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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

波紋編 第一章「転入初日」

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03-10 ガレストの敗北(兄)

本当は次話とひとつの話だったけど、なんとなく分けた!


「へいYOU! 魔法使いになりたくないかい!!」

どこでスイッチが切り替わったのか。
スキルについての授業が始まった途端ミューヒはそう発した。
早々とそのテンションの切り替えの早さと高さに慣れた彼は動じていない。

「もう、あと15年ぐらいでなるつもりですが……」

とはいえ思わず“もう魔法なら使える”と言いかけて止めた。
代わりに出た発言も際どかったがガレスト人には通じなかったらしい。
彼は15歳。30歳まであと15年である。

「ん? よくわかんないけど、
 地球の人にはスキルは魔法っていった方が伝わりやすいんだ」

「……つまり、火出したり、空飛んだり、ケガを治したり?」

「せいか~い! といってもそれだけじゃなくて、
 ステータスを見せたり見たり、授業中に出たモニター類もスキル。
 もっと正確にいうならフォトンエネルギーっていう万能に近いエネルギーに
 何らかの方向性を持たせるための“プログラム”がスキルなの」

ガレストが長い歴史の中でいくつもの検証と実験の結果手にした方程式。
フォトンの力を時に炎にし、時に浮力にし、時に治癒の力とする。
相手の能力を探るスキャンから映像の投映がフォスタ一つで出来る理由でもある。

「スキルっていうとその効果だけだと捉えられがちだけど、
 本当はそのプログラムの方がスキルで、効果は結果でしかないの。
 これ、よくテストのひっかけで出るから覚えておかないとだめだよ?」

「わかった覚えておく……ってプログラム?
 あれか、英語やら数字やらがごちゃごちゃ書かれた、あの?
 あんなの覚えないといけないのか!?」

英語力にまったく自信のない彼にはそういったものに強い苦手意識があった。
不安げな顔でヒナを問い詰めるが彼女からすれば気にするのはそこなのかと苦笑顔だ。

「し、心配しなくても大丈夫。
 プログラムの内容は公開されてないからテストに出ることはないよ。
 ね、フランク先生」

「ああ、さすがにガレストの重要機密だからね。
 私たち技術科の教師だって初歩的で簡単なものしか知らないし、
 それでも許可なく教えたら一発で牢屋行きになる」

遅れてやってきた技術科の教師に確認をとれば首肯が返ってきた。
スキルプログラムはそれほどガレストにとって重要なものなのだ。
なにせ。

「あ、そっか。解析されると面倒で危険だもんな。
 勝手にいじくって違法改造するバカはどこにでもいるだろうし、
 スキルを無効化する方程式を考え出す奴も出てくるだろう。
 地球独自のものでも生み出されたら価値と立場が下がって困る奴もいるだろう。
 もし特許みたいな制度になっているなら利権問題も発生してややこし………なに?」

ということなのである。
尤もそれを指摘したのがシンイチなのが問題だったが。
彼女とフランクから驚いた表情と共に強く凝視されて、思わず彼も固まる。
頭に浮かんだ事をそのまま口に出したのが不味かったかと自省するが後の祭り。
救いなのは推測として語ったことだけであった。

「………あ、ははは、いや意外に鋭いね君。
 スキルプログラムを公開しない理由は概ねそういうことだよ。
 違法改竄やスキル妨害対策、開発者への利権問題、地球側との交渉カード。満点だ」

「そ、そうですか……」

そして災いなのは完全正解していたことだが。
狐っ娘は笑顔の奥にある瞳の鋭さが若干増して教師は怪訝な顔を浮かべていた。
怪しまれているのは火を見るよりも明らかである。

「それで、スキルって実際にはどう使うんですか?」

シンイチに出来たのは素知らぬ顔で次を促してしまうことだけだった。
発言には気を付けなくてはと今更考えているので色々致命的に遅い。

「ああ、うん。そだね、じゃ使ってみようか……ターゲット射出!」

狐っ娘が手に持ったフォスタに命じると先程と同じ的が宙に浮く。
そして彼女は自らの端末を右腕に装着して手の平を向けて構える。

「音声入力モードへ移行、『ファイアショット』!」

瞬間、小さな火球が手の中に生まれて的に向けて一直線に放たれる。
その中心点に見事に当たった火の玉はそのまま的を燃やしていく。

「………燃えてるけど、いいの……ですか?」

火事になるのではないかと妙な不安を口にするシンイチである。

「君はさっきから妙なことを気にするね」
「気にするのそこなの!?」

どこか自慢げにスキルを使ってみせた彼女も含め、肩透かしを受ける。
たいていの地球人は初めてスキルを見れば驚き、興奮するものなのだ。
しかし残念というべきか。境遇的に仕方がないというべきか。
こんなものを山ほど見てきた彼には驚く要素が皆無である。

「心配しなくても、後片付けだけでなくスキル対策も万全さ」

そういった教師が指差した方向を見れば床の窪みから飛び出したノズルが見えた。
燃え落ちた的目掛けて一気に放水して消火すると先程と同じように
機械が自動で燃え残った残骸や水気を吸い取っていった。

「はいはい、無駄にハイテクですごいですねぇ……」

全く心がこもってない声で賞賛するが当然本心は別である。
なんでもかんでも自動化することには少し抵抗があるのだ。
そんなものが皆無に近かった世界にいすぎたせいだろうが。
違和感と拒否感をわずかばかり覚えてしまうシンイチだ。

「学園にはどこでスキルが使われても学園施設に被害がないように、
 あちこちにこういう設備があったり、頑丈な造りになっている。
 例え特別科の生徒が上級スキルを使っても簡単には壁一つだって壊せない」

そんな彼の感想が聞こえなかったのか自慢げに語るフランクだ。
技術科の人間にとってその技術を語れるのは楽しいことらしい。

「本来ならその的だって特別科じゃなきゃ下級スキルだけで
 ここまで壊せるなんてありえない頑丈さを誇っているんだ。
 まあ、だからといって校舎内で攻撃系を使うことは禁止されてるから
 基本授業以外で使わないことをおすすめするよ」

「攻撃系?」

「スキルの種類だよ。
 いま使ったのは攻撃系自然干渉型・火属性下級スキル、ファイアショット。
 当たった対象を軽く燃やす程度の力しかないけど最初に教わる攻撃スキルだよ。
 尤もたいていは単に火属性スキルといわれるけどね」

そう教えた彼は“詳しくはこれからの授業で”という前置きをしたものの
教師らしくスキルについて基本的な知識をシンイチに教えた。

攻撃系には大別すると火や風などの自然の力を使う自然干渉型と
武器を使ったモーションデータを読み込んでの特殊攻撃を行う二種類がある。
他にも攻撃や衝撃から身を守り、有害な物質や状態異常を防ぐ防御系。
自身や武器の性能をあげたり相手に状態異常を起こす補助系。
それ以外の戦闘では使うことのない物を一纏めにした日常系がある。
そしてそれぞれに下級・中級・上級のランク分けがなされている。と。

「俺でも使える……のですか?」

「もちろん。ただランクが上がるごとに威力や効力も上がるから、
 必要になるフォトンエネルギーの量や扱いの難易度は増していく。
 だから精神ランクと成績を考えて問題ない範囲のスキルしか使えない」

君の場合は、と手元の大型フォスタを操作して確認する。
Dランクでどこまでのスキルが使えるのか計算しているのだ。

「うん、大丈夫。
 入学時に開示される下級スキルは全部使えるよ。
 そのあとは君の場合成績次第としか言いようがないけど、
 どの道威力や効力は……Dでは他の子より落ちてしまうだろうね」

「そうですか」

本来なら残念な結果であり無情な現実の話をしているのだが、
本人はやはり気にした風もなく情報を情報として学習していた。
その態度が奇異に見えることにはまだ気付いていない。

「………それじゃ、実際に使ってみてくれるかな。
 スキル使用に問題なければそのフォスタに異常無しと太鼓判を押せる」

「さっきボクがやったみたいに音声入力が一番楽だよ。
 イッチーのは初期設定がもうそうなってるからスキル名言うだけ!」

「…………いわなきゃ、ダメ?」

「マニュアル操作もあるけど、スキル名は基本英語表記だよ?」

──その中から使いたいの探せるの?
彼女から言外に問われてシンイチはうなだれるしかない。
魔法名を叫び慣れているのではないかという意見はあるかもしれない。
だがそれは魔法が常識としてあり皆がそうやってると知っている世界の話。
彼はまだ今の世界に慣れていない。その中でスキル名を叫んで使う。
そのことに妙な気恥ずかしさを覚えてしまうのだ。
ありていに言えば“中二っぽい”と感じている。

「仕方ないか……」

フォスタを装着してる手を彼女と同じように的に向けて構える。
スキルを使う。その意志に感応してフォトンがエネルギーを発する。
その流れを知覚すると思わず眉根を寄せて険しい顔をしてしまう。

「マジかよ、おい」

さらなる厄介事に気付いてしまった自分が恨めしい。
だが今はそれよりもスキルの試射を優先して授業を終わらせてしまおう。
そう考えて、激しく不本意ではあるがシンイチはスキル名を口にした。

「はぁ『ファイアショット』……」

溜め息交じりで、力のない声だったせいか。
それともそれが精神Dランクの限界なのか。
彼女の火球と比べて十分の一程度の小さな炎の弾丸が手の平に生まれた。
それを、つい、いつもの感覚で的の中心を狙って放ってしまうシンイチ。

「あ」

癖というのはなかなか抜けず正確な狙いは確実に的の真ん中を撃ち抜いた。
威力の違いからか燃やすほどには至らず中心部が軽く焦げた程度だったが。

「ど真ん中! 百点! だね、イッチーすごい!」

「…………」

嬉しそうに飛び跳ねる狐っ娘と違い、露骨に教師は難しい顔をしていた。
初めて使った武器とスキルで正確に連続で正中に当てたことのまずさは
さすがにこちらの常識がまだまだ足りない彼でもわかる。
暗にそういった行為に慣れていると示したに近い。
一人明るいミューヒを余所に教師と生徒の間の空気は、硬い。


──キーンコーンカーンコーン


それを変えたのは懐かしさすら覚える授業終了のチャイム。
そしてフリーレによる力強い声での号令だった。

「それまで! 全員フォスタを外して休め!」

組手とはいえない組手を終えて、彼らは整列して教師の前に並んだ。
その動きだけは教え込まれたのか徹底されており見事といえる団体行動だった。

「これにて今日の授業は終わりだ。午後からどう過ごすかは自由だが、
 今日はもう肉体的な鍛練は禁止する。体を休める事も覚えろ、いいな!」

「「「はいっ!!」」」

「では解散! フランク先生も問題がないようでしたらそれまでで」

「わかりました………スキル使用に異常は無さそうだね。
 あとは君が慣れるしかないね。使い方は中にある電子説明書を読むように」

彼は疑問を顔に浮かべたままではあるが最後の説明をして授業は終わった。
正直にいえば電子より紙の説明書が欲しかったが言える雰囲気ではない。

「それじゃ急いで着替えて食堂にいくといい。
 じゃないと席を取られてしまうぞ、後片付けは私がやっておこう」

そういって撃たれただけで破壊されてないために未だ宙に浮く的を指差す。
お願いしますと丁寧にお辞儀をしたあとシンイチは競技場をあとにした。
正確には狐っ娘に引っ張られるようにして狐を後ろに連れて、だが。

見送った形となった彼はそのまま手元のフォスタを操作をして
出したままとなっている的を回収するように命令を出した。
焦げたり窪んだ程度の損傷なら修復したほうが新たに作るより早く済む。
しかし。

「ん、エラー?
 破損状況がひどく回収できません?」

画面に表示された内容にどういうことだと回収されなかった的の一つに近付く。
それは彼が最初の射撃で小さな弾丸を当てただけの的で壊れてなどいない。
元の形のまま人の頭ぐらいの高さで変わらず浮いている。
しかしより近付いて覗き込めば、さすがにその異常に彼は気付いた。

「撃ち抜かれている、だと?」

的の中心。そのど真ん中に小さな穴が開いていた。
何が原因かなど考えるまでもないが、同時にあり得なかった。

「馬鹿な! 特別科の生徒ならいざ知らず。
 普通科の最下層の劣等生が、的を撃ち抜いた!?」

あり得るわけがない。まぐれでさえあり得ない。
そんな強迫観念にも似た感情のまま残っていたすべての的を見た。
シューターのもスキルのもどちらも正中を撃ち抜かれ、穴が開いている。

「私は………夢でも見ているのか?」

そして、その裏。正確には的の向こう側がその穴から見えて愕然とする。
背筋が凍り、身体中に鳥肌が立ったかのような薄ら寒さを感じた。
全ての的があった場所。その中心点から裏側に一直線に伸びた壁に()がある。
小さな、取るに足らないはずの窪みはしかしガレストの歴史を揺らがすもの。
少なくともフランクにはそういう不合理なモノにしか見えなかった。
彼のステータスでは、使った攻撃・スキルでは不可能なはずの痕跡。
それこそ特別科の生徒や教員たちの誰であれ壊せない壁に穴をあけた。
それもあんな、気の抜けた一撃で。




「………………あの男、いったい何をした?」




そして別の教師にも目をつけられる(笑)

んでもって兄ってことは次は?
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