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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

試験編 エピローグ

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04-38 仮面が負ける日

内容は決まっててもどう表現するか悩むことってあるよね!


そしてはっきりいおう。
これが彼らのエピローグの前編だ!

例年通りであれば総合試験後、一日の休日を挟んで授業が再開される。
だが今回は事前通知無しで特殊な形による試験を行った事を考慮し、
休養期間は三日間となり、多くの生徒達はその二日目の昼を満喫していた。
数少ない事情を知る生徒達には事後処理のための物だと見抜かれているが。

さりとて一般には“そういうこと”になっているため平日の昼間に
制服を着た生徒がファミレスに居座っていても疑問視する視線はない。
代わりに、というわけでもないがその黒い学生服には奇異の目がある。

「………いつもながら、微妙に納得できんなこの扱いは、あむ」

バターチキンカレー・ライス大盛りを早めの昼食にしつつ愚痴るシンイチ。
その横では獣身のヨーコが180グラムのステーキにかぶりついている。
通常ペット同伴は断られるが法的にアマリリスだけは例外である。

「何の話だい?
 それよりもさ、今度はビット系の武装に挑戦しようと思うんだ。
 でもどういう系統にしようか悩んでてさ、何かアイディアあるかい?」

彼らのテーブル向こうの対面には技術科の白衣を着込む一人の男子生徒。
ヴェルナー・ブラウン、と名乗っているドイツから来た似非な学生。
妙な部分でシンイチと妙に意気投合し妙な関係を築いてしまった男だ。
彼らが今日の食事処を探していた際に偶然出会ってそのまま店に入り、
男同士でロマン武装談義に花を咲かせていたのである。
ちなみに彼はドリンクバーのみだが。

「ビット、自立浮遊兵器か……やっぱ一つで全部やりたいよな。
 撃つは勿論、面のバリアとかすれ違いざまに敵をバラバラにとか」

「だよなぁ、それで単機で戦場を荒らしてくんだ。最高だよ」

脳裏に浮かぶその手の武装が活躍するシーンを思い出しながら互いに語る。
この点において(アニメや特撮)彼らの趣味嗜好の一致は様々な垣根を飛び越えていた。
簡単にいえば、互いの立場とか秘密がどうでもよくなっている節がある。

「あとは合体して巨大な剣とか盾になっても面白いよな」

「そうそう、武器の変形合体はやっぱロマンだよ!
 そこんとこわかってくれる奴いなくてさ!」

「まあ便利な兵装端末で複数の武器を所持した方が合理的だからな。で、
 今はガン、シールド、ソードとか用途を限定した奴が主流だったか?」

「ああ、自立浮遊兵器は開発されてから歴史が浅いからな。
 ドローンと違ってデータ不足で遠隔操作にしろ完全AI制御にしろ
 制御システムが未熟といえる状態で現状は両方の折半って所。
 だから用途だけでも限定して他を楽にしてるのさ」

「なるほど」

「それに体と繋がってない物体を意識と感覚だけで動かすってのは本来
 人類にはない能力だからな。理屈で理解できても実際に動かせるまで、
 そしてそれに慣れるまで少なくない時間が必要なんだ」

使用はできるが開発途上の兵器であるとヴェルナーは語る。
小型の浮遊兵器を縦横無尽に扱える事は戦場の幅を広げるだろう。
相手の死角をつき、攻撃にせよ防御にせよ自らの手を塞ぐこともない。
一人で攻撃できる範囲が広がり且つピンポイントを狙える利点もある。
そのため学園でも挑戦する生徒は多いのだが最終的に使いこなせるのは
ごくごく少数なのだという。

「よ……普通科2年の千羽姉弟の下が使っていたのを見たが?」

「ああ、彼ね。ビット系の素質だけでいうなら学園随一だよ。
 あのパデュエールやルオーナよりセンスがあると思う。
 シールドビットで自分や周囲を援護しながら的確な火力支援。
 前に一度映像で見たことあったけどあれは天才的だったよ。
 ビット系武装の開発に執心してる奴が連日押しかけたほどさ」

「そ、そうか……ちなみに上の、姉の方は?」

「姉は正統派近接タイプだからロマン武装信者としては物足りないけど
 弟のおかげで後ろを考えなくていいからか突破力がすごいと評判。
 案外難しいんだ、外骨格でブーストかけながら突進攻撃するのはさ。
 見てる分には簡単そうだけどタイミングとか姿勢制御とかがね」

何せ自らが駆けたり跳んで突撃するのとはわけが違う。
装着した鎧が加速しているので、その制御をしながら、となる。
それらをしくじると武器を振るうどころかただの体当たりになるか。
まっすぐ進むことすら初心者には厳しいものとなる。

「練習用とはいえ短期間でマスターした才覚はもう本物だね。
 普通科でまだ声もかけやすいから外骨格開発を企む連中が押しかけてた」

そうしていくつかの試作品を使って得意分野をさらに伸ばしているという。

「……なんかよく知ってるんだな?」

「今はまだ経験不足や装備の性能不足も感じられるけど、
 それを補えば、一線級の戦士も夢じゃない逸材だからね。
 地球陣営としてはシングウジに次ぐといってもいい期待の双子星なのさ」

だから自分でもこれぐらいは知っていると語るとシンイチは感心したように頷く。

「……ほほう、それはそれは……」

「…………………なんで君がにやついてるんだい?」

どこか無理に笑みを抑えるようにしていながらも頬が緩んでいる。
自慢げにすら見えるその顔にヴェルナーは不思議そうな視線を向けた。
対外的にはシンイチと彼らの仲は良くないように見えているのだから。

「べ、別になんでもない……」

実際片方とは良いといえる状態ではないので間違ってはいないが、
それはそれ、であり自分の感情とは別の話だと彼は考えている。
要するに、妹弟が評価されてて鼻高々のお兄ちゃんなのであった。

「キュキュキュッ」

「………笑うんじゃねえよ」

その感情を見抜いておかしそうに鳴いた彼女の頭を小突く。
嫌がるどころか嬉しそうに体を揺らすヨーコにシンイチは渋い顔だ。
尤も対面のヴェルナーは若干怯えたような顔をしていたが。

「う、噂では聞いてたけど本当に気軽に接するよな。
 できれば人前ではやめてほしいよ。なんか心臓に悪い」

一般にもある程度は知られているアマリリスという種族の戦闘力。
学園で学ぶ生徒はそれをより実感していて彼の態度にはびくつく者も多い。
過去に怒りを買って一匹で都市一つを滅ぼした逸話は有名であり事実だ。
だからこそ怒りを買わないように様々な法律で保護されているのである。

「安心しろよ。いきなり俺を攻撃でもしない限り襲ったりしない」

「キュイキュイ」

だがさも当然のようにそんな条件を口にする主人とそれに頷きを返す従者。
こいつに喧嘩売る奴終わってるな、と乾いた笑みをこぼしながらも
正直な感想を述べる。

「あはは、最強のボディガードだ。君に必要なのかは色々疑問だけど」

それは当然、襲われるような立場にないから、ではない。
襲われても自力でなんとかしてしまいそうだから、だ。
何故かその発言に自慢げに頷いているのはヨーコの方だが。

「ん、悪いなヴェルブラ。どうやら先約が来たようだ」

「え?」

そういった彼の視線を追えば制服姿の男女が連れ立って向かってきている。
男子生徒の方はヴェルナーも知っている学園の有名人のひとりであった。

「あら、ガレストのトップだけかと思ったら地球人トップランカーともか。
 学園上位の生徒とこんなに繋がって学園でも乗っ取る気かい?」

冗談半分でそんな事を口にすればシンイチは渋面を浮かべて即座に否定する。

「いっておくが断じて故意じゃないぞ。
 あとな、こんな学園乗っ取ってどうするんだよ面倒臭い」

「あはは、君の場合それが本音っぽいから逆に怖いなぁ」

狙わずそんな者達と縁故を結び、ここを“こんな”と表現する精神が。
しかも“できない”ではなく“面倒臭い”と口にする辺りも、だ。
そんな言葉の裏はしっかりと彼には聞こえており渋面をより深めていく。

「ま、これ以上は邪魔だろうから俺は寮にでも戻るよ。
 君が出してくれた俺の子らのレポートも読み込みたいし、
 フォスタ改良案なんてものまで出されたら涎が止まらないよ」

実に楽しみだと正直に顔に出しながら席を立つ。
しかし去ろうとした途中、思い出したように言葉を残す。

「あ、そうそう。
 友人として忠告するけどフォスタで通信をする時に咄嗟に
 耳に当てて話す癖は早めに直した方がいい……年上扱いされるぞ」

暗に、現代の若者はそういう持ち方はもうしないと。
その立場上、シンイチの生まれ年を知るがゆえの本気の忠告だった。
この8年で一般にも普及した携帯型端末は映像通信を容易に行えた。
そのためかそれ以前の携帯電話に慣れていた世代とそれ以降とで
いわゆる電話の話し方にちょっとした差異が出てきているのである。
耳に当てて音声のみの旧来通りのものとモニターを開く映像通信とに。
一般社会ならまだ前者が多数派だが十代が大半の学園では逆に浮く。

「それはまた地味なジェネレーションギャップだな………気を付ける。あむ」

今更、ということなかれ。
だからこそ今以上をシンイチは微塵も望んでいない。
多分にショックを受けたような顔でため息を吐きながら皿を空にする。
その態度に彼は小さく笑うと、支払いを済ませて店を出て行った。
ちょうどすれ違ってこちらについた両名はその顔を見て少し驚いている。

「今の奴、技術科の問題児だっていうブラウンじゃねえか?」

「え、あの技術科(変人)の中の変人っていうヴェルナー・ブラウン!?
 なんかまともっぽい感じだったけど……人は見かけによらないのね」

意外に校内の人間に詳しいリョウと存外に失礼なトモエである。
校内に流れてる噂そのままであり、間違いなくその通り、でもあるが。

「だな、あれで結構優秀な技術者だ。空気も読めるし勘もいい。
 身の程も弁えているから愚かな行動もしないしな。まともな奴だよ」

ただそこにしれっと混ざるシンイチの言葉に二人は顔を見合わせた。
そして難しい顔をしながら彼の対面の席に腰を下ろすと呆れた声を出す。

「見かけうんぬんでいうなら一番、よらない、奴が何かいってるぞ」

「ホントよ、見ている分なら人畜無害そうな顔して……やっぱり詐欺よ」

「あはは、初対面の奴はたいてい侮ってくれるから助かってるよ」

しかしながら堂々と自覚して利用していると笑顔で返され、絶句する。
普通の会話では主導権を取るのは難しいと再度認識する二人だった。

「それで?
 なにか試験について話があるっていっていたが……」

「そうだけど、場所を変えない?
 “あの”試験の話だから人がいる所だと」

お互いに困るだろうという意味を込めて主張する。
が、それに彼が返事をするより早くにそれはやってきた。

「お待たせしました。スパゲッティミートソースと和風サラダ。
 チーズハンバーグに大盛りフライドポテト、大ライスです」

「はい、どうも」

両手に山ほどの料理を運んできたウエイトレスである。
テーブルの上に各種料理を置くと空となっている皿を数枚(・・)持つ。

「以上でよろしいでしょうか?」

「20分後ぐらいに白玉ぜんざいと抹茶アイス持ってきてください」

「……かしこまりました」

終始笑顔の店員ではあったがその注文にひきつったように
見えたのは果たしてリョウとトモエの気のせいだろうか。
目は口ほどにものをいう。どれだけ食べる気だこいつ、と。
一応居座る言い訳として彼らもまたドリンクバーを注文した。

「まだ昼食って時間には早いでしょうに、よく食べるわね」

「ここ数日無駄に忙しかったからな。
 食える時に食ってカロリー補充しねえともたねえんだ。
 なにせ体力の上限が低いからな、すぐにスタミナが切れる。
 カロリーだけでも溜め込んでおかないといざって時動けないんだ」

彼女が呆れるようにそう指摘した時にはもうポテトの山が消えかけていた。
何気にこの返事は真実でありシンイチの抱える仕方のない問題でもあった。
技量が高くとも体力の最大値が低い彼に持続力(スタミナ)はあまりに心許ない。
食事には魔力回復の為もあるがそれだけに終始させると今度は余所に
カロリーが回らず、肉体面で弱ってしまうためそのバランスが難しい。
だから彼が自身を十全とするにはこうして大量に食すのが手っ取り早い。
しかし学園の食堂で食べ過ぎると請求が中村家に向かってしまう。
そのため彼はこうして時折暴飲暴食を自腹でやっていた。

「つまり飯を食いたいから動く気はねえ、と」

「ああ、ついでにいえばこの席は店内の監視カメラには映らず、
 外からも見えない絶妙な位置にある……あとは周囲の視線ぐらいか」

提案を拒否しながらも意味ありげな視線と言葉をトモエに送る。
機械と外部の目は届かないから他はお前が反らせ、と彼女には聞こえた。

「はぁ、わかったわよ……これはそういう話をするため、するためだから」

溜息まじりに了承すると誰かへの言い訳を口にしながら
刀印を結んだ指を口元に運び、短く呪を唱えて刀印を空間に滑らす。
途端その力を認識できる者だけが見える半透明の結界がその席に張られる。
黒い学生服への奇異の目も学園の有名人への注目も途端に消えた。
人避け、そして人の意識をずらす結界がそこに形成されている。

「……手際の良さに的確な範囲の調整、そしてこの速効性。すげえな。
 なにより力の流れが美しかった……一朝一夕じゃこうはいかない。
 才能に驕らず磨き続けた証だ……見てて気持ちがいい」

「あ、う……ほ、褒めたって何も出ないわよ!」

どこか過大にも思える真っ直ぐな賞賛を浴びせられ照れてしまう。
それを誤魔化すように叫んだがそれは店内の喧騒を微塵も乱さない。
そこでさらに腕前を褒め称えられてトモエは顔が真っ赤になっていき、
シンイチは楽しそうな笑みが深くなっていく。じつに遊ばれていた。
称賛そのものは本当に本音ではあるが。

「…………そろそろ話を進めていいか?」

「どうぞ、お好きなように」

これは自分が口にしないと進まないと判断したのかリョウが促す。
シンイチはフォークでスパゲッティを巻きながら頷くと口に運び舌鼓を打つ。
味を堪能して出る笑みは試験中に見せたどれとも違う子供っぽいもので
歳相応というより幼すぎる無邪気な表情にリョウは少し戸惑うが続けた。
それは彼らなりに最初に言わなくてはいけないと思ったことだ。

「まずは………その、なんだ……今回の件では世話になった。
 無茶苦茶こき使われたが、試験に落ちずに済んだのも事実だからな」

「そ、そうね。その点に関してはありがとうというしかないわ。
 あの夜遭遇したのがあんたじゃなきゃあたしはクラス降格。
 リョウも評価をだいぶ落としていたでしょうし、もっといえば
 誰かを傷つけていたかもしれない」

だから助かった、ありがとうとそれぞれ照れ臭そうにしながら口にした。
シンイチもそれには茶化すようなことなどせずに素直に受け取った。

「どういたしまして、かな。まあでも俺は正当防衛しただけだし、
 補佐役の件もフリーレ先生に提案しただけで決めたのは彼女だよ」

ただそれを己だけの功績のように扱われるのも違うと思い、
彼女の名前を出したがふたりからは予想外の反応が返ってきた。

「そこが、いま思えば少し謎なんだがな」

「ドゥネージュ先生がまさかそんなことしてくれるなんて、ね」

その言葉に、ああそうか、と自身が失念していたことを思い出す。
まだ大多数の生徒にとっては彼女は鬼教師のイメージだったのだと。
本当のことを教えるべきか本人の意向に従って隠すべきか。

「………俺に代理試験官を押し付けた負い目、とでも思え」

今回の一件で最終的に苦労を増やした自覚のあるシンイチは
少し誤魔化すような言い回しながら彼女の意志を尊重した。

「それより本題を言え。
 まさかその礼を言うためだけに来たわけじゃないだろ?」

そして話題を変える意味もあって彼は自分からそこに切り込んだ。
わざわざ事情を知る者が“試験について話がある”と連絡したのだから。
その意味は言葉通りのものではないことなど分かり切った話である。
二人は一瞬視線で会話するとリョウの方が溜息を吐いて要件を告げる。

「まどろっこしいのは嫌いだから単刀直入にいうぞ。
 オレたちを………その、なんだ……鍛えてくれないか?」

「……………迷いつつの直入だな。
 色々言いたいことはあるが、なんで俺?」

他にもいるだろ適任は、と言外に含めて問う。
そして興味なさげな様子を見せながらライスを平らげていく。
その様子に微妙に苛立ったような顔をしたリョウを余所に、
トモエが引き継ぐようにして彼の疑問に答えていた。

「まずはあたしらの事情や霊力のことを知っている事と
 あんたに従ったわずか1日半である変化があったのが理由よ」

「変化?」

なんだそれはと訝しむ彼に二人は各々自らのフォスタに触れた。
そして空間に投映された情報に気の抜けた顔のまま胸中で渋面となる。


-----------------------------------------------


名:シングウジ・リョウ 性別:男

筋力:AAA(限界値)

体力:AA → AA+

精神:A+ → AA-

耐久:AAA+(限界値)

敏捷:A


------------------------------------------------


名:トモエ・サーフィナ 性別:女

筋力:C+

体力:C+ → B-

精神:AA+(限界値)

耐久:C- → C

敏捷:C → C+


----------------------------------------------


それはふたりのステータスであり、尚且つ複数の項目の上昇を示していた。
これには食事を終えたヨーコが、あちゃあ、とでもいいたげな顔で主を見る。
当人は相手にしないという形でその視線に答えた。

「オレらは入学した時からステータスが変化しなかった。
 1年ここで鍛錬したがまったくな……それが約1日でこれだよ」

「いっておくけど、たまたま、なんて言い訳きかないわよ。
 あの3クラスの子達にも軽く聞いたら皆も多かれ少なかれだったわ。
 伸び悩んでいたこれだけの人間があんたに従った途端に上がった。
 あんたに師事しようと考えるのは当然の流れじゃない?」

もっともな話だ。
と、内心では思いながらも表情では胡乱げな顔を浮かべて
納得いかないように振る舞いながら面倒臭そうに最後のポテトを租借。

「……だとしても、だ。鍛えろといわれてもな。
 お前達はその歳では充分な力量だと思うぞ。
 あとはもう時間をかけて経験つんでいくしかない」

「それじゃ遅いんだよ!!」

シンイチからすればそれは本音の忠告でもあった。
しかしリョウは苛立ちを爆発させるようにテーブルを叩いて怒鳴る。
本気でやれば机は割れただろうから加減はしたのだろう。だが苛立ちは本物。
そして時間が多くは無いと考えているのも彼の中では本当なのだろう。

「だとしても、だ。俺はそれを安易に飛び越そうって奴は嫌いだ」

だから彼もまた本音でその嫌悪をあらわにしてそう言い放った。
そして二人がある程度シンイチが戦える事を見知っている事もあり、
隠す意味もないからと自分のやり方の問題点を正直に口にした。

「俺がやったのは長期的に見れば危ない橋を渡っているともいえる。
 あの数日間だけ、伸び悩んだ奴が踏み出す一歩目としてならまだいいが、
 それ以上となればどこかで何かを代償として支払うことになるぞ。
 そんなの責任とれん」

シンイチは彼らの感情とこんな言葉では止まれないのは理解している。
だがそれでも力を求めて“失敗した経験者”としては苦言を呈したい。

「代償って、具体的になんだよ? 体を壊すとか寿命が減るとかか?」

それぐらいなら、といいかねない雰囲気で示した例はどこか懐かしい。
自分もそれぐらいならと思っていたような気がすると笑みがこぼれる。

「ふふっ……最悪、殺したくなる程死にたくなるぞ?」

自分で自分を。
あえて隠したその言葉と地獄の鬼も裸足で逃げ出すような凶悪な笑み。
その裏にある綯い交ぜになった黒い感情を敏感に感じ取って二人は震えた。
しかしその反応を見て、くすりと笑ってすぐにその威圧感を消すと
穏やかな声で諭すように続けた。

「まあ、方向性のアドバイスぐらいならしてやるよ。
 それで勘弁してくれ、人に物を教えるのは根本的に似合わないんだ」

話はそれで終わりだとハンバーグを切り分けて次々と口に運ぶ。
数秒前までに見せた笑みが嘘のように再び無邪気な顔を見せる。
力を求めすぎると遅かれ早かれ、ヒトが触れてはいけないモノに触れる。
霊力という異能を持つ彼らはそれに余計に近い位置にあるといえた。
助言ならば、としたのは本格的な鍛錬を施す気はないが、
自分と同じ轍を踏んでほしくないという老婆心が強い。

「………それだとあなたが困るんじゃないかしら?」

「あむ、なんだって?」

一瞬その態度と言葉に呑まれかけたトモエは、されどそう切り返してきた。
きっとさらに噛み付いてくるのはリョウだと考えていた彼は少し面食らう。

「こっちだってすんなりと受け入れてもらえるとは思ってなかったわ。
 あんたにはメリットがないし、実力を隠したがってるみたいだしね。
 だからこっちは取引材料を用意してきた」

彼女の決意を秘めた青い瞳が挑むようにシンイチを見据える。
しかしその唇は硬く引き結ばれており、どこか力み過ぎてもいた。

「俺が困る取引材料ねぇ。
 つまりは俺の弱みを握ったと思っていいのかな?」

にっこりと先程の再現のように無邪気だった顔が凶悪に笑う。
それが何であれ、例え致命的なものであっても交渉に威圧は重要だ。
例え錯覚でも主導権がこちらにあると思わせるのは無意味ではない。
弱みを握って優位に立ったのではなく握った事でようやく交渉ができる。
それぐらいの差があるのだと思い込ませるのは彼の常套手段といえた。
半分ぐらいは怯えさせて楽しんでいるだけなのだが。

「っ、よ、弱みになるかどうかは、あんたの場合は微妙よ。
 ただ今ここで知っておいた方がいい情報を持ってきた。
 あとから気付いたら、厄介なことになるわよあんた」

少しそれに怯みながらも虚勢を張るように強気に返す。
隣のリョウの方がそんな彼女に不安そうな表情を向けている。
その様子はトモエの方が度胸があるというだけの話ではなく、
何かを確信しているのが彼女だけといった方が正確が気がした。

「へぇ……その厄介な話というのは?
 まさか概要も聞かせられないとはいわないだろうな」

「もちろん取り引きだもの。それぐらいはきちんと説明するわ。
 でも、その前にもう一度だけお礼を言わせてほしいの」

何のだ、と聞き返そうとしたシンイチに真剣な青の視線が注がれた。
そこには普段の強気さなど微塵もないただ真摯な感謝の想いがあった。

「きちんとお礼をしなきゃと思ってたのよ。
 助けてくれてありがとう……あなたがいなければあたしは殺されてた。
 大津家の暴走も止められず、罪のない人達の命も無残に奪われる所だった。
 同じ血と使命を継ぐ霊能力者として、何もできなかった事の謝罪を、
 そしてあなたの助力に心より感謝します」

そういってとゆっくりと頭を下げて謝罪と感謝の気持ちを同時に表した。
その感情は本物だと少年は理解していたが、頷くわけにはいかなかった。

「なんの話だ?」

心底訳がわからないという顔を浮かべながら内心の警戒度が上がる。
何せその言葉をシンイチに向けるのは間違いであり、正しいのだから。

「おい、トモエお前なにをいってるんだ?」

「だからお礼よ、助けてもらったんだからそれぐらいするでしょ」

聞いていた話と違うという幼馴染に顔をあげるとそういってふんぞり返る。
間違いなどないという態度に一瞬受け入れかけた彼は、しかし踏み止まる。

「まあそりゃ、ってそうじゃなくてお前がいってるのってまるで……」

そして言葉途中で斜め向かいの少年に困惑の視線を送った。
それは、まるでこいつがあの仮面だといっているように聞こえる、と語る。
トモエは幼馴染の戸惑いをにっこりとした顔で当たり前のように肯定した。

「その、まるで、よ。こいつが私達を助けてくれた謎の仮面。
 クトリアとそこに住む人々を守った本当の立役者、そうでしょ?」

「はぁっ!?」

その言葉に信じられないと声をあげるリョウを半ば以上無視して、
青の瞳が今度は確信に満ちた視線でシンイチを見詰めていた。

「悪いが、話にまったくついていけないんだが?」

「……へえ、驚いた。
 もっと表情豊かな方かと思ってたけど、すんごいポーカーフェイス」

一瞬も動揺しなかったと拍手でもしそうな感想に、呆れた声を返す。

「意味がわからないから変化しないだけだと思うが?」

溜め息まじりにどうにかしてくれと隣の幼馴染に視線を送るが
やはり彼は事情を知らされていなかったようで戸惑っているだけだ。
一方トモエは想定の範囲内の反応なのか落ち着いてソレを指摘する。

「そう? あなたのお隣さんは『なんで!?』って顔してるけど?」

いわれて視線を向ければ愕然とした顔をしている従者の姿があった。
思わずその頭にゲンコツを落としたシンイチは悪くないと思われる。

「紛らわしい反応をするなっ」
「ンキュッ!?」
「お、おいっ!?」
「きゃっ!」

彼女は感情が顔に出やすいため腹芸がまったくできない。
想定していれば対応できるが完全な想定外には簡単に動揺する。
主にシンイチに関することなのが彼女の種族らしいといえた。
ちなみに同時に響いた小さな悲鳴は対面の二人である。
先程それは心臓に悪いと忠告されたばかりでこれであった。

「……この感覚の差は変えようがないな。
 まあいい……お前も、変な揺さぶりしようとしてんじゃねえよ」

「え、ええ……じゃあ、認める?」

「なんでだよ!
 こっちはお前のいう仮面が何なのかもよく解ってないんだぞ」

ナカムラ・シンイチという少年の対外的な交友範囲ではアレは知らない。
そもそも爆弾事件の際に一部の生徒たちの間で噂として流れた程度なのだ。
他の生徒と殆ど交流のないシンイチが知っているのはおかしいためのとぼけ。

「疑ったのはふとした瞬間に似てると感じたのが最初よ」

「おい、人の話を聞け!」

それを丸々無視してトモエは勝手に一人で謎解きを始めていってしまう。
困惑する周囲の声を置いてけぼりにして彼女は自分の考えを語っていく。

「口調は違うんだけど、意地や性格の悪さやちょっとした仕草が
 すっごく似てたからその時からもう、もしかして、とは思ってたわ」

「悪かったな、性格悪くて……あむ」

不貞腐れたようにスパゲッティの残りを頬張る。
それは雑談のような気軽な口調であったが青の視線は軽くない。
彼の反応を見逃すまいとする鋭さがあり、まるで気が抜けない。
しかしそれ以上に当人にとってはその言葉の全てが“意外”だ。
演じているはずの姿を似ていると評されて胸中では愕然としていた。

「だからその方向で考えてたら、あんたが使ってたあの伸びる剣。
 あれに黒い靄がついたらあの大蛇になるって気付いたのよ」

「だから、その靄だの大蛇だの何の話だ?」

多少苛立ったような演技をしつつ、そこからなのかと訝しむ。
彼女は直接は答えないままテーブルに置いたフォスタの画面に触れた。
すると小さなモニターが彼らの眼前の空間に投映され、それを見せる。
蛇腹剣を使うシンイチと腕から大蛇を伸ばしているような黒靄の人型を。
並べて見せられたそれは確かに靄があるかないかの差異に思えた。

「……ホントだ、似てる」

「他にもあいつが使った銃らしき武装とその効力も似てた」

空気銃で上空の輝獣を撃ち落とすシンイチ。
そして空気の槌を放って何かを落とした黒靄。
蛇腹剣も含めて共に彼女のフォスタが記録していた戦場の映像である。
空気の弾丸が視覚的には分かり難いが現象として機械に認識されていた。

「どちらも学園にあるどの武器とも違うからオリジナルの武装。
 普通科Dクラスのあんたが外から持ち込めたとは思えない。
 なら技術科の誰かが作った物をもらったか何かだと考えたけど
 あのブラウンと知り合いだっていうなら納得ね」

そう微笑むトモエに、最悪なタイミングで見られたと
内心では頭を抱えるシンイチだが、表面上は動揺など見せずに
黙々とチーズハンバーグを口に運びながら呆れたように首を振る。
味は全く分からなくなっているがそれでもカロリーは欲しい。

「蛇腹剣に空気の弾丸か、趣味に全力投球って噂は本当だったわけか。
 って、まてよ……つまりほんとにあいつ、こいつ?」

「人を指差すんじゃない……はぁ、つまりお前は同じような武器を
 持っている俺がこの黒い靄の何者かと同一人物だといいたいわけか?」

ちょっと根拠に乏しいのではないかと暗に示しながら肩をすくめる。
そんな態度にもトモエの表情は微塵も揺らぐことがなく、頷きを見せる。
悩む様子や不安がまるでないそれに嫌な予感がするシンイチだ。
経験上、敵ではない女が自信満々に笑う時ろくな目にあわない。

「他にもあるわよ。
 これは風紀委員の友人から聞いた話だけどね。
 まずこの仮面が最初にクトリアに現れたのは四月の終わり。
 クトリア行きの船に乗っていた武装集団を倒したと聞いたわ。
 調べたらあんたが転入してきた日のあんたが乗ってた船の出来事だった」

時期と場所がぴったり合うと楽しそうに微笑むトモエ。
その顔に自分がいま弄ばれている立場にあるのを感じ取る。
余裕と自信を持ちながら外堀を埋めようという気配に逃げたくなる。
主にその情報源が誰なのかに思い至ったのが原因で若干気分が重い。

「あのな、あの船にあの日どれだけの人間が乗ってたと思ってるんだ」

「でもクトリアに降りた人間は限られる。10人もいなかったわ。
 そしてその晩にも仮面は現れて爆弾から生徒達を守っている」

それでも即座に出した反論を見越していたように彼女も即座に返す。
流れを考えれば仮面は船でやってきてそのままクトリアに留まった。
その否定しようがない動きとシンイチの動きは当然ながら一致している。
当時まだ精神的にも不安定な時期で行動が雑過ぎたと頭が痛い。
まさに、後悔先に立たず、であった。

「そうだよ、思い出した。
 確かにあの爆発騒ぎはこいつがやってきた日の夜だった!」

そしてあの日に出会ったリョウはそれを捕捉するような証言をした。
生徒会相手なら偽装された隠しカメラの映像を信じ込んでいるために
自室にいたと思い込んでくれたがこの二人には意味がない。

「で、二回目の今回。一緒に試験をしたみんなに話を聞いたわ。
 私達の所に仮面がいた時間、あんたの姿を見た奴はいなかった」

「あのな、それはお前がいきなり消えるからだろう。
 自分がどれだけ微妙な立場だったかわかってるだろお前。
 行方知れずを悟らせないために俺が連れ回している事にしたんだ」

だからゴールしてから自分はあそこにいられなかったのだと言い返す。
実のところこれは事実である。それがあの場から離れた最初の理由だ。
元よりフィールドに戻る予定だったがあのタイミングだったのはそれ。
そのためかそれとも演技か。そういうシンイチは呆れと不機嫌さを表す。

「あの状況での単独行動だ。
 事情があったんだろうがせめて一言ほしかったよ」

「トモエ、お前マジで一人であの連中に突っ込んでいったのか?」

ふたりからの責める視線と呆れる視線にさすがに彼女も勢いが弱まる。

「う、そ、そこは、うん本当にごめん。それと……あ、ありがとう。
 降格覚悟だったけど、まさかフォローしてくれてるなんて……」

そこは本人も反省しているのか雰囲気が和らぎ、謝罪と感謝を口にした。
その感情はどちらも本物であり、表情も少しまた照れ臭そうではあった。
されど本当にフォローが意外だったという顔に心外な気分になる。

「不合格にさせたくなかったから補佐役を提案したんだぞ。
 フォローしておかなきゃ無駄になるじゃねえか、この馬鹿。
 ホント………無事でよかったよ」

彼のそれは対外的な言い訳に近い理由ではあったが最後は本音だ。
それが伝わったのか彼女は小さくなって再度ごめんなさいと謝罪する。
しかしそれでもトモエの追求は止まらない。語気には若干の
申し訳なさが滲んではいたが。

「けど………あんたは何故か試験が終了しても戻らなかった」

「……お前がゴールに戻っていると聞いたんでな。
 疲れていたのもあって部屋に直帰したんだよ。
 隣の部屋の奴とすれ違ったはずだから聞けば証言してくれるぞ」

尤もそれは幻術で一応のアリバイを作っておいたヨーコであり、
その時間に寮にいても仮面ではない証明としては“彼ら”には使えない。

「そ、でもまあ肝心なのはその前までの行動だからね」

「前とか後とか何時までのことか知らない奴にそんなこといわれてもなぁ」

それでもそういって知らないふりでとぼけてみせた。
ただ、いくつか仕掛けておいた偽装工作が彼女らには役に立たない。
それが相手の能力の高さや自分のミスならば彼も納得はできるが
これに限っていえばアリバイの前提となる情報を知りえないせいだ。
それはなんとも情けなく、そして非常に厄介な問題であるといえた。

「お前が姿を消してからどこで何をしていたかと聞かれてもね」

正確な情報を全て知りえない者が探偵役なために
自身を守るための偽装アリバイを主張できない犯人。
ミステリものならば読者から石を投げられそうな話である。
最初に犯人視線が来る倒叙ものならばいけるかもしれないが
おそらくは間抜けな犯人の話となるだろう。

「一応お前を探し回ってたフィールド内にいたが、それで疑われてもな」

「当然その理由だと一人でいたから証人はいない。
 だいいち場所そのものは一致してる……それは疑うでしょ?」

どう言い繕うかと頭を働かせるがその時間帯には何も仕掛けがない。
彼らでは別れた後の仮面の行動や脅迫動画について“知れない”のだ。
そしてそれをこちらから教えるなどという事も当然できるわけがない。
アリバイを主張するために秘密の暴露をしては本末転倒だ。
そもそもとしてこの問答は余計だと思えた。

「はぁ……もうよせ。
 お前には俺を疑ったもっと決定的な根拠があるはずだ。
 こんな不毛な水掛け論をするより、それをまず見せろ」

彼女は本命の証拠を隠している。シンイチはそう感じた。
これまで口にしたのはいわゆる主観的な感想と状況証拠だ。
疑いはするだろうが取引材料になどならないのは誰でも解る。
彼女が確信した決定的なナニカが別にあったと考えるべきである。

「そうね、でも不毛とは思ってないわ。
 こうして周囲を埋めておかないと後から口八丁で逃げられそうだもの」

あり得る。
奇しくもその評価に当人と従者は同時に同じことを思った。
トモエという少女は感情的な性格でありながら頭の回転が速い。
激情にかられている時はともかくそれ以外では意外に冷静沈着。
そして人を見る目という物が霊力のおかげか天性のものか鋭い。
厄介な相手に見抜かれたと出来るならこの場で頭を抱えたい彼だ。

「……来て、カムナギ」

そんな心情に気付いているのかいないのか。
彼女は再び刀印を結ぶと小さな声で己が愛刀を呼び寄せた。
勾玉を二つ合わせたような小さな紋章─陰陽太極図が空間に浮かび、
そこから一振りの刀が出現すると彼女の手の中に静かに納まった。

「この刀は我が家に代々伝わる霊刀であると同時に、
 あたしにとっては数少ない母さまの形見の一つでもあるわ。
 こういう風に呼び出せば来てくれるから普段は貸金庫に仕舞ってる」

「……初めて見た時も聞いたが、銃刀法とかどうなってるんだ?」

「え、許可ならきちんと取ってるわよ。ここなら条件軽いし。
 日本と比べるとクトリアは住民がほぼ全員端末を所持してるから
 ただの銃や刀剣なんてそのバリアからすれば玩具でしかないもの」

異能の力を認識していない世間からすればこれはただの刀でしかない。
武器としての価値が暴落した銃器よりもさらに危険度が低く見られていた。
端末の普及率の高さもあってこの都市では未成年でも所持の許可が下りやすい。
ガレスト武装に関しては別の法律や使用制限などが設けられており、
銃刀法の範囲外の武装という扱いになっているのである。

「って、話をずらさないでよ」

「冤罪だ……純粋な疑問を口にしただけなのに」

疑いの眼差しを向ける彼女にげんなりとしつつ溜息を吐く。
実はこれもまた8割ほどは本当のことである。この程度で誤魔化せるなど
微塵も思っていないがこのぐらいの遊びを入れないとやってられないのだ。
カムナギを見てから自分が致命的なミスをしたように感じ始めているが
それが何なのかが全く思い至れない。

「……まあ、いいわ。ようするにあたしがいいたいのはね。
 カムナギに触れられる人間は基本あたしだけって事よ」

そこは納得してくれるかと問うてくる彼女に頷くシンイチ。
普段は貸金庫で必要な時に召喚し後に送還しているのだろう。
ならば基本的に触れられるのはトモエしかいないといえる。

「それで?」

「………わからない?
 あんた、察しはいい方だと思ってたんだけど……」

続きを促すような発言に彼女はそこで初めて意外そうな表情を見せた。
どうやら彼女からするとこの情報で解ると思える程簡単な話らしい。
内心ますます困惑していくがシンイチは耳を傾けるしかない。

「これが根拠だと理解してもらうにはあの二日の間に
 誰がカムナギを使ったかを明確にする必要があるわ。
 まず操られたあたしが刀を呼び出してあんたを襲った。
 そこからカムナギは何度かあたし以外の手に渡っている」

そう前置きして彼女は短い期間での愛刀の遍歴を語った。
操られたリョウを迎撃するのにシンイチが奪いとって使用し、
戦いが終わったあと倒れたトモエの手に握らすように返され、
そのまま彼女が持ち続けて、単独行動時に仮面が一度使った、と。

「証拠映像もちゃんとあるわ」

説明しながらその時の映像を見せる。
黒靄の人型が人間─式に向けて刀を振り上げている光景だ。

「このちょっと前に大津家の式に奪われそうになったけど
 意地でも手を離さなかったから刀の柄を握られてはいない。
 つまり試験中にカムナギを握ったのはあたしとあんたと仮面の三人。
 あんたと仮面が同一人物でないなら、そうよね?」

「まあ、そういうことなるが……」

ことさら否定するような話ではないように思えたので頷く。
シンイチとしてはその大部分で共に行動していた以上自身が証人だ。
そして知らないフリをすべき部分には映像という証拠がある。
そも否定できる状況になく、そして何故そこに固執するのかが解らない。

「───っ、そうか! 残ってたわけか、その順番通りに!」

しかし事情を知らされていなかったリョウが思い至って声を上げた。
トモエが仮面とシンイチを結びつけた根拠がわかったらしく、
大きく息を呑むと彼を見る目が驚愕一色に染まっていた。

「リョウもさすがにわかったのね。
 ならあんたもわかったんじゃない。あたしの根拠って奴が」

「……………何がだ?」

解らない。それが彼の正直な感想だ。
何かが引っかかっているとは感じるのだがどうしても出てこない。
念のため隣の従者も見るが力無く首を振るだけで彼女も解っていない。

「とぼけてる、ってわけじゃなさそうね………あれ?
 うそ、もしかしてそういうこと? だから見落としていた?
 気付かなかったんじゃなくて、気付けなかったというの?」

「だから、何の話だ? もったいぶらずに話せ」

これでは誤魔化すどころの話ではないと直接的に尋ねた。
それに呆れたような顔を見せたのはトモエではなくリョウの方だ。

「ふざけてるのかお前?
 ここまでいえばわかるだろうに、指紋(・・)だよ指紋(・・)!」

「え、ええ、刀の柄には二人の指紋しかなかった。
 あたしとあんたの指紋が交互にべっとりと残ってたわ。
 フォスタ一つあればそれぐらいの事は簡単に調べられるの」

誤魔化すなと睨むリョウとなぜか顔を青くするトモエの言葉に、
シンイチは────どうしたことか、呆けたような顔を浮かべた。
なにせ、それがなんであるか知っていると思うのに出てこない(・・・・・)

「……………シモン? しもん……諮問? 四門、ん?」

「キュイ?」

なんだそれはと同時に首を傾げる主従に少女は唇を噛み、少年は叫んだ。

「おいっ!
 ガレスト関連なら百歩譲って知らないのは解るが
 現代日本人が指紋を知らないわけがあるか!」

「……ううん、たぶんホントよ……やっぱり。
 そうよ、おかしいと思ったのよ。あんたが気付いてもいなかったなんて」

「はぁ? どういうことだよ?」

「前に帰還者について書かれた本で見たことがあるわ」

彼女はそう前置きをしてかつてよくあった事を語った。
交流初期やそれ以前で漂流者への制度や体制がまだ不十分だった頃。
あるいは発見に時間がかかり過ぎたりした漂流者たちの一部には
運悪く長期にわたって異世界ガレストでの生活を強いられてしまい
元の地球での常識をいくつか失念していたケースが確認された、と。

それは全く違う環境に突然つれてこられ、そこに順応するために
必要のない情報がすぐに出てこなくなっただけの話ではあった。
異世界漂流だけでなく日常生活においてもそういう事はままある。
確かに学んだはずの知識が咄嗟に出てこないのはその典型ともいえる。

「でもそれは忘れたんじゃない。出てこないだけ。
 あんたも話の途中から何かまずいことは解ってたんじゃない?
 でなきゃ、あれだけ頭も口も回る奴がこんな凡ミスするわけがない」

どこか影を残しながら辛そうな顔で断言するトモエ。
彼女なりにそれをここまで忘れてしまう彼の生活を慮っているのか。
ゆっくりとシンイチに人差し指を、その紋様を見せるように突きつけた。

「あたしたちが言ってる指紋っていうのはこの指の紋様よ」

「────────あ」

ぴしり、と今まで内心を隠していた表情の仮面に罅が入る。
頭の片隅に追いやられて埃を被っていたような知識の本が突然開かれた。
その内容を一気に読み通す(思い出す)。指紋。それは足や手の指にある渦巻のような紋様。
生涯変わることがなく、そして個人ごとに形が違うという特徴がある。
そしてそれゆえ一般にも広く知られているほど個人識別に使われている。
有名なのは現場や証拠品に残る指紋から犯人を割り出す捜査のそれだろう。

当然、というべきかどうかは判断に迷うところではあるが。
ファランディアでその概念は未だ誰も発見していない事柄である。
そもそも事件捜査の行い方にも差異があり、それへの対処ばかりを
考えていた彼はいつしかその存在を失念してしまっていたのだ。

「ちょっ、ちょっと待て!
 確かに指紋のことを完全に忘れてたのは認める!
 けどそれで証明できるのは俺が何度か刀に触れた事だ。
 もし、この仮面の奴が手袋か何かをつけていたら……」

「そうだとしたらその前についていた指紋が崩れてるわ。
 カムナギについていた指紋にはそういうのも確かにあったけど
 原因は次に握った誰かの指紋が押し付けられた結果だった。
 そしてその重なり方を分析すれば触れた順番もわかるのよ」

そういってトモエはフォスタに触れて刀の柄に付着した指紋を
モニターに浮かび上がらせるとそれをついた順番ごとに表示していく。
そこには二人分の指紋しかなく片方はトモエの物だと証明されている。
残りの指紋は不明扱いだがすべて同一人物の物だとは証明されており、
一度素手で確実に触れているシンイチと考えなくては逆に不自然だ。
そしてその順番は彼を仮面と考えなくては筋が通らない。

「なんなら今ここであんたの指紋と照合する?」

「……フォスタを使ってるとはいえ、なんて純粋な科学捜査っ!」

「キュ、キュイ?」

戸惑う一匹を横に嫌な予感の正体はこれかと頭を抱えながらサラダを租借。
野菜独特の苦みや甘味が全く感じられず紙でも食べている気分だったが、
そんなことでもしていなければ自らの失態の苦みに絶叫しそうになっていた。
これはガレスト科学や魔法、霊術などを警戒して故郷の技術を軽んじた結果。
異世界技術による底上げを認識し、フォスタの多機能さを認識しながらの落ち度(コレ)
それでも何か反論の糸口はないかと考えるのは仮面の認識阻害能力に
自信がありそれゆえにまだあれをヒトと証明できたわけではない点だ。

「それに仮面の指紋が残らないわけがないのよ」

だが、それさえも打ち崩そうとする最後の一手を彼女は出した。
テーブルに出された一枚の用紙。そこにはある画像が印刷されており
それを見た途端ヨーコは開いた口が塞がらず彼はフォークを落とした。

「だってこの通りあいつ素手だったんだから」

それはいうなれば画像データを印刷しただけのモノといえる。
しかも白黒写真という余程のレトロ趣味でもなければしない状態の。
だが、ことソレを映す場合は白と黒さえあれば充分ともいえた。

「お、おいトモエこれってまさか!?」

彼もまた初めて見たのだろう。その驚愕を隠そうともしない。
なにせその絵には決して映ってはならないものが映っている。
否、映っているべきものが完全に消されている、が正解か。

「そのまさか、で合ってるわよ」

印刷されていたのはどこか時代がかった黒装束で全身を覆う人物の画像。
これだけだったのなら、誰もそれが何なのかすら分からなかっただろう。
その顔に最近見たばかりのあの“白い仮面”が存在してなければ。
彼らの窮地を救った黒靄。唯一はっきり見えたその仮面がそこにある。
顔付近だけは唯一黒塗りで不明ながらそのシルエットは鮮明となっていた。
ゆえにその指先を覆うモノが何もないことは一目瞭然。

「……いや、ちょっと待てよ! だとしたらこいつずっとこの姿で!?」

「あたしも最初に見た時は度肝抜かれたわよ。
 だってさすがにあたしも生身だとは思ってなかったから」

黒い靄で解らなかったシルエットは完全に人間の、男を思わせるそれ。
全身の黒装束は革製にも見え、それを外套のようなマントが覆っている。
最初はこんな格好をしていたのかと戸惑う姿だがあの戦いで仮面が
見せた強さを思えばその異常性は現代に生きる人間は皆感じてしまう。
何せそれはどう見ても簡易外骨格すら装着してるようにも見えない。
左腕には黒い兵装端末(フォスタ)があるがこの格好からすればそちらが異物だ。

「うそ、だろ。おい………」

彼は確かに正気でなかったとはいえ外骨格装備のリョウを生身で倒した。
だがそれはカムナギと霊力の特性による所が大きいと思っていた。
自分より戦い慣れているとは感じていたがこれはその程度の話ではない。
この生身で、このむき出しの手であの力を見せつけたというのか。
その目には今はっきりと畏怖の感情が浮かび、冷や汗が流れている。

「念のためこの画像とあんたの体格を比べると適合率は高い。
 ついでに会話の癖とかも分析もしてみたけどそっちもかなりよ」

「……………」

されどそんな視線にもダメ押しの分析結果にも彼は反応しない。
フォークを落としたままの姿勢で驚愕に表情を固まらせていた。

「………ね、ねえ聞いてる? もしもーし!
 こっちが暴いておいてホントなんだけど………大丈夫?」

あまりにも反応がないので思わず声をかければ乾いた笑みが返る。
それはどこか暗さを感じさせる、そして底冷えする声だった。

「はっ、ははっ………大丈夫か、だと?」

そして額に青筋を立てながら嘘くさい笑みを浮かべて彼らを見据える。
ヨーコはその様子に慌てて耳を倒すように塞ぐと咄嗟に縮こまった。

「大丈夫なわけがあるかーーーーーーーーっっっ!!!!!」

結界がなければ店内どころか店外にまで届きそうな怒声が轟く。
至近距離でのそれにふたりは共にキンと鳴る耳を塞ぐがもう手遅れ。
脳内でその声が反響しているようにさえ錯覚する大声に眩暈すらした。

「ええいこの馬鹿どもが!!
 お前らいまどれだけ危険な情報を手にしてるか解ってないな!?
 俺は今世界中の敵になってんだぞ! その正体の情報を掴んでどうする!
 いますぐ捨てろ、忘れろ、いや待て初めて見た時といったな?
 誰だ! この映像を解析した奴は誰だ! 教えろ、そして忘れろ!!」

「わっ、ちょっ、まっ!?」

身を乗り出してテーブル向こうのトモエの両肩を掴むように揺さぶる。
前後に体が激しく揺さぶられて満足に声を発せられなかった。

「お、おい落ち着けナカムラ! そんな状態で話せるわけないだろ!」

態度の急変に彼も慌ててシンイチの肩を掴んで叫ぶ。
それに僅かに正気に戻ったのか両肩を掴んだ手はそのままだが
揺さぶるのをやめるとその青を覗き込むようににじり寄って再度問う。

「いったいこれはどこの誰がしたんだ?」

「っっ、あ、だ、だからそれは取引……」

「だ・れ・だ!」

「は、うっ……」

脅すようにさらに顔を近づけ、ドスのきいた声を浴びせる。
もう彼女の青の瞳にはシンイチの顔しか映っていないほどだ。
そして逆に彼の目には、なぜか赤面する少女の顔が映っている。

「ち、近い近い! とにかく一旦離れて!!」

それはあまりにも間の距離が無かった。まさに目と鼻の先。
異性の顔がそこまで接近した経験がない彼女はそれに狼狽えてしまう。
何せ僅かでも前に出れば、何が、とはいわないが触れてしまうほどの距離。
真っ赤になりながらそう訴えるのは未経験の少女ならば当然の反応といえた。

「………………俺は別にこのままでもいいが?」

それに若干冷静になって面白がってしまうのがこの男である。
あろうことか片手を彼女の顎に移動させ、少し上にあげさせた。
彼女は声にならない悲鳴をあげてより羞恥に頬を染めていく。

「──────っっ!?!?」

「もういっそこのまま全部すっとばして奪い尽くしてやろうか」

何か妙案を閃いたといわんばかりの表情にただただ狼狽えるしかない。

「な、な、ななにを!?!?」

普段とのギャップによる効果か。
日本中どこにでもいそうな顔だというのに異常なほどの色香が漂う。
そして下手に動けば本当に触れてしまいそうな距離に身動く事もできない。

「………………はっ!? お、おおお前ら人前で何をする気だ!」

突然の展開に目が点となっていたリョウがようやく我に返る。
その顔が赤いのはいったいいかなる想像をしたからであろうか。

「何って、ナニがいい?」

文字通り眼前の少女を見詰めたまま顎から頬のラインを撫でる。
男子にしては、あの戦いを見せた者にしては細い指先が優しく触れた。
その感触にこそばゆさと妙な高揚感を与えられ、トモエは息を呑む。
止まるどころか加速するそれにリョウはもう唖然とするしかなく、
ヨーコは目を輝かせて“そこだ、いけ!”とばかりに拳を握る。
されど、そこでまずシンイチが腑に落ちないと首を傾げた。

「………………なんでもいいわよ」

息を呑んだ少女は、しかし一度目を瞑ると表情が変わった。
再び見せたその青には強固な意志があり羞恥の赤は見えてはいない。
そう、あくまで見えてはいないだけだ。

「…………」

本人は隠せていると思っているのだろうがシンイチの目は誤魔化せない。
この男がどれだけ女性をからかってきたと思っているのか。決意の裏で
未だ羞恥と僅かばかりの何をされるのかという恐怖を持つ事などお見通し。
だからこそ彼は不機嫌さに顔を歪め、少女は気付かずに言葉を紡ぐ。

「あんたにはもう返しきれない恩がある。
 正体暴いて、取引しようなんて行為が不義理なのは百も承知だけど、
 あんたに縋るしかっ、もう強くなる方法が思いつけないのよ!」

青には涙は無く、されど慟哭のようだと彼には思えた。
自身が未熟だと理解した上でそこで立ち止まりたくはない決意がある。
だがそれを向けるべき努力の方向が解らない。教えられる者は既に亡く、
我流の限界はとっくに見えていて、異世界の教えでもまだ届かない。

「……………頼む、ナカムラ。
 オレはお前が考えてることはたぶん何もわかってない、けど!
 このままじゃダメなんだ! 代価は二人で払う、だから!」

頼む、と。 
幼馴染の叫びに彼もまたその願いを叫んで深く頭を下げた。

「……………」

切羽詰まった若い人間特有の視野狭窄だと窘めるのは簡単だろう。
彼らにはシンイチを頼る以外にも時間をかけるという選択肢がある。
他にも能力の限界が見えたのなら他を強化するという方法もある。
武装でも人脈でも立場でも地位でも自分自身でも。そこに至れて
いないわけでもあるまい。それでは時間がかかりすぎてしまうからだ。
眼前の少女の内心震える生半可な覚悟と虚勢と、確かな想い。
その隣の少年の未熟で浅はかな考えと決意と、若い熱さ。

「がっ!?」
「いたっ!?」

その両者の額を続けざまに指で弾くと席に腰を下ろして寄りかかると
若干赤くなった額をさする二人を苛立った表情で睨み付けていた。
どこかで逆鱗に触れたかと縮こまりかけて何か違うと両者の勘が囁く。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ………」

そして途端に疲れ切った息を体中から吐き出した。
それは息の長続きに挑戦しているかのような深く長い溜め息だった。
何がなんだか解らない二人と違い、ヨーコは楽しそうに一匹(ひとり)笑う。
シンイチの中でいま何の感情が渦巻いているのか察しがついているのだ。
その笑みが気に入らず彼女をまたも軽く小突くが、それに二人はまた怯えた。

──このまま延々とヨーコを叩いてこいつらの心臓止めてやろうか

ついそんな悪辣なことを思いついてしまうほど彼は苛立っている。
何故なのか。そんなものは単純だ。何もかも気に入らないから。

「まず言っておく。確かに俺は最低な男である自負(・・)はあるが、
 何かの見返りに女をどうこうというのは唾棄するほど嫌いだし、
 それで引き受けてもらえると僅かでも思われるのは心外だ」

「あ、うっ!」

「そんでもってそっちは解っていないと自覚しながら浅慮なことを言い出し、
 我が儘にも近い願いを関係のない俺に無遠慮に押し付けてくるわけだ。
 俺の事情はまったく考慮にいれず」

「う、うぐっ!」

ばっさりと彼らの必死の懇願に駄目出しをしてぐさりと剣を突き刺す。
そして未だにニコニコと、わかってますよ笑顔をする獣の頭を再度叩く。
だがそんなものよりなお苛立たせるのは“仕方ないか”と絆されてる自身だ。

「いいや、もう。面倒臭いし。
 事情を知る小間使いはいた方が便利だしな」

悩むのも馬鹿らしいと彼はそれを放棄してそう考えることにした。
だってどちらにしろ勝ち目がない。つい数日前にヨーコが口にした通り。

──ああいうバカで不器用な子たち、お好きでしょうに──

「ホント、相性悪いったらないぜ。くそったれめ」

その通りだよ馬鹿野郎、という言葉を呑み込んで悪態をつく。
道が解らず泣きそうになっている子供をどうやって見捨てられるのか。
世界中の卑劣漢にその心得を伝授してほしいとさえ思いたくなる(・・・・)

「え、なに?」

「なんて言ったんだ?」

「……いいから、とっとと話せ。もうこのさい全部聞いてやる。
 俺の気が変わらないうちに知っていることは吐いてもらうぞ。
 それぐらいの代価は先払いしてもらわないと俺に燃料が入らんからな」

そういってにんまりと口許だけの邪悪な笑みを見せられ彼らは気圧される。
何せ二人を見据える目が、まったくもってこれっぽっちも笑っていない。
だからそれが了承の言葉なのだと理解するのに少し時間が必要だった。


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