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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

修学旅行編 第一章「彼の旅はこうなる」

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04-55 見守る善意・動き出す悪意

9月中には間に合ったか。それでも微妙に更新が遅れるなぁ。すいません。
前回のイメージCVうんぬんで……本当にだれかわからないって人は
声優すぺーす俺が書いた名前で検索すれば一番上にでる人じゃないかな?たぶん。

あ、今回は場面転換が多いです。また長い。

パレードに集まった客がそのショーの最後を彩った花火に見惚れている頃。
解除作業に走り回ったシンイチたちが何故か一度も近付かなかったエリアにて
店舗と店舗の間の路地に集まっている者達がいた。大半の客はパレードに集中し、
それ以外の者達もこの花火を見上げており誰もその存在に気付いていない。

「お、おい、予定と違うぞ。爆弾はどうなったんだ!?」

「知らねえよ、こうなる話なんか聞いてなかった!」

だから多少大きな声で言い合っても注目などはされていない。
一般客とスタッフジャンパーを着込んだ者が混ざり合うその集団は
顔を突き合わせてその予定外の出来事に解りやすく動揺している。

「いや、ワルニャーは時たまイベントに紛れ込むレアキャラだと聞く。
 それを考えると今日の客たちは運がいいんだか悪いんだか……」

それをリーダーらしき男が解説しながら宥める。周囲もそういうことかと納得顔。

「ふん、ならいいさ。それにどうやら爆弾はまだ積んだままのようだ。
 それなら時間もちょうどいい。ずらかって緊急ニュースでも待つことにするか」

年齢がバラバラで性別も違う彼等だが一様にニヤニヤとした笑みを浮かべていた。
彼らの頭にはそれによってどんな被害が出るのかという事をリアルに感じていない。
彼らが想像できる阿鼻叫喚の地獄絵図など生易しい代物だ。所詮は平和な地で
生まれ育った者達に本物の惨劇の場は直視できるような光景ではないというのに。
自分達ですら吐き出すような参事となる事を彼ら自身が分かっていない愚か者。
だからこの結末はある意味において必然だ。

「そうだな。
 で、なんの用事だ。全員を集める必要があるって聞いたが」

「は、なにいってんだ。お前が緊急事態だからみんなを集めろって」

「え、俺こいつからそう聞いたんだけど?」

「バカいうな、集まって祝杯あげるぞとかほざいたのはお前……」

そこでようやくあるいはやっと、まさか、という空気が彼らの間に漂う。
この場に集った全員が他の誰かに何かしらの理由で呼び出されていたが
その相手もまた同じように呼び出されていた。どれだけ鈍くとも
背筋にぞくりと寒気が走るのは当然だった。だが彼らは運がいい。
何せここに呼び出した張本人はやってこないのだから。

「───無粋な連中だな、まったく」

それに比べれば(・・・・・・・)“彼女”はなんと優しい狩人だろうか。

「なっ!?」

「誰だ!」

若い女の声に振り返ると声通りの女性がひとりそこに立っていた。
どこかこういう場所には似つかわしくない気がする黒いスーツ姿の長身白髪の美女。
垂涎もののスタイルを見せつけながらもそれ以上の鋭さと冷たさを覚える相貌と
視線に見惚れるどころか彼らはたちどころに震え上がってしまう。

「君達の世界の文化だろうに、せめてよく見たらどうだ?
 昔、私の師が言っていたが遊びを楽しめなくなると人間は終わりらしいぞ?」

「て、てめえ誰だ!? 何の用だ失せろ!」

憐みの助言を跳ね除け、虚勢を張って追い払おうとした彼は立派か蛮勇か。
しかしひとりの女が気付いてしまった。彼女が持つその美しい白髪の意味に。

「……あれ、嘘……まさかガレストの……剣、聖?」

「なっ、ああっ!!」

「バレていた? 誘い出された? ち、ちくしょうっ、こうなったら!!」

どうしようとしていたのか。
彼らの考えはされど実行されることはなく、ただ風が吹き抜けた。
異世界の剣聖の姿を一瞬で見失って彼等は動揺する。慌てて周囲を見回せば、
こちらに背中を見せる格好で自分達の背後に先程と変わらぬように立っていた。
背中に流した一房の白髪が遅れるように揺れている後ろ姿は美しいの一言だが
それ以上に薄ら寒い気配を感じ取って彼らの背筋を凍らせる。

〈こういった際、日本では“つまらぬものを斬った”とこぼすのが決まり事と助言〉

「は、なんの話だ? だいたい切ってない。これで叩いただけだ」

そういっていつのまにか手にしていたブレードを示す。
峰を返していたそれを彼女は納刀するかのようにフォスタに仕舞った。途端。

「がっ!?」
「ぎゃっ!!」
「ぐっ!?!?」

脳天に響くような衝撃に彼らは全員一瞬で意識を失って倒れこむ。
その成果を見ることもなく、その目にも止まらぬ動きをした自らの足を見下ろす。
否、正確には人生で初めて身に付けたタイトミニスカートの状態を確認していた。

「スカートは動きづらいから屋敷にいた時からはいてなかったんだが、
 ん、このぐらいの丈ならそこまで邪魔じゃないな。あいつそれを考えて選んだのか?」

〈否定、ナカムラ氏にとってそれは選択時の一要因に過ぎないと推測〉

「そうなのか? だがこれ、なんかいいぞ。
 いざとなればこのスリットのおかげで破きやすいし、
 この短い丈だからな、たくしあげるのも簡単そうだ」

いい案だろといわんばかりにその切れ込みや裾をいじる彼女に白雪が返す音声は低い。

〈マスターに女性としての最低限の慎みと羞恥心を要求。
 叶えられない場合、今の発言をナカムラ氏に聞かせる準備が整っています〉

「おうっ、それは………わ、わかった。努力はする、だからやめてくれ」

〈了解、マスターの努力を期待します〉

いつからこの人工知能は自分の教育係になったのかと嘆息しながら安堵する。
さすがに自分でも少々(・・)はしたない考えだという自覚はあったので彼に知られたら
再びあの恐ろしい笑みを浮かべながらにじり寄ってくるのは目に見えていた。
また馬鹿だなんだと散々こきおろされ、今度こそ何をされるかわからない。
尤もその考えを“少々”などと思っている辺り淑女への道は通そうだが。

「ん」

そこへ再び空に響いた爆発音に自然と彼女は視線を上げて夜空を彩る花を眺めた。

「これが花火、か……ん、破壊の兵器も使い方次第ということがよくわかるな。
 ガレスト人には出ない発想だ。うむ、これなら長々と待たされたかいはあった」

知識としては知っていたがこれが破壊をもたらす火薬技術が発達した先にある解の一つ
だというのはそんな技術を武器以外に使う余裕がない故郷を想って感心と憧れを覚える。
それほどまでに実際に見た夜空の花は教養の無い無骨な自分すら魅了すると彼女は
自然と小さく微笑んでそれに見惚れていた。

〈急ぎ、この者達を拘束してナカムラ氏へ報告することを提言します〉

そこに水を差すように急かす人工知能に思わず顔をしかめた彼女は悪くないだろう。

「少し浸らせてくれてもいいだろう……白雪、何を急いでいる?」

〈この状況でふたりきりは少々ロマンティック過ぎると危惧。乱入を推奨〉

「は?」

脈絡のないその発言についに壊れたかと彼女が思っても仕方がないことだろう。

〈マスターほど厄介な物件を買い取ってくれる相手をみすみす奪われるわけにはいきません〉

「よし! ほとんど何をいってるかわからないがバカにされてるのはわかるぞ!!」

ケンカを売ってるなら買うぞと自らの端末と言い合いながら彼女は
倒れた者達をフォトンのロープで一人ずつしっかりと縛り付けていくのだった。





──────────────────────────────





「た~まや~!!」

「え、えっと、か、かぎや~」

パレードからは幾分か離れた位置。花火が上がった方角とは逆方向にある巨大建造物。
アウーラキャッスルの─客が入れない位置にある高所の─バルコニーで少年少女が
並び立ちながら夜空を飾る花火を、眼下の光景を眺めていた。既に着ぐるみは脱着し
二人の背後で一仕事終えた人間のようにくたくたとした様子で並んで置かれていた。
あの後、ここに来たのは人目を完全に避けて保管庫に戻るのが難しいからである。
パレードに向かう時は建物の上を飛び跳ねて移動したのだが皆が空を見上げる現状で
それを行うのは見つけてくれといっているようなものである。だからか。
隠れる場所なら他にもあったがアリステルは彼からこう提案された。


『折角だ。特等席で花火を見ていこうぜ』


断る理由のない彼女が受け入れるとシンイチが選んだのがこの場所。
一見目立つスポットの目立つ場所のようだが人目はパレードと花火に集中していて
反対側にある城への注目度は下がっており、そこは人が出入りできない飾りのバルコニー。
下からではどの角度からも見え難い位置と高さにあるため花火を鑑賞しつつ、
客の目から逃れるという点でいえば逆に絶好のポイントであったのだ。

「お、よく知ってるな」

「日本のことは少し勉強しましたので」

未だ打ち上げ続けられる花火を眺めながらふたりはそっと微笑む。
元々イベント用に用意はされていた花火を木村がタイミングを見計らって
打ち上げているのだ。どうもそれなりに高い裁量権を持つスタッフだったらしい。

「夜空に火薬で花を描く、なんとも素敵で美しい発想です。
 しかも記録映像で見るのとは段違いで、つい見入ってしまいますわ」

「そうだな。俺はやっと本物の花火を見れたって感じだ。
 日本に帰ってきたって、やっとそんな気分になってきたよ」

パレード方面に視線を向けている彼のそんな呟きに彼女は一瞬息を呑んだ。
そして少しばかり考えを巡らせると隣り立つシンイチにこう問いかけていた。

「………どうします?」

「なにがだ?」

視線をずらさず、彼女を見ないまま声だけで聞き返す彼に不思議と
不快さなどは全く感じずにいま思いついた事をアリステルは告げた。

「閉園まではまだ時間があります。
 みなさん花火に注目しているので今ならどこでも空いていますよ」

言外に残り僅かな時間でもここを楽しんではどうか、と。
されど彼の横顔に浮かんだのは申し訳なさそうな苦笑であった。

「ひと暴れしたあとに遊ぶ気分にはならないなぁ。
 あ、でもお前の自由時間奪っちまったからな、何かやりたい事があるなら」

「ここもシンイチさんが来てみたかった、見てみたかった場所なのではありませんか?」

付き合うぞ、という続くはずだった言葉を遮って少女は真摯な目と声でそう問うた。
言葉に込められた別の意味を察したのか目を瞬かせながら彼は少女に顔を向ける。
そこにあったのは小さな驚きで、されどそれ以上の感情はそこにはなかった。
実はアリステルは偶然ではあったが東京タワーで彼が呟いた言葉を聞いていたのだ。
彼女はただただ衝撃を受けた。話でしか漂流者達の実像を理解していなかったと。
運悪くどこの都市にも辿り着けなかった者達の末路を知識でしか知らないのだと。
その救出例の少なさから、その生の意見はあまりに切実で彼女は言葉を失った。
形は違えどある日突然周囲の環境が変わってしまった経験のある少女には
その言葉に込められていた万感の想いが痛いほど伝わってきたのだ。

「……………満足、しちまったからな」

僅かな沈黙の後、視線を先程までと同じ位置に戻して困ったように彼は笑う。
少女の気遣いを十二分に理解しながらもういいのだとソレを眺めている。
そこでアリステルは初めて彼が花火を視界に収めつつも違うモノを
中心に視線を向けていることに気付く。僅かにそれの向かう先が低い。

「え?」

何を見ているのかと声を出さぬよう手動でスキル(ズーム)を使うと、息を呑んだ。
人がいる。パレードに集まり、嘘のショーを楽しんで、花火を見上げている人々。
どこにでも笑顔がある。友や恋人や家族とそれを分かち合って楽しかったと、
面白かった、キレイだ、と声に出して笑いあう人々がそこにいた。

「っ!」

即座に彼の横顔に視線を戻せば、優しげで柔らかな笑みがあった。
見守るそれでありながら満足感や幸福感さえもにじみ出るそれに少女は惚けた。

────ああ、やっぱりこの人だ

だから少女は胸に満ちる暖かさに頬を緩ませる。
彼こそ自分が選ぶべき異性なのだと、自らの伴侶たる男だと確信する。

彼が見せた緊急事態への対応力や事件への洞察力は確かにすばらしいものだ。
しかしそれはパデュエール家当主の伴侶として必ずしも求められるモノではない。
理想をいえば確かに様々な分野で優秀であればあるほど魅力的であろう。
だがそれは人材としては、だ。それなら伴侶よりも部下や家臣でいい。

少女が己が恋心をあらわにしたのはその好意を自覚したからではない。
それが全く無いといえば嘘になるが彼女の立場で想いを恋心だけで伝えるのは
問題だ。アリステルの相手となる者はイコールで領地の当主に準じる立場となる。
彼女は幼き時より跡継ぎとして育てられた。感情だけでそれを選ぶことはできない。
幼き日に両親を失ったとはいえ、否、だからこそ数少ない思い出の中での教えを
何度も反芻して我が身と心に刻み込んでいた。そんな彼女が自らの伴侶を選ぶ基準
というのは実の所、自分達の領地や民達にとって恩恵をもたらせる者か否か、だ。
もっと厳密にいえばそのために身を粉にして働けるか否か、だ。

無論、能力があるならあった方がいいがそこは一度は滅びかけたとはいえ
十大貴族の一角に名を連ねるパデュエール家だ。後から鍛えることは可能で
知識や経験は部下で補うのも本人の資質を伸ばすのもまだ難しくはない。

だがコレは、コレだけはそうはいかない。

みなの幸福のために誰に知られずとも裏方で駆けまわれる奉仕の心。
そこに自分がいなくても、名誉や賞賛が無くとも、眺めているだけで
こんなにも暖かな表情を浮かべられる人。皆の笑顔や幸福によって
自らを笑顔と幸福にすることができる精神性。そのあり方は
そう簡単に出来ることでも教えられるものでもない。

少年(カレ)の根幹。地球風の表現をするなら魂に刻み込まれたといえる人間性。

あの男女に対して垣間見せた怒気の真の理由がわかる。
彼等は笑顔(これ)を奪おうとしたのだ。幸福(これ)を悲しみと絶望に変えようとしたのだ。
いま笑顔で語り合う人々の誰かを、その隣にいる誰かを殺そうとしたのだ。
それはこの光景の価値と儚さを知る者からすれば万死に値する大冒涜。
あの時、少女が殺人(それ)すら危惧した怒りの訳がそこにあった。

統治者は究極的にいえば下の者に奉仕する存在でしかない。
それを理解できない者は暴君となるかそうなる前に排除される。
守護者にして為政者であるガレスト貴族に必須であり最も難しいとされる教育は
自らを領地・領民のために使える(・・・)ようにする事と平和・平穏の価値を教える事。
それら全てを傷つけ、乱す者へ断固とした対応を取れるようにする事とされる。
言葉にすると当たり前の話に聞こえるが心身に染み込ませるのは存外に難しい。
しかし彼はもうそれを終えているも同然。ならばこれに勝る資格があろうか。
シンイチのあり得ない戦闘力より彼女はそれこそ得難い物に見えている。
それをデパートと試験の事件で感じ取っていたからこそ彼女は告白し、
いまそれが間違いではなかったと強く確信している。

そこに好意があるがゆえの計算や贔屓目が無いとは彼女も言いきれないが
空を彩る大輪の花ではなく地上に咲いた小さな花たちを愛しげに見詰める横顔から
目が離せない。これが恋しくて愛おしくて、欲しい、と少女はより深く自覚させられる。

「困りましたわ」

そっとすり寄った少女は彼の腕を取りながらそんな言葉をこぼす。
何がだと顔を向ける少年の肩に己を預けつつ上目使いに胸中を素直に吐露した。

「自分でもっと相応しくなってからと口にしておいて、
 今すぐにでもあなたの女になってしまいたくなりました」

なんでもないことのようにあっさりと語られたその中身に
一瞬きょとんとした顔を浮かべた彼はされど即座に苦笑した。

「……存外にドストレートなお嬢様だな」

呆れたような声色ながらどこか感心したような色も垣間見えるそれ。

「そういうのお嫌いですか?」

「さて、相手次第、といっておこう」

はぐらかすような答えにぎゅっと腕に力をこめて少女は己をより密着させる。
そこに拒絶は無く、直に感じる彼の体温と鼓動が心地よくて安堵してしまう。

「好まれているようで一安心です………平静とされているのが少し悲しいですが」

ただ一方でこれだけ強く体を引っ付け合っているのに何も変化がないのは
ひとりの乙女としては何か負けたような気分になってしまい、かなり悔しい。
全力で“当てている”にも関わらず動揺も紅潮も見受けられず当て損である。
むしろこちらの緊張と照れを見抜かれて面白がっているように見えた。

「ふふっ、俺を誘惑するには十年早いよお嬢様」

「まだまだということですか。分かっていたことですが悔しいですね」

彼女もわかってはいたのだ。シンイチが見た目や色香風情で惑わす事などできないと。
この姿で初めて会った時も、その後に授業を共にした時も彼が目を輝かせたのは
自慢の美貌やスタイルでもなくそれらとステータスを維持するために少女が
していたその努力の方だった。誘惑が意味をなすのはきっとそういった行動や
中身を彼自身にもっと認められてからなのだろう。

「なら、せめて────今回の助力と差し上げた時間の対価をくださいませんか?」

それが、まだまだだ、と自覚している少女の精一杯の懇願であり、
頬を染めながら求めることのできた最大限のおねだりであり、
シンイチが断りづらい文句を挟んだうまい要求だった。

「それをいわれると弱いな」

「ん」

少年の手が彼女の顔にかかる髪の毛を払いながら頬を優しく撫でた。
それだけで顔の温度が上がったような錯覚の中、彼の指の感触に胸が高鳴る。

「シ、シンイチさん」

「……アリス、俺は」

視線が交差する。
少女の強い熱のこもった瞳と平静ながら真剣さが増した瞳が見つめ合う。
だがその瞳は急に力を無くして、朗らかに笑うと「時間切れだ」と呟く。

「────教師の前で不純異性交遊の真似事とはやってくれるなお前達」

直後にそんな言葉が背筋が凍るような冷ややかな声で彼らに届けられた。









──────────────────────────────






「いい笑顔だったね」

「え?」

パレードとそのショーが終わり、解散していく人の流れの中。
突然横合いから声をかけられた少女が顔を向ければシャッター音が響く。
そこにはカメラモードのフォスタを構えた狐耳の少女がいつもの笑顔でいた。

「あ、ミューヒ! 勝手に撮らないでよ、もう!」

「あはは、いいじゃない。パレードに夢中だったヨッピー可愛かったよ、ほら」

そういってフォスタの画面にいくつもの画像が並んで映し出される。
それは意図的に少女(陽子)だけを抽出したのか彼女の色んな表情が集まっていた。
行進に心沸き立たせ、歌姫に目を輝かせ、猫達のバトルに興奮している姿がそこにある。
恥ずかしさから消してと慌てるがさすがにルームメイト。扱い方を心得ているのか。
あとで画像データを送るのを条件になんだかんだと認めさせた。おそらく何をいっても
彼女が意見を変えない事を陽子が諦めきっているせいもあるだろうが。

「俺が映ってるのあったらそれも頂戴ルオーナさん」

「もち! グウちゃんのもあるけど、いる?」

「いらねえよ。ってかいつのまに写真係になってんだお前?」

「うーん、気が付いたら?
 最近写真にこってるの、なかなか盗撮させてくれない相手がいるせいかな」

あれは中々に強敵で大変なんだよ、と雑談のようにそれを語る彼女に三人は絶句だ。

「………ミューヒ、私が風紀委員ってこと忘れないで発言してほしいわ」

「ヨッピーにはわからないよ!
 隠れて撮影しているのに毎度気付かれてピースサインされる屈辱なんて!」

次こそは勝つ、と耳と尾を逆立ててで息巻くミューヒに周囲は呆れ顔。
相手が問題視してなさそうだがそれでも盗撮は問題だろうと思う面々だ。
しかし彼女の性格を考えて、無理矢理ながら納得(諦観)することにする。
被害者が訴えてきたらさすがに厳罰に処すとだけ陽子は一応の警告はしたが。

「それよりトモトモは? 確か途中まで一緒にいたと思ったけど?」

「あ、あいつはトイレだよ。この人混みでパレードも終盤だったから
 待っててもらうとか後で合流とかするより先に出口向かっててくれってさ」

だがそれを気にした様子もなくトモエの行方を聞いてくるミューヒにリョウは
まるで決められた台詞を慌てて喋ったかのように説明する。彼女は目を細めたが
それ以上の追求はない。それだけで察したのだがそれに気付ける者はここにはいない。

「あんたはどうする? 一緒に行く?」

「そうだね、一緒に外で待ってようか」

素直に誘われるまま連れだって歩く彼女らにリョウは安堵の息をもらす。
彼からすればミューヒも充分にトモエのライバルとして困難な相手に見えていた。
外見は可愛らしく立場的に近く、どうにも互いに気安い関係を作ってる気がするのだ。
そんな相手に悪猫の正体に勘付き、追いかけていった幼馴染の邪魔をされては困る。
尤も、ではニャニニャーの中は誰だったのか、という所まで彼は考えが及んでいないが。

「ん、おいセンバ弟、どうした?」

だがその仮初の安堵が陽介の何かを探すように周囲を彷徨う視線に気付かせた。

「え、あ、いや…学園の……し、知り合いにワルニャーのファンがいるんだ。
 姿はどこにも見えないけど、その人がさっきのを見てたならいいなって」

その指摘に先程のリョウと同じく慌てて誤魔化すような説明する陽介。しかし
最後の言葉はどこか遠くを見るようにして本気でそう願っているのを感じさせた。

「こら陽介! シングウジ! 急ぎなさい、置いてくわよ!」

「あのなぁ……お前らが先に行き過ぎなんだよ!」

「まあまあ、落ち着いて」

そこへかかった急かす言葉に軽く苛立つリョウを陽介が宥めながら合流する。
ぐちぐちと文句をいうリョウに食ってかかる陽子と双方の緩衝役となる陽介。
そんな姿をいつも以上にニコニコとした顔で見守るミューヒはふと何気なく
思いついたことを尋ねていた。

「あ、ねえ、ヨーヨーたちはさ……今日、楽しかった?」

「え?」

「はい?」

「オレは無視か……別にいいけど」

彼女自身なぜそれを双子にだけ問いかけたのか分からなかった。
ナニカが人知れずあったからか。それを解決した者が双子を気にかけていたからか。
出来ればそうであってほしいとミューヒ自身が望んでしまっているのか。本人にも
分からない答えなど出るわけもないが双子は一度だけ顔を見合わせると
その似たような顔を並べて同じような笑みを浮かべてみせた。

「ええ、もちろんよ!」

「うん、すっごく!」

「あ、その顔いただき!」

満面のそれに反射的にシャッターを切った瞬間、彼女は固まってしまう。

「まさ、か?」

珍しく愕然としたような顔を見せる彼女に周囲は訝しんだ顔を見せる。

「ミューヒ、どうしたの?」

「……う、ううんっ、なんでも!
 それより早く行こうよ、遅れてまた叱られるのは勘弁!」

「あ、こら、押さないでったら!」

陽子の背を押すようにして急かすミューヒに周囲は結局いつもの事かと流す。
背中で隠れるように彼女が痛みを孕んだ表情を浮かべているなど誰も知らず。
だからそっとその視線が遠くにある女神の城─にいる少年─へ向けられた事など
彼等は知る由もない。

「……そうか、だからあの子…あんなに」

彼女はあまりにあの少年を被写体にし過ぎていた。だからだろうか。
その笑顔と今の笑顔が頭の中でどうしてか重なって見えてしまった。
顔の造形は似ていないのに雰囲気や笑顔の形というものがよく似ていた。
彼が持つ6年のずれ。兄だという少年。双子から聞いていた家庭環境。
両者の複雑そうな関係。彼等にだけ態度が違う少年。『無銘』を脅してまで
手を出させないように手を回した彼のどこか他と違う違和感のある対応。
何よりマスカレイドが最初に人目に触れたのは何が切っ掛けだったのか。
それらが繋がり、意味を理解した途端彼女はいつもの笑みを忘れた。
その想いに心を寄せて胸が痛い。

帰還した彼が何を失って、それでも何を守ろうとしているのか。
今日はもう彼女に譲ると決めたのにどうしようもなく彼に会いたくなってしまう。
平気で世界と対峙できる癖にどこか気弱で不器用なあの少年を抱きしめてあげたい。
それができないのならせめて、よくやったとただ褒めてあげたい衝動にかられる。
そんな資格がこんな事をしでかした連中の同類の自分にないのは彼女も分かっていた。
だから譲った彼女(アリステル)あの猫(ワルニャー)を追いかけていった誰か達がそうしてほしいと望む。
代わりに自分はせめてこの双子の笑顔を届けようと無題のメールに添付し、
こんな文を添えてそっと送りつけた




──キミが守ったものだよ






────────────────────────





その登場は花火の終わりかけた瞬間。
声にくすくすと笑う彼と違い、咄嗟にそこへ顔を向けたアリステルは
そこにいる人物が誰かを認識すると奇声をあげて飛び上がるほど驚いてしまう。
相手がというよりは対外的に自分達がどういう状態なのかを理解してだが。

「ひゃぁっ!? ドゥ、ドゥネージュ先せ、きゃっ!?」

「おいおい、大丈夫か? 先生も驚かすんじゃないよ」

「……注意をした直後に堂々と抱きしめたお前にいわれると何か腑に落ちん」

いくら驚きから体勢を崩したとはいえ肩を抱いてその胸に抱き寄せた行動には
さすがに突然過ぎたかと反省しかけたフリーレをして渋面にさせた。

「まったくよ。
 何かあったのかと思って来てみたら先輩と逢引とか手の早いことで」

その後ろから続くように勝気そうな顔のポニーテールの少女が続いた。
彼女もまた半眼で呆れたようにシンイチを睨んで不満をあらわにしていた。
しかしその登場に驚いたのはやはりというべきかアリステルただ一人である。

「サ、サーフィナさん!?」

「ああ、やっぱお前の『眼』は誤魔化せなかったか」

彼はどちらの存在にも驚かなかった。どちらも知っている、気付ける者だ。
そして学園教師や生徒にとってこの場所へ登ってくることなど簡単だといえる。
居場所についてもそれぞれの立場や能力を行使すれば探せないことは無いのだから。

「最後の花火(アレ)ではっきりしたわ。だから慌ててワルニャーの後を追ったわよ。
 そしたら先生とばったり会ってここに、途中でだいだいの事情も聞いた。
 けどね………あんたいいかげん先輩を放しなさいよ」

そういって彼女が睨んでいるのはアリステルを抱いているその腕。
彼女はその中で二人の登場に驚きつつもどこか夢見心地で陶酔しきった顔をしていた。
彼を見詰める目も、漏れる吐息も、とても熱い。

「あぁ、いえ、できればしばらく、このままで……はぁ」

「先輩、ダメですって! その男に懐柔されちゃっ!
 絶対こいつ影で何人も泣かせてる女の敵ですよ、きっと!!」

「うむ、否定できそうにないのが地味に悔しい」

「形だけでいいからせめて否定してくれナカムラ」

溜め息まじりにそういわれてシンイチは楽しそうに笑いながらアリステルを解放する。

「これが手助けしてくれた分ってことで頼む。時間の方はいつか必ず穴埋めする」

「はい、心待ちにしておりますわ」

残念そうながらも笑顔で少女は頷き、彼もまたそれに頷きで答えた。
その裏でフリーレとトモエはその光景に苦虫を噛み潰したような顔になっている。

「天下のパデュエールのお嬢様をこき使っておいて、それで済ますの?」

「ナカムラも大概だが、パデュエールもこいつに甘過ぎるだろう」

前者はそんな報酬でいいのかと複雑な心境ながら愕然。
後者はこれをどう教育すべきかと教師として頭を抱えた。

「キュキュキュ」

まるでその様子を笑うような鳴き声が響いて、皆の視線がそこに集まる。
バルコニーの手すりの上で小さく会釈をする狐に似た小動物がいた。

「お疲れさま、助かったよ」

「キュイ」

小さく首を振りながらも主人の肩に飛び乗る“彼女”。
機嫌良さそうに頬ずりして甘えてくるのを受け入れながら全身を撫でた。

「よろしいので?」

「もう警備室を制圧しておく必要性は薄い(・・)からな。
 フリーレ、この点はそのままでいいぞ。その方が説得力があるだろう?」

「確かにな。アマリリスの協力があった。それ以上に突っ込みにくい話はない」

強すぎる存在の代名詞であるアマリリスが襲撃したのだ。当然の状態だろう。
後でアリステルやフリーレが表立って事情説明をする際に誤魔化す必要はない部分だ。
だがフリーレはふと不思議そうに周囲を一旦見回すとここにいない者の名を出した。

「アマリリスを見たから、というわけでもないがルオーナが来ないな。
 気付いて探しに来るかと思ったが……パレードを見ていなかったのか?」

「いや、群衆の中にはいたよ。
 気付いてもいたんだろうが、今日は遠慮したという所だろう」

そう口にして意味ありげな視線をアリステルに向ければ彼女も頷き返す。

「ええ、色々付き合ってくれたばかりかわたくしに塩を送ってくれましたわ」

バス駐車場での出来事を見ていたフリーレはそうかと頷く。
あれの後となればそう気遣いたくもなると同じ次期当主ゆえか同情と共に納得する。

「だがあのルオーナがねえ?」

しかしそんな気遣いを彼女がしたかと思うとフリーレには不思議の一言。
彼女の中でのイメージはシンイチとは違う意味で場を引っ掻き回す台風狐娘だ。
だが彼からすればその評価が間違いなのだと口にしながら静かに首を振る。

「いや、ああ見えてあいつは人の世話を焼くのが好きなんだよ。
 もっと正確にいうならあれは誰かに仕えてこそ真価を発揮するタイプだ」

「……よくわかるわね。そんなにお世話されてたわけ?」

「直接的というよりは時折空気を読んで何も言わずに引いてくれるからな。
 あいつは空気を読めるからこそ読まない行動を計算で出来るだけなんだよ。
 それに表面的な態度は正反対だが根っ子が似た奴をよく知っているからな」

だからわりとすぐにどういう奴かが分かったと彼は語る。
その際に顔に浮かべた優しげな微笑みは果たしてどちらに向けたものか。
この場にいない彼女─ミューヒのことを思い浮かべてのものなのか。
それとも似ていると評した誰かを想ってなのかあるいはどちらにもか。

「そうっ、どちらとも随分仲がよろしいようで!」

その表情に何かどうしようもなく苛立ってそっぽを向いてしまったのはトモエ。
とはいえ、その内心で最も大きく占めているのは苛立ちより自己嫌悪である。
そんなことを言いたかったわけではないのに、と。

「これじゃ言うに言えないじゃない……」

今更切り出しにくいとぼそっと呟くようにこぼす。
ワルニャーの正体に勘付いた時はそこまで会いたいとは思っていなかった。
ただその確認がしたかったのと万が一彼でなかった場合を危惧していただけ。
会わなくてはと強く感じたのは教師(フリーレ)と遭遇して事情を教えられた時だ。
どうしても、どうしても会いたくなった。会って一言伝えなくては、と。
今日の内でなければきっと自分は性格上それを伝えられなくなるから今すぐに。
だがそう思って駆けつけてみれば彼はこちらが逆立ちしても勝てそうにない
相手とラブシーンをしていたのだ。どうしようもなく、面白くなかった。
第一自分は今回の一件に巻き込まれた訳でも協力したわけでもない。
またも場違い感を覚えてしまって妙に居心地が悪くなってしまう。
もう帰ってしまおうかと視線を戻せば、顔。

「どうした?」
「ひゃっ!?」

思考に没頭していたためか目の前にまで迫った彼に気付かなかった。
いつぞや程ではないが突然の近さに驚いてずさっと音を立てて後ずさる。

「言うに言えない、とはなんのことだ?」

ただシンイチはそれを気にした風もなくごく自然とそれを問うていた。

「うそっ、なんで聞こえてるのよ!?」

「耳は特に悪くない。
 むしろ聞くことに集中していれば誰よりも地獄耳だと自負している」

「なんであんたってばそういう無駄な所で本気出すわけ!?」

「面白そうだからだ」

言いよどむこともない満面の笑みでの即答にこういう男だったと肩を落とすトモエ。
そしてまだ付き合いが短いながらも彼の追求を逃れるのは容易ではないと感じる。
ならちょうどいいと割り切ってしまおうとトモエは判断した。
やけっぱちになった、ともいうが。

「……あ、ありがとう、って言いたかったの」

「は?」

脈絡のない─シンイチからすれば─感謝にきょとんとする彼の肩の上で狐が首を振る。
その伝わってない表情に普段の察しの良さはどこいったと叫びたくなるトモエ。
尤も自分の言葉足らずも分かっているためさらにやけっぱちとなる。

「だ、だから! あんたのおかげで楽しかったっていってるのよ!」

「ふえ?」

まだわからないかと彼女は自分なりに自分の素直じゃない部分を抑えこんで
羞恥か興奮かで真っ赤にした顔を向けながらまくしたてるように想いを伝えた。

「あたしも、リョウも、陽子も弟くんもみんなも楽しんでた!
 あんたがそいつらの企みを防いで、表沙汰にしないでくれたから。
 滅多にないこんな遊ぶだけの一日を過ごせた……だから、ありがとう。
 すっごく楽しかった………い、言いたかったのはそれだけっ、おしまい!」

これ以上はシンイチを見てられないと顔を背けて逃げたトモエだが、
ふと肝心の言った相手からも、アリステルやフリーレからも反応がない。
もしやこれでも伝わっていないのかと恐る恐る彼に視線を戻せば、赤い。

「はい?」

「っ、あ、いや、べ……別に俺のおかげじゃないんじゃないかな?」

これまで一度も見たこともない顔で少年は誰がどう見ても、絶対に、照れていた(・・・・・)
苦し紛れに否定しているがその赤さが何よりも気付いてしまった事を示している。
また。

「あれだけご活躍なさってそれはさすがに無理がありますよ?
 ……そういったお顔も素敵ですけれど」

「これがお前のおかげでないというならいったい誰のおかげだ?
 ……まあそういう所はちゃんと子供なんだなと少し安心したが」

そんな彼を挟むような位置に立ちながらその珍しさを鑑賞しつつ二人も頷きを示す。
何か言いようのない辱めを受けているような気分になってより彼に赤みが増した。

「もしかして、シンイチさんって褒められ慣れてないだけでなくて
 誰かに楽しかったといわれるのも慣れてらっしゃらない?」

「それもありそうだがどちらかというと守ろうとはしていたが、
 自分のおかげで守られた、という感覚が最初から無かったんじゃないか?」

「……ってことはなに?
 もしかしてあたし、こいつに予想外の不意打ちしてたの?」

「キュイキュイ」

そんな三者の推測に『そうなんですよぉ』『その通り』と頷くような従者狐の鳴き声。
ああやっぱりかと納得したような気配が漂うがトモエは信じられないと吠えた。

「こいつ本当に変な所抜け過ぎよ! うっかりっていうレベル!?
 あんたが動いてあんたが解決してあんたが守ったならあんたの功績でしょうが!!」

「う、ううっ……いわれてみれば確かにそうだけどぉ」

「自慢する奴もどうかと思うけどなんで言われるまでわかんないのよ!!」

バカじゃないの、と毒を吐きながらもそれが間違いなく彼のおかげであったと。
ここに来てからの楽しい時間を怒り口調ではあったがトモエはしっかりと伝える。
その言葉たちに壁際に追い込まれた彼はいつもの態度はどこへやら敗北寸前だ。

「わ、わかった! もうわかったからやめてくれ!
 これ以上はこそばゆくて聞いてられん!」

「そう感じる時点でまだわかってないわよ、いいから聞きなさい!」

「勘弁してくれ!」

言われる事を予想していたのなら流せるのだが、していなければこうなる。
彼にとって自分のした行為は所詮気に入らない相手やその計画を排除しただけ。
結果的に守られる事は予期できても自分のおかげとは露ほども思っていなかった。
だから反論する余地もなくそうであると示されるとどうしていいか分からなくなる。
彼の15年の人生にも付属された邪神の三千年にもその手の経験が無さすぎた。

「ふふっ、おかしな人ですね」

「まったくだ」

言葉で追い込まれ負けそうになっているというどこか珍しく見えるそんな姿に
微笑をこぼしながらも彼女らはトモエの“お説教”には介入する事は無かった。
何せそれは今回の件に協力して対応した彼女らにはできない指摘なのだから。
少なからずそのために二人は楽しむ時間を減らしている。この“お叱り”は
彼のおかげでそれが守られた者だからこそ口にできることだろう。

その後、誰かさんから証拠だといわんばかりに送られた笑顔の写真が
トドメとなって許容量を完全に超えた彼は両手をあげて降参してしまう。
大人気テーマパークにおける爆弾テロ事件を未然に防いだ立役者たる彼は
その行為を褒められてグロッキーになるという実にしまらない結末を迎えるのだった。







──────────────────────────────







「若い奴は元気だねぇ、無邪気で、無駄に楽しそうで」

自らを追い抜いていった少年少女たち。一人の少女を小柄な少女が押しながら
その後ろを男子二名が苦笑しながらついていく妙な姿を何気なく見送った者が呟く。
ただどうしてかその何でもない発言には聞いた者を不快にさせる声色があったが
誰に聞かれたわけでもないためその不穏さに気付いた者はいない。

その男は180cmを超す長身と筋骨隆々とまではいかないまでも一目で
“物理的に”鍛えているのだと分かる体つきをしていた偉丈夫であった。
年齢は三十代後半ほどで髪の毛と瞳の色を信じるなら東洋系の地球人であろう。
いかついとしか言いようのない傷のある顔を売店で買ったキャラクターのお面で
半分ほど隠しながら出口に向かう流れに乗りつつもゆっくりと進む。
途中、意図的にそこから離れて携帯端末を取り出すと耳に当てた。
どうやらどこからか通信が入ったらしい。

「俺だ……ああ、失敗だよ……おいおい耳元で怒鳴るな」

向こうで相手が叫んだのかいくらか携帯を耳から離すと会話を再開させる。
通話相手は不機嫌らしいがこの男は終始楽しそうに口許を歪めていた。

「そいつは残念だったな、こっちは見てて面白かったぞ。
 こっちが何かあったかと気付いた時にはもう大半解体されてやがった。
 仕掛け直す暇もなく大本命を奪いに着ぐるみ(アレ)だったからな。
 しかも、ありゃ俺らの存在に気付いて誘ってやがったぞ」

おっかない、おっかないとおどけた様子を取ると再度通話相手は吠えたようだ。
若干苦笑気味ながらも慣れた動作で携帯を少しだけ耳元から離して男は流す。

「……まあそういうな。あれは引っかかった方が間抜けだ。あ?
 なら叩きのめせって、散々俺に動くなといった口で何いってやがる。
 だいたいあれは引っかからなかった奴に向けての警告も込みだよ。
 俺には『まだ続けるなら潰すぞ』って声が聞こえたぞ」

声は変わらずどこかふざけた調子を崩してはいないが、それでこの男が
本当に何もしなかった事の意味に気付き、通話相手はしばらく黙った。

「…………嫌だね、今回は完全にしてやられたよ。俺たちの負けさ。
 今も空気が一般人には解らないレベルでぴりぴりしてやがる。まだいる。まだ見てる。
 この状況で動く奴はただの道化だよ。途端にあの猫に踏みつけられるぞ……くくっ」

それでも何かを求めた言葉を男は即座に斬って捨てた。
お面に隠れて気付きにくいが周囲を見る目は鋭さをより増している。
男は何もしないという行為をしながら最大限の警戒を常にとっている。
取らざるを得ないと本能だけで感じ取ってそうしていたのだ。尤もそれを
通話相手が理解してくれるかは別の話ではあるが。

「なに、元々これが失敗した場合の計画も………は?
 あっ、おいこらっ、待てっ………ったく、最近の若い奴は短気でしょうがねえ」

なあ、と語りかけた場所には人影も気配も存在しない。
あったのは店舗の壁に貼られた今日のパレードを宣伝するポスターだけ。
人気がないのをいいことにそれに向かって独り言を呟きながら男は笑う。

「運が良かったな、あんた。
 だが次はご都合主義(ヒーロー)はいないぞ───────次元の歌姫さん」

薄笑いを浮かべた男は何の躊躇もなくポスターに描かれた歌姫を引きちぎった。
まるでこれが予告だといわんばかりの振るわれた男の腕には衣服の
袖から覗くようにして不気味な蛇の刺青が一瞬だけ顔を見せた。








──────────────────────────────







「───ええ、ええ、わかりました。
 私は直接ホテルへ戻りますので気にせず先に行ってください、では」

耳元に当てていたフォスタにそう告げて女性は静かにそれをテーブルに置く。
黒縁眼鏡をかけた日本人らしい黒髪を三つ編みにして背中に流していた彼女は
目の前に座る人物を気に掛ける様子もなくそのままカップを傾けて喉を潤す。
修学旅行についてきた、あるいは旅行組に押し付けられた城田奈津美である。

「ああぁ、やっぱり普通に応対するのは疲れるわぁ……」

何の変哲もないファミレスの一角。時間帯か立地か単純な店の人気か。
店内に他の客の姿は少なく、どこか閑散としているが彼らには好都合な話。
とはいえ対面に座るスーツ姿の男は彼女の態度に不快そうに眉を潜めている。
整えられたブロンドに青い目という日本では分かりやすい異国人であったが
ガレスト産の翻訳機の拡散で日本人の外国人への苦手意識はそれなりに
軽減されておりガレスト人の存在もあって比較的目立たなくなっていた。

「ミス・シロタ、話の続きを」

「え、ああ、なんの話だったかしら? えーと、オレハ・スシメシーさん?」

そうであるからこそ可能な接触であったのだが話にならないとはこのことか。
と、彼は事前に聞いていた以上だとその表情をより苦々しいものに変えた。

「……アラン・スミシーだ。さっき言ったことも覚えてないのか」

「そうだったかしら?
 よく聞く名前(・・・・・・)だしねぇ、捻りもなければ面白くもないわー」

苛立ち気味に再度名乗った彼だが奈津美はただ鼻で笑う。
定番の偽名など覚える価値すらないとその顔は完全に白けていた。
もっと解り易くいえば、興味がないことを全力で表現してだらけていた。

「……ニッポン人は礼儀正しい民族と聞いてたがな」

「あら?
 この私に一般的で模範的な対応を求めるのはそもそも間違いよ。
 座って聞いてあげてるんだもの、これでも結構我慢してるんだから」

だからさっさと用件を告げろと暗に急かされて男は溜め息と共に懐を探る。
諦めたというよりはこのままでは話途中で修学旅行に戻られると確信したから。
実際、彼女が興味のない話を座って聞いているのは僥倖といえるので英断だ。
奈津美との接触が初めての彼はその意味を理解しているかは怪しいが。

「私の上司から解析依頼がふたつある。
 報酬を先にいっておくが君がご執心のあの少年に関する情報と
 彼に何かをしてもこちらにはそれをキレイにする(・・・・・・)用意があること。
 そしてあなたが希望していたジュネーブの研究所の使用許可もとってきた」

まくしたてるように一気に告げると共にメモリーカードをテーブルに置いた。
詳しいことはこれを見ろと暗に告げているのだが奈津美の表情は冴えない。
それどころか眠たそうに大あくびしてその評価を告げた。

「……微妙ねぇ」

「な、なぜだ? かなり破格の条件のはずだぞ。
 それに研究所の設備に関しては君は何度も許可申請していたはずだ」

「タイミングが悪いのよ。女にモテないタイプね、あなた」

少し前までなら飛びついた話だが今はそこまで執心していない。
まずはナカムラ・シンイチについて深く調べたい欲求が先に立つ。
その件の少年に関する情報提供も彼らの組織力を知っているため無駄とまでは
思わないがそれで手に入る情報などたかが知れていると彼女は判断していた。
何せ彼ら程度の“力”で簡単に消せる相手だと思い込んでいるのだから。
そしてそれほどに彼が面白い事実(コト)を明かす気は彼女には毛頭無い。
あれはまだ自分だけの研究対象でなければ困るのである。

「それに許可だけもらってもねぇ。
 私は特例でもない限りクトリアから出れない身だし」

だから語ったのは特別どうでもいい表向きの事情だ。
現在、修学旅行についてこれているのもその特例というものである。
黒に近い灰色である彼女に学園の設備工事に関わらせないための一時的追放。
奈津美自身もそんな作業を手伝いたくもないため渡りに船で乗っかった口だ。
ただそこには普段から髪の毛一本すらくすねる事もできないあの少年について
旅行中ならばどこかに隙ができないかという思惑もあったのだが、やはり手強い。
ランドに到着するまではそれなりに観察できたが入ってからは完全に見失った。
人混みに紛れられると機械的な捜索システムではどうしても彼を見付けられない。
余計に調べてみたい欲求は高鳴るがこれでは生殺しもいいところだ、とその場は
諦めてランドの外に─勝手に─出るとこの男に捕まったのだから行動選択を
誤ったと彼女は本気で思っていた。それでも応じたのはただの暇潰しである。

「おい! 聞いてるのか!」

目の前の相手には届くが周囲を騒がせない絶妙な声量での呼びかけに
思考を邪魔されたと汚物でも見るような目を向ける。その目に一瞬怯みながらも
男は話を続けた。

「外出許可の件もこちらで掛け合うことを約束しよう。
 うちの研究班がこれを理解できる地球人がいるならあなただけだと。
 最低でもせめて、見解ぐらいは教えてほしいとそういっている」

「……へえぇ、暇潰しの価値ぐらいはありそうね」

仮にも“彼ら”がそういうのなら一定以上の難題ではあるのだろう。
そして解明せよではなく意見だけでも欲しいという下手さに焦りを感じさせる。
発言通り暇潰しになると考えてカードを拾うと自らの眼鏡のフレームに押し付けた。
途端に沈むようにそれは消え、代わりに内部の情報(データ)をレンズから直接網膜に見せる。
外部からは分からないが当人の視界には空間モニターをいくつも開いたようにして
数多の情報が表示されているように見えていた。異世界科学による技術革新は
物理的に自動消滅する記憶媒体やそんな映像投影機すら実現可能としていた。

「これは……次元波長?」

それによって見せられた波形に首を傾げる。
見えてはいないが中身を知っている自称アラン・スミシーはそれに補足する。
ただそれを彼女がきちんと聞いているかは甚だ疑問ではあるが。

「未帰還者捜索救出計画に前後する形で観測された謎の波長だ。
 今まではガレスト全域探査の影響だと思われたが、そこにある通り実は
 何年も前から何度も観測されていた事をうちの諜報班が掴んだ、しかも──」

「場所も時間も違うのに全く同じ波形パターン、となれば間違いなく人為的なもの。
 でも私のは内で済む。境界線を揺らがすものでは、いえ出力をあげれば可能か。
 けどこれ、探すんじゃない。開けて、招くもの。いったい何を次元世界から
 招いたのやら………あ、これ副次的に大発生起こってるわね」

「……なに?」

繋がっているようで完全な独り言で語られたその話に彼は怪訝な顔となる。
そこには自分達がいくら調べても意味が解らなかったモノを見ただけで
理解したことへの驚きもあるが導き出された答えが大発生(それ)だったため。
覚えている限りの観測された日付と場所と公式発表での大発生の記録を
即座に端末で照らし合わせていけばいくつかの一致が見られた。

「意図的に大発生を起こしただと?」

だがそれの印象が強すぎた自称アランはその前の言葉を深く考えてはいなかった。
しかし、詳しく問い質そうとした彼の前で天才と狂気の科学者は我が道を進む。

「で、次のこれは……死体の博覧会?」

「っ、待て! それよりっ、い、いや。
 それは最近起こった不可思議な暗殺事件だ」

詳しい話を聞きたいがそちらも重要である以上興味がある内に聞き出すべき。
言葉途中で自らの好奇心や疑問より理性を働かせる事に成功した彼はそう補足した。

「私は科学者・技術者であって、捜査官でも探偵でもないんだけどねぇ………へえ」

お門違い、という文句を言外に告げながらも最後に興味深い声を吐く。
視界に映るのは彼女が博覧会といえるほどのいくつかの死体の映像と検死結果。
そしてその殺害時及び発見時にまつわるいくつかの状況の情報であった。

「なるほどね、あんたらが匙を投げる訳だわ……」

一つは外骨格を装着しているのに心臓を刺されて(・・・・)絶命した遺体。
不思議な事に外骨格胸部には刺し傷があるのに人体には表面的には傷がなく、
その内側にある心臓だけが貫かれたような痕跡があったという。そしてその
何らかの攻撃によって外骨格は何故か過負荷によるシステムダウンを起こしてしまい
本来なら動くはずの救命システムの作動が遅れたため装着者は助からなかった。
そして遺体も外骨格も絶命させた謎の攻撃の痕跡はどちらからも発見されていない。

別の件では四方を強固な壁に囲まれた地下室で縦に真っ二つとなった遺体。
後の調査でここに被害者以外に訪れた人物も機械(ロボ)もいなかった事が証明され、
それどころかこちらも武器使用の痕跡やフォトンも何も感知されなかった。

さらに頭部を一発で撃ち抜かれた死体もあったが射殺当時被害者がいた位置と
遺体の痕跡から予想された弾丸の入射角の延長線上には分厚い壁があり、
そこには狙撃の痕跡どころか傷一つなかった。

他にもいくつかあり得ない殺人事件がそこには列挙されていた。
概ね共通しているのは何らかの攻撃を受けたのは誰の目にも明白なのに
その状況下では不可能であったり周囲にその痕跡が全く残っていない事だ。
これが同一犯によるものならむしろそういう状況を意図的に作っているのではと
邪推したくなるほど不可能殺人のオンパレードだった。そしてそれに人種は
関係ないらしくガレスト人も地球人も同数程度に被害者になっていた。

「殺され方に違いはあるが我々はこれを同一の組織あるいは同一の武器による
 暗殺と考えている。だが、どうやってやられたのかが全くもって不明なのだ。
 偶然その瞬間を撮影していた映像もあったがそれでも何もわからなかった」

お手上げだと肩をすくめる彼の様子をまるで見ることなく、
奈津美は何度かフレームを撫でるという動作で機器を操作し、映像やデータを
凄まじい速さで解析しながら彼女はまたも考えをまとめるように独り言を呟く。

「霊子反応は……なし、ね。
 解放された空間内でシュレディンガーの猫やってるのかしら?
 トンデモ量子力学の範囲、あり得ざることの不在……違う。
 質量を持った意思、精神の質量化……だとしたら過程が少しおかしい。
 なら、あり得ることの消去、いえ起こしたいことの強要。いえもっと単純ね。
 生命体にのみ当たって他は透過、じゃないわね。事象の書き換え?
 他に当たる可能性を排除した攻撃(敵意)……」

「……なに?」

先程と全く同じ反応だがこれは理解ができないがゆえの言葉だった。
怪訝どころか何のことを喋っているのかさえ彼は全く理解できていない。

「頼む、もっと素人でも理解できる言葉にしてくれ。
 そもそも科学者とは思えない表現が多すぎるぞ、SF小説家か何かか君は?」

いったいそれは何の話だと自称アランは皮肉交じりに問い質すが彼女はくすりと笑う。

「あはっ、科学? 馬鹿いわないでよ。
 そんなものは人間の勝手な尺度よ、世界はそれ以上のモノで構成されてるわ」

だからこそ調べる価値がまだ(・・)あるのだと語る地球一の科学者の笑みは
あまりに底が見えず、あまりに狂気に染まっていて、怖気が走った男は震えあがった。

「でも暇つぶしと言ったことは謝るわ。これは確かにその程度じゃない。
 私でようやく指先がかかるレベル……いったいどこの誰の仕業かしら?」

うふふ、と声だけ聞けば楽しそうな笑いと共にそうこぼした彼女。
しかしその顔を正面から見ることになった男は全身に鳥肌が立った。
それは彼が見てきたどの笑顔とも違う解読不能の笑顔だった。
子供のように純粋で、恋する乙女のように熱っぽく、それでいて
どこか快楽殺人鬼が浮かべるような凄惨な笑みが均等に混ざっている。
より一層震えあがる体を意志と使命感で抑えつけて自称アランは言葉を紡ぐ。

「っ………は、犯人と思われる組織には確証はないが心当たりがある」

「へえ……どこのどいつ? 噂の『無銘』というところ?」

「いや、被害者の共通項から捜査した所、『蛇』の影がちらついている」

蛇。その単語の前に彼女の顔にあった解読不能の笑みが消えた。
世相に疎い。否、興味が薄い彼女ですらその名は知っているものだった。

「………それはどっちの?(・・・・)

「違う、とっくに両方とも同じ『蛇』だ」

「それはそれは……またなんともきな臭い歴史的出来事ね」

「事実上“初”の存在だ」

「でしょうね」

これまでとは違って事情がわかる者同士にしか通じない表現で語り合う両者。
程度こそ違うがどちらも『蛇』に対しての警戒心は高くせざるを得ないらしい。

「……それでミス・シロタ、話を戻すがあなたは結局それは何だと考える?」

しかしと首を振った彼は本来の目的である謎の暗殺事件の手段を問うた。
彼女の口ぶりからある程度は解析できたのだろうと当たりをつけて。

「大まかには理解したわ。でもそれを再現・実証は技術的に不可能。
 何をやられたか説明しろというのも私レベルの頭がないとね」

だが返ってきた答えは男側の希望を半分しか満たしていない。
彼女は期待通り謎を解いたようだがそれを説明できないのでは意味がない。
この場に世界的な知識人や科学者がいてもおそらく理解できる話ではないだろう。
彼女レベルというのはそういう段階の内容となるのはさすがに彼も知っていた。

「そこをなんとか素人にも分かる……いや概念的でも抽象的でもいいから
 なにかこう我々にも理解できる表現で伝えてはくれないだろうか?」

しかしこれでは男も帰れないと思ったのか食い下がる。
それに押された、ということもなくその作業が面白そうだと感じた彼女は
脳内で理解している高度過ぎる内容を凡俗に落とし込むという行為に没頭した。
それはなんとも甘美に思える瞬間でしばしその恍惚とした感覚に酔いしれる。
尤も現実時間でそれは2、3秒程度の話ではあったが。

「ふふっ、そう、ね。
 私がこれに解り易い名を付けるならさしずめ───『真の神の杖』かしら」

宇宙からの爆撃なんて目じゃないわ、とその表現が気に入ったのか微笑む。
だが男はその単語が持つ不遜さと脅威に呻くように息を呑んで固まった。
それでも自称アラン・スミシーではその意味を正確に認識できてなどいない。
せいぜいが全くの未知の技術による超兵器の脅威といった程度であろう。
違うのだ。彼女がいったのはその程度のことではなかったのだ。
何せ彼女は『真の』といったのだ。そう。




───それはまさしく神による一撃に等しい



───ならば今の人類にそれを防ぐ術などない





「うふふっ!
 ホントにセカイはわたしを飽きさせてはくれないのね。うれしいわぁ」

見当違い、スケール違いの驚きで固まる男を余所に彼女はただ微笑む。
それはおもちゃ箱を前にした子供のようでありながら、全ては自分のものだと
無言でアピールするような危険な独占欲を持った歓喜(狂気)の笑みだった。

城田奈津美。
たいていのことは知っていて、理解している女。

ナカムラ・シンイチ。
城田の知らないことを知っているが想定外に褒められると弱い男(笑

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