挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

波紋編 第一章「転入初日」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

11/184

03-05 異世界の戦い方

そりゃもう、びっくりしたらしいよ?


───想定外にもほどがある




もうすでに気付いているかもしれないが『ナカムラ・シンイチ』という男は
この学園に学び舎としての価値をまったくというほど見出していない。
“知らないことを知りにきた”という点では他の生徒と同じでも、
彼には最初から“学ぶ”気などなく“調べる”気でここにきている。
元より今の世界の常識が足りない彼に学校生活を楽しむ余裕などない。
下手に関わって常識の違いから騒動になってしまわないかビクビクしている。

とはいえ怖がって何もしないのはここに来た意味がない。
まずは調査のために校内でも付きまとう監視の目を誤魔化す必要がある。
撒く手段は山のようにあっても撒いたあとの事を考えればそれはできない。
せっかく相手がこちらを過小評価してくれているのである。
目を付けられる要因をこれ以上増やすのは得策ではない。

しばらくはおとしなくして監視の目が緩むのを待つのが賢明。
そのためにも平均的な学生の力というものを見ておきたかった。
“戦闘訓練”があるこの学園でならばそれは比較的容易。
なにせ歴史の授業のあとはまさにその授業だったのだ。
そのために休み時間の内にやってきた運動場において、
彼は目の前の光景に唖然となってしまう。

「なに、それ?」

運動場とは名ばかりの観客席(スタンド)に囲まれた円形フィールドの広大な闘技場。
もはやそれは運動場や体育館とは言い難い、ドーム球場のようであった。
何かまたもや学校という場所の認識を破壊されながらも、
彼はこのさいそれらは棚上に置いて考えないことに決めた。が。

そこで行われている戦いの光景に強烈な違和感を覚えてしまう。
武装が違うのは当然だろう。剣と魔法の世界だったファランディアと
次元すら超える科学技術を持つガレストの武装が同じであるわけがない。
尤もそれでも人が使う武器である以上形状だけなら似通っているが。

ただ身に纏うは各々違う色の全身甲冑だけは違う。
まさにそれは鋼の鎧といえた。素材を加工し鎧としての形と機能を
持たせたものではなく人体に纏わせるのを前提とした自動展開される機械の鎧。
そういうギミックがあるのか人によって全身に装着している者もいれば
手足だけの者もいれば、顔だけは出している者さえいた。
そしてその全身を覆うパワードスーツから展開される武装。

いったいどのような技術だというのか。

小さなパーツが組み合わさり変形していきながらその質量と大きさを変えていき、
剣─ブレードとなったり大槌─ハンマーとなったり大砲─カノンとなる。

「おいおい」

まるで昔見た特撮ヒーローのようなそれが目の前に多数あって頭が痛い。
男の子の夢ともいえる光景なのだがそれ以上の衝撃にその発想が浮かばない。

「うわぁ、やっぱ上級生の模擬戦ってすげえな!」

「俺も早くあんなの使いてえっ!」

「先輩! 頑張ってぇっ!」

何よりそれを賞賛し応援する声に頭がくらくらする。
休み時間には解放されているというこの第一運動場のフィールドは広大だ。
東京スタジアムに匹敵する広さがありその中で巨大な武器を振り回す生徒達は
二人から四人の組み合わせでそれぞれの戦闘範囲の円の中で戦っている。
中でも一番広く、一番目立つ中央の円形戦闘フィールドで戦う三人。

「へっ、もちっと頑張れよ貴族さまぁ!!」

白に黒ラインの入った意匠のアーマーを手足と胸だけ展開する黒髪の男。
両手で長い柄を握り、装飾の多い鍔飾りから伸びるエネルギー状の刃を振るう。
自らの身長の二倍はあるその大剣で迫る山吹色と紺色の鎧を振り払った。
途端その余波だけでフィールドの床に大きな傷痕がつけられていく。

「くっ」
「ちっ」

顔以外は全身にアーマーをまとわせた男女はその一撃にブーストで遠く離れる。
僅かに見えた髪色が鮮やか且つ違和感のない色である事からガレスト人であろう。
山吹色の鎧が女子生徒、紺色の鎧が男子生徒であるが髪の色は逆である。
それぞれ距離を取ったからか手にいくつもの砲身が出現して光を放つ。

「避けれると思わないでよ!」
「食らえっ!!」

砲身だけのそれはそれぞれの手を中心において回転するように砲撃を始める。
物理的な砲弾はなく放たれたのは光の塊。色合いからしてフォトンのそれか。
破壊のエネルギーとなった砲弾の雨が迫る中、白の生徒は不敵に笑って仁王立ち。

「ふはははっ、そんな豆鉄砲がこの俺に効くか!!」

回避どころか防御の姿勢さえとらず、ただ突っ立ったまま受ける。
高笑いの声と共に砲弾の雨は傷どころかダメージや衝撃すら与えていない。
直撃しなかった砲弾が大きな窪みを床に作っている事から威力がないのではない。
白のアーマーとそれを着込む彼の耐久値があまりに高すぎるのだ。

「くそっ、威力はあげてるのに!」

「新型でも通らないなんて!」

「二対一にしてもこのざまか!
 所詮アリステルの金魚のフンがオレに勝とうなど身の程知らずめ!」

本心からの嘲りを表情にそのまま乗せて笑った男は大剣を担ぐように構えた。
それに対して山吹と紺の生徒は砲身を仕舞うと相手と同じ武器を取り出して刃を作る。
同じ金の輝きがフォトンから抽出されるエネルギーだと証明していた。
だが太さと長さにおいて両者は白の生徒のそれより劣っている。

「そんな玩具で俺のを受け止められるかよ!!」

駆け出すようにアーマーのブーストが点火されて彼を飛ばす。
その勢いのままろくに狙いもせずに巨大な剣を力任せに振り下ろした。

「っ、があぁっ!?」
「きゃああぁっ!?」

二人の大剣を交差させた防御は紙のように粉砕され、二人の間に刃が落ちる。
直撃どころかかすりもしなかったが余波でアーマーに罅が入り円から弾きだされた。
模擬戦の終了を知らせるものかその時点でブザーのような音が鳴る。
状況を見る限りタッグを組んでいた側の完全な敗北である。

「けっ、雑魚がいきがんなよ。
 偉そうなこというならせめて俺に一撃いれてからだ」

吹き飛ばされた衝撃で動けない彼らを一瞥することもなく、
白の生徒は大剣を仕舞うと完全に興味を無くして離れていく。

「相変わらずの無双だぜシングウジのやつ」

「シングウジ先輩、すてきぃ!」

「ハウゼンとカンルーのコンビでも勝てなかったか……」

「これでパデュエールさん以外は全滅だな」

それをスタンドから見ていた観客たちは賞賛半分落胆半分の声をもらす。
二階の最前席まで階段で降りて見ていたシンイチはそれを聞きながらも
厳しい顔で眉根に皺を寄せて、フィールド全体を俯瞰するように観察していた。

「なあこれはどういう顔をするべきだと思う?」

「キュ、キュ、キュウ?」

頭の上の相棒に語りかけるが困ったように彼女は首を傾げるだけだ。
シンイチも逆の立場なら似たような反応をしただろうとすまなく思う。


舐めていた。


既に別の異世界を知り尽くした事で慢心があったのは否めない。
だから異文化との接し方がわかっていたつもりになっていた。
これまではなまじ地球文化が混ざっているから対応しにくかっただけだと。
しかし実際はそんなものではなかった。その程度の話ではなかったのだ。
確かに武装し、武器を持って相手を攻撃して打倒する。
戦いでやっていることはガレストもファランディアも同じだ。
だがその中身が、あまりに、そうあまりにも───



「なにこの幼稚な戦い」



───子供のケンカレベルであった。
素人。学生。異文化。という点を差し引いて、その評価である。
事前に仕入れた、そして“体験した情報”とかなり乖離があった。
中央で行われた戦いだけを指摘するならまずは動きが大きすぎる。
大剣を避けるだけでアーマーの加速機能を使う点も無駄遣いだ。
あの衝撃を考えても取った距離の半分程度でいい。すぐさま反撃するなら尚更。
その反撃とて無駄に距離をとったうえに放たれた砲弾は当たらない無駄弾が多く、
一発一発から感じたエネルギーの量は申し分ないが中身がない(薄っぺらい)
だからといって白の男子生徒がとった防御力頼りの仁王立ちは論外だ。
今回がただのエネルギー砲弾だから良かったが別の効果を持つ砲弾なら
致命的な状態異常(バットステータス)を受けてしまう可能性をまるで考えていない。
最後の攻防とて強いと解ってる一撃を真正面から待ち構えるのは下策。
あれは避けてその隙を狙うことこそ常道な戦い方であろう。
そしてトドメの一撃としてあんないいかげんな攻撃を選ぶ白の神経も理解できない。
強い加速とそれを活かせないタイミングの振り下ろしで全く狙いが合っていない。


文字通りただの力任せ。


それで高い筋力を活かせているのなら歴としたパワーファイターであろう。
だがあれでは自分の力を自分で台無しにして無駄に体力を消費している。
使われている技術力は高いがやってることはただの殴り合いと大差がない。
ようは強烈な一撃を入れた方が勝つという単純明快且つ幼稚な戦い方。
状況によっては有りうる戦況ではあるが周囲の反応はこれが常のよう。
世界の違いはこんな違いすら引き起こすのかと遠い目をするシンイチだ。

しかし別に彼はガレストの戦い方を批難や馬鹿にしているのではない。
世界が違うのだ。これで成立しているのなら彼に文句をいう資格などない。
実際威力そのものは優れているので対人戦以外でなら有効な“兵器”だ。
ただ自分と相性が良過ぎて“負ける気がしない”のが厄介だと思っているだけ。

「………今更だけどマジで人前で戦わないようにしてたの正解だった……」

ここに来るまでの日々で起こった騒動を思い返して肩を落とす。
安心感というよりはもっと慎重に隠すべきだったという後悔が多い。
いくらか、何人かに露見してそうなのは今から考えると危ない気しかしない。
想定以上に自分はあちらにいるつもりで行動していると反省する。
はあ、と小さく溜息を吐いて頭を振ると授業のためにスタンドから去ろうとした。


「おい、お前─────さっきなんていった?」


途端フィールドに向けた背から苛立ちを含んだ声が響いた───

ちなみに主人公の強さなんですが、
なんでDランクなのにそれより高いランク(らしい)相手に負けないと思ってるのか。
その理由が明かされるのはまだ話数がかかります。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ