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Birthday present〜キョリ〜
作:朧月



Case2-3.灰原哀の誕生日


「そういえば蘭お姉さん、この間誕生日だったんでしょ?」
「あぁ、うん」
「僕たちもお祝いしたかったですよ! コナン君そんな事内緒にしてるなんて」
「そうだぜ! 蘭姉ちゃんに俺たちだって色々世話になってんだからよー」
「悪い悪い。別に内緒にしてたわけじゃねぇけどよ」

 翌日の博士の家は、昨日よりも賑やかだった。
いつも、博士と二人きりの筈のこの広い家に、今日は四人の来客があったからである。
おとなしくして等していられない子供達は、そこが自分の家でも人の家でも、明るくはしゃぐもので。
阿笠宅という広い家の中の、さほど広くも無い客間は、四人の来客から一瞬にして賑やかになった。
 詰め寄る子供達に苦笑で返す彼を見ながら、小さく皮肉を込めた笑みを漏らすと、
彼もそれに気付いたか、こちらを一瞥して小さなため息をついた。

 そんな中、訪問客の中の一人の彼女は、思い出したような顔で今度は私の方を見た。

「ねえ! そういえば歩美、哀ちゃんの誕生日まだ知らないんだ。
 コナン君の誕生日は、5月4日でよかったよね?」
「ああ」

 一度彼に視線を戻して、彼が返事をしたのを確認すると、
彼女はわくわくとした目を私に向けながら、言った。

「哀ちゃん、いつ? 歩美、哀ちゃんのお誕生日もお祝いしたい!」
「そうだよな、灰原転校してきたばっかであんまりそんな話しなかったからよ」
「いつですかっ!? 灰原さん」

 三人、期待の目を向けながら私を囲んだ。
「秘密」という回答は彼らの頭の中に、全く想定されていない。
答えるのが当然だと思っている。

「誕生日は秘密なんだってよ」

探偵団の子達とは裏腹、返事は返って来ないと確信している様子の彼の言葉。
「だろ?」と呆れた顔で私を見る彼に、敢えて冷ややかな視線を送った。

「今日よ」

「えっ?」

 さらりと答えると、私を囲む三人は少し驚いた顔を浮かべ、その後ろの彼はがくりとうなだれた。

「おめーっ、俺が聞いたときは…………」
「えーーーっ!!?」

引きつった表情で顔を上げた彼が、その言葉を言い終わる前に、
探偵団達は大声を上げた。

「どうしてもっと早く言ってくれないの? 歩美、何にも用意してないよ?」
「そうですよ! 水臭いです、灰原さん!!」
「言ってくれたら、母ちゃんに頼んでうな重ごちそうしてやんのによ!」

 右から左から、前から、口々に不満の声がもれる。
ふぅと息をついて、小さく微笑んで、私はそんな彼らに言った。

「だって自分で誕生日を言いふらすのって、なんだか図々しいでしょ?」
「でも〜……」

 何か言いたそうな顔で、目の前の彼女は口を尖らせた。
こうしてると、まるで私が姉になったみたいね。
お姉ちゃんの影ばかり、追っていたけれど。

「じゃあ、今日これから誕生日の歌でも歌ってもらおうかしら」

 三人は目を見開き、驚いた顔で私を見た後、嬉しそうに頷いた。
後ろで複雑そうな表情を浮かべている彼を見て、付け加える。

「あなたは歌わなくていいわよ? 江戸川君」
「おい!」

赤い顔で鋭く突っ込んだ彼が、少し可愛く見えた。




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 皆が歌う声を聞きながら、14年前を思い出していた。
そういえば、どうしてあの時お姉ちゃん、アメリカのあそこにこれたのだろう。

 あの時、その不思議は解明されないまま、楽しいひと時だけ過ごして、別れた。
本来ならば、許されるはずが無い。
組織が、そういう意味での心遣いをするとも思えない。

「どうして……」

再び、過去の事を思い起こした。



「もういいだろう、宮野明美」
「あ、はい!」

 楽しいひと時は、数分で終った。
お姉ちゃんについてきた男の人が、お姉ちゃんに声をかけて。
お姉ちゃんは慌てた様子で返事をして、私と別れを惜しむように、悲しげな顔をした。

「ごめんね、もうおねえちゃん帰らなきゃ」
「……うん」

 別れは惜しかったけれど、会えた事自体が凄くうれしい事で、驚いていた事だから、
引き止めることも、もう少し居たいと願う事も、悲しくて顔を歪める事もなかった。

「……帰るぞ」
「あ」

 けれど、私の口から何か次の言葉が出る前に、ジンに腕をつかまれて、姉と離された。
元来た場所を、再び帰る。
その前に、一度振り返った私は、お姉ちゃんに笑顔を向けた。

「ありがとう! オルゴールも、大切にするから!」

 ジンの歩くスピードが早くて、その言葉を言うのが精一杯だったけれど、
扉が閉まる前のお姉ちゃんの顔は、少し驚いた後、深く微笑んでいた……ように見えた。
お姉ちゃんがどうしてそこに居たのか、私と会っていたその時には、一言も口にしなかった。
 私は、お姉ちゃんからもらったばかりのオルゴールをしっかりと片手で抱きしめて、
もう一つの腕をジンに引かれながら、何度も振り返り、そこを後にした。

「フッ、馬鹿なガキだな。妹の誕生日に直接会ってプレゼントを渡す為にあんな事を……」

 乱暴に私の腕を引いて歩くジンが、そういえば一度だけ、そう呟いた。
下から見たその顔は、嘲笑を浮かべていた。
私には、言葉の意味も、表情の意味も、よく分からなかったけれど。
姉が、何を条件に私とのあの数分間を過ごしたのかという事も。




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「宮野明美、我々もさっさと帰るぞ」
「……はい」
「貴様が言い出したことだ。まさか後悔してるんじゃなかろう?」
「わかってます。……後悔は、ないです。妹が嬉しそうに笑ってくれたから」



 その後の、そんな会話があった事も、私は全く知らなかった。
お姉ちゃんは、さほど組織の仕事にはかかわりは持っていなかった。
組織も、お姉ちゃんにその仕事を与える事は滅多に無かった。
それでも組織に居たお姉ちゃんの役割は、ただ私を従わせるためだけのものだった。

 だから、下手をすれば命の危険も伴う犯罪の片棒を担ぐ事を自ら提示した、
お姉ちゃんの交換条件を、組織は受け入れたのだ。
そんな事は、その時も今も私には全く知らされることが無い事実。



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「哀ちゃん!」
「え?」

歌い終わった彼女に突然呼ばれて、顔を上げた。
どこかお姉ちゃんに似た面影を映す、彼女。

「やっぱり、歌うだけじゃやだよ! 一緒にお買い物行こう!!」

楽しそうに笑う彼女に、円谷君や小嶋君も、そうしよう、と賛成した。

「ね! コナン君もいいでしょ? 哀ちゃんに皆でプレゼント買ってあげようよ!!」
「あ? ああ。……構わねーけど」

誰か一人が言い出した事は、もし一旦その気になってしまえば、当事者を差し置いても大抵は決定してその流れに向かう。
それも、子供の付き合いの特徴かもしれない。

「わしも一緒に行くぞ。今日が哀君の誕生日だとは知らなかったからのぉ。
 ケーキ買って、盛大に祝うんじゃ」

いつからそこに居たのか、
いつの間に話にのってきた博士も、既に行く事前提。

「……わかったわよ。悪いわね、わざわざ」

 ここまで来て、当事者がパスとも言えない。
祝ってくれようと思う気持ちは嬉しかったから、断る理由も無い。
 商店街の中、博士がケーキを買っている間、私達は色々な店を見て回った。
いきなりとは言え、多少のお小遣いは持っていたようで、
回る店ごとにあれがいいかこれがいいかと悩んだ彼らは、
一人一つずつのプレゼントを、私に贈った。

 ……江戸川君を除いて。

「コナン君も哀ちゃんのプレゼント買わなきゃダメだよ!」
「悪い、何かピンと来るもんがなかったから」
「いいわよ? フサエブランドの最新シリーズでも」
「おめーなぁ。……いつも小学生の財布に何を期待してんだよ」

 そんな普段どおりの会話をしながら、
私達はその比較的賑わっている商店街を、歩いた。
ケーキを買い終えた博士と合流して、色々と談笑をしながら、博士の家へ帰って。
今日は博士の家に泊まると言い出した子供達は、家に連絡をして。
 彼もどうやら泊まるつもりらしく、子供達が電話の順番を争っている中、
一人携帯電話で家で待つ彼女の元へ電話をしているようだった。

「……賑やかな誕生日になりそうね」




どうもこんにちは、朧月ですv
もうここまで来たのですね^^やっぱり毎日更新だと早いや〜っ。
というわけで、今回は灰原哀のバースデーv
次話で最終話です^^
まぁ、もし明日までに気が変われば、エピローグなんかも書くかもしれないけど。
とりあえずは次回で最終話の予定です^^

それでは、今回もご覧頂きまして、ありがとう御座いましたvv
次回も是非是非、最後という事で、読んでやって下さいますと嬉しいですv
それでは、感想いつでもお待ちしております〜^^











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