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帰ってきてもファンタジー!? 作者:月見ココア

波紋編 第一章「転入初日」

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03-04 ガレスト近現代史その1

その2があるかは今のところ不明(笑)



「今から45年前。ガレスト政府は衝撃的な事実を公表した」

モニターとなっている黒板に当時の大統領の写真が映し出される。
老齢に入った男性が力強く何かを語っている様子を撮ったものだ。

「第40代大統領フランク・ツェッペリンはこのままでは100年もしないうちに
 世界から様々な資源が枯渇するという事実をガレスト全域に告げた」

そこから映像は切り替わり、地球の地図とガレストの地図が並べて表示される。
地球の地図には様々な大陸と海が描かれているがガレストは一つの大陸だけ。

「そうなったのは元々ガレストが資源に乏しい世界だったからだ。
 何せ地球でいう所のアフリカ大陸ほどの面積しかない世界に
 約10億の人間がおおよそ2000年以上も生きてきたわけだからな」

両世界の地図の縮尺が同一のものに調整されるとガレスト大陸は
形こそ違えど面積としてはアフリカ大陸と大差ない大きさに変化した。
その限られた土地にある水・埋蔵鉱物・森林は元より多くない。
地球と比べて海がないため海洋資源というものは存在しない。
それでもめざましい技術の発展があったのはある物質のおかげ。

「特にガレスト世界を支え続けたエネルギー結晶体『フォトン』は
 当時の消費スピードでは間違いなく100年もたない事が判明した」

生徒各々の机から投映された映像に補足するように結晶体が表示される。
黄色がかった淡い金色の輝きを放つ大小さまざまなそれらが加工されたり
ガレストの人々の生活に使われている様子が動画で流れていく。
そしてフォトン結晶の簡単な説明文も添えられていた。

「フォトン結晶は地球でいう電気エネルギーを溜め込んだ物質といえる。
 無論それは人々にとってどれだけ日常に必要なものか。という意味であり、
 電気とフォトンのエネルギーでは性質や出力に大きな違いがある。
 くわしくはガレスト物理担当の先生に聞くといい」

曰く地球では光子を意味するフォトン【photon】だがガレストでは祝福を意味する。
これはフォトンを発見した当時のガレストが衰退した状態だった事が由縁。
このエネルギー結晶の発見が今日の発展した世界を作り上げる原動力となった。
ゆえに『祝福』を意味する言葉で名付けられたのだといわれている。
その下に注釈として光子と紛らわしいため英字では【foton】と表記とある。

「そして当時のガレストにはフォトンしかエネルギー源がなかったため、
 枯渇してしまう未来がはっきりと見えたことは世界的な大問題だった」

それ以外の資源は彼らが持つ技術力でなんとか持たせる目途が立つも
フォトン結晶だけはさすがのガレストも複製や精製ができなかった。
どうしても今あるものを発掘する以外にフォトンが手に入らなかったのだ。

「……さて、ここで復習問題だ。そんな大問題が発表されても
 たいした混乱や暴動、買占めなどといった事は起きなかった。
 それはなぜか……ナカムラ、答えろ」

「はい」

無表情に返事をしながらも本当に来たと胸中だけで笑う。
“それ俺だけ復習じゃないよね”と。
転入生が来たからこの約一か月分の授業を振り返ると始まった今日の授業。
ここで、まだ何も教わってないのでわかりませんと答えるのは簡単だ。
そんなことは問いを投げた教師が一番わかっているだろう。
大まかな歴史の流れは一般にも出回っているがその裏について。
細かな年表や歴史的出来事の背景までは順次公開されていく予定であり、
現時点においてはこの学校の生徒以外の地球人には知る術はない。

「その時もう異世界渡航の技術が確立していたからでしょうか?」

なのにサランド教諭は転入したばかりの彼に問題を出した。
ならこれは、とシンイチはこの問題を“お前はどう考えたのか”。
それを問うている問題なのだと解釈し自分なりの考えを口にした。

「………なぜそう思う?」

「政府がそこまでの大問題を世間に公表して混乱が起きなかったとなれば
 その対策がすでに出来上がっていたからだと考えるのがふつうです。
 あとはガレストが資源を手に入れられる方法を消去法で考えていくと
 38年前にあったという各国政府との歴史的な接触以外は思いつきません」

理路整然とした意見に教師はうむと唸る。
求めた答えと違うからか“推測で”当てたからか。

「…………概ね正解だ。
 この時フランク大統領は異世界渡航が安全に可能になった事も発信し、
 そしてその未知の大地からガレストへ資源を持ち帰ることを約束した。
 のちにスピーチした都市の名をとって『カラガル宣誓』と呼ばれる。
 これは絶対にテストに出るから、しっかり覚えておくように」

教室中からシンイチのも含めた力の無い返事がかえってきたが、
いつものことなのか気にした風もなくサランド教諭は授業を続ける。

「余談になるが地球人からよく聞かれるのはなぜ異世界だったのかという疑問だ。
 これは地球とガレストが世界としての形が大きく違う世界だったから。
 としかいいようのない話だ。ガレストには海がないことは既に有名だが、
 実際は他にも宇宙がない。空に星もなく大陸は丸くもない。
 ガレストは惑星ではないんだ」

「…………マジ?」

先程出てきた両世界の地図が立体となって表示される。
地球が見慣れた球形となったがガレストは平らな大陸が浮いている姿に。
そして大陸全体が球体の膜に覆われ、外は次元の狭間と呼ばれる別空間とあった。

「この違いを科学的に説明するのは私の担当ではないので割愛するが、
 だから我らガレスト人は異世界を目指した。君ら地球人が宇宙を目指したように」

世界が違えば文化が違う。
それをイヤというほど理解していたシンイチもそこまで世界の形が違うのは
想像しておらずサランド教諭の言葉に素直に感心してなるほどと頷いた。
頭の奥では“実際にこの目で見るまでは鵜呑みにしない”と考えているが。

「さて話を戻そう。異世界渡航ができるようになってもそれは一つの世界だけ。
 つまりは地球だけだった。既にその頃には当然だが多くの現地人たちもいた。
 ガレスト政府側には過激な考えを持った者もいたが、
 肝心のフォトン結晶がこちらに存在しないこともあってか。
 およそ7年に及ぶ調査を終えたガレスト政府は交渉を選んだ」

教師として事実を事実として語っているのだがシンイチは薄ら寒い想いをしている。
もし地球側にフォトンがあったのなら。過激派が多数派になっていたら。
38年前この世界はガレストに侵略され一方的に支配されていたかもしれない。
当時から既にそれだけ技術力に大きな差があり総数で勝っていても、
地球の兵器はガレスト産の装備で武装した彼らを倒すことはできない。
一般に出回ってるそれらを見ただけでそうだと分かるスペック。
歴史のたらればはいいだしたらきりがなく意味はないが、
まるで戦いにすらならないのは子供でもわかる。

「………?」

わかるはずなのだが、周囲の生徒達はそれがわかっている様子がない。
真剣な顔で授業を聞いているのだが、その事実に気付いていない。
その光景に一瞬シンイチは言われた事をただ記録する機械を見た。

「アメリカ、中国、ロシア、オーストラリアに
 フランスやイギリスといった今でいうEU加盟国。
 他にも様々な国に向けて使者を出したガレストは同時に交渉を始めた。
 “こちらは技術を提供するので資源を渡してほしい”と」

その異様なそれを日常として受け取る教師の弁は続く。
まるでそれは当時を見てきたような口ぶりで耳によく入ってきた。

「当初、当然ながら異世界の人間というものを信じなかった彼らも
 ガレストから提供された道具などから技術力の高さは信じざるを得なかった。
 結果的にそれを学びたかった各国政府は秘密裏に条約を結ぶのだが、
 さて、この時なぜガレスト政府は各国同時に交渉を始めたのか。
 欲しい資源の量を思えば確かに多数の国の協力は欲しかったにせよ。
 もっと大国だけに絞っても問題はなかったはずなのに。
 なぜだと思うナカムラ?」

「また俺ですか?」

「そうだ。またお前だ」

普通同じ授業中に一度指された者が連続して指されるのは滅多にない。
今日転入したばかりの彼がこの教諭に目の敵にされてるとは思いにくい。
ここは先程と同じく彼という人間の答えを聞きたいのだろうと思った。
それで『ナカムラ・シンイチ』という生徒を測るつもりだと。
それが教師として新しい生徒を知りたいという考えからなのか。
彼が持つ特殊性の解明に役立てようという魂胆なのかは別として。

「……多分、一分一秒でも早く条約を結ぶためだったんじゃないかな」

「ほう……理由は?」

余計なことをいって目を付けられても困ると考えるシンイチはしかし。
この程度なら誰でもわかるだろうと思ったことをそのまま口にする。

「他の国とも同様の交渉をしていると明言しておき、また実際にしていれば。
 “この技術を自分達だけが得られない事態は避けたい”と思う、はず。
 それだけガレストの技術力は魅力的ですから乗った国は多かった……はず」

気持ち自信のないフリはしつつも、どこか大根である。
しかしながら彼らの技術は誰でも喉から手が出るほど欲しい。
国の為政者ともなれば、それが余所の国でも同様だと知ればなおさら。
そんなことは誰でも思いつくだろうという楽観もあった。

「…………知らないくせによく当てる。
 そう、これは早期に条約を結ぶための策略だったといわれている。
 何せ当時はまだ過激派の意見もそこそこ強い力を持っていた。
 交渉が長引くことは穏健派にとっては避けたかったのだ」

教師の素っ気ない態度に内心安堵しつつも黒板に目を向ける。
その結果は語るまでもなくモニターに映し出されていた。
国名までは表示されなかったが使者を送った国のうち92%が条約を結んだと。

「これにより地球の技術は影ながらガレストからの支援を受けて
 秘密裏に少しずつ底上げされていくことになる。
 ガレスト側も急激に上げることは危険とわかっていたので
 それらのさじ加減にはかなり気を使ったという技術者の手記も残っている。
 資料室で閲覧できるから興味があるなら読んでおいてもいい」

あとで時間があれば行ってみようと素直に思うシンイチだ。
いわれた本を読むためというよりかは裏があるにせよ無いにせよ。
そういう表向きの資料の中身は知っておいて損はないのだ。
まずはそこを知らなければ裏があっても気付けないのだから。

「こうして条約を結んだガレスト政府だがその存在は以後30年隠される。
 民間とも交流をしたかったのだが宇宙にすらまともにいけないのに、
 異世界といわれても誰も理解も納得もできないだろう。
 世界を徒に混乱させるだけだからな。政府は待つことにしたのだ。
 地球人が異世界という場所を認識できるようになるのを」

「え、あれ、それってもしかして?」

教諭の説明にシンイチはまさかの可能性を思いついた。
それはただの思いつきで口からもれただけだったがサランド教諭は耳聡い。

「どうしたナカムラ。質問は授業中でもかまわん、しろ」

どこか待ち構えるように強面の顔を彼に向ける。
彼はそれに怖さを感じたりしないが何か期待されてる感じがした。
その妙な期待感にプレッシャーを感じるが元より何をいった所で
ここで彼が失うものなどなにもないのである。

「いえその……4ね、いや10年くらい前って確か
 異世界に迷い込む系のゲームやら物語やらがブームになってたような?」

「………すばらしい」

「へ?」

だからまさかとは思いながらも思ったことを口にしたが、
強面の教師はその鋭い目を大きく見開き、嬉しそうに笑った。
何がとはあえていわないが当社比率30%増のそれにひいているのは彼だけ。
クラスメイトたちからの反応は妙に鈍いがサランド教諭は気にしない。
むしろ、視界に入っていない。

「いい着眼点だナカムラ!
 それについては未だに諸説あるがガレスト側の陰謀説が根強い。
 こと日本においてその手の物語は元々あったがあの時期は異様に多かった。
 そのブームの2年後に日本から民間交流がスタートしたことを思えば
 何らかの関係性があると考えるのがふつうだろう!
 きっと日本人に異世界に強く関心を持ってもらう下準備だったと思われる。
 あの国は宗教的な制約も少なく、サブカルチャーの分野で『異世界』は
 とてもポピュラーな存在として描かれていることが多かった。
 交流の始まりとしてはこれ以上はない国だったのだろう。
 他には日本政府が気を利かせた説というものあってな。
 これは日本のもてなし文化をみればあながち間違いとも言いづらい。
 かの国のそれは地球との交流に批判的なガレスト人も大いに感心するほどだ。
 ならこれぐらいの裏工作はできたのではという意見もある。
 純粋な日本人としてこの説はどう思う!?」

そして一息でまくしたてるように一気に語る。
一言一句すべて聞き漏らせることもできなかったシンイチは哀れ。
外見の怖さよりその生き生きとした喋り口に思いっきりひいた。
されど強面の瞳は異様にキラキラと期待して輝いている。
地味にそういう視線にはこたえたくなってしまうシンイチだった。

「え、いやその……そこまで気を使える政府だったかな?」

政治に興味のなかった年齢だったのでニュースで語られる程度の知識しかないが
当時の政府は支持率もかなり低く問題を解決できない無能政府と揶揄されていた。
シンイチは少なくともそんな程度しか記憶していない。

「そうなんだよ! あの時期の日本は政治がガタガタになってた。
 それで混乱や暴動が起きないのだからある意味すごい国だと思ったよ。
 ならやはりガレスト側の陰謀説が有力と考えられるな!」

うんうん、と大きく楽しそうに頷くサランド教諭。
何が気に入ったのか皆目見当がつかないがシンイチの返答が
どうやら彼の何かを大いに刺激してしまったようだ。

「ならナカムラ、お前はなぜ日本から交流がスタートしたと思う?
 さっきまでのようにお前自身の予想を聞きたい!!」

教卓から一気に彼の机にまで攻め寄ると輝く瞳で至近距離から見詰める。
さすがにクラスメイトたちは奇異な視線を向けてくるが助けはない。
止められそうな副担任はとっくの昔に次の授業の準備だとかで去っていた。

「え、えっと……たぶんだけど。
 異世界を受け入れやすい土壌があったのもあるんでしょうけど、
 たんに他の国が民間でのそれには難色を示していて、
 実験ケースとして日本に押し付けられた。とかだったりして?」

軽い声色で冗談半分──半分は本気──の意見を口にする。
彼の中では当時の日本はノーといえない国だったように思えた。
マスコミの印象操作だったかもしれないが子供にはそれしか情報源がない。
どこかの大国にやれといわれたらやるしかない国だ。と。
無論、異世界への土壌があったというのもあるにはあったのだろう。
そう主張すれば興奮した声が返ってきた。

「イグザクトリーッ!!
 ああっ、もう授業なんんて放っておいて君とディスカッションしたい!
 その通りだよ! 少なくともガレスト人はたいていそう思ってる!」

「………マジで?」

「君のような頭のある生徒がやってくるのを待ってた!
 さあ次の授業まで共に世界の陰謀を暴こうじゃないか!!」

カリスト・サランド教諭。
ガレスト学園社会担当教師。
がっしりとシンイチの手を握りしめるとわかりやすく息を荒くする。
彼は見た目は怖いが授業内容は覚えやすいと評判の教師だ。

その本性がじつはとんでもない陰謀論者だとバレるこの時まで、だったが。

サランドはそれから本当に終了のチャイムが鳴るまで彼を相手に
さまざまな陰謀論を得意げに語っていくのであった。




彼はその間ずっとクラスメイトからの怒りの目にさらされることになる───




───この学園の教師、大丈夫なのか?



異様に不安になるそんなものが彼のこの学園での最初の授業だった。

強面の人が嬉しそうに近寄ってきたら引くよね!

次回は作者が技術が進歩した世界の戦闘ってこうなる。
と勝手に思っている話。
+注意+
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