り言だがどこまでもヨハンを煽る。
この場では最高の出来栄えでも重傷のシンイチ相手に苦戦していたのだから。
言った当人以外には「それで全力なの?」といってるようにしか聞こえない。

「いちいち囀らなくてはおられんのか小僧!
 見ているがいい、貴様が遊んでいた代償をこいつで支払わせてやろう!」

いけ、と号令のような言葉で脳入りケースは青年体ヨハンの両腕、両足、胸部
それぞれにまるで分解されながら溶けていくように融合する。そして幼顔の
ヨハンもまた紐解けていくように自らの肉体を崩すと青年体の頭部へと
溶けていき一つとなった。

「へぇ」

何への感心か。シンイチはまるで見事だといわんばかりの息を漏らす。
そして全てが青年体に移った時、開かれた眼には確かな意志が、感情が宿る。

「──っっっ!?」

たったそれだけでグニャリと空間が歪んだように皆が錯覚する。
青年体での戦いぶりを見て勝てないと判断した姫だが、戦えないとまでは
思っていなかった。しかしこれは、と背筋が震え、冷や汗がどっと出てしまう。
ステータスカードになど頼る必要もない程に能力(スペック)の違いを感じ取る。
周囲にメイド達が、前にシンイチが立っていなければ弱った彼女では
対峙しているだけで気絶してしまいそうな魔力の圧がこの場を支配していた。

「ふ、ふふっ、ふははっ! 成功だ! 見るがいい小僧!
 これが貴様の慢心の結果だ! 全てを凌駕できる力を手にしたぞ!」

そんな反応が気に入ったのか悦に浸るようにそう雄叫びをあげた。が。

「……悪役のパワーアップ待つのって、つまんねえし手持無沙汰だなぁ」

案の定か。シンイチから返ってきたのは気の抜けた声と半眼。
それに青年の顔が歪みかけたヨハンだがすぐさまにやりと笑い、消えた(・・・)
刹那の空白の後、彼はシンイチの目の前で、その首を刈り取らんとする
蹴り(ハイキック)を向けていて、途端空気が爆発したような衝撃と共に少年の体が吹き飛んだ。

「シンっ!?」

叫びは事態が全て終わった後にやっと出たもの。
それほどまでにいま起こった出来事があまりに速過ぎた。
彼はステラが銀翼で開けた大穴に吸い込まれるように館の外に消えていた。

「ほう、さすがといっておこう」

感心したようなヨハンの声に反射的に睨み返したリリーシャだが、
そこには─彼と自分達の間には─見慣れた背中があって目を瞬かせる。

「へ…シン!? あれ、あれ?」

思わず壁の大穴と目の前のシンイチの背中を行ったり来たりするが
少年が実際にいるのは後者の方。まるで最初から吹き飛ばされてすら
いなかったのような出で立ちだがヨハンは訳知り顔でまたもニヤリと笑う。

「咄嗟に左腕で防御しつつ自ら勢いに乗るように吹っ飛ばされたか。
 そして転移魔法の応用で即座に戻ってくるとはさすが技量S……じゃが」

「え?」

「っ!」

彼女達の前でシンイチの左腕が脈絡もなく、だらりと脱力して落ちた。
まるで糸が切れた操り人形か肩から先だけが意識を失ったかのように。
その指先から流れ落ちる滴が床を赤く染めていくのも見間違いではあるまい。
今の一撃が彼の片腕を確かに破壊していた。




舐めプでついに主人公ピンチ!? いやこいつはただ強制的に縛りプレイしてるだけだ!
あと調子に乗った敵の鼻っ柱をたたき折るのって楽しいよね!

……という前振り
+注意+
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